整形したい子どもたち。SNSが植え付けるルッキズムの価値観

「整形したい小中学生」──SNSが植え付ける“見た目偏重”の価値観

外見によって人間の価値を評価したり、見た目で他人を批評したりするルッキズム。過度なルッキズムが若い世代に及ぼす影響が心配されている。

自分のコンプレックスを解消する手段として美容整形を選ぶ若い世代が急増しているが、子どもの整形手術には大きなリスクを伴う場合もある。

この記事では特に10代に焦点をあて、ルッキズムに囚われてしまう理由と弊害、子ども達を守るために大人ができることについて紹介する。

ルッキズムに囚われる小中学生

消費者庁の令和4年版消費者白書(*1)によると、美容のためにお金や時間をかけたいかを尋ねる質問に対し「お金をかけたい」と回答した割合は、15〜19歳の女性で89.0%にのぼった。

その理由については、「自分に自信を持ちたい」が最上位で41.9%、「コンプレックスを解消したい」が41.6%であった。

さらに同調査で、過去1年以内に1回以上美容医療を利用した人の割合は、女性全体では11.2%であるのに対し15~19歳にしぼると17.3%、20代は25.6%と若い世代の美容医療の利用率が高くなっている。

また大手美容外科が、来院した10代女性を対象にしたアンケートの結果(*2)では、91.8%が「美容整形したい」と回答。全員(100%)が「美容整形に賛成」するなど、美容整形に対する肯定的な価値観が表れた。

2015年からの6年間で、同美容外科に来院した10代の患者数は約4倍に増加し、目元の整形をした10代患者件数は約38.5倍となっている。

10代の子ども達にとって自分の外見は大きな問題であり、美容のための整形は理想の自分に近づくための身近な手段となりつつあるようだ。

SNSが助長するルッキズム

「整形したい小中学生」──SNSが植え付ける“見た目偏重”の価値観

容姿に関する価値観に大きな影響を与えているのが、SNSの普及である。プラン ・ユースグループが実施した調査(*3)によると自分の容姿に関心を持ったきっかけを尋ねた質問の回答として、全体では「友人との会話」が52.0%、「SNS」が51.5%と高い割合となった。

回答者を女性に限ると「SNS」は56.2%で、「友人との会話」の52.3%よりも高い割合を示している。

若い世代はSNSを通じて、キラキラした投稿や理想的な容姿のインフルエンサーの動画などに日常的に触れている。投稿が加工されたものであっても現実と見分けがつかず、高い理想のイメージが創り上げられてしまう。

特に思春期の子ども達は、自分の容姿が他人からどう見えるかを気にし始める時期であり、高い理想像と自分を比較する中で「自分はダメだ」と劣等感を抱きやすい。

さらに昨今の日本では、SNSやテレビ、電車の中などに美容クリニックの広告があふれている。気になるパーツを手軽に改善できると感じさせる内容と、制服姿のモデルが学割をうたう宣伝に繰り返し触れることで、整形へのハードルが下がっている可能性がある。

こうした状況のなか、容姿がすべてという価値観が形成され、自己否定につながるケースも少なくない。SNSが生む美のプレッシャーは、現代の若者にとって見逃せない社会的課題となっている。

追い詰められる子どもの心

心身ともに大きく成長する思春期は「自分とは何か」を模索し始める重要な時期だが、ルッキズムは健全な成長を妨げる要因となり得る。

発達心理学的に見ると、小学校高学年から中学生にかけての時期は、他者と自分を比較して、劣等感や自己嫌悪が芽生えやすくなる。

このような感情は成長過程に不可欠なプロセスであり、他者との違いに悩む経験を通して、他者の苦しみに共感できる想像力や共感力が育まれていく。

しかし外見偏重のルッキズムは、自己肯定感を著しく低下させ、人との関わりを避けたり、自分の可能性を信じられなくなったりする原因になり得る。

外見への過剰な評価が、自分らしさよりも他人の基準を優先する価値観を生み、夢や目標を見失ってしまう危険性をはらんでいる。

自身の外見が評価されるリスクを恐れ、学校で自分らしく過ごせなかったり、外出できなくなったりと、日常生活に支障をきたしてしまう場合もある。

さらに「もっと可愛くなりたい」「もっと痩せたい」という願望が過度に強まると、摂食障害や醜形恐怖症といった心身の不調を引き起こしかねない。

子ども達が「ありのままの自分」に自信を持ち、個性を尊重され、のびのびと成長できる環境づくりが、今こそ求められている。

子どもの美容整形のリスク

子どもの美容整形には心身への影響や将来へのリスクも伴うため、一層注意が必要だ。以下に、子どもが美容整形を受ける際の注意点を整理する。

  • 合併症・後遺症の可能性: 美容整形は医療行為であり、感染症、出血、傷跡、麻酔の副作用など、他の手術と同様にリスクがある。
  • 機能障害のリスク: 例えば二重手術でまぶたが開きすぎると「兎眼(とがん)」という症状が生じて目が閉じにくくなり角膜に傷がつくこともある。
  • 経年変化: 若いうちに整形しても、年齢を重ねることで形が崩れたり、他の部位とバランスが取れなくなることがある。
  • 価値観の変化: 社会全体の美的価値観は変化するものであり、今の理想の顔が、将来も本人にとって理想とは限らない。
  • 理想とのギャップ: SNSなどの影響により理想が高すぎ、思っていた通りの顔にならないという不満足結果が起こりやすい。
  • 法的な説明不足: 16歳以上には、インフォームド・コンセント(患者本人に十分説明し、納得した上で同意を得ること)が医療法で定められているが、15歳未満の患者に対しては義務付けされていない。保護者にだけ説明し、子どもが理解していないまま手術に進む場合もある。

美容整形は安易に決断すべきものではなく、冷静にリスクを見極めたうえで、本当に今必要なのかを慎重に考えることが重要だ。親子でよく話し合い、将来を見据えた判断をすべきだろう。

子どもをルッキズムから守るには

「整形したい小中学生」──SNSが植え付ける“見た目偏重”の価値観

ルッキズムから子どもを守るためには、家族をはじめ、身近な大人の関わり方が重要である。ここでは、大人が心がけるべきポイントを紹介する。

まず、大人が安易に外見について比較したり、評価したりするのは避けるべきだ。見た目ではなく、挨拶ができる、言葉遣いが丁寧、よく気が付く、誰にでも優しいなど、行動や内面の魅力を言葉で伝えることが、外見だけに囚われない価値観を育む。

また、人の魅力の多様性を伝えることも重要だ。異なる年齢層の人との触れ合いや異文化交流、旅行やイベントなどを通じ、実体験を積み視野を広げることで、自分自身を客観視できるようになる。

もちろん、情報リテラシー教育は欠かせない。インターネットやSNS、メディアの情報は正しいとは限らないことを知り、情報をうのみにせず自分自身の価値観を持つことで、ルッキズムから距離をおくことができる。

そして何よりも、親が子どもの悩みに対して共感することが大切だ。答えを出すことよりも、子どもの苦しさや辛さに寄り添って一緒に考えようとする姿勢が、子どもの安心感につながる。

思春期の子どもは反発してくるかもしれないが、その反応にも子どもの気持ちを理解するヒントが隠されている可能性がある。困った時はいつでも共感して一緒に考えてくれるという親の何気ない関わりが、子どもの心を救う鍵となる。

まとめ

長い人生のなかで10代は、多感で柔軟な心によって多くを吸収し、悩みや喜びなどを通してその人らしさが形作られる大切な時期だ。10代の貴重な時間をルッキズムによる悩みが占めてしまっては、後悔してもしきれないだろう。

他人からの評価は自信につながることもあるが、自分の評価を他人に委ね続けていては、自分の気持ちを見失いかねない。10代の子ども達には、他人の意見に惑わされず、自分の魅力を知り、将来に希望をもって前向きに過ごしてほしい。

また、大人がルッキズムに囚われていれば子どもに影響が及びかねない。見た目で判断せず、お互いの個性と多様性を認め合うことの大切さについて、大人も再確認したい。

注解・参考サイト

注解
*1 令和4年版消費者白書
*2 アンケートの結果
*3 プラン ・ユースグループが実施した調査

参考サイト
子どもに「美容整形したい」と言われたら
夢もない、個性もない、他人から必要とされていない―18歳意識調査 : 自己肯定感の低い日本の若者 | nippon.com

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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