スプロール現象とは?原因や問題点、国内外の事例、政府の取り組みについて解説

スプロール現象とは?原因や問題点、国内外の事例、政府の取り組みについて解説

スプロール現象とは

スプロール現象とは、都市が無秩序に広がる現象を指す。都市の中心部から郊外へと住宅地や商業施設が拡大し、計画性のないままに土地が開発されることが特徴だ。人口増加や自動車の普及、土地価格の上昇などが主な原因で、日本では戦後の高度経済成長期に顕著に見られた。

スプロール現象が進行すると、交通渋滞や環境破壊、公共サービスの効率低下などの問題が発生する。例えば、広範囲にわたる住宅地の拡大により、通勤時間が長くなり、交通インフラへの負担が増大する。また、自然環境の破壊や農地の減少も深刻な問題である。さらに、公共サービスを行き渡らせることが難しくなり、行政コストの増加も避けられない。

スプロール現象による問題を解決するためには、都市計画の見直しや公共交通機関の整備、緑地の保護などが必要とされており、持続可能な都市づくりを目指し、計画的な土地利用と環境保護のバランスを取ることが求められる。つまり、スプロール現象を抑制するためには、地域社会全体の協力が重要ということだ。

ドーナツ化現象との違い

スプロール現象とドーナツ化現象は、どちらも都市の拡大に伴う問題であるが、その内容には違いがある。スプロール現象は、都市が無秩序に郊外へ広がる現象であり、計画性のない開発が特徴である。一方、ドーナツ化現象は、都市中心部の人口や経済活動が減少し、周辺部に移動する現象を指す。

共通点としては、どちらも都市の中心部と周辺部のバランスが崩れることにより、交通渋滞や環境問題が発生する点が挙げられる。しかし、スプロール現象は主に都市の拡大による問題であり、ドーナツ化現象は中心部の空洞化が主な問題である。

インナーシティ問題との違い

インナーシティ問題は、都市中心部が老朽化し、経済的に衰退する現象を指す。これにより、犯罪率の上昇や失業率の増加、社会的な不安定さが生じることが多い。特に、インフラの老朽化や住宅の劣化が進行し、住民の生活環境が悪化することが問題となる。また、商業施設や企業が郊外へ移転することで、中心部の経済活動が停滞し、地域全体の活力が失われる。

スプロール現象との共通点としては、どちらも都市のバランスが崩れることにより、交通渋滞や環境問題、公共サービスの低下が発生する点が挙げられる。しかし、スプロール現象は主に都市の拡大による問題であり、インナーシティ問題は中心部の衰退が主な問題である。

スプロール現象が起こる原因と過去事例

スプロール現象が起こる原因と過去事

スプロール現象が起こる背景には、都市の急速な発展とそれに伴うさまざまな要因が複雑に絡み合っている。まず、人口増加と都市化の進展が都市部への圧力を高め、住宅や商業施設の需要が急増する。これにより、計画性のないままに郊外への開発が進行しやすくなる。

自動車の普及もこの現象を加速させる要因である。自動車の利用が一般化することで、都市中心部から離れた場所でも通勤や買い物が容易になり、郊外への移住が進む。さらに、都市中心部の土地価格が高騰することで、比較的安価な郊外の土地に開発の目が向けられる。この結果、無秩序な開発が進み、スプロール現象が発生する。

また、都市計画の不備や規制の緩さもスプロール現象を助長する要因となる。適切な都市計画が行われない場合、無秩序な開発が進行しやすくなり、都市全体のバランスが崩れることになるのだ。

日本国内の事例

スプロール現象は、日本の大都市だけでなく地方都市でも発生している。例えば、福岡県福岡市では、中心市街地から人口が流出し、郊外の住宅地が広がった。この結果、公共サービスの提供が難しくなり、地域全体のバランスが崩れる事態が生じた。

また、六甲山麓の神戸・阪神間でも、戦後に無秩序な木造住宅の建築が進み、スプロール現象が発生した。人口増加に伴い、住宅地が山の上の方へと広がり、急斜面やそのすぐ真下に住宅が建ち並ぶようになった。この結果、土砂災害の危険性が高まり、地域全体の安全性が脅かされる事態が生じている。

さらに、横浜市北西部では、高度成長期に急激な人口増加に伴い、農地が減少し、無秩序な開発が進行した。これに対し、港北ニュータウンの開発が行われ、計画的な都市開発が進められたが、スプロール現象の影響は依然として見られる。

海外の事例

海外でもスプロール現象は深刻な問題となっている。アメリカでは、戦後に大規模小売店が郊外に進出し、無秩序な都市拡大が進行した。ウォルマートなどの大型店が全国に出店することで、従来の小売店が減少し、地域社会の解体が進んだ結果、交通渋滞や環境破壊が深刻化し、持続可能な都市計画の必要性が叫ばれている。

欧州では、欧州環境庁(EEA)が都市部における土地の転用と劣化に関する報告書を発表している。2012年から2018年にかけて、欧州の都市部では土地の転用やアスファルト、コンクリートによる土壌被覆が進み、農地や牧草地が減少した。この期間に推定420万トンの炭素隔離が失われ、生物多様性の減少や自然災害への脆弱性が増している。

スイスでは、ヴェルビエのスキーリゾート地でスプロール現象が進行している。無計画な別荘建設が進み、交通渋滞や環境破壊が問題となっている。これに対し、集約型インフラの導入が提案されており、持続可能な観光地づくりが求められている。

スプロール現象の問題点

スプロール現象の問題点

スプロール現象は、都市の無秩序な拡大により多くの問題を引き起こす。以下に、主な問題点を挙げて説明する。

環境破壊がすすむ

スプロール現象は、自然環境に深刻な影響を与える。無計画な開発により、森林や農地が失われ、生態系が破壊される。これにより、生物多様性が減少し、地域の自然環境を劣化させることにもつながる。

また、土地の不透水化が進むことで、雨水の浸透が妨げられ、洪水のリスクが高まる。さらに、都市の拡大に伴い、温室効果ガスの排出が増加し、気候変動への影響も懸念されている。

都市機能が低下する

スプロール現象は、都市のインフラ整備を遅らせる要因となる。無計画な開発が進むと、上下水道や道路などのインフラが整備されないまま、住宅地が広がることが多い。この結果、住民の生活環境が悪化し、公共サービスの提供が困難になる。また、インフラ整備が後追いとなるため、コストが増大し、自治体の財政負担が増えることも問題とされる。

交通問題が起きる

スプロール現象は、交通問題も引き起こす。郊外への無秩序な開発により、通勤距離が長くなり、自動車の利用が増加する。その結果、交通渋滞が頻発し、通勤時間がさらに長くなるという悪循環に陥ってしまう。

交通渋滞の頻発によって、自動車の排出ガスによる大気汚染が進行し、住民の健康に悪影響を及ぼす。さらに、公共交通機関の利用者が減少し、路線の縮小や運行本数の減少が進むことで、交通の利便性が低下してしまう。

景観を損ねる

スプロール現象は、都市の景観を損ねる要因となる。無計画な開発により、統一感のない建物や施設が乱立し、都市全体の美観が損なわれる。

また、自然環境との調和が取れない開発が進むことで、地域の魅力が低下する。これにより、観光資源としての価値が減少し、地域経済にも悪影響を及ぼす可能性がある。

持続可能な都市の構造

持続可能な都市の構造は、計画的な土地利用と環境保護のバランスを重視するものである。都市の中心部に住宅や商業施設、公共施設を集約するコンパクトシティの概念は、交通渋滞や大気汚染の軽減に貢献する。また、都市内に緑地や公園を確保することで、住民の生活環境を向上させるとともに、生物多様性の保護やヒートアイランド現象の緩和にもつながる。

さらに、エネルギー効率の高い建物や再生可能エネルギーの利用も重要である。省エネルギー型の建築物や太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを積極的に導入することで、都市全体のエネルギー消費を削減し、持続可能なエネルギー利用を実現する。

地域コミュニティの強化も欠かせない要素である。住民参加型の都市計画を推進し、地域のニーズや意見を反映させることで、住民の満足度を高め、地域社会の一体感を醸成できる。これらの要素を統合的に取り入れることで、持続可能な都市の構造を実現し、将来にわたって住みやすい環境を提供することが可能となる。

スプロール現象に対する取り組み

スプロール現象に対する取り組み

スプロール現象の問題を解消するために、政府や自治体はさまざまな対策を講じている。以下に、主な取り組みを紹介する。

コンパクト・プラス・ネットワーク

コンパクト・プラス・ネットワークは、都市の人口減少や市街地の拡散といった問題を解決するための政策である。生活インフラと居住地区を集約し、持続可能な地域公共交通ネットワークを推進することで、行政サービスの効率化や行政コストの削減を図る。

例えば、新潟県見附市では、コミュニティバスの導入により回遊性が向上し、年間利用者数が大幅に増加した。このように、都市機能を集約し、ネットワークを強化することで、地域の活性化が期待される。

都市計画マスタープラン

都市計画マスタープランは、都道府県や市町村が策定する都市計画の基本方針で、地域の実情に応じた土地利用や都市施設の整備方針が定められる。

マスタープランは、住民の意見を反映させることが求められ、地域の独自性を発揮するための指針となる。例えば、都市計画区域の指定や用途地域の設定などが含まれ、長期的な視点で都市の発展を見据えた計画が策定される。無秩序な開発を防ぎ、持続可能な都市づくりが進められる。

地方都市リノベーション事業

地方都市リノベーション事業は、地方都市の市街地を対象に、持続可能な都市構造を再構築することを目的として、医療福祉や教育、商業など、地域に必要な都市機能の整備・維持を支援し、中心拠点や生活拠点の形成を推進する。

例えば、空き店舗やビルを図書館や子育て支援施設に改修することで、地域の活性化が図られる。既存の資源を有効活用し、地域の魅力を高める取り組みが行われているのだ。

国土のグランドデザイン2050

国土のグランドデザイン2050は、急速に進む人口減少や災害リスク、国土状況の変化に対応するための長期的な国土計画である。2050年を見据えた国土の理念や考え方を示し、地域間の連携を強化し、持続可能な国土の発展を目指す。

具体的には、都道府県を超えた都市連携や、山間部の拠点構築、交通と情報通信のネットワーク構築などの戦略を掲げ、高次地方都市連合の構築や、診療所や商店の集約による地域拠点の形成が進められている。

まとめ

スプロール現象の解消に向けた取り組みが進む中、今後は持続可能な都市づくりが一層重要となる。その中で、都市のコンパクト化や公共交通ネットワークの強化、地域コミュニティの活性化が鍵となるだろう。

特に、住民参加型の都市計画が求められ、地域のニーズに応じた柔軟な対応の必要性が高まりそうだ。また、環境保護と経済発展のバランスを取ることが重要であり、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上が期待される。

こうした取り組みが進むことで、地域住民にとって住みやすく魅力的な都市が増え、持続的な社会の構築につながっていくだろう。そのために、地域社会全体の協力によってソフト/ハード両面の整備が求められる。

Edited by k.fukuda

参考サイト

福岡都市圏を対象としたコンパクトシティの実態に関する分析|都市構造可視化計画
都市のスプロール化とは|国土交通省近畿地方整備局
開発までの道のり|横浜市都筑区
アメリカにおける大規模小売店の郊外出店による都市問題と対応の現状|都市構造研究センター
欧州環境庁、都市のスプロール化が環境に及ぼす影響を警告|環境展望台
スキーリゾートのスプロール現象、集約型インフラが有効?|SWI
見附市のまちづくり|見附市
みんなで進めるまちづくりの話|国土交通省
地方都市リノベーション事業|国土交通省
国土のグランドデザイン2050|国土交通省

About the Writer
丸山瑞季

丸山 瑞季

大学で国際コミュニケーション学を専攻。卒業後はデジタルマーケティングに携わり、現在は難聴児の子育てに奮闘しながら、楽しく生きることをモットーに在宅で働く。関心のあるテーマは、マインドフルネス、ダイバーシティ、心理学。趣味は、食べること、歩くこと、本を読むこと。この人が書いた記事の一覧

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