アース・オーバーシュート・デーとは
アース・オーバーシュート・デー(Earth Overshoot Day)とは、人類が地球の資源を使い切る日付を表した指標である。
オーバーシュートとは、英語で行き過ぎる・通り越すという意味だ。アース・オーバーシュート・デーは、地球が1年間で生産できる自然資源を全人類が年初から使い始めたとする場合に、全て使い果たしてしまう日を示している。
その日が12月31日に近ければ近いほど持続可能性は高く、前倒しされれば持続可能性が低くなる。1971年は12月25日を記録していたが、その後50年間でアース・オーバーシュート・デーは徐々に早まり、2024年は8月1日であった。地球の生態系が1年間に生産できる自然資源を、人類は1月1日から使い始めて8月1日には使い果たしてしまうということだ。
つまり、8月2日以降は地球の再生産能力を超えて消費している状態で、人類は1年間で地球1.7個分の資源を消費している計算となる。
50年以上にわたる生物資源上の赤字は、地球上の自然資本に負荷をかけ、耕作地の生産性の低下、漁場資源の枯渇、生物多様性の損失、地球温暖化などの問題につながっている。
アース・オーバーシュート・デーの算定

アース・オーバーシュート・デーは、国際環境シンクタンクであるグローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network)が毎年公表している。
計算方法は下記の通りである。
アース・オーバーシュート・デーまでの日数=(地球のバイオキャパシティ÷人類のエコロジカルフットプリント)×365
算出された日数を、1月1日を起点としてカレンダー上に反映した日にちが、アース・オーバーシュート・デーとなる。
計算に使用する数値は、国連の統計データによる最新版の国別フットプリントとバイオキャパシティ勘定(NFA)をもととしている。国連の統計データは通常3〜4年遅れて公表されるため、アース・オーバーシュート・デーの算定に用いられるのは、数年前の値からトレンドを導き出して推計した値である。計算に使用される「バイオキャパシティ」と「エコロジカルフットプリント」について、下記に解説する。
バイオキャパシティ
バイオキャパシティとは、地球上の生態系が本来もつ生物資源再生能力のことである。
2023年の値を用いると、地球上の生物生産可能面積は122億haで人口は81億人だったことから、地球上の1人当たりの生物生産可能面積は1.5gha(グローバルヘクタール)となる。それには、森林、農地、漁場、牧草地のほか、都市などの生産阻害地が含まれる。
バイオキャパシティの単位は、gha(グローバルヘクタール)であり、世界の平均的な生産能力をもつ土地面積1haを1ghaとしている。例えば、生物生産力が低い牧草地は1haで0.49ghaとなり、生物生産力が高い農耕地は1haで2.21ghaとなる。
バイオキャパシティの把握により、経済活動を左右する生物資源の量と経済活動の許容範囲を数値として知ることができる。また、国や地域の生物生産能力を比較したり、マッピングしたりすることも可能となる。日本はバイオキャパシティが低く、食糧やエネルギー資源を他国から輸入しており、海外の生態系サービスにも影響を与えている。
地球上の生態系と人間社会を持続可能なものとするためには、バイオキャパシティを意識することが重要だ。
エコロジカルフットプリント
エコロジカルフットプリントとは、人の暮らしや経済活動が環境に与える影響の度合いを表す指標であり、グローバルヘクタール(gha)という単位で表される。
具体的には、需要を満たすための食料生産・繊維生産・木材再生・インフラ建設などに要する土地と、化石燃料の燃焼によるCO2の吸収に必要な土地の面積の合計した値だ。
また、国としてのエコロジカルフットプリントを求める場合、その国の生産量に輸入量を加え、輸出量を差し引いて算出する。なお、高所得国の1人あたりのエコロジカルフットプリントは、低所得国の3〜4.5倍となっている。
日本国内のエコロジカルフットプリントはバイオキャパシティに比べて大きい特徴があり、CO2を吸収するのに必要な土地面積の割合が65%を占めている。したがって、国内のエコロジカルフットプリントを低減するためには、カーボンニュートラルの取組が有効だ。
エコロジカルフットプリントは、環境への負荷を比較するために便利な指標であり、負荷を削減する手段を見極める際にも役立つものである。
日本のアース・オーバーシュート・デー
国別にアース・オーバーシュート・デーを計算すると、日本について2024年では1月1日から137日目にあたる5月16日であった。
日本のエコロジカルフットプリントを適用した場合、世界のバイオキャパシティをこの日までに使い果たし、その後大晦日までは再生産されない資源を切り崩すことになるのである。世界中の人が日本人と同じ暮らしをする場合、地球約2.7個分のバイオキャパシティが必要だ。
仮に日本のバイオキャパシティだけで経済と暮らしを回す場合は、1月1日から56日目にあたる2月25日がオーバーシュート・デーとなる(2022年の値で算出)。日本国内で生産される資源では2か月も生活できないのだ。
私たち日本人は、自国のキャパシティを超えて生活し、他国の資源に大きく依存し負荷をかけることで社会が成り立っている事実を忘れるべきではないだろう。
アース・オーバーシュート・デーを遅らせるには

私たちは、アース・オーバーシュート・デーを遅らせる努力をすべき時にきている。さもなければ、資源の枯渇によるしわ寄せが徐々に表面化し、いつかは地球全体が破綻してしまうだろう。
逆に遅らせる取組を実行できれば、持続可能な資源の利用と世界の人々の暮らしの両立が可能となる。グローバル・フットプリント・ネットワークが公表しているアース・オーバーシュート・デーを遅らせる手段と効果の大きさについて、代表的なものを以下にご紹介する。
カーボンプライシング
カーボンプライシングは、CO2排出に対し1トン当たり100ドルの価格を設定するシステム(炭素価格)を導入することで、地球のアース・オーバーシュート・デーを現状よりも63日遅らせることができる。CO2排出に価格を設定することで排出削減のインセンティブになるほか、炭素税という形で徴収すればインフラ整備への投資を通じて市民に還元できる。
米国における炭素税の試算では、1トン当たり79ドルのCO2価格ではエネルギー関連の排出量が38%減少し、125~150ドルでは50%以上の減少する可能性が示されている。さらにEUの排出量取引制度では、炭素価格が低くても総排出量の4割を占めるセクターで排出量が10%削減されたとのことである。
このように、適切な炭素価格を設定することでCO2排出に関わる活動のインセンティブを変化させ、CO2吸収に必要なエコロジカルフットプリントを減らすことができる。
女性の権利の尊重
2050年の世界人口が、現在予測されている97億人から77億人になることで、地球のアース・オーバーシュート・デーを49日遅らせることができる。出生数の観点から計算すると、世界中の家族の約半分が、親になる時期を2年遅らせて子どもを1人少なくもうけることで、20億人の人口減の実現が可能だ。
現在、世界中で2億人以上の女性が家族計画に関する知識を得られない状況にある。いつ子どもを産むかを選ぶ権利が女性に保障されることにより、女性の健康と生活が改善され、望まない妊娠の数を減らすことができる。女性の権利の尊重は、結果として人口問題の解決につながり、アース・オーバーシュート・デーを遅らせる手段となり得る。
経済計画への気候変動対策の反映
世界の半数の国が、欧州グリーンディールと同等レベルの野心的な政策を実施することで、地球のアース・オーバーシュート・デーをは現状よりも42日遅らせることができる。
欧州グリーンディールは、持続可能な経済モデルへの移行を目指す包括的な枠組みである。その主な内容は、気候変動対策や循環型経済の促進、生物多様性の保護、持続可能な農業などを盛り込んだ成長戦略となっている。具体的には、炭素税や排出取引制度の強化、クリーンエネルギーへの投資の増加、持続可能な交通システムの整備、環境技術の開発・普及支援などが盛り込まれている。
現時点では、経済計画と気候対策は相対するものとされることが一般的だ。しかし、各国の経済計画に気候対策を含む環境保護の視点を反映させることで、持続可能な資源利用への道が開けるだろう。
日本のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略は、CO2排出削減と経済成長の両立を目指す社会変革の取組であり、アース・オーバーシュート・デーを遅らせるのにも有効といえる。
まとめ
1970年以来、人間の活動は地球が生産できる自然資源を大きく超え、赤字が累積されてきた。その結果として、食糧不足、土壌浸食、大気中のCO₂の蓄積など、私たちの暮らしにも深刻な影響をもたらしている。
一方、世の中で広がりつつある脱炭素の動きは、エコロジカルフットプリントを減らし、自然資源の収支の改善にもつながる。
2050年カーボンニュートラルにむけ、GXにより社会の大転換が実現すれば、アース・オーバーシュート・デーを遅らせることができるかもしれない。
個人としても、エネルギーや物の浪費を避け、CO2排出を意識して家電や交通手段を選択し、再生可能エネルギーを利用するなど、身近でできることは少なくない。
参考記事
アースオーバーシュートデーについて|特定非営利活動法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン
Past Earth Overshoot Days|Global Footprint Network
What Biocapacity measures|Global Footprint Network
地球1個分の暮らしの指標|WWFジャパン
2024年、日本のアースオーバーシュートデーは5月16日|特定非営利活動法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン
Power of Possibility |Global Footprint Network
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