
ポピュリズムとは?
ポピュリズムとは、現状に対する大衆の不満や閉塞感、願望に耳を傾け、それらを解決することに重きを置く政治活動や運動、思想のこと。大衆からの人気を得ることで政治的基盤を拡大していくことから「大衆迎合主義」とも言われる。ラテン語で「人々」を意味する「ポプルス」が語源となっている。
ポピュリズムが表立って注目を集めたのは、19世紀後半にアメリカで誕生した「人民党」(通称、ポピュリスト党)が最初とされる。ポピュリズム的な思想を持って活動する人物や集団は、「ポピュリスト」とも言われる。
ただし厳密な定義はなく、時代や国によっても捉え方は異なる。共通しているのは、大衆の考えを代弁し、現状の閉塞感を作り出した支配者階級にあたるエリートなどとの敵対関係をつくることで、支持を拡大していくケースが多い。
現状を打破する存在として好意的に見られる一方、排他的な思想や発言、また非現実的な政策などによってネガティブな存在と捉えられることもある。日本では、どちらかというとネガティブに捉えられることが多いとされる。
ポピュリズムが生まれる背景
ポピュリズムが生まれる背景には、政治不信や民主主義の機能不全など各国でさまざまな事情がある。政治に対して有権者が信頼できなくなることで、アウトサイダーあるいはカリスマ的なリーダーに期待が集まっていく。
例えば、大政党による密談や談合、利権政治など、政治システムが暗躍し、民意が反映されない政治が続くことでもポピュリズムが出現しやすい土壌が作られる。なお、昨今のヨーロッパにおいてポピュリズムが台頭しているのは、移民政策が関係している例が多い。
ポピュリズムの3つの特徴

各国でポピュリズムが生まれる背景は異なるが、代表的な特徴は「エリート(支配者階級)への批判」「不満を持つ大衆への寄り添い」「カリスマ的指導者の登場」という3つだ。つまり、カリスマ的なリーダーがエリート層への批判を先導し、大衆からの支持を集めるという構図が成り立つ。
特に欧米では、エスタブリッシュメントと呼ばれる人々が批判の対象となることが多い。エスタブリッシュメントとは政治の中枢にいる支配者階級あるいは特権階級にある人々で、ポピュリストから見ると現状の閉塞感を作り出した敵という存在となる。
民主主義との違い
有権者の支持を受けて政治活動を行うという点では同じだが、相違点が2つある。「少数派意見の軽視」と「わかりやすい敵の存在」だ。
民主主義は多数派と少数派の双方を尊重することで、バランスをとりながら両者の意見を政治に反映していく。それに対してポピュリズムの場合は、多数派の意見を推し進めるために、少数派の意見を封殺することも多い。時には少数派を敵と見なすこともある。
ほかの政治的思想と融合する
政治的な立場あるいは考え方の違いを、保守的傾向が強い「右派」と急進的・革新的傾向が強い「左派」に分けることがあるが、ポピュリズムには右派と左派の両方のパターンがある。つまり、ナショナリズムやリベラリズムといったほかの政治思想と融合して存在できることを意味している。
ポピュリズムの歴史
ポピュリズムは、経済的格差が広がる19世紀末のアメリカで台頭してきたのを皮切りに、さまざまな国で生まれてきた。どのような歴史を経て現在に至るのか紹介する。
19世紀のポピュリズム|アメリカ・人民党の登場
ポピュリズムが政治の表舞台に最初に現れたのは、資本主義が発展していた19世紀末のアメリカだ。大企業が規模を拡大する反面、労働者や農民の生活は苦しく、政治に対する不満を募らせていた。
そうした人々の不満の声を政治に反映させようと、1891年に第3の政党として誕生したのが人民党だ。上院議員の直接選挙、鉄道の公有化などを掲げて勢力を拡大していった。
20世紀のポピュリズム|マッカーシズムの勃興
第二次世界大戦後のアメリカで台頭したのは、共産党議員のマッカーシーが先導した反共主義運動マッカーシズムだ。「1950年代のポピュリズムの代表例」あるいは「ポピュリズムの第二波」とも称される。
社会の不安を作り出した共産主義者を敵に見立て、摘発を繰り返す「赤狩り」はマッカーシー旋風と呼ばれ、全米で行われた。
21世紀のポピュリズム|トランプ政権ほか
2000年代に入ると、アメリカ以外の国でもポピュリズムの台頭が見られる。現代型ポピュリズムと言われる「ポピュリズムの第三波」だ。
アメリカのトランプ大統領ほか、フランスのサルコジ大統領、日本では小泉純一郎首相の例が挙げられる。先進国では経済成長が鈍化する中で、いずれも古い政治の一掃を掲げて支持基盤を固めていった。
世界各国のポピュリズムの動向

世界各国でポピュリズムがどのような動きを見せているのか、代表的な例として以下の5つの国の事例を紹介する。
アメリカ:トランプ政権の誕生
2016年のアメリカ大統領選挙で勝利し、大統領に就いた共和党のドナルド・トランプ氏は、現代型ポピュリズムの歴史を変えたとも言われる。
仕事を失った白人労働者の民主党政権への不満を代弁したり、移民政策への反対を主張することで、反エスタブリッシュメントの機運を高めて支持を獲得した。時には攻撃的で聴衆を煽るような話し方に、カリスマ性を感じる支持者が多かったのも特徴だ。
イギリス:EUからの離脱
2016年6月、イギリスでEU(欧州連合)への残留を決める国民投票が行われ、離脱への賛成票が51.9%を占めたため、2020年にイギリスはEUから脱退した。
イギリスのEU離脱は、「Britain(英国)」と「exit(離脱)」を組み合わせてブレグジットと呼ばれた。このブレグジットはイギリス独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首が主導。反グローバルや反移民を主張したことも支持を拡大した要因の一つで、国民投票の結果につながったとされる。
イタリア:ベルルスコーニ政権の誕生
ポピュリズムの先駆けや元祖ポピュリストと言われるのがイタリアのベルルスコーニ氏だ。元々は実業家で、大手テレビ局を子会社化していたことから「マスメディア王」と呼ばれた。
そのメディアを通じて国民に直接政策を訴える手法で支持を獲得し、1994年の選挙に勝利して首相の座に就いている。贈収賄容疑やスキャンダルなどで退陣するものの、国民の支持を得て首相に3度就いていることも特徴だ。
ドイツ:右派ポピュリズム政党AfDの台頭
1949年から連立政権が続くドイツは、2021年から「社会民主党(SPD)」「緑の党」「自由民主党(FDP)」による政権運営が行われている。しかし、経済対策などの政権運営に対する評価は下がる一方で、支持を集めているのが右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。連邦議会では第5党に位置しているほか、2024年6月と7月に行われた地方選挙では同党の候補者が勝利して首長に就任した。
AfDの主な主張は反移民・難民、反イスラムで、特に旧東ドイツ側で勢力を伸ばしている。それは、旧東ドイツ側と旧西ドイツ側との経済格差が広がっているという背景があるからだ。既成政党に不満を持つ有権者に訴えることで、支持を急拡大している。
オランダ:ポピュリズム新世代の躍進
ポピュリズム先進国と言われるオランダでは、ポピュリズムの台頭が著しい。2017年の下院選では、へルト・ウィルダース氏が率いる「自由党(PVV)」の政権獲得が取り沙汰されるほどの躍進を見せ、2023年11月に行われた総選挙でも圧勝した。連立政権樹立が暗礁に乗り上げ首相就任には至っていないが、この躍進は世界を驚かせた。
また、ポピュリストの新星として注目されるのが新興政党「民主主義フォーラム(FvD)」だ。反エスタブリッシュメントを掲げ、若者からの支持を急速に集めている。
日本でのポピュリズムの動向
日本でもポピュリズム的な手法によって、支持を拡大した事例がある。代表的な2つの例を紹介する。
明確な対立構図を描いて勝利|小泉純一郎首相
日本でのポピュリズムの代表例と言われるのが、小泉純一郎首相の郵政選挙だ。かねてから主張していた郵政民営化関連法案が参議院で否決されると、衆議院選挙を実施。郵政民営化に反対する自民党候補を公認しないばかりか、反対派を排除するため対立候補を送り込んだ。「自民党をぶっ壊す」など明確な対立構図を描き、マスメディアを通じて大衆に訴えかけて世論を味方につけたポピュリズムの手法は「小泉劇場」とも呼ばれた。
圧倒的な支持率のもと政策を推進|橋下徹大阪府知事・大阪市長
小泉氏と同様に劇場型と言われたのが、大阪府知事と大阪市長を8年間にわたって務めた橋下徹氏だ。弁護士としてメディアへの出演を重ねており、70%台の支持率を獲得するなど大阪府民から圧倒的な支持を獲得した。
その支持率を背景に教育改革などを推し進める中、目玉政策として取り組んだのが大阪都構想だ。ただし、2015年と2020年の住民投票ではどちらも反対票が上回り、構想自体は暗礁に乗り上げたままになっている。
ポピュリズムの危険性
ポピュリズムは大衆の不満や不安を政治運営に吸い上げる手法で、大衆の熱狂的な支持を受けやすい。しかし、多数派が正当化される反面、少数派は対抗勢力として軽視されたり、排除される傾向がある。そのため、民主主義を破壊する脅威的な存在と捉えられることも少なくない。また、多数派が支持を拡大する一方、少数派だった反対勢力が激しさを増すこともある。そのため国を二分してしまい、国内が分断する危険も含んでいる。
まとめ
ポピュリズムは、支配者階級への大衆の不満や不平をもとに、支持を拡大していく政治活動や政治的な思想のこと。19世紀後半から世界各地で見られるようになっている。熱狂的な支持者を集め、政治が活性化される一方、対立した勢力を敵として対立構図を描く手法が主流だ。そのため多数派と少数派の共存が難しく、民主主義が機能しなくなる危険性もある。
小泉純一郎元首相や橋下徹大阪府知事・大阪市長の例を取り上げたが、小池百合子東京都知事と都民ファーストの会、山本太郎氏とれいわ新選組、NHK党、参政党などをポピュリズム的と指摘するケースもある。
これらの例を見ても分かる通り、カリスマ的なリーダーのもとに熱狂的な支持者が集結する傾向がある。そのため、ポピュリズムが台頭してきた場合、こうした良い面と悪い面を見つめ、自分たちにどのような影響を及ぼすのかを冷静に判断することが重要だ。そのためにはポピュリズムを正しく理解し、政治との距離が離れすぎないようにしたい。
Edited by k.fukuda






























倉岡 広之明
雑誌記者として活動した後、フリーライターとして独立。さまざまなジャンルの記事を執筆しているが、北海道で生まれ育ったこともあり、自然環境や気候変動、SDGs、エネルギー問題への関心が深い。現在は、住宅やまちづくり、社会問題、教育、近代史など、多岐にわたるテーマを手がけている。
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