物語をまとう——つくる人、着る人、つながる世界

PERSPECTIVE

この特集が生まれた理由。


私たちは毎日、何かをまとって外へ出る。
それは布であり、色であり、肌に触れる感触であり、知らずに引き受けている背景でもある。
朝、何を着るかを決めるほんの数分のあいだに、私たちは無数の選択を通過している。

その多くは意識されることなく、習慣として、あるいは気分として、身体に委ねられていく。

この特集は、服を通して世界を見るための視線を、少しだけずらしてみる試みだ。
循環や倫理、修繕や再生といった言葉は、いまや特別なものではなくなりつつある。
しかし、その背後にあるのは、数値やスローガンではなく、人の手と時間、そして迷いを含んだ選択の積み重ねだ。
つくること、直すこと、選び直すこと。その一つひとつに宿る、語られにくい営みに目を向けてみたい。

まとうことは、境界をつくると同時に、つながりを生む。
服は身体と世界のあいだに距離をつくりながら、同時に、見知らぬ誰かの暮らしや土地、過去の出来事とも結びついている。
つくる人と着る人、そのあいだに広がる見えない関係に、静かに光をあてる。服との向き合い方を、そっと問い直すために。

ARTICLES

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