コンパクトシティとは?国土交通省による政策や国内外の成功事例について解説

コンパクトシティとは

コンパクトシティとは、住居・医療・福祉・公共交通網・商業施設などの生活機能を中心部に集約した都市構造のことだ。生活エリアを徒歩や自転車、公共交通機関で移動できる範囲にまとめることで、居住地が郊外に分散するのを抑えることを目指したまちづくりである。

また、一定の人口密度を保つことで行政や生活サービスが行き届きやすくなり、提供する方にとっても安定した経営を維持しやすくなる。特に、移動に時間やコストがかかるサービスにおいては生産性や収益率の低さが問題となる中、コンパクトシティを実現することでコストを削減し、サービス提供件数を増加することができると考えられている。

さらに都市部を生活圏とすれば、郊外を農地や緑地の拡大に利用することができ、環境保全の面でも大きな期待が寄せられる。

このようにコンパクトシティは、サステナビリティを意識した都市構造を目指す動きとして注目されている。

推進される背景

コンパクトシティが注目される背景には、まず高齢化や地方の人口問題などが挙げられる。

都市部ではなく、郊外に居住する人が増えることを「ドーナツ化現象」といい、これは多くの問題を引き起こす原因として喫緊の課題となっている。ドーナツ化によって都市部が過疎化したり治安が悪化するほか、インフラの維持費などのコストも増加する。結果的に行政サービスへの投資が難しくなり、公共サービスが地域全体に届かないという問題を引き起こしてしまうのだ。

また、コンパクトシティを実現すると徒歩での移動が基本となり、年々加速する高齢化社会において健康維持に繋がるとして、健康・福祉の充実を目指す地方自治体にとって、コンパクトシティは最適なまちづくり政策でもある。

コンパクトシティのポイント

コンパクトシティのポイント

コンパクトシティが目指しているのは、行政機関や商業施設などを中心地の駅周辺に集約し、それらと適切な場所に設置された居住地を公共交通機関によって繋ぐことだ。

現在多くの地域で、市街地における人口の減少に伴い公共交通機関を利用する人も減り、運営を維持することが難しくなるという悪循環に陥っている。しかし中心部に人を呼び戻し、かつ徒歩で生活できるよう整備するためには、交通網の発展が必要不可欠となる。

そのために、やはり公共交通機関を充実させることがポイントになる。バス路線の再編成やICカード対応の促進、情報案内システムの導入など、利便性を向上させることが重要である。

また国と連携しながら中心市街地活性化施策を活用し、新規事業によって空き店舗や未利用地を減らすなど、中心市街地を盛り上げる取り組みを実施することも大きなポイントだ。

国土交通省による政策

国土交通省では、コンパクトシティの実現に向けてさまざまな政策を行っている。

  • スポンジ化現象への対策

都市部の人口が減少し、空き家や空き店舗が増えることで小さい穴が開くように人口密度が低下する「スポンジ化現象」への対策として「改正都市再生特別措置法」を施行。空き家や空き店舗の利用を促進し、まちのにぎわいを創出させる提案も行っている。

  • スプロール現象への対策

郊外が無秩序に開発されていく「スプロール現象」に対し、開発許可制度を制定した。開発行為をしようとする場合には、開発許可権者の許可を得る必要があり、これにより、良好な市街地の形成が目指される。

  • 「誘導区域内」における立地適正化計画

都市機能を誘導させる「誘導区域内」における立地適正化計画を策定。一定の人口密度を維持し、サービスやコミュニティが持続的に確保されるための施設や、歩けるまちづくりのための公共交通機関の整備を推進している。

コンパクトシティのメリット

コンパクトシティを実現することで、さまざまなメリットが相互に作用しあい、より暮らしやすいまちづくりに繋がっていく。

行政サービスの充実

高齢化の加速によって医療・介護サービスの需要は年々高まっているが、これらに関わる社会保険料は、人口や若年層が減ると一人当たりの負担が大きくなる。しかし人口を都市部に誘導して増加させることで税収が安定し、住民の負担が減るだけでなく、生活圏がコンパクトに集約されているため地域全体に行政サービスが行きわたるようになる。上下水道や道路などのインフラ整備にかかるコストも削減され、効率的にサービスを行えることにも繋がる。

経済の活性化

魅力的な商業施設や飲食店、生活に必要な商店などを一つのエリアにまとめることで、そこには人が集まりやすくなる。住民は歩いて気軽に商業エリアに訪れることができ、消費活動が活発になるため、結果的に地域全体における経済の活性化が期待される。

環境問題の改善

生活に必要な都市機能が徒歩圏内にまとまり、さらに公共交通機関が充実すれば、過度な車依存社会から脱することが可能になる。すると排気ガスによるCO2の排出量は削減され、脱炭素化や温暖化対策にも繋がる見込みがある。実際この政策に取り組んだ都市では、CO2の排出量が減少したという報告もある。

移動の負担軽減

郊外に住む人々にとって、通勤・通学時間の長さや交通渋滞、満員電車は大きな負担となる場合が多い。また高齢者においても、外出の際の移動の負担は大きな問題だ。

公共交通網を発展させていけばこれらの負担を減らすことができ、通勤・通学にかかっていた時間を他のことに利用したり、高齢者が気軽に外出を楽しめるようになるなどのメリットも生まれる。

デメリット・課題

多くのメリットがあげられるコンパクトシティ施策だが、デメリットや課題も存在する。

一番大きなデメリットとしては、家賃や食費などの増加が考えられる。そもそもドーナツ化の原因のひとつに、人々が都市部よりもコストの低い郊外へ進出したことが挙げられる。一部の人にとって、今より生活コストが増加する都市への住み替えは経済的にも精神的にも非常に厳しい場合がある。

また、住居が密集することによって地震・火事など災害時の被害が拡大されやすくなることや、騒音やゴミ問題などの近隣住民とのトラブルも考えられ、そのような問題に対してどのように対処するのか十分考慮しなければならない。

コンパクトシティの成功事例

さまざまな懸念点からなかなかコンパクトシティ化を実現できない都市も多いが、国内外で実際に推進する都市もある。以下、コンパクトシティの成功事例を見ていこう。

海外の事例

アメリカ・ポートランド

ポートランド(アメリカ)

アメリカ西海岸に位置するオレゴン州最大の都市・ポートランドでは、1979年に都市部と農地や森林などの土地利用を区分する「都市成長境界線」という政策を導入。この政策では、都市部と郊外の間に明確な境界線を設けることで農地や森林を保全できる一方、開発された中心市街地に都市機能が集約され、「歩ける範囲」で生活することが可能になった。また、脱車社会を推奨しており、街にはジョギング、ウォーキング、サイクリングを楽しむ人々や公共交通機関で移動する人々で溢れている。

これにより、「全米で一番環境にやさしい街」「一番住みたい街」として年々多くの人が移住している。

コペンハーゲン(デンマーク)

「世界一の自転車都市」と呼ばれているデンマーク・コペンハーゲンでは、第二次世界大戦後、「フィンガープラン1947」という政策に基づいた都市計画が立てられている。これは首都圏を手のひらに見立てて都市機能を集約し、そこから放射状に5本の鉄道を設置することでコンパクトな街づくりを目指すという計画である。

2007年には新たに「フィンガープラン2007」に基づき、駅から600km圏内に建物を集約させる政策を打ち出した。これが自転車インフラの整備や公共交通機関の促進などにも繋がり、2021年には「ツール・ド・フランス」の出発点にも選ばれるほど自転車が住民の生活に根付いた例である。

日本の事例

熊本市
出典:熊本市

富山市

富山市は、主に交通網の強化を軸とした取り組みを行っている。2007年より中心市街地活性化基本計画において、公共交通ネットワークの活性化、中心市街地における商業施設や文化施設等の再開発、製薬業等の地場産業の育成などの実現を目指し、コンパクトなまちづくり政策に着手。

街の中心となる富山駅を再開発することで、周辺地域を活性化させた。また、中心駅から放射状の鉄軌道およびバス路線を設置することで自動車の利用機会を減らし、歩いて暮らせるウォーカブルシティの実現を目指している。さらにそれらの沿線上への居住推進を行うことで、将来的に都市部へ居住する市民を増やし、都市をコンパクト化させていく方針である。

熊本市

熊本県熊本市では、2004年に「都市計画区域マスタープラン」を設定している。これはまちの未来の姿を展望した都市計画の基本方針を示したもので、多核連携都市を目指して制定された。

具体的には、中心市街地や地域拠点に都市機能を集約し、その周辺や公共交通機関の沿線上に居住区を設定することを推進している。人口密度を低下させないことを目標とし、高齢者や子育て世代にとっても利便性の高い環境を実現するため、中心部の公共交通網を強化、利用を促進する取り組みを行っている。

まとめ

日本だけではなく世界中で高齢化が進んでいる現代社会。それに伴って地方都市での人口減少には拍車がかかっており、各自治体では大きな転機を迎えている。また、市街地が拡大することは森林伐採やゴミの埋め立てなど自然環境を破壊し、動物たちのすみかを奪うことにも繋がっている。

このような状況下で、行政や生活サービスを安定させ、持続可能な都市にするために考案されたのが、コンパクトシティという都市構造だ。無秩序に膨らんだまちを小さくすることは大きな労力を必要とするが、国や自治体が今後優先的に取り組んでいく問題であると考えられる。

そのためには、まず住民である私たち一人ひとりがコンパクトシティや背景にある問題について知り、転居などの際に「コンパクトシティへの参画」という選択肢を持てるようにすることが必要となる。

参考記事

コンパクトなまちづくりについて|国土交通省
全米一住みたい都市~歩きやすいコンパクトな街づくりポートランド~|大和ハウス工業株式会社
コンパクトシティ政策について|国土交通省