
オフグリッドとは
オフグリッドとは、配電事業者の電力系統につながっていない状態、つまり送電網に接続していない状態を表す。または、小売電気事業者の供給する電力に頼らずに、電力を自給自足することを指す場合もある。
グリッドとは「power grid」のことで、電源から需要家(電力供給を受ける消費者)までのシステム全体を含む送配電網や送配電系統を表す電力・エネルギー用語である。一般的に、発電された電気は送配電事業者の送電線に流されて消費者にまで届く。
長らく日本では、北海道から沖縄まで、地方ごとに1つの電力会社が電力に関わる事業を独占し、発電・送電・電力小売サービスを提供してきた。1995年以降は電力システム改革により、発電や小売部門で新規事業者の自由参入が進んできたのはご存じのとおりである。
送配電についても例外ではなく、地域ごとに1つの事業者が送配電網を一元的に管理する形を残しつつ、新規事業者が送配電網を公平に利用できるようになっている。太陽光をはじめとする再生エネルギー設備が普及しつつある今日でも、事業者や家庭の発電システムはオングリッド、つまり配電系統に接続しているのがふつうだ。
オフグリッドは、事業者の提供するグリッドに接続していない、または離島や山小屋などで接続が不可能であるため電力を自給自足している状態をさす。さらに、停電時にも動作できるように道路標識や信号機、街灯などにも採用されている。
ソーラーパネルと蓄電池によるオフグリッド生活

いま最も一般的に出回っている機器でオフグリッドに切り替える場合、太陽光パネルと蓄電池を選択することになる。
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する発電方法で、一般住宅の屋根や壁に設置できる。近年開発されたペロブスカイト太陽光電池は、軽量でフレキシブルな特性をもち、実用化が期待されている。ただし、太陽光発電は夜間や雲の多い日などには発電できないほか、日中に使用できる量よりも多く発電した場合は電力を保存しておくことができない。
電力を蓄えておくために必要なのが、蓄電池だ。太陽光が降り注ぐ時間帯に発電し、使いきれない電力を蓄電池に貯めておくことで、夕方から早朝にかけての時間帯も電力の使用が可能となる。オングリッドであれば、余った電力は送電網を使って売電となるが、オフグリッドでは蓄電池に保存して時間差で利用するため、電気の自給率をあげることができる。
ただし、電気の供給量と消費量は常に同じという原則があるため、蓄電池容量の100%まで充電された状態では、電力を使わない限り発電がストップする。そのため、蓄電池のサイズを選択する際には、夕方から早朝までの電力使用量をまかなえる容量であるかについて検討が必要だろう。
使用する家電は、稼働時の消費電力だけでなく待機電力も把握する必要がある。あるいは、日中の発電量が多いうちに、充電や炊飯、湯沸かしなどを済ませるなどの工夫が考えられる。
さらに、電力使用量や発電量は計算通りにならないこともあり、瞬間的に大きな電力を必要とする電気機器の使用などにより規格を超えた大きな電流が流れ、蓄電池が運転停止することもあり得る。
完全なオフグリッド生活を実現するには、十分な規模の太陽光発電システムと蓄電池を準備できる場合以外は、不便を伴うリスクがある。事業者と契約して送配電網への接続は確保したうえで、オフグリッドを主体として部分的にオングリッドに頼る方法が現実的だ。
オフグリッド住宅への関心の高まり
オフグリッド住宅が注目されている背景には、環境意識の高まり、電気料金の値上げ、災害時への備えなどがある。
環境意識の高まりについては、消費者庁による調査によると、環境に配慮したエシカル消費につながる行動を実践していると回答した人の割合は年々増加傾向である。
また、近年の猛暑や異常気象による災害の報道など、日常生活でも地球温暖化のリスクを実感する機会が増えている。今後、再生エネルギーなどによる発電にシフトし、温室効果ガスを大量に排出する化石燃料から脱却しなければならないことに、市民の異論はないだろう。
もともとエネルギー資源の乏しい日本だが、世界情勢の影響をうけ電気・ガスなど公共料金の値上がりが続いている。再エネ設備の設置に初期費用がかかったとしても、毎月の電気料金が軽減される方が、長期的に恩恵が大きい可能性がある。
さらに、地震や台風などの災害で、ライフラインが絶たれてしまうリスクは他人ごとではない。オフグリッドのシステムがあれば、停電時でも電力を使うことができるのは減災につながり魅力的である。
このように、オフグリッド住宅には昨今の課題を解決するようなメリットがあり、完全オフグリッドを目指し開発を進めているメーカーも存在する。
オフグリッド住宅の価格
オフグリッド住宅の価格は、建売住宅を購入する場合、設計から建築までを注文する場合、自宅をリフォームする場合で変わってくる。さらに住宅の立地条件や規模によっても差があり、一概に価格を示すことはできない。
最低限必要なのは、再生エネルギーシステムと蓄電池システムに係る費用だ。太陽光発電が一般的だが、選択肢としてマイクロ水力発電や風力発電もある。電気のやりくりを制御する家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を設置できれば効果的だが、さらに費用が上乗せされる。
太陽光パネルの設置を検討する場合、まず気候条件や日照条件の許容範囲かどうかを確認し、設置可能な場所、生活に必要な電力量によってパネルの大きさを決めることになる。
一般的な4人家族で、5kW程度の出力で生活に必要な消費電力を賄う例は次のとおりだ。経済産業省の資料では、太陽光発電の初期費用は出力1kWあたり28.4万円であるため、5kWを乗じると約140万円となる。
これに加えて容量約6~7kWhの蓄電池を設置すると、価格帯は現状300万円前後となっており、合計440万円となる。諸条件によってこの金額は前後するとしても、一つの目安となるだろう。
住宅メーカーのオフグリッド住宅も下記にご紹介する。
- エネルギー自立型住宅 オフグリッドハウス 大樹の杜(*1)
- スマートオフグリッドハウス | 株式会社Vie House-レジェンダリーホーム埼玉中央(*2)
- スマートオフグリッドハウス | エスイーエー株式会社(*3)
- オフグリッドハウス | 会社イスズ 電活プラザ(*4)
- 【LVYUAN】オフグリット10kwh 太陽光発電システム搭載 コンテナハウス 仮設スーパーハウス ユニットハウス いつでも電気困らない事務(*5)
今後、許容できる価格帯でオフグリッド住宅の選択肢が増えていくことを期待したい。
オフグリッドに活用できる補助金
再エネ設備導入の初期費用を抑えるために補助金を活用したいが、太陽光発電の価格が低下し普及が進んだことにより、国による設置のための補助制度は終了している。
ただし、補助を提供している都道府県や市町村もあるため、環境省の自治体の補助金情報 | デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)(*6)を参照されたい。2024年現在、国の補助は断熱省エネや高効率給湯器設置を対象にしていて、こちらも消費電力を抑える点では無関係ではない。
補助制度は新年度に新たに公表される場合もあるので、継続して情報収集すべきだろう。
DIYでのオフグリッド
まとまった設備投資ができない場合、DIYで部分的に再エネを取り入れることも考えられる。DIYでできる太陽光発電の規模では、充電器、電気毛布、扇風機、LED証明などの機器の使用が可能だ。
ただし、小規模でも太陽光発電システムを組み立てるには、太陽電池パネル、チャージコントローラー、バッテリー、インバーター(太陽光パネルから得た直流電流を家庭用の交流に変換する)などの複数の材料を使用する。適切に接続しなければ火災につながるおそれもあり、専門知識が必要である。
また、電気工事には電気工事士の資格が必要であり、軽微な工事以外を行うと法に抵触することになるので注意したい。同資格が不要な軽微な工事の例は次のようなものである。
- 電圧600V以下で使用する差込み接続器などのの接続器を接続する
- 電圧600V以下で使用する電気機器にコードやケーブルなどの電線をねじ止めする
- 電圧600V以下で使用する蓄電池の端子にコードやケーブルなどの電線をねじ止めする
知識と技術をもつ場合は、DIYで安価なオフグリッドを始めることが可能で、災害時への備えにもなるだろう。
離島におけるオフグリッド実証中|東京都利島村
人口約300人、面積約4.04平方kmの離島である東京都利島村において、「オフグリッド型居住モジュール」の実証実験が2023年に始まった。同島では水道水に適した水の確保が難しく、高額な給水コストと住宅不足が課題となっている。
そこで、生活に必要な水と電気を、小規模分散型水循環システムおよび太陽光発電パネルを用いて自立供給するトレーラーハウスを設置することとした。
今後、有効性が検証されれば、環境にやさしいだけでなく災害時におけるレジリエンスの高い持続可能な住宅として、実用化が期待される。オフグリッドは、離島の未来を明るくする可能性も秘めている。
まとめ
オフグリッドは、脱炭素社会の実現や災害に強い暮らし、地域課題の解決など幅広く貢献が期待される。将来的に、蓄電池など必要な機材の価格が下がり、オフグリッドが社会全体に普及すれば「2050年カーボンニュートラル」も現実味を帯びるだろう。今後の政策動向や製品開発を注視していきたい。
Edited by k.fukuda
注解・参考サイト
注解
※1 エネルギー自立型住宅 オフグリッドハウス 大樹の杜
※2 スマートオフグリッドハウス | 株式会社Vie House-レジェンダリーホーム埼玉中央
※3 スマートオフグリッドハウス | エスイーエー株式会社
※4 オフグリッドハウス | 会社イスズ 電活プラザ
※5 【LVYUAN】オフグリット10kwh 太陽光発電システム搭載 コンテナハウス 仮設スーパーハウス ユニットハウス いつでも電気困らない事務
※6 自治体の補助金情報 | デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)
参考サイト
なるほど!グリッド|資源エネルギー庁
電力ネットワークの次世代化|資源エネルギー庁
令和6年度第3回消費生活意識調査結果について|消費者庁
電気工事士等資格が不要な「軽微な工事」とは|経済産業省
水問題の解決に向けて東京都利島村と合意書を締結|WOTA






















k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。( この人が書いた記事の一覧 )