コミュニティガーデンとは
コミュニティガーデンとは、地域住民が自主的に集まり、花や植物、野菜などを栽培する「地域の庭」である。一般的な公園が行政により管理・運営されるのに対し、コミュニティガーデンは、場所の選定から企画・運営まで、地域住民が責任をもって自主的に担うことが特徴である。
地域の生態系の維持や住民同士のコミュニケーションの活性化、さらには防災拠点としての価値も認識されている。また、人々が日常生活の中で気軽に自然と触れ合う機会を得られ、学びの場としての役割も果たすなど、多様な機能を持つことから、近年注目されている。
コミュニティガーデンの歴史
コミュニティガーデンの起源は、19世紀のアメリカに遡る。都市化と産業革命に伴い、都市部の住民が自然と触れ合う機会が減少し、食料自給や地域社会の絆を深めるために共同で土地を耕す取り組みが始まった。特に、第一次世界大戦中の「ビクトリーガーデン」や、1920年代の「ガーデン・シティ運動」などが、都市農業の発展に寄与した。ヨーロッパでは、ドイツやイギリスでの都市農業が注目され、環境問題や地域再生の一環としてコミュニティガーデンが普及した。
日本では、1990年代に都市部での環境問題や地域づくりへの関心が高まり、コミュニティガーデンが導入された。特に、東京都や横浜市では市民団体やNPOが中心となり、空き地を活用したガーデンプロジェクトが立ち上げられた。地方自治体も、地域の環境改善や住民の交流を目的に支援を行い、市民参加型の活動として広がった。コミュニティガーデンは、環境保護や食育、地域の絆を深める場として、今後ますます重要な役割を果たすと考えられる。
コミュニティガーデンの役割

コミュニティガーデンは、地域社会に多様な役割を果たす重要な活動であり、特に以下の4つの観点から大きな影響を与えている。
- 地域社会のつながりとコミュニティ形成
コミュニティガーデンは、住民が共に働き、協力し合う場であるため、地域社会のつながりを強化する。特に都市部では、個々の住民が孤立しがちな中で、ガーデンは人々を結びつける場所となり、世代や背景の異なる住民同士がコミュニケーションを取る機会を提供する。共同作業を通じて地域の絆が深まり、住民の協力意識や助け合いの精神が育まれる。 - 環境への貢献
コミュニティガーデンは、都市部における緑地の増加に貢献し、自然環境の改善を促進する。都市のヒートアイランド現象の緩和や空気清浄など、環境面での利点がある。また、地域住民が野菜や果物を栽培することで、食料自給を推進し、食品の輸送に伴うフードマイレージを抑え、CO2排出を削減する効果も期待できる。さらに、ガーデン内での環境保護や持続可能な農業に関する意識が高まることで、エコ意識の促進にも寄与する。 - 健康への影響
コミュニティガーデンは、住民の心身のウェルビーイングに対しても良い影響を与える。自然と触れ合うことはストレス軽減に効果的であり、ガーデンでの作業は心のリフレッシュを促進する。また、身体を使って農作業を行うことで、身体的な健康促進にもつながる。特に都市部において、日常的に自然と接する機会が限られているため、ガーデンは重要な役割を果たす。 - 教育的な役割
コミュニティガーデンは、子どもや地域住民への環境教育の場としても重要である。子どもたちは、植物の成長過程を学びながら、自然環境の大切さを実感することができる。大人もガーデンを通じて、持続可能な農業方法やリサイクルの重要性について学ぶことができ、地域全体の環境意識が高まる。教育的な取り組みとして、学校と連携したプログラムやワークショップが行われることも多く、地域の学びの場としての機能が強化される。
このように、コミュニティガーデンは地域社会の絆を深めるとともに、環境保護や健康促進、教育的役割を担い、持続可能な社会の形成に貢献する重要な場である。
国内外のコミュニティガーデンの事例
コミュニティガーデンの実践について、国内外の成功事例をあげながら見ていく。
神奈川県・横浜市「今宿コミュニティガーデン」
2004年、まちづくりの検討を行う「まちづくりサロン」において、市有地をコミュニティガーデンとして活用する提案が受理されたことで、取り組みが始まった。有志が集い、土地の整備から市民自ら実施。そこでは、ハーブや果樹、花などを栽培し、収穫祭などのイベントも開催している。
活動が徐々に広まり、栽培したジャガイモを近隣の小学校の給食で使用したり、保育園の子どもたちが農業体験に来たりするなど、環境教育の場としても活用されている。
アムステルダム「フードソルタイン・エイプライン」
アムステルダム市北部エイプライン地区に位置する市民農園「Voedseltuin Ijplein」は、地域住民主体で2012年に始まり、持続可能性や社会的包摂、フードバンクへの食材提供を目的に活動している。約3000m²の敷地では、有機農業を実践しながら野菜やハーブを栽培し、食育や環境教育、地域イベントなどを通じてコミュニティ形成を支援。運営はボランティアが担い、多様な財団から助成を受けている。特に移民世帯や学生など、多様な背景を持つ参加者の関与により、持続可能な農業と社会的包摂を両立するモデルとなっている。
コミュニティガーデンの課題と未来
コミュニティガーデンの運営にはいくつかの課題が存在する。運営上の課題として、活動に適したスペースの確保が難しい場合がある。特に都心部では土地が限られてる上、地代も高いため、運営にあたって土地の確保が大きな障壁なりうる。また、参加者が一時的な関心で離れることも多く、メンバーの定着が課題となることもある。
政策的には、土地利用に関する法的規制や、所有権の問題が障害となるほか、資金調達が困難である場合も多い。さらに、社会的課題として、地域間での資源や情報の格差、住民の環境意識の違いが、活動の広がりに影響を及ぼすこともある。
ただ、コミュニティガーデンは、様々な課題がある一方で、多くの前向きな役割を果たす場でもある。地域住民が集まり協力することで、地域コミュニティの絆が強化される。環境教育の場としても機能し、住民が自然に触れ、持続可能な生活について考える契機となる。さらに、都市部では緑地の創出や生物多様性の向上、地域の健康促進にも貢献する。これにより、コミュニティガーデンは、地域社会や環境の課題解決に向けた重要な取り組みとして位置づけられる。
まとめ
近隣住民同士のつながりが希薄化する現代において、コミュニティガーデンは地域社会における小さなつながりを大切にする取り組みとして注目されている。また、市民が主体となり地域特有の生態系や環境を維持する役割を担うことで、自然と人とのつながりを取り戻す場にもなり得る。
国内外の成功事例を体系的に共有しながら、地域ごとの特色を再発見する作業を進めることで、さまざまな場所でコミュニティガーデンの取り組みが広がることを期待したい。
参考記事
今宿コミュニティガーデン
コミュニティガーデンのすすめ|東京都建設局
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