家庭菜園から地域コミュニティへ。ポラスの「食べられる景観」構想

ポラスが新しい分譲地で掲げるコンセプト「食べられる景観」は、家庭菜園や緑に囲まれた小道、広場を軸とし、人々の交流と地域の絆が育まれるまちを描く。広場やコミュニティガーデンが人と人、自然をつなぎ、住民同士が関わり合える仕組みとなっている。本記事では、持続可能性とウェルビーイングにつながるまちづくりの形を紹介する。

家庭菜園からはじまる「食べられる景観」

ポラスグループが埼玉県北本市で展開する「KITAMOTO SIGNATURE EDIBLE LANDSCAPE」は、食べられる景観(エディブル・ランドスケープ)をコンセプトにした分譲地開発である。北本市本町三丁目自治会と早稲田大学との産学民連携により、全22棟の新しいまちづくりが実践されている。

食べられる景観とは、野菜や果樹、ハーブなど食用植物を景観デザインに取り入れる手法だ。この概念を提唱したアメリカの園芸研究家ロザリンド・クリーシーは、1982年の著書で「食卓においしく健康的なものを運び、水や土、エネルギーの消費を抑えながら、食べられる植物を用いて美しく計画された景観をつくること」と定義している。

この分譲地では、各住戸に家庭菜園スペース(ポタジェ)や花壇、雨水タンクを設置。外構には実のなる樹木やフラワーベンチを配し、食べられる植物が景観の一部となって緑豊かな住宅街を演出する。

さらに分譲地中央には動線となる小道「PATH(パス)」と公園「PLAZA(プラザ)」を整備。隣接する自治会管理地は、既存住民と新住民が共に活動できるスペース「AMU(編む)」として活用され、住民が自然に関わり合える環境が創出されている。

食べられる景観は、単なる緑化にとどまらない。植物を通じて人と環境の関わりを深め、ウェルビーイングを高める効果がある。収穫の喜びや季節の移ろいを感じられるだけでなく、住民同士が野菜や果実を育て、分け合うことで世代を超えた交流が生まれる。共同作業の場は、孤立の防止や地域福祉の向上にも寄与するだろう。

また環境面でも、街中の緑化や雨水の浸透促進は生態系の回復に役立ち、ヒートアイランド現象の緩和や防災にも貢献する。人と自然、人と人とをつなぐ「食べられる景観」は、サステナブルでウェルビーイングなまちづくりの基盤となる。


耕作放棄地が、子どもたちの秘密基地に。

共有スペースと地域連携が生むコミュニティ

現代の郊外住宅地では、持続可能なコミュニティづくりが大きな課題となっている。

戦後の住宅不足を背景に効率性を優先して整備された郊外では、同世代・同職種の住民が集まり画一的なまちが形成された。その結果、住民の高齢化や空き家の増加、地域のつながりの希薄化といった問題が顕在化している。

さらに、地球環境問題や多文化共生、少子高齢化への対応も求められ、コロナ禍以降のテレワーク普及による働き方や暮らし方の多様化にも、従来型の住宅地では十分対応できていない。

こうした課題に対し、ポラスの分譲地では共有スペースを通じて人と人が出会い、関わり合う仕組みをつくっている。分譲地中央に配置した歩行者専用の小道の先に開放的な公園を配置し、人々が気軽に立ち寄れる場としている。通学路に面しているため、子どもたちの交流の場にもなる。

さらに、隣接地にある自治会管理の空き地を再利用し、ユーティリティースペースを整備した。コミュニティガーデンとして住民が協働で野菜や果樹を育てるほか、収穫祭やマルシェなどのイベントを通して世代や背景の異なる人々が自然につながる場となっている。

農家や大学と連携し、栽培方法や地域資源の活用法などの知識を共有する計画もあり、住民が主体的にまちづくりに関わり、学び合う文化が根づいていくことが期待される。

共有スペースは「育てる」「学ぶ」「つながる」を実現する社会的基盤であり、持続可能な形でまちを再生していく鍵となる。



住宅開発からまちづくりへ広がる可能性

近年の住宅開発は、単に「住む場所の提供」から「暮らし方の提案」へと変化している。ポラスの事業はその代表例であり、居住者が人や自然とつながりをもって暮らす仕組みをつくり出している。こうした取り組みは、画一的な分譲地開発では得られなかった地域の活力を再生する試みといえる。

共有菜園やオープンスペースを住民が主体的に活用することで、日常的な交流のきっかけが生まれる。顔見知りが増えることで地域の見守り意識が高まり、子どもや高齢者の安全確保にもつながる。また活動を通じて地域全体の利益を考える意識が育ち、自治会の担い手不足の解消にも寄与する可能性がある。

さらに、大学や行政、地元企業との連携によって、住民が知識を共有しながらまちづくりに関わる体制が整いつつある。農家からは栽培技術を、大学からは環境デザインや地域研究の知見を、行政からは制度面での支援を得ることで、多層的な学びと協働の場が生まれている。こうした連携は、住民が受け身ではなく、主体的にまちの未来を考え、行動する文化を育んでいく。

このような動きは、かつて理想とされた「田園都市」モデルを現代の視点で再構築するものであり、郊外の既存住宅地を再生する新たな方向性を示している。緑と食、そして人のつながりを軸にした住宅開発を起点に、持続可能で心豊かな地域社会を育てる試みは、これからのサステナブルな都市・地域づくりのモデルケースとなるだろう。

Edited by k.fukuda

参考サイト

早稲田大学、北本市本町三丁目自治会との産学民連携プロジェクト「KITAMOTO SIGNATURE EDIBLE LANDSCAPE」(全22棟)を開発|PR TIMES(ポラスグループ)
都市におけるエディブル・ランドスケープ(食べられる景観)の意味と役割について|日本都市計画学会
地域再生におけるエディブル・ランドスケープの役割とその可能性|日本都市計画学会 都市計画報告集(関西支部)
都市緑地としての都市”農地”-ランドスケープ・アーキテクチャーの視点から|都市農地とまちづくり(一般財団法人都市農地活用支援センター)
Pamphlet_Interknitted Town

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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