フェムケアとは?誰もが輝く社会を実現するために重要な取り組み

フェムケアとは

フェムケアは、英語の「feminine(女性の)」と「care(手入れ)」を合わせた造語だ。元々は月経期や更年期症状におけるデリケートゾーンのケアとして知られていたが、近年は女性のウェルビーイングを向上させるための概念として広く捉えられており、フェムケアに関する製品やサービスは急速に発展している。

女性が抱える体の悩みは複雑であり、他人と共有しにくい話題でもあるため、日本では従来タブー視されてきた。しかし女性の社会進出が活発化するなど社会構造に変化が起こっている今、これまで知られていなかった女性特有の健康問題が可視化されつつあり、社会全体で取り組むべき課題として注目されている。

フェムケアとフェムテックの違い

フェムケアと似た言葉に「フェムテック」があるが、テックとはTechnology(テクノロジー)のこと。つまりフェムテックとは、アプリケーションやAI、IoTなどの技術を活用して女性のQOLをあげようとする取り組みのことをいう。

一方フェムケアは、女性の体の問題を解決する製品やサービス全般のことを指すため、双方の定義の違いは「テクノロジーの活用の有無」という点にある。

フェムケアが注目される理由

日本のジェンダーギャップ指数は2024年6月時点で146ヵ国中118位であり、前年度より7位上昇したものの、依然として低い順位を保っている。しかし国全体の労働人口が低下している今、女性の労働力や社会躍進は今後ますます期待されるだろう。

厚生労働省の調査によると、2025年1月時点の女性の就業者数は前年同月比で60万人の増加。15~64歳の就業率は74.7%に達している。

フェムケアが注目される理由には、年々社会で働く女性が増加していることで、これまであまり知られていなかった女性特有の健康問題が顕在化しはじめたことが挙げられる。例えば、月経による周期的なゆらぎや更年期障害などの不調、妊娠・出産・産後に関わるケアなどがその例だ。

女性はホルモンバランスに影響されやすく、ライフステージごとの変化が健康上の問題に繋がることも多いとされる。そのため、目指すキャリアと健康問題の両立が難しいと感じる女性も少なくない。

こうした話題は避けたがる人も多く、これまで表に出ることがなかったため、十分に理解されていなかった。そんな中、近年はSNSで声をあげる女性が増え、隠れていたこの問題が可視化され始めたのだ。これからの社会で多様な人材が健康的に働きつづけるためには、「健康経営」への取り組みや改善が必要になることから、フェムケアが注目されているのである。

日本におけるフェムケア市場の現状

経済産業省によると、フェムケアおよびフェムテック市場は日本では2016年ごろに登場した新興市場とされている。フェムケアに関わる製品やサービスは2021年頃から急増し始め、2023年には750億5,400万円に達している。2024年の見込み値は約790億円と、その勢いは止まらない。

これまで女性の悩みにアプローチする分野は未開拓であったことから、今後も大きな経済効果を生むと期待されている。一方で、まだまだ「フェムケア」「フェムテック」という言葉を知らなかったり、「恥ずかしいもの」というイメージから抵抗を持ったりする人も存在するようだ。

しかしながら、女性の健康問題に取り組むことは、社会全体の福祉の向上に繋がるものである。誰もが抵抗なく受け入れられるよう、これからは「フェムケア」という言葉に囚われない、新たなアプローチが必要だと考えられている。

参考:フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2024年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

日本国内のフェムケアの取り組み

先述のとおり、日本でも市場規模が急成長しているフェムケア分野に注目し、各企業でも新たな価値創造として取り組む動きが見られている。また、フェムケアに特化したスタートアップ企業も増加傾向にあり、政府も社会全体のウェルビーイングを向上させるために支援を行っている。

企業の取り組み

株式会社サンリオエンターテイメント

サンリオピューロランドの運営元であるサンリオエンターテイメントは、女性のQOL向上を目的としたトークイベント「Let’s talk! in TOKYO」を2021年と2023年に開催している。

サンリオピューロランド現地で開催されたイベントでは、これまで「生理」「女性のがん」がテーマとなり、月経から妊娠・出産、更年期、性的ハラスメントや虐待、女性特有のがんまで様々な内容が取り扱われている。イベントの中には小学生から大学生・専門学生まで参加できるスピーチコンテストもあり、幼いころから自分の体について考えるきっかけづくりを提供している。

【Let’s Talk! in TOKYO】2021.2.14 ~「タブー」を考え、自分を知ろう~ Let’s Talk! in TOKYOキックオフトークイベント#0 【サンリオピューロランド公式】|YouTube
Let’s talk! in Sanrio Puroland 2023 生配信【サンリオピューロランド公式】|YouTube

fermata株式会社

fermata株式会社は、フェムケア・フェムテック市場に参入する企業へ向け、薬機法をはじめとした市場における障壁の解決や潜在ニーズの分析・開拓などのサポート事業を展開している。

また、国内外のフェムテックアイテムの展示会や、ステークホルダーが参加できるイベント「Femtech Fes!」を2019年から行い、様々な選択肢を創出することを目指している。ワークショップでは自身の抱える悩みやストレスを言葉にしたり、専門家と話したりすることもでき、フェムケアに関する新たな価値観を見つけられそうだ。

フェルマータの企業さま向けイノベーション支援|fermata Inc

政府の取り組み

経済産業省

経済産業省は、「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」の一環として、「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」という施策を実施している。これは、働く女性のライフイベントによる望まない離職などを防ぐことを目的に、フェムテックを活用する企業や自治体の経費の一部を補助する事業だ。

これにより、フェムテックを活用するサポートサービスにおける課題解決を促し、個人のウェルビーイング向上および企業の人材多様性を高めることを目指している。

フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援 (METI/経済産業省)

フェムケアの今後の課題

フェムケアの今後の課題

フェムケアを広めていくためには、男性側の理解が不可欠だ。例えば、昨今は生理休暇を導入する企業や自治体も増加傾向にあるが、中小企業ではまだまだ制度化されているところは少ない。また、生理休暇が導入されていたとしても「男性の上司に申請しづらい」という理由から、利用しにくいという声もある。

この状況を受け、男性に月経痛を疑似体験をしてもらい、理解の促進を図ろうとする動きも見られている。女性が感じる痛みを間接的に体験したことで、「これでは仕事にならない」と感じ、話しやすい環境づくりの必要性を認識した男性もいるようだ。

一方、月経や妊娠時の不調は人によって様々であるため、実は男性よりも「月経痛がない」「つわりがなかった」という女性からの方が理解が得にくい、という一面もある。実際、約80%の女性から「女性同士でも月経の話はしにくく、理解を得がたいことがある」という声も上がっており(*1)、約43%の女性が「女性同士でも理解がないことが妨げになっている」という心境を吐露している(*2)

体の悩みは他人には分かりづらいことであるため、自分基準で判断せず、じっくり話を聞いて理解に努めることが重要だといえる。また、女性と同じように男性特有の健康問題があることも知り、お互いに理解し合おうとする思いやりが大切だ。

(*1)約8割が「女性同士でも生理のことを理解しあえるとは限らない」、約7割が「男性は生理のことをほとんど理解していない」と回答。 | 株式会社Wondershakeのプレスリリース
(*2)毎日の暮らしにちょっとプラス。Mint⁺のお役立ちコラム Vol.4 月経に関する意識調査|女性のための健康ラボ Mint⁺

まとめ

女性特有の健康問題に向き合い、QOLの向上に向けた取り組みを行うフェムケア。数年前に登場した新興市場ながら、現在その勢いは急加速している。その背景には、女性が心身ともに健康な状態を保ち、安心して社会進出することができるような環境づくりが求められている現状がある。

現代の日本は労働人口の低下が危惧され、女性の労働力に期待される一方で、先進国の中でもジェンダーギャップ指数ランクは長年低いままだ。こうした状況から、フェムケアに取り組まないことは、ひいては莫大な経済損失に繋がるといえよう。

フェムケアを前向きなものとして捉えるためには、男性側はもちろん、女性同士でもしっかりと相手の悩みを理解することが大切だ。人材の多様性を広げ、誰もが働きやすい社会をつくるには、自分の常識だけに当てはめず、様々な人の言葉に耳を傾けることが必要になるだろう。

参考サイト
The femtech market ranking: Where women’s health technology is maturing, emerging, and plateauing|CB Insights Research
フェムテックの推進に向けた取組状況|経済産業省
フェムテック|新しい当たり前をつくり女性が働きやすい社会を【経済産業省】
働く女性と生理休暇について|厚生労働省
男性が生理痛を疑似体験“仕事しやすい職場に” 東北工業大|NHK 宮城のニュース
「これで仕事は無理」男性社員が生理痛を疑似体験 女性の約8割が生理痛で「生活に支障」 | 福岡のニュース|RKB NEWS|RKB毎日放送

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