生ごみリサイクル率、驚異の95%に到達。韓国の食品ロス対策とは

「脱・食品ロス」へのパイオニアとなった韓国

現在、世界では年間約13億トンもの大量の食品が廃棄されています。これは、生産された食料の約3分の1を廃棄しているということです。

日本国内における食品ロスの量は年間523万トンに及び、1人当たり毎日おにぎり(114g)を1つ捨てていることになります。

このように大量の食料が捨てられることによって、焼却の際のCO2排出や焼却後の灰の埋め立てによる環境負荷など、環境面でも多くの問題が引き起こされています。腐った食品からは地球温暖化の原因となるメタンガスが発生するため、食料廃棄物は地球温暖化の最大の原因の一つとしても認識されています。

このように「食品ロス」「食料廃棄物」が世界規模で社会問題となっている中、お隣の韓国では生ごみのリサイクル率がなんと95%を超えています。これは、達成できる最高値と考えられており、並大抵の努力ではないと言えるでしょう。しかし、以前は韓国でも、食品廃棄物は深刻な社会問題となっており、埋立地の不足や埋立地の近隣住民への悪臭などが問題視されていました。

このような問題に対して、韓国はどのような対策を講じたのでしょうか。食品廃棄大国から食品リサイクル大国へと変貌した韓国の食品ロス対策を見ていきます。

韓国の食品ロス対策とは

1997年までの韓国では、食品廃棄物のほとんどは埋立地で処理されていました。しかし、廃棄物の埋立地の確保が次第に難しくなったことや、埋立地の近隣住民からの悪臭への苦情及び強い抗議があったことで、状況が一変します。

1997年、韓国政府は廃棄物管理法を改正し、生ごみを分別しリサイクルする法律を制定。2005年には、生ごみ直接埋立禁止法が制定され、食品廃棄物を埋め立てることを禁止。この結果、韓国では生ごみのリサイクルが急速に進み、ソウルではリサイクル率が2006 年から 3年連続 100% を達成しました。食品廃棄物の処理の8割以上を占めていた埋め立てを禁止したことによって、生ごみのリサイクル率が大きく向上したのです。

さらに、2013年には食品廃棄物に含まれる水分を海に流すことを禁止すると同時に、コンポストを義務化しました。住民は、スーパーやコンビニで専用の黄色い生分解性の袋を購入し、その中に食品廃棄物を入れてゴミに出す必要があります。集合住宅では、施設内に設けられている専用のごみ箱に生ごみを直接捨てる場合もあります。廃棄の際は、個人カードを読み取り、ごみの量に応じた料金を支払うという仕組みです。

また、飲食店では食品廃棄20リットルごとに2800ウォン(約320円)を支払う必要があります。従量課金制度であるため、事業者は手数料を減らすために生ごみの水分を抜くなどの工夫をしています。これにより、生ごみの減量だけでなく、処理の際のエネルギー消費の削減にもつながっています。ごみの減量を実行していない事業者には罰金を課す場合もあるなど、徹底して生ごみの削減を実行しているのが特徴です。

成果の一方、課題も残る

世界から注目を集める韓国の食料リサイクルシステムですが、課題も山積しています。

最大の問題は、食料リサイクル率向上の一方、生ごみの量は依然として多いことです。そのため、リサイクルして作られる堆肥と飼料が過剰に生産され、リサイクルで生まれた動物用飼料の2~3割が使われていないという報告もあります。また、生ごみをリサイクルして作られる飼料の品質も問題視されています。2005年の「生ごみ直接埋立禁止法」の施行後、生ごみ処理施設が乱立したことで業者間の価格競争が起こり、処理費用の低下から製品の品質が低下しているということです。さらには、生ごみ処理施設の財政状況にも問題があります。処理施設のうち実際に利益をあげているのはごく一部で、多くの施設での財政状況は苦しいのが現状です。つまり、このシステムが長期的に持続可能かどうかの疑問が残ります。

このように、いくつかの課題が残っているとはいえ、中国やデンマークの役人が韓国のゴミ処理施設を訪問するなど、その先進的な取り組みは他国のお手本的存在となっています。住民のデモ活動から始まった政策によって、生ごみリサイクル率を驚異的に向上させた韓国。その取り組みに、日本や世界の国々も学べることがあるのではないでしょうか。

参考記事

政府広報オンライン
環境省 参考資料2
日本と韓国における生ごみリサイクルに対する住民意識の比較研究
The New York Times |How South Korea Puts Its Food Scraps to Good 

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k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定概念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。