
概要
INTRODUCTION
この回で伝えたいこと。
大量に“つくっては捨てる”時代から、めぐり、つなぐ時代へ。
第1回のテーマは、「サーキュラーエコノミーとは何か」。
リユース・リサイクルを超えて、
循環を前提にしたものづくりと暮らしの“デザイン”を考える。
渋谷のまちにあふれるごみやフードロスの実態を手がかりに、
私たちの暮らしの中で、サーキュラーエコノミーをどう実現できるのかを語り合う。
“捨てられるものがないまち”を目指す第一歩を、ここから。
テーマ
THEME
この回を読み解く言葉。

サーキュラーエコノミー(循環経済)とは?世界の現状や企業の取組み事例を紹介
サーキュラーエコノミーとは、生産と消費における資源を最大活用し、廃棄物の発生を最小限に抑える循環型経済モデルのことで、これまでの、大量生産・大量消費・大量廃棄というリニアエコノミー(直線型経済)からの移行が目指されている。
用語集
RELATED TERMS
番組中に登場するキーワード解説。
注目
HIGHLIGHTS
心に刻む、その一言。

個々の点の動きが重なり合って、線になり、やがて円になっていく。
そうやって少しずつ、大きなムーブメントが生まれていく。

「これって本当に、捨てるしかないのかな?」
そんな小さな疑いから始まることも多い んです。
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声に触れて、世界を感じて。
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TRANSCRIPT
言葉の行間に、心をたどる。
小原
本日からよろしくお願いします。
望月・福田
よろしくお願いします!
小原
僕が「青葉薫」として連載している『種蒔く旅人Ⅱ~2040、未来の君へ~』は、福田さんが編集を務める『PATCH THE WORLD』で掲載されています。4月のスタートから半年、編集者としてどんなふうに感じていますか?
福田
いつも楽しく読ませていただいています。『PATCH THE WORLD』ではサーキュラーエコノミーやウェルビーイングなど大きなテーマを扱ってきましたが、小原さんの連載は一人の生活者の目線から環境を見つめていて、とても新鮮です。娘さんが登場する回も多く、子どもの純粋な眼差しや言葉に、つい忘れがちな視点を思い出させてもらっています。
都市鉱山をきっかけに、「捨てる」をもう一度考える (02:30~)
小原
『PATCH THE WORLD』を運営しているのは、望月さんが代表を務める株式会社萬年。2009年の創業以来、電子機器のリユース・リサイクル事業を展開されていますよね。
望月
はい。パソコンなどの電子機器を「お金をかけて捨てる」のではなく、リユースやリサイクルの価値を活かして買い取る事業をしています。処分したい人にとってはゴミでも、必要とする人にとっては資源。私たちはその橋渡しをしています。
先月、環境省と経産省から「小型家電リサイクル認定事業者」として認可を受けました。国の制度のもと、「お金をかけず、環境にも優しく処分できる」仕組みを広げています。
小原
その“小型家電リサイクル認定事業者”とは、具体的にどんなものなんでしょうか?
望月
国の法律に基づいて認可を受けた事業者のことです。小型家電には鉄やアルミ、銅、金、銀、パラジウムといったレアメタルが多く含まれていて、適切に処理すれば資源として再利用できます。
この制度は、そうした貴重な資源を専門知識を持つ業者が適正に回収・再資源化していくために設けられました。リユースする際のデータ消去も義務化されているので、個人情報の漏えいを心配せずに利用できます。
小原
日本は資源を海外に頼っている国でもあります。国内で再利用すれば、輸入依存を減らし経済循環を生むことができますね。
望月
おっしゃる通りです。地政学的なリスクで資源が“ツール”として使われる時代だからこそ、日本国内で廃棄物から資源を生み出す「都市鉱山」を活かすことが重要です。
小原
“都市鉱山”という言葉、ワクワクしますよね。先日、関西万博のサーキュラーエコノミー研究室を取材した際、小型家電リサイクル協会の方から「年間14万トンの回収目標に対し、実績は8.6万トン」と伺いました。さらなる普及が必要だと感じます。
望月
本当にそうです。今回ラジオに出演しているのも、『PATCH THE WORLD』を運営しているのも、その普及活動の一環です。まずは“知ってもらうこと”が第一歩。問題提起だけでなく、「日本にはこんな都市鉱山があるんだ」とワクワクしてもらえるよう伝えていきたいです。
小原
実際、いらなくなったスマホやパソコンの中にも資源が眠っている。情報発信で常識を変えていくことが大切だと感じられたきっかけは?
望月
僕自身の経験が大きいですね。入社前は環境問題に関心が薄かったんですが、事業を通して「使い終わったものが再び資源になる」仕組みを知り、当たり前が変わりました。点のような個人の行動も、つながれば面になり、ムーブメントになる。メディアを通じてその流れをつくりたいと思っています。
小原
事業を続ける中で、意識の変化を感じることはありますか?
望月
ありますね。SDGsやESGの浸透もあって、企業が「捨てた後どうなるか」に関心を持つようになりました。適正に処理している会社が“コストがかからない”だけでなく、“信頼される”存在になってきたと感じます。
小原
少しずつ循環が形になってきていますね。
“当たり前”を疑うところから始まる変化 (17:26〜)
小原
福田さんは大学時代、世界を60カ国旅されたそうですが、旅に出ようと思ったきっかけは?
福田
当たり前を疑いたかったんです。当時は就職活動が“当たり前”の空気で、狭い選択肢しかないことに違和感がありました。一歩外に出れば無数の選択肢があるはずだと思い、旅に出ました。
小原
印象に残った国は?
福田
ケニアのナイロビにある古着マーケットです。地面いっぱいにヨーロッパから送られた古着が積まれていて、想像と全く違いました。先進国が送り出しているものの現実を目の当たりにして、衝撃を受けました。
小原
世界を知ることで、自分の当たり前を見直す。まさに知ることが出発点ですね。
福田
はい。2020年に第一子が生まれたことも大きな転機でした。自然や食への意識が変わり、ちょうどその頃に兄から声をかけてもらったんです。子育てや旅の経験と仕事がつながる感覚がありました。
小原
そんなお二人とお送りしていくのが「渋谷のサーキュラーエコノミー企画室」です。
経産省の調査によると、サーキュラーエコノミーを「知っている」人は3割、「何をすればいいか分からない」人は8割以上。そこで改めて、福田さん、サーキュラーエコノミーとは?
福田
日本語で「循環経済」。リニアエコノミー(取って・作って・捨てる)から、資源を循環させ続ける仕組みへの転換です。リサイクルは“捨てる”前提ですが、サーキュラーエコノミーは“捨てない”が前提。修理したり、譲ったり、素材として再利用したり。昔の日本のように、ものを大切に使う知恵を現代の技術で再構築する考え方です。
小原
レンタルやシェアもその一部ですね。ゴミを減らし、経済を回す。脱炭素にもつながる取り組みです。
望月
そうですね。日本は資源が乏しい国なので、国内循環で経済を回すことが重要です。素材を戻す過程でもCO₂が出るので、できる限り“使い続ける”ことを優先したい。次世代が生きやすい社会をつくることが目標です。
小原
一方で、課題もありますよね。
望月
はい。製品の構造が複雑で分別にコストがかかること、そしてリサイクル材より新しい原料のほうが安いという経済性の問題。この価格差をどう乗り越えるかが課題です。
小原
分別も私たちユーザーが関われる部分です。行動ひとつで循環が生まれる。この番組でも、それを身近に感じてもらいたいですね。
望月
渋谷は人口も多く、企業や学校も集中しているので、パソコンやスマホなど電子機器の排出も多いですね。
福田
観光客やイベントも多いので、食品ロスなどの食関連のゴミも多いと思います。
小原
確かに。コーヒーかすだけでも全国で年間80万トン。美容室も多く、髪の毛の廃棄も年間1万トンと聞きます。渋谷だけでも相当な量でしょう。見方を変えれば、これも資源。身近なところに“都市鉱山”があるんです。
福田
集めたらすごい量になりそうですね。
“物語をまとわせる”循環へ。人とモノが生き続ける渋谷を目指して (34:41〜)
小原
電子機器以外でも、さまざまな取り組みがあります。最近印象的だった事例はありますか?
望月
東京オリンピックのメダルですね。全国から集めた小型家電の金属でつくられたんです。国民的イベントで資源循環を見せたことは印象的でした。
福田
オランダの「ジェラルド・ストリート」はサブスク型のヘッドホンを提供しています。壊れたら部品を交換し、使い終わったら返却。自社内で確実に循環させる仕組みが本当に画期的です。
小原
万博でも、解体を前提にしたパビリオン設計や素材のアップサイクルが進んでいます。ルクセンブルク館では幕素材をバッグに再利用し、「万博素材のバッグ」として限定販売したら完売。リサイクルでも“物語”があれば価値が生まれる。これからは“物語をどうまとわせるか”が鍵ですね。
望月
本当にそうです。大切なのは「自分ごと化」すること。課題を他人事ではなく身近に感じてもらう。そしてリスナーの皆さんの周りの気づきを共有してもらえたら、そこから新しい循環のアイデアが生まれると思います。
福田
私も同じで、「当たり前を疑う」ことが出発点だと思います。捨てるのが当たり前だと思っていたものを、「本当にゴミなのかな?」と考えてみる。そんな小さな視点の変化から、循環は始まる気がします。
小原
本当にそうですね。一人ひとりの視点や行動が、循環をつくっていく。
そして、この番組の最初の企画として、「渋谷のラジオ」を小型家電の回収拠点にすることを考えています。リスナーの皆さんが使わなくなったスマホなどをスタジオに持ってきてくれたら回収できるようにしたいんです。
福田
それ、すごくいいですね!
小原
「目指せ、110兆円の都市鉱山を渋谷から!」という気持ちで(笑)。では、持ってきてもらうならどんなものが対象ですか?
望月
スタジオのスペースを考えると、スマホやタブレット、ガラケーなど小型のものがいいですね。
小原
準備が整い次第、番組内でもお知らせします。渋谷は人や産業が集まる分、ゴミも多い。だからこそ“捨てることに躊躇しない社会”を変えていきたい。
「コーヒーかすは資源になる」と知れば、行動は変わります。モノだけでなく、人も“使い捨て”ではなく“もう一度生かす”社会へ。そんな優しい街を目指していきたいと思います。
望月・福田
よろしくお願いします!
連載
MORE STORIES
小原信治が紡ぐ、もうひとつの物語。

種蒔く旅人Ⅱ
~2040、未来の君へ~
文・写真 青葉薫
夕陽が海に沈む三浦半島・秋谷。15年前に都会を離れ、この海辺のまちで「食べるものを育てる」暮らしを手に入れた。
朝は産み落とされたばかりの鶏卵を炊き立ての白米にかけ、夜は目の前の海で採れた魚と自分たちで育てた野菜で晩酌を楽しむ。心はいつも凪いでいる。
だが今、気候危機という現実が、この美しい日常に影を落とす。2040年、娘が大人になる頃の世界はどうなっているのか。
この海辺のまちで生まれた我が子に何を残せるのか。未来への「希望の種」を探す新たな旅が始まる。旅するように暮らす、この町で。




































“捨てる”ことが当たり前になってしまった社会では、
人までもが使い捨てのように扱われてしまうことがある。
でも、サーキュラーエコノミーを進めていくことで、
人にもやさしい街へと変わっていけるのではないでしょうか。