フィールドラーニングとは?「生きる力」を育む学習スタイルについて、実践事例と共に解説

フィールドラーニングとは

フィールドラーニングとは、山形大学が2016年に提唱した独自の学術用語で、教室外のフィールドで実施する教養教育の体験型学習のこと。その目的は、活動を通じて自己・人間・社会・自然について思索理解を深め、得られた成果を表現することだ。

専門性を深めるのではなく幅広い受講者を受け入れて独自性を尊重しながら、現場での実践を重ねることにより、下記について基礎的な力を身につけるために総合的に学ぶ。

  • 課題発見能力
  • 課題探求能力
  • プレゼンテーション能力
  • コミュニケーション能力
  • 行動力
  • 社会性

体験を通じて受講者ひとりひとりの思考を深めることができ、非専門的であるものの研究者の教養教育の入口、専門性の高いフィールドワークの前段階として位置づけられる。フィールドラーニング経験後は、専門的な活動においても、現場との信頼関係の構築・課題発見・探求などの実践につなげることができる。山形大学が実施したアンケートによると、フィールドラーニングを取り入れた授業は、総じての受講生の満足度が高くなっている。

フィールドラーニングの概念は未だ広く社会で知られていないが、現場に出て実践活動を行うなかで社会で必要な能力を培うことができる教養教育のひとつの手法である。

フィールドラーニングの実践

山形大学は、山形県北東の内陸部に位置する最上地域全体を活用し「エリアキャンパスもがみ」と銘打って、フィールドラーニングの実践を行っている。

原生林と巨木が多く残り豊かな自然に恵まれた最上地域は、最上川流域に形成された平地に集落や農地が広がり、林業や稲作が盛んな農山村地帯だ。季節風の影響で冬は雪が多く、豪雪地帯でもある。

温泉、義経・芭蕉ゆかりの地、最上川峡の絶景などが観光資源で、町村ごとに独自の文化を有するが、8 市町村のうち 6 町村が過疎地域に指定されているというのが現状である。

総合大学である山形大学は組織的な地域貢献として、最上広域圏の8市町村と包括協定を締結し2004年に「山形大学エリアキャンパスもがみ」を設立した。エリアキャンパスでは、人材育成と活性化を図ることを目的に、自然や伝統文化に根差した知識や知恵、ノウハウを広域圏全体で共有し地域の教育資源として活用している。2006年からは地域の人材を講師とし、住民と学生が一緒に活動できる現地体験型授業を開講し、さらに学部の専門教育の授業と連携させている。

山形大学はプログラムについて次のような工夫をしている。

  • 授業そのものが地域のニーズに基づいたもので構成され、地域の活性化に直接結びついている
  • 現地で行う体験型学習となっている
  • 現地にいるその道の達人が講師として直接指導に当たる
  • 多くの住民が参画できるよう、開講日を土・日曜日にしている
  • 学生は子どもの指導に関わることによって責任感をもつ
  • 単位互換協定に基づき県内の他の大学・短大生も履修できる

受講者は提示されたプログラムをとおして、子どもから老人まで幅広い世代の住民と関わるなかで社会性が増し、過疎化・少子高齢化・環境問題などの課題と向き合うことになる。そして、自らが現代社会の課題を発見し、探求、解決策の模索を経験することで、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、行動力などを身につけることができる。

山形大学によるフィールドラーニングの実践は、現代の日本社会が直面している諸問題に向き合う人材の育成という点で大きな意義がある。  

フィールドラーニングとフィールドワークとの違い

フィールドワークとの違い

フィールドラーニングでは、教室外での活動を通じて自ら課題を見つけていくが、フィールドワークでは、先に課題があり課題解決のために学外へと調査に出るという違いがある。

フィールドワークとは、社会学や人類学から始まった調査方法で、研究対象のフィールドを訪れ、現地の事情を直接観察したり、関係者から話を聞いたりすることで解決策を探る。フィールドワークは、目的意識、問題意識、課題を意識して、情報の取得を第一の目的として実施する。広く一般的な調査方法というよりは、専門性を高めようとする過程で実施され、関連する対象地域を点々としていく移動型の調査も含まれる。現地の事情を調査するうちに地域の人たちには気づかれにくい問題点を拾い上げ、一緒に解決策を考える場合には、フィールドラーニングの内容に近いものとなる。

一方、フィールドラーニングは教養教育の学習方法の一つで、フィールドでの体験から自分自身で課題を発見することに重点が置かれている。それには、学校教育により培った知識や思考、家庭や地域で身につけたスキルや経験を総動員することになる。

フィールドラーニングとフィールドワークに共通するのは、座学や図書館の資料、インターネットだけでは得られない生の情報を現地で知ることができる点だ。また両者とも、自分の価値観や常識が自明のものではないことに気づかせてくれる。

以上のように、フィールドラーニングとフィールドワークは重なる部分があるものの、事前に課題設定するかどうかという点で異なるものである。

フィールドラーニングとケーススタディの違い

フィールドラーニングとケーススタディは、課題の設定や課題解決に向けた学び方に違いがある。

ケーススタディは、ケース・ メソッドとも呼ばれ、企業などが抱える問題について事例から解決法を導き出す能力を養うための学習法の一つである。この学習法では、実在する企業の成功例や失敗例を学び、そのような結果になった原因を財務・経営・マーケティングなど様々な角度から分析する。さらに問題解決のためのアクションプランを立て、適用した後に効果があるのかを評価する。多くの事例を使ってトレーニングを繰り返すことで、実際の課題に対して効果的な策を講じる能力を身につけられると考えられている。

ケーススタディでは、教員がテーマに対して適切な事例を設定するが、フィールドラーニングでは受講生が主体的に情報収集し、因果関係を推測しながら課題を発見する。よって、同じ対象であっても、設定する課題は受講生の数だけ多様となる。

課題解決については、ケーススタディでは与えられた情報の中から適切なデータを取捨選択し戦略を考える。一方、フィールドラーニングでは、必要なデータは現場において主体的に探す必要があり、収集したデータ群を論理的に組み合わせ、対応策を構築する。つまり、フィールドラーニングとケーススタディは、課題解決能力を身につけることを目的する点は同じだが、アプローチの仕方が異なるのだ。

フィールドラーニングは「生きる力」をはぐくむアクティブラーニング

フィールドラーニングは「生きる力」をはぐくむアクティブラーニング

フィールドラーニングは、能動的な学習を意味するアクティブラーニングの概念と合致する。

アクティブラーニングとは、一方向的に講義を聴くという受動的な知識伝達型の学習ではなく、書く・話す・発表するなどの活動を伴う主体的・対話的で深い学びを指す。アクティブラーニングは、学ぶ内容だけでなく、学びの方法や過程も重視するスタイルといえる。活動を通じて自己・人間・社会・自然について思索理解を深め、得られた成果を表現するフィールドラーニングは、アクティブラーニングの一手法といえるだろう。

文部科学省はアクティブラーニングを取り入れることで、「生きる力」が育まれるとしている。「生きる力」とは、確かな学力、豊かな人間性、健康・体力の3つに支えられた力で、2017年には「生きる力」を身につけるために学習指導要領が改訂された。

改訂には、社会が変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見つけ、判断して行動し、思い描く幸せを実現できるようにという思いが込められている。

「生きる力」を伸ばすために重要な要素の例は次のとおりだ。

  • 自己理解・意思決定・健康増進など、自己に関すること
  • 協調性・責任感・表現など、自己と他者との関係
  • 生命尊重・環境理解など、自己と自然などとの関係
  • 責任・権利・文化理解・課題発見と解決など、個人と社会との関係

これらの要素は、フィールドラーニングによって習得しようとするものと一致している。つまり、フィールドラーニングはアクティブラーニングの一つであり「生きる力」の習得が期待できるのである。

まとめ

グローバル化が進み変化が激しく、少子高齢化などが課題となっている現代において、将来を担う人材を育成するための学習方法として、フィールドラーニングは重要だろう。今後、認識が広まり、全国で取り入れられていくことを期待したい。

■参考記事
大学教育におけるフィールドラーニングとアクティブラーニング再考
フィールドラーニングとフィールドワークの差異と民俗学への応用
エリアキャンパスもがみ 研究年報 2023 
国内のフィールドワーク| 関西学院大学 総合政策学部・総合政策研究科
【MBA・ビジネス用語】ケーススタディとは? 意味ややり方を解説!
新しい学習指導要領の考え方
日米におけるアクティブ・ラーニング論の成立と展開

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