MtF(male to female)とは

MtF(male to female)とは、心の性は女性で身体の性は男性であるトランスジェンダーの人を指す。心の性が男性で身体の性が女性である場合は「female to male(FtM)」といわれる。MtFは、LGBTQ+のTに分類され、心の性と身体の性が一致しないために身体の性に違和感を持っている人々だ。
そもそもLGBTQ+とは、さまざまな性的マイノリティを表す総称で、各マイノリティの頭文字を取って並べた言葉である。以下のように性的指向と性自認に分けられるが、その中にくくれない人もいるため、LGBTQに「+」がつけられている。
【性的指向】
性的指向とは、どのような人を好きになるかという恋愛に関する指向を指す。
- L(レズビアン):同性を好きになる女性
- G(ゲイ):同性を好きになる男性
- B(バイセクシュアル):男性も女性も好きになる人
【性自認】
自分の性をどう認識するかを指す。
- T(トランスジェンダー):身体と心の性が一致せず身体の性に違和感を持つ人
- Q(クエスチョニング):性的指向や性自認が定まっていない人
MTFは、自分の性別をどのように認識しているかを示す概念である性自認の中の、トランスジェンダーとして分類される。
ほかのトランスジェンダーとどう違う?
トランスジェンダーの中でも、さまざまな分類がされる。MtFやFtMは、身体の性と心の性が異なる人のことで、MtFであれば「トランスジェンダー女性」、FtMであれば「トランスジェンダー男性」と最近は呼ばれることもある。
また、「MtX(身体は男性で性自認は中性)」や「FtX(身体は女性で性自認は中性)」という「Xジェンダー」と呼ばれる人もトランスジェンダーとして分類されることがある。Xジェンダーは性自認に関して「男性でも女性でもない」「日によって変わる」「男女の間」といったさまざまな考え方がある。
MtFが直面する課題

MtFには人生を送る上でいくつか直面する課題がある。
女性専用施設の利用
MtFが女性専用施設を利用する際、ほかの利用者や事業者との間で課題が生じることがある。たとえば、トイレやロッカールームなどは、身体を露出することがあり性的な視線で見られることを避けるために、基本男女別の空間が設けられている。MtFの人が性別適合手術を受け、戸籍を変更していれば利用を断られることはないが、そうでない場合は、ほかの利用者の不安をなくすために女性エリアの利用を断られることがある。ただし、断ることはMtFの人格の否定につながることもあるため、事業者にはMtFやほかの利用者全員が受け入れられるような施策づくりが求められている。
カミングアウトとアウティング
自分の性的指向や性自認についてほかの人に伝える「カミングアウト」と、本人の同意なく第三者に性的指向や性自認を暴露してしまう「アウティング」は大きな課題とされている。
カミングアウトは、本人の自由な意思で行うべきとされている。職場や学校の場合、性自認を隠している場合も多いが、隠すことにより苦しむこともあるため、カミングアウトをするべきか悩む人も多い。また、勇気を出して周りの人にカミングアウトをした後、周りが良かれと思ってアウティングをしてしまう場合もある。人によっては、親しい人のみにカミングアウトしている場合もあるため、アウティングにより、MtFの人をさらに苦しめてしまう可能性がある。
周りの人は性的指向・性自認に関する情報は、個人情報と同じくらいデリケートで機密性の高いものだという認識を持ち、カミングアウトを強制したりアウティングを軽々しく行ったりしないようにする必要がある。
MtFに関する取り組み事例
ここでは、MtFに関する取り組みを行っている教育機関を紹介する。
奈良女子大学
奈良女子大学では、2020年よりMtFの学生を受け入れている。全教員を対象にした研修会や学生向けの意見交換会や説明会、ガイドラインの作成などさまざまな取り組みを行ったうえで受け入れ態勢を整えた。
また、MtFの学生に対しても出願前に面談を行い入学後の設備環境について説明する機会を設けている。そして、入学後は対応委員会や相談窓口を設けることで、快適な学生生活が送れるように万全なサポートを行っている。もともと在籍している学生に対しても説明を行っていることに加えて、もともとジェンダー問題について授業などで触れる機会があったため、混乱はなく受け入れられている。
トロント大学
カナダのトロント大学では、LGBTQ+を支援するために様々なプロジェクトやプログラムを行っている。以下が取り組みの一部である。
- University of Toronto Pride March
毎年6月に行われる、大学内のLGBTQ+コミュニティーの支援を目的としたプライドマーチ - University of Toronto Rainbow Self-Identification Project
LGBTQ+の学生や教職員が自己申告をすることで、当事者のニーズを把握し適切なサポートを受けられるよう支援するプロジェクト - University of Toronto GATE Program
トランスジェンダーの学生がスムーズに学生生活を送れるよう、メンター制度やトランスジェンダー学生向けのトイレの整備などのさまざまな支援を行うプログラム
このような制度があることで、LGBTQ+の学生も過ごしやすい環境が整っている。
MtFへの差別をなくすために、私たちができること

MtFを含む多様な性に対する理解が社会全体で進んでいるが、当事者たちはまだまだ差別的な扱いを受けたりすることもある。MtFの差別に対して私たちができることの一つとして、「アライ(Ally)」になることが挙げられる。アライとは、LGBTQ+を理解し支援する考えや、自分たちが理解者や支援者であることを表明する人たちを指す言葉として使われる。「同盟」「支援」といった意味で、英語のAllianceが語源となっている。つまり、LGBTQ+に偏見を持たず、理解し支援したいという気持ちを持っているのであれば、アライとなる。
アライになった場合、アライであることを表明することもよいだろう。自分がアライである意思表示をすることで、職場や学校でカミングアウトしてない当事者も、この人は理解してくれると認識できるのだ。
アライになるには、まずLGBTQ+についてよく知る必要がある。自分が気づかないうちに、ふとした発言で当事者を傷つけているような場合もある。そのため、本やインターネット、当事者のブログなどを通して、正しい知識を得ることが大切なのだ。
まとめ
MtFは、自分の身体の性と心の性が一致せず、身体は男性であり心は女性である人のことを指す。MtFはカミングアウトやアウティングが怖いといった理由から性自認を隠す場合も多く、社会から見えない場所で苦しんでいる人も多い。そのため、周りの理解が必要不可欠となる。アライになるといった行動がすぐにできない場合、まずは当事者を理解し、支援したいという気持ちを持つことから始めてみてはいかがだろうか。
参考記事
多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて~ 性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内 ~|厚生労働省
LGBTQなど性的マイノリティを取り巻く問題。私たちにできること|日本財団
性的マイノリティ(LGBT)の基礎知識 |岡山市
(第1回)男女別施設・サービスとトランスジェンダーをめぐる問題|日本評論社
Campus Communities|University of Tronto
LGBTQ+アライガイドブック|work with Pride
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