コモンズの悲劇とは?定義や事例、回避する方法などを解説

コモンズの悲劇とは

コモンズの悲劇とは、誰でも自由に使える共有地(コモンズ)において、資源が過剰に使われることで枯渇し、荒れ果ててしまうことを意味する言葉だ。

アメリカの生態学者ギャレット・ハーディンが、個人の合理性と集団の合理性が対立する状態を、共同牧草地で飼牛を放牧する村人にたとえて論じたことで、この言葉が有名になった。つまりコモンズの悲劇とは、個人の利益を求めた合理的な行動が、集団全体の不利益に繋がるという考え方だ。

本来は地球の資源を使いすぎたことで起きる環境問題に対して警鐘を鳴らす概念だったが、今では主に経済学の法則として知られている。

牧草地の例

ハーディンが提唱した牧草地の例を見てみよう。

このストーリーは、誰もが自由に使える牧草地で、多くの農家が牛を放牧しているところから始まる。この状況で自分の利益を最大化するには、他の農家より一頭でも多く牛を飼うことだ。しかし誰もが同じことをしてしまうと、牧草地にある草(資源)は大きく減ってしまうことは明白だ。

共有地であるため、資源が減ることの影響は、自分の牛だけではなく他の農家の牛にも同様に与えられる。多くの村人が牛を増やしつづければ、やがて資源はなくなり、結果としてすべての農家が共倒れになってしまうだろう。

もし自分だけの牧草地であれば、牛が草を食べつくさないような工夫を行う。しかし「自由に使っていい」とされる共有地になった途端、誰もが自分の利益のことだけを考えてしまい、最終的に誰もが大損をする悲劇を生んでしまう、というシナリオだ。

コモンズの悲劇と囚人のジレンマ

コモンズの悲劇のように、個人の合理性と集団の合理性の対立を考えるゲーム理論に「囚人のジレンマ」というものがある。これは、利害関係のある人間同士が、常に自分の利益を優先させる選択を行った場合、互いに協力するよりも不利益を被るというものである。

コモンズの悲劇と囚人のジレンマは、どちらもただの思考実験ではなく、こうした事例は実社会でもよく見られる。例えば、すべてがコモンズであるはずの地球の天然資源を、人類が無秩序に利用してきたことも当てはまる。

全員が協力しあえば、その集団における最大の利益を得ることができるものの、実際には自分の利益を優先させてしまう人間の利己的な性質を指摘しているのだ。

コモンズの悲劇が注目される背景

まず、ハーディンがコモンズの悲劇を提唱した時代背景を見てみよう。コモンズの悲劇は、1968年に雑誌『サイエンス』で発表された論文がきっかけで注目されるようになった。

1960年代は世界的に爆発的な人口増加が起こった時代であり、その傾向は特に発展途上国で顕著であった。つまりコモンズの悲劇は、人口が増加したことで今後さらに多くの資源が使われていくことへの危惧を指摘したものであったのである。

このハーディンの指摘通り、現代ではコモンズの悲劇を体現するような様々な事例が実際に起こっている(具体例については後述)。

時代は21世紀になり、インターネット社会が到来したことで再びコモンズの悲劇が注目されるようになる。その後、海や牧草地、天然資源など物質的なものだけではなく、電波などの非物質的なものでもコモンズの悲劇が起こるのではないかと議論され始めたのだ。

なぜコモンズの悲劇は起きるのか

なぜコモンズの悲劇は起きるのか

コモンズの悲劇が起きてしまう原因は、人間が持つ利己的な性質にあると述べたが、それ以前の最も大きな理由として、コモンズを管理する人がいないということが挙げられる。水や大気などは私的に所有できるものではないため、維持管理や再生、保存を継続的に引き受けられる責任者や管理者が生まれないのだ。

管理者がいなければ、使用に関するルールは存在せず、結果として資源を使用するだけ使用して利益を得たいという人が増加してしまうのである。どれだけ使用しても自由なのであれば、資源にかかるコストを抑えるどころか、最大の利益を得るために過剰に使用してしまうのも無理はないといえよう。

コモンズの悲劇の具体例

コモンズの悲劇はビジネスシーンだけではなく、実はごくごく身近なところで起きているものだ。ここでは、現代の私たちの生活に関連する具体例を見ていこう。

水産物の乱獲による物価高騰

日本人にとって最も身近な例は、公海での水産物の乱獲による価格高騰だ。日本の漁獲量は、ピーク時の1984年(1,282万トン)から約40年でおよそ1/3まで減少している(*1)。サンマやサケ、マグロをはじめ、日常的に食べられているアジやイワシなども例外ではない。

その原因は気候変動が挙げられるが、その他の原因に人口増加によって多くの食糧が必要になったことや、健康食ブームで魚の需要が高まったことが考えられている。

(*1)漁獲量、消費量ともに減少している原因とは!? 知りたい! 魚の今|農林水産省

地球温暖化および起因する災害等

大気はコモンズの代表的な存在だが、近代以降、大量の二酸化炭素が無秩序に大気へ放出されつづけている。また、森林の伐採や石油、石炭、天然ガスなどを大量に消費しつづけた結果、地球温暖化という大問題を引き起こしてしまったのだ。

温暖化がいかに地球へ悪影響を及ぼしているかは、今やほぼすべての人が認識している環境問題である。昨今大型化する台風や気候変動などの自然災害も、温暖化が主な原因とされている。

人間が豊かな生活を追い求めた結果、地球の寿命を縮めてしまったという、典型的なコモンズの悲劇といえるだろう。

同じ周波数電波の使用

インターネット社会が到来し、携帯電話が発展したことで世界中の誰もが無線での通信を気軽に行えるようになった。

しかし、同じ周波数の電波でのメッセージのやりとりは、混信を招くことがある。混信とは、異なった発信源からの送信が混ざることをいい、時に重大な通信障害を引き起こす原因ともなるものだ。

そのため多くの国では、放送局や携帯電話事業者に対し、政府が電波周波数の割当や分配を行っている。

コモンズの悲劇からの派生

コモンズの悲劇からは、様々な論が派生している。例えば「アンチコモンズの悲劇」は、コモンズの悲劇と逆の現象だ。これは、本来誰もが自由に利用できるはずの資源を誰かが独占することで起きる弊害のことである。

アンチコモンズの悲劇は、主に知的財産権において起こりうるとされている。社会にとって有益な情報や技術が独占されると、それらを活用することができなくなってしまう。例えば新薬の開発やインフラの整備技術など、社会に有用な情報や技術が独占されることで、社会全体の発展を妨げてしまうことになりかねない。もしくは生活道路などが誰かの所有地になることで、通行料を徴収される等の弊害が生まれるかもしれないのだ。

ただし、特許や権利などは保護されるべきものでもあるため、コモンズの悲劇とともに、アンチコモンズの悲劇に関しても、あらゆる視点からの議論が巻き起こっている。

コモンズの悲劇の回避策

コモンズの悲劇の回避策

コモンズの悲劇を回避するために最も効果的なものが、共有地をできるだけ減らすことだ。分割して私的所有権を与えることで、誰もが無秩序に使用できないようなルールを設けることができる。

ただし、自然界に境界線を引いたり、海を回遊する魚に対して公海に行かないよう繋ぎ止めておくことは、現実的に考えて不可能である。また、所有権を独占することで先述のようなアンチコモンズの悲劇を起こす可能性もある。

ハーディンは回避策として社会主義を挙げているが、世界の社会主義国を見てみると、その方法は決して上手くいっているとは言えない。

結局のところ、人々の道徳性を向上させることが非常に重要になる。過剰使用を避け、できるだけモノや資源を循環させる意識を持つようにしたい。時には、罰則を与えるなどの対策が必要とも考えられており、レジ袋の有料化はその一例といえる。

まとめ

誰もが自由に出入りできる場所で起こる、コモンズの悲劇。個人の合理性と集団の合理性が対立するというこの構造は、現代社会で起きている様々な問題の原因の一つでもある。

海や大気などの私的に所有できない資源は管理する者がおらず、個人の倫理観がルールとなってしまうのだ。そのため、利己的な考えから、あらゆる分野におけるコモンズの資源を過剰に使用する人は後を絶たない。

この状況を回避するためには、私たちは「地球」というたった一つの大切な資源を使わせてもらっている立場にある、ということを理解しなければならないだろう。

参考サイト
Tragedy of the Commons: Examples & Solutions | HBS Online
環境問題における分配の側面について|寺本 博美
アンチコモンズの悲劇?-知識の私有化の光と影-|中山 一郎|独立行政法人経済産業研究所
コモンズの悲劇,反コモンズの悲劇|名和 小太郎
「コモンズの悲劇」の解決策としての法――景観保全における「メニュー法・枠組み法」についての考察――|伊藤 修一郎

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