サイバーカスケードとは?発生による弊害や回避する方法を解説

サイバーカスケードとは

サイバーカスケード(cyber cascade)とは、同じ意見や主張を持つユーザーが集まってコミュニティが形成される中で、異なる意見を除外して意見や主張が先鋭的になっていくことを指す。インターネットと人間の関わりによって発生する現象の一つ。

日常生活の中では自分の主張が認められないこともあるが、SNS上では同じ主張のユーザーを見つけやすい。そのため、コミュニティができてその中で共感を得ていくうちに、肯定感が増幅して主張が次第に過激になってしまうのだ。

カスケードとは、階段状に連続する滝を意味する言葉。意見が特定の一つの方向に流され、最終的に大きな流れとなるということから、アメリカの法学者であるキャス・サンスティーン氏がこの言葉を用いた。

サイバーカスケードが注目されたきっかけ

サイバーカスケードとは、サンスティーン氏が2001年に刊行した『インターネットは民主主義の敵か』の中で言及したことで広く知られるようになった。インターネット上では同じ思考や主張を持つもの同士が交流しやすいため、「集団極性化」につながると指摘した。

集団極性化とは、集団で行う意思決定が一つの方向に先鋭的になる現象のこと。通常の討論の場でも起きるが、インターネット上ではより発生しやすいとされ、誹謗中傷やネットリンチなどの要因の一つともされる。日本でも、世の中の言論が極端になってきているという調査結果が報告されており、集団極性化に対する危惧が高まっている。

集団極性化とサイバーカスケード

集団極性化は、マサチューセッツ工科大学大学院生だったジェームズ・ストーナーが1961年に報告した概念で、一人で意思を決定するよりも、集団で意思決定をした方がより極端になる心理的傾向のことだ。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉があるように、個人ではできないことも集団になればできるといった現象を指す。リスクを積極的に取ろうとするリスキーシフトと、より慎重になろうとするコーシャスシフトに二極化される。

集団極性化が発生する原因は特定されていないが、いくつか仮説が提唱されている。その一つが、集団の中にいる場合は責任が分散するためリスクを取りやすくなるという責任拡散説だ。元々、似たような主張や思考の人が集団を形成する中で、意思が同じ方向で統一されていくという文化的価値説も有力な説とされる。

サイバーカスケードは、SNSをはじめとするインターネット上で起きる集団極性化の一つの現象という位置付けになる。SNS上で起きる誹謗中傷やネットリンチなどでは、対象の人に対して同じような意見を持った複数のユーザーが投稿を繰り返すことで、より過激になっていく現象が見られる。

サイバーカスケードと似た現象

サイバーカスケードと似たような現象

サイバーカスケードとはSNSなどのネットメディアと人間が関わることで発生する現象だが、ほかにも似た現象が報告されている。サイバーカスケードをより理解するために、以下の2つについても解説する。

エコーチェンバー

エコーチェンバーとは、自分と同じような主張や思考、好みを持つユーザーと交流することで、同意できる言葉が返ってくる現象のこと。直訳すると反響室を意味しており、閉じた部屋で音が反響して増幅することを表している。

例えば、自分の好きなアーティストのファンをSNS上でフォローすると、ファン同士によるコミュニティができあがる。このコミュニティの中で同じような意見を繰り返し目にすることで、「自分が多数派」「同じ意見の人が多い」と感じてしまうことになる。

フィルターバブル

フィルターバブルとは、検索エンジンなどのアルゴリズムがユーザーの好みをパーソナライズ(最適化)することによって見たいと思われる情報が優先的に表示される環境のこと。最適化するフィルター機能が要因の一つで、自身の考え方や価値観の〝泡〟に包まれたように見たい情報しか見られなくなってしまう。

問題となるのは、異論や別の視点による意見に触れる機会が失われ、自分の価値観を正当化してしまいがちになること。他者との意見の食い違いが起きやすくなったり、嘘やデマなどのフェイクニュースに気付きにくくなる。

サイバーカスケードによる弊害

サイバーカスケードによる弊害

サイバーカスケードによる一番の弊害は意見が極端になることだが、それ以外にも以下のような弊害が考えられる。

デマ情報が拡散されやすい

同じような主張を持つ人がコミュニティを形成することで、嘘や不正確、デマなどの情報が拡散されやすい状態になる。同じ情報を信じている人を見つけることで、自分の主張が強化されるからだ。

選挙におけるSNS戦略が注目されているが、例えば自分が推す候補者にとって有益な情報を目にした際に、それがデマだった場合でも拡散させてしまうことがある。フォロー中のユーザーが拡散する情報は、真実だと信じてしまいがちなのだ。

別の価値観を持つ人が近くにいれば「その情報はデマだ」と忠告することができるが、サイバーカスケードにより自分の主張が正しいと信じ込んでしまっている場合、その忠告に反論することもしばしばある。

差別がより先鋭的になる

同じような主張を持つ人が集まることで、自分の考えを補強していくことができる。この現象が良い方向に向くこともあるが、反対に悪い方向に向くこともある。

悪い例で言えば、差別的な主張だ。特定の対象への差別的な主張が集結しやすくなるため、サイバーカスケードによって自分を正当化するのが容易になる。そのため差別的な主張が、より先鋭的になってしまうのだ。

誹謗中傷合戦が繰り広げられる

SNSやネット掲示板では意見の交換が行われるが、サイバーカスケードによって主張が過激化した場合は、コミュニティ同士による誹謗中傷合戦に発展することもある。自分の主張を正当化しているコミュニティ同士のため、意見をぶつけ合っているうちにさらに先鋭的になってしまう。ヒートアップし過ぎると、人格否定や脅迫などに発展することもある。

事例としては、タレントや有名人などが問題を起こした場合に、擁護派と責任追求派に分かれて口論となることなどが挙げられる。

ネットリンチに発展する

インターネット上だけではなく、複数の人で話していると、特定の人に対する愚痴や悪口で盛り上がったりすることもある。これも集団極性化の一つで、同調圧力なども加わって集団によるいじめに発展するケースもある。

サイバーカスケードによってSNS上に同じ意見のユーザーが集まると、ネットリンチが発生しやすいのも同じ現象だ。単なる悪口だったのが次第に主張が先鋭化していき、対象者への口撃がより過激になってしまう。

サイバーカスケードを回避するためには

サイバーカスケードを回避するために、また自分自身が巻き込まれないための対処法も覚えておきたい。代表的な以下の3つの方法を紹介する。

考える時間を設ける

自分の投稿に対して反対意見が寄せられた場合、すぐに反論したくなるものだ。しかし、本当にその反対意見は間違っているのか、自分の意見の方が正しいのかを判断するために時間を置くのが一つの方法だ。

怒りを抑えるために6秒間数えるというのがアンガーマネジメントの代表的な手法だが、同様に少し時間を空けてみると冷静になれるもの。自分の投稿が過激的になっていないか、正当化しすぎていないか、というように客観的に見ることでサイバーカスケードに巻き込まれなくなる。

一次情報を確認する

SNS上ではわかりやすい情報に飛びついてしまう傾向があり、デマ情報が拡散されやすい。例えば、2016年に発生した熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」という画像付きのデマ情報が、X(旧Twitter)上で2万回以上もリポストされた。地域住民の安全確保のために善意で拡散した人もいたとされる。

このような災害や事件発生時は、サイバーカスケードが容易に発生してしまうのも特徴だ。悪戯や憶測などで投稿しているケースもあるため、目の前の情報に飛びつかずに一次情報を確認してから行動することを心がけたい。情報の真偽によっては、自身または他人を危険に晒す可能性があることも肝に銘じておきたいものだ。

他者の意見も尊重する

同じ主張を持つ人々のコミュニティでは異論を排除したくなるが、多様性の時代と言われる現代では違う意見を持った人の存在も認めることが重要だ。特にSNS上には不特定多数のユーザーがおり、同じ主張を持った人もいれば全く反対の意見を持っている人もいる。

自分を正当化するばかりではなく、多様な意見があると意識することで主張の過激化は避けることができる。また自身の主張が多数派であっても、少数派を排除したり、攻撃しないことも心がけるべきだ。

まとめ

サイバーカスケードは、自身の主張や価値観が正当化されやすく、異論を排除したり、過激化するといった特徴がある。集団極性化の一種とされ、炎上やネットリンチ、デマの拡散、誹謗中傷といったネットトラブルの要因の一つにもなっている。

集団極性化はネット上だけでなく、日常の中でも起きる可能性があるが、顔が見えないSNSなどではより危険性が高まる。このような現象が誰にでも起こりうることを念頭に置くだけでも、冷静にネットを利用できる姿勢につながるのではないだろうか。

参考記事
情報通信白書|総務省
「情報社会と難民: サイバーカスケード・拡散するデマとどう向き合うか」 山口真一(国際大学 GLOCOM 研究員/助教)|GLOCOM OPINION PAPER 2016 No.2

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