役目を終えた花に、もう一度出番を。札幌発“フラワーロスゼロ”の挑戦

イベントで使われる装花は、これまで“使い捨て”が前提だった。まだ美しい花に、もう一度役目を──札幌の「Loss Flower Zero Project」は、回収した花を病院や保育施設へ贈り直す取り組みだ。イベントで生まれた彩りを街へと広げる、この新たな循環モデルの意義を見つめていく。

イベントが生むフラワーロスという課題

展示会やフォーラム、式典など、人が集まる場には必ずと言っていいほど装花が置かれている。空間をやわらかく整え、来場者を迎えるための大切な存在だ。しかし、その役割は多くの場合、1日から数時間で終わる。イベントの撤収と同時に、まだ元気に咲いている花までもが大量に廃棄されてしまう。この“見えにくいロス”こそ、フラワーロスと呼ばれる問題だ。

花の廃棄は、実はフードロスと同様に構造的な課題を内包している。イベントでは撤収時間が決められていることが多く、装飾の解体・撤去作業はスピードが優先される。「再利用の仕組みがない」「持ち帰る人手がいない」という理由から、“捨てる”ことが最も簡単で確実な選択肢として処理されてきた。フラワーロスは、誰かが悪意をもって生み出したわけではなく、長年の慣習とオペレーションの中で固定化されてしまったものだ。

札幌は観光・国際会議の開催地として、年間を通じて多くのイベントが開かれる都市であり、そのぶん廃棄される花の量も決して小さくなかった。花の生産者、フローリスト、イベント主催者。それぞれが「本当は捨てたくない」と感じていても、代替する仕組みがなければ変化は起きない。そこに風穴を開けたのが、「Loss Flower Zero Project」である。


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札幌から始まった「Loss Flower Zero Project」の仕組み

Loss Flower Zero Projectは、ビジネスイベントで使用した装花を廃棄せず、次の活躍の場へ届けることを目的とした取り組みとして始まった。イベント終了後、撤収のタイミングで花を回収し、状態に応じて整え直す。その花は翌日の別会場や、市内の病院・保育施設などへ届けられ、再び人を迎える存在として活かされている。

短時間で役割を終えるはずだった花が、街の中を移動し、さまざまな場所でその美しさを発揮する。病院の待合室では空間を和らげ、保育施設では子どもたちの興味や会話のきっかけにもなる。
廃棄されるはずだった花が、人の集う別の場所で新たな役割を果たすことは、イベント主催者にとっても大きな価値となる。使用した花が有効に活用されることで、イベント自体の社会的意義が広がる。

札幌コンベンションビューローは、こうした取り組みを通じ、ビジネスイベントの開催地としての持続可能性を高める姿勢を示している。都市としての取り組みが可視化されることで、札幌の魅力や信頼性がさらに高まる可能性もある。


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花にもう一度役目を与える文化を育てる

Loss Flower Zero Projectが示しているのは、装花を再利用するという技術的な話だけではない。花を捨てずに次の場へつなぐという、都市に根づいていく新しい文化の芽でもある。

役目を終えた花が、街のどこかで再び誰かの目に触れる。その循環は、資源を大切にする意識を育てると同時に、地域の風景にも小さな変化をもたらす。待合室で不安を抱える人の心を和らげたり、保育施設で子どもたちが季節を感じたり、花が運ぶやわらかな力が、まちの中に自然と広がっていく。

取り組みは継続が予定されており、花の再配置は札幌における“当たり前の選択肢”へと育ちつつある。フラワーロスを削減するだけでなく、日常のさまざまな場所に彩りを届けるこのプロジェクトは、装花の役割を見つめ直し、花をどのように活かすかを考えるきっかけにもなる。

花がもう一度出番を得るとき、街には小さな温かさが生まれる。Loss Flower Zero Project は、その価値を丁寧に示す取り組みとして、札幌から静かに広がり始めている。

Edited by k.fukuda

参考サイト

Loss Flower Zero Project|札幌コンベンションビューロー

About the Writer
Kie Fukuda

k.fukuda

大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。この人が書いた記事の一覧

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