リチウムイオン電池は持続可能か?危険性とリサイクルの現状

資源の有効活用や自然破壊抑制など、多くの利点を持つ蓄電池。中でもリチウムイオン電池は、小型で軽量といった特性から利用分野が広がっている。一方で、発火や破裂といった事故も増えており、安全面での課題が浮き彫りになっている。

本記事では、リチウムイオン電池の危険性とその予防策について解説する。

持続可能な社会に役立つリチウムイオン電池

小型で軽量な特徴から、リチウムイオン電池はさまざまな電子機器で利用されている。しかし、不適切な取り扱いによる火災が増加しており、日常生活のさまざまな場面で発生している。近年では公共交通機関内での事故も報告され、安全な取り扱いへの意識が一層求められている。

そんなリチウムイオン電池のメリットと現状について解説する。

リチウムイオン電池のメリット

リチウムイオン電池は、充電することで繰り返し使える蓄電池の一種。使い切りの「一次電池」に対して、「(小型)二次電池」に分類される。

蓄電池とは、電気エネルギーを蓄えて必要な時に電気として取り出すことができる装置。中でもリチウムイオン電池の特徴は、エネルギー密度が高いこと。急速な充放電が可能な上、「耐久性が高い」「大容量化できる」などメリットは多彩だ。

充電器の使用により、約500〜4000サイクル繰り返し使えることにもメリットがある。その分、ごみの排出量を抑え、資源の有効活用にもつながる。持続可能な社会の実現にも貢献する。

リチウムイオン電池市場

リチウムイオン電池は、スマートフォンなどの電子機器に加えて、電気自動車などのモビリティ分野、インフラ設備や産業用機器など幅広い分野で活用されるようになっている。

経済産業省の資料では、蓄電池の世界市場は2030年には40兆円(2019年の8倍)、2050年には100兆円(同20倍)になると報告している。(注1

出典:経済産業省「蓄電池産業戦略(案)

リチウムイオン電池の危険性

多彩なメリットを持つリチウムイオン電池だが、その一方で危険も伴っている。詳しく見てみよう。

温度変化に弱い

リチウムイオン電池は高温でも低温でも性能が低下する。特に高温では電池が膨張したり、化学反応が加速することで性能が劣化。最悪の場合は、発火や破裂が起こる危険もある。

劣化しやすい

リチウムイオン電池には、さまざまな劣化メカニズムが報告されている。代表的なのが時間によって劣化が進む「経時劣化」と、過放電や過充電による「通電劣化」だ。「通電劣化」は取り扱いにより、抑制できるとされる。

発火の危険がある

夏に事故が多いのは高温が原因とされる。リチウムイオン電池は高温環境に弱く、特に40℃を超えると劣化や化学反応が進み、発火や破裂の危険性が高まる。

また、熱がこもった環境下でも発火や破裂の危険度が高まる。車内やカバン内での事故はこれによって引き起こされることが多い。

ほかにも「膨張したバッテリーを無理に取り外した」「非純正の電源に接続した」「落下時にショートした」などで発火したケースもある。

製品の安全性を評価するnite(独立行政法人製品評価技術基盤機構)では、2020 年から 2024 年までに1860件の「リチウムイオン電池搭載製品」の事故が報告されたと発表している。(注2

また東京都に限られるが、東京消防庁では2014年の19件から、2023年は169件と約8.7倍に増えていることも発表している。(注3

誤った取り扱いでトラブルに

これまで解説したように、リチウムイオン電池の取り扱いには注意が必要だ。以下は正しい取り扱い方だ。

・正しい充電器を使う
・長時間使用しない場合は機器から外す
・乳幼児やペットのそばに放置しない
・液もれしたら火気から遠ざける、など

また、ごみ収集車やリサイクル工場などで発火や破裂した例もあり、正しい処分の仕方を把握しておくことも重要だ。

リチウムイオン電池のリサイクル

リチウムイオン電池を安全に処分するには、正しくリサイクルすることに他ならない。具体的なリサイクル方法について解説していく。

リサイクルの対象

小型二次電池は、「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」において製造・輸入事業者が自主回収して再資源化(リサイクル)することが義務付けられている。

具体的な小型二次電池使用製品は、以下のようなものが挙げられる。

・電源装置(モバイルバッテリー等)
・パソコン
・電動自転車
・コードレスホン
・電動カミソリ
・電気歯ブラシ
・携帯電話用装置
・血圧計、など

回収・リサイクルが必要な電池には、以下のような「スリーアローマーク」と電池の種類を表す英文字が記載されたリサイクルマークが組み合わされて表示されている。

出典:経済産業省「3R政策

なお「小型制御弁式鉛蓄電池」の回収は専門業者に依頼するのが一般的だ。

リサイクルの代表的な流れ

使用済みのリチウムイオン電池は、小型充電式電池の回収・リサイクルを行っている一般社団法人JBRCなどが回収し、リサイクル施設に運ばれる。施設では高温処理によって金属とその他の物質に分離され、酸浸出などの工程を経てコバルト、鉄、アルミ、銅、ニッケルなどの金属が回収されるのが代表的な流れである。

回収金属は再資源化され、ニカド電池やステンレス製品、耐熱合金などに再利用される。


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リサイクルの窓口

リチウムイオン電池の回収方法は、自治体によって以下のような方法がある。

・自治体が回収
・リサイクルを行う団体や企業が回収
・携帯電話キャリアやメーカーなどが回収
・家電量販店やホームセンターなどが回収、など

総務省の調査によると、リチウムイオン電池などの定日回収を行っている自治体は有効回答を得られた1557市区町村のうち766市区町村となっている。詳細に分けると、「危険ごみなど」が21.5%、「電池ごみ」が12.3%、「不燃ごみ」が8.7%だ。(注4

また、自治体の協力のもと、一般社団法人JBRCの回収ボックスにて回収される例もある。協力自治体は、2025年1月31日時点で711市区町村だ。(注5

安全に処分するポイント

リチウムイオン電池を処分する際は、以下のような安全への配慮が必要だ。

・ビニールテープなどで絶縁処理を行う
・他のごみと混ぜない
・解体しない
・電力を使い切る
・液もれや膨張している場合は自治体の窓口に相談する、など

これらを怠ると、ごみの回収中などに発火や破裂する危険が高まる。


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リチウムイオン電池のリサイクルの現状と課題

世界の多くの国でリチウムイオン電池は埋め立て処分されており、世界全体のリサイクル率は5%程度とされる。(注6

日本では小型二次電池のリサイクルプロセスが確立されているので、前述した正しい方法でリサイクルをすることが重要だ。

なお、一般社団法人JBRCの資料によると、1741の自治体のうち登録自治体(711)と協力店が存在する登録協力自治体(1141)の合計は1312市区町村(2025年1月31日時点)。自治体カバー数は75%で、人口カバー率は97%となっている。

このように自治体数・排出拠点数の増加により自治体での回収量は増え続けているが、小型二次電池全体の回収量は減少傾向にある。経済産業省の資料によると2023年は2412トンで前年より100トン以上減少。リチウムイオン電池も横ばい状態にあると言える。

出典:経済産業省「3R政策

また、国立環境研究所とみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の資料によると、リチウムイオン電池排出量の14%が回収システムによって回収されていると推計している。(注7

回収率が14%とすると、回収量および回収率を上げる余地はまだまだある。身近になったリチウムイオン電池を正しくリサイクルして、サステナブル社会の実現に貢献したい。

まとめ

便利で使い勝手の良さから、広く使用されるようになったリチウムイオン電池。同時に廃棄される量も増えると想定されており、適切な方法で処分することが気候変動地球温暖化の抑制につながることも意識したい。

また、リチウムイオン電池に使用されるコバルトは、2024年時点でその約76%がコンゴ民主共和国で産出されている(注8)。同国では一部の小規模な採掘活動が貧困や汚職と結びついており、人権問題や児童労働の懸念も指摘されている。

リチウムイオン電池のある便利で持続可能な暮らしは、このような課題の上で成り立っていることも忘れてはならない。


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Edited by c.lin

注解

注1 経済産業省「蓄電池産業戦略(案)」による。
注2 nite「リチウムイオン電池搭載製品の火災事故を防ぐ3つのポイント」(2024年7月)による。
注3 東京消防庁公式サイト「リチウムイオン電池搭載製品の出火危険」(令和5年版)による。
注4 総務省「リチウムイオン電池等及びその使用製品の 回収・処分の実施状況に関する調査」(令和7年6月)による。
注5 一般社団法人JBRC「リチウムイオン蓄電池等の自治体からの 回収状況について」(2025年2月21日公表)による。
注6 学術論文 Progress, Challenges and Opportunities in Recycling of Li-ion Batteries (MDPI, 2025) によれば、世界全体でのリチウムイオン電池の回収率は現状非常に低く、5%未満と見積もられている。
注7 国立環境研究所・みずほリサーチ&テクノロジーズ「小型リチウムイオン電池の排出量推計と排出後フローの分析」(2024年)によれば、2020年度の小型リチウムイオン電池の排出量約8,162トンに対し、既存の回収システム(JBRC、PC3R、MRN、小型家電認定事業者等)を通じて回収されている量は約1,152トンであり、全体の約14%が回収されていると推計されている。
注8 ジェトロ「2024年にコンゴ民主共和国でコバルトの世界生産量の76%採掘、供給過剰で価格下落」(2025年6月)を参照。

About the Writer
倉岡

倉岡 広之明

雑誌記者として活動した後、フリーライターとして独立。さまざまなジャンルの記事を執筆しているが、北海道で生まれ育ったこともあり、自然環境や気候変動、SDGs、エネルギー問題への関心が深い。現在は、住宅やまちづくり、社会問題、教育、近代史など、多岐にわたるテーマを手がけている。
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