ダブルスタンダードとは
ダブルスタンダードとは、通常1つであるべき基準が、状況や対象によって使い分けられることを指す。 日本語では「二重基準(二重規範)」と呼ばれ、不公平や矛盾を指摘する際に批判的な文脈で用いられることが多い。 「同じ行動でも、ある人には厳しく批判し、別の人には寛大に扱う」といった状況が該当する。
ダブルスタンダードはさまざまな場面で使われる言葉である。例えば「仲間内と外部で別々の基準を設けている」「国内と国外で方針が異なる」というように、対象に応じて基準を使い分けることが挙げられる。また、異なる価値観や規範が同時に存在し、矛盾した判断が行われる状況もダブルスタンダードの一例だ。こうした事例では、不公平さや矛盾が問題視されることが多い。
歴史的に見ると、18世紀には女性に対する不平等な扱いを指摘する際に使われ始め、1930年代には一般的な言葉として広まった。近年では「ダブスタ」というネットスラングが使われることも増え、主に批判や揶揄をする際に用いられている。しかし、人間社会の複雑性や多面性を映し出す概念としても捉えられており、その背景には本来の公平性や一貫性を求める声が存在していると考えられる。
ダブルバインドとの違い
ダブルスタンダードと似たような言葉として「ダブルバインド(二重拘束)」という概念がある。ダブルバインドとは、矛盾した2つのメッセージを同時に受け取り、どちらを選んでも正解がない状況に陥ることを指す。例えば「困ったら相談して」と言われ、相談すると「自分で考えなさい」と言われるような状況がダブルバインドに該当する。受け手は心理的なストレスや混乱を感じることが多く、逃げ道がないため精神的負担も大きくなる。
ダブルスタンダードが基準の二重化による不公平を指すのに対し、ダブルバインドは矛盾した指示に縛られる心理的ストレスを意味する。しかし共通点として、どちらも一貫性の欠如や矛盾が原因であり、個人や社会に混乱や負担をもたらす可能性がある点が挙げられる。
ダブルスタンダードの具体例

日常生活や職場など、ダブルスタンダードはさまざまな形で現れることがある。以下では、よく見られる具体例を紹介する。
他人に厳しく、自分に甘い人
ダブルスタンダードは、日常の至るところで見受けられる。例えば、テレビ番組でダイエット中のタレントがお菓子をこっそり食べるシーンを見て「ダイエット中に甘いものを食べるなんて」と批判しながら、実際には自分自身も同じ行動をしているケースが挙げられる。自分に甘いことは悪いことではないが、他人を批判する際には、自身の状況を振り返りたいものである。
また、上司が部下に「報告は時間通りにしなければならない」と厳しく指導する一方で、自分は期限を守らないことも典型的な例である。こうした矛盾する行動は、周囲に不公平感を生じさせるばかりでなく、人間関係の信頼を損なう要因となる。
同じ成果でも男女で異なる評価
同じ仕事を達成しても、性別によって評価が異なる状況もダブルスタンダードに該当する。例えば、男性社員がプロジェクトで成功を収めた際には「仕事ができる」と評価される一方で、女性社員が同じ成果をあげると「家庭より仕事を優先している」といったネガティブな見方をされることがある。
また、育児に関しても、父親が積極的に関わると「イクメン」と称賛される一方で、母親には「それが当たり前」との評価が下されるなど、不公平さを感じる例も少なくない。こうしたジェンダーロール(性別による社会的役割)は長い歴史に根付いてきたが、昨今ではその改善が求められている。
企業が掲げる相反する目標
多くの人がさまざまな活動を行う場面では、ダブルスタンダードが発生しやすい。企業がその典型である。例えば、トップが「顧客満足を最優先にする」と公言しながら、現場の従業員には時間短縮やコスト削減といった効率を重視した目標が課されるケースが挙げられる。
この状況では、従業員が顧客サービスの質を犠牲にして効率を優先する選択を迫られるため、実際の行動と企業の公言との間に矛盾が生じる。職場で矛盾が生じると、従業員のモチベーション低下や信頼喪失につながり、企業全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性がある。
政治における身内擁護
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は、政治のダブルスタンダードを象徴する事例である。政治家がパーティー券収入の一部をキックバックとして受け取り、収支報告書に「用途不明」と記載して納税義務を回避していた。この原因として、党が「500万円以下の不記載は問題視しない」という曖昧な基準を設けていたことが挙げられる。一般市民には厳格な納税義務が課される一方で、政治家には曖昧な基準が適用されることが不公平感を生んだ。
また、韓国では「ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫)」という言葉が、政権与党によるダブルスタンダードを象徴する言葉として広く使われている。身内には寛容である一方で、他者には厳しい態度を取る姿勢は、国民の信頼を損ない、政治的不満を助長する可能性を高める。このような二重基準の存在は、政治の透明性や公平性を求める声を強める要因となっている。
ダブルスタンダードが生じる原因
心理的要因や社会的慣習が影響することで、ダブルスタンダードが用いられる状況が生まれる。これらの要因について詳しく掘り下げてみよう。
心理的要因
人の心理的な特性は、ダブルスタンダードを生み出す要因の一つで、自分の立場や役割によって物事の捉え方が変わり、矛盾した基準が適用されることがある。例えば、顧客の立場では「もっと迅速に対応すべきだ」と思う一方で、従業員の立場になれば「人手不足やコストの問題があるから仕方がない」と考えるようになる。立場が変わることで判断基準も変わり、矛盾が生じるのだ。
また、誰しも「自己正当化バイアス」によって自分の行動を正当化しやすい傾向があるため、他者には厳しい要求をしながら、自分の過ちには寛容になる場合が多い。さらに、「経験の有無による視点の違い」も原因の一つであり、未経験者には簡単に見える作業でも、実際に行うと複雑さがわかり、評価が分かれることがある。こうした心理的要因が絡むことで、ダブルスタンダードが生まれるのである。
社会的背景
ダブルスタンダードは、組織や社会的慣習による影響も大きく受けている。伝統的な慣習や組織内の規範が、状況によって異なる基準を生む原因となるのだ。
例えば、職場での上下関係が厳しい環境では、目上の人に従わざるを得ないことが基準の曖昧さを助長する。また、特定の役割を重視する社会では、慣習に縛られた基準が生じ、意図せず矛盾が発生することがある。これらの社会的要因は、ダブルスタンダードを構造的に根付かせる要因となる。
ダブルスタンダードが与える影響

ダブルスタンダードは、個人にも社会にもさまざまな影響を及ぼしている。それぞれの影響について、以下で詳しく解説する。
個人に与える影響
ダブルスタンダードは、個人に混乱や悲しみ、不公平感を与えることがある。例えば、同じ成果を挙げても、評価が相手の性別や立場によって異なると感じるとき、人は自信を失い、無力感を抱くことがある。一方で、自分が優位な立場にいるときには、その矛盾に気づきにくく、現状を変える必要性を感じないことが多い。
その結果、ダブルスタンダードの恩恵を受けている人と不利な立場にいる人との間で精神状態や行動にギャップが生まれ、関係性に歪みが生じる。この状況は、ジェンダーに関する固定観念や人間関係の不満を助長する要因となりうる。
社会に与える影響
ダブルスタンダードが社会全体に与える影響は、無視できないものである。優位な基準の人々にとっては居心地が良い環境となる一方で、不利な立場の人々には絶望感や不満が生まれる。
社会の中でこうした二重基準が適用されると、多様性が失われ、新しい意見が生まれにくくなると考えられる。個人の成長が阻害され、社会全体の進展が停滞する可能性もあるだろう。この状態を改善するためには、基準の公平性を追求し、社会全体の意識を高めることが必要である。
ダブルスタンダードと上手く付き合うには
ダブルスタンダードは日常生活や社会の中で頻繁に見られる現象で、完全に取り除くのは難しい。しかし、必ずしも「悪いもの」として対立的に捉える必要はなく、状況によっては上手く付き合いながら、自分の立場や価値観を守ることが有益である。
期待値を調整する
ダブルスタンダードが存在することを前提に、それを「当然」とは思わないまでも、「避けられない現象」として冷静に受け止める姿勢を心がけたい。そのうえで、不公平に感じる状況をすべて変えようとするのではなく、自分が関与する範囲で最適な対応を見つけることが現実的である。例えば、完全な公平性を求め続けるのではなく、影響が大きい場面に注力するのが効果的だ。
自分の軸を持つ
社会の中で矛盾を感じる場面に直面したとき、自分自身の価値観や信念を明確にしておくことは、心のバランスを保つうえで大切である。他者の価値観に引きずられず、自分の信じる基準に沿って判断することで、不必要なストレスを軽減できる。「これは自分の中で納得できる基準か」と問いかける癖をつけることで、周囲に振り回されにくくなるだろう。
不満があれば伝える
ダブルスタンダードによって、ストレスや葛藤が生じる人も多い。不公平に感じる状況があれば、感情的にならず冷静に事実を伝え、話し合いの場を作ることが大切だ。例えば、職場や家庭での不平等なルールについて意見交換するなど、基準を見直す働きかけを行うことで、少しずつでも状況を変えられる可能性がある。
まとめ
ダブルスタンダードは、私たちの身近なところにも潜んでいる問題だ。固定観念や偏見が絡み合い、無意識のうちに矛盾を生み出していることもあるかもしれない。
自分自身もダブルスタンダードを生み出していないか、振り返ってみるのも良いだろう。自分の言動や周囲の状況を改めて見直してみることで、より公平で多様性を尊重した環境を築く一歩につながると考えられる。
参考記事
ジェンダーの「ダブルスタンダード」「ダブルバインド」|JOC – 日本オリンピック委員会
ネロナムブル|KBS WORLD Japanese
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