ダボス会議とは?
ダボス会議とは、企業経営者や実業家といったビジネスリーダー、世界各国の政治家、文化人などを集めて、毎年1月に開催する「世界経済フォーラム(World Economic Forum 、WEF)」の年次総会のこと。スイス東部のリゾート地であるダボスで行われるため、「ダボス会議」が通称となっている。
協調と平等をうたう姿勢を表す「ダボス精神」が、年次総会の基調となっている。毎回、会議ごとに全体を貫くメインテーマが定められ、政治や経済、環境、雇用、健康、教育、国際協力、社会平等、文化など幅広いテーマで話し合いが行われる。
ダボス会議が他の国際会議と違う点は、ビジネスリーダーや公人に加えて、市民団体のリーダーや文化人などが招待される多様性だ。これは、地球規模の課題を解決するにはあらゆる分野の英知を集めることが必要と考えられているからに他ならない。
またダボス会議の特徴として、「企業は株主、従業員、消費者、供給業者、地域社会など企業に関わるすべてのステークホルダーに利益をもたらすべきだ」というステークホルダー資本主義を理念として掲げている点が挙げられる。
世界経済フォーラムとは?

「世界経済フォーラム(WEF)」は、経済学者のクラウス・シュワブ教授が1971年に創設した非営利財団で、本部をスイスのジュネーブに置いている。「異なる背景を持つ人々が集い、対話し、共通の目標に向けて協力するプラットフォームを築くこと」をミッションに、「グローバル」「地域」「産業」における課題の形成に取り組んでいる。
課題解決に向けた取り組みは、10のセンター(部門)を通じて推進される。年次総会(ダボス会議)のような大規模な会合、インパクト会合や産業戦略会議、グロース・サミットなどの小規模な会合を開催することで、議論や対話をするためのプラットフォームを提供している。
また、ダボス会議の前年11月には世界中の課題について専門家が討議する「グローバル・アジェンダ・カウンシル(GAC)」の会合が開かれる。それぞれのテーマで議論が交わされ、これに基づいてダボス会議の議題が決まっていく。
より良い意思決定を支援するため、「世界競争力報告書」や「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート(世界男女格差報告書)」といった各種データの発表を行っているのも特筆に値する。
なお、シュワブ教授はジュネーブ大学で「現代企業の経営者は、長期的な成長と繁栄を実現するために、株主だけでなくすべての利害関係者に配慮しなければならない」というマルチステークホルダーを論文テーマとしていた経済学者だ。33歳のころには、世界経済フォーラムの前身「ヨーロッパ経営フォーラム」を創設した。
ダボス会議の主な参加者
ダボス会議は、世界経済フォーラムからの招待によって参加できる仕組みになっている。その多くは、世界経済フォーラムの会員となっている企業経営者などのビジネスリーダーだ。当初はヨーロッパが中心だったが、最近ではアジアや中南米、アフリカなどから積極的に招いている。
ビジネスリーダーだけではなく、世界各国の首脳、国際機関の長官、高官などの公人のほか、NGO団体の代表者、メディアリーダー、学術機関やシンクタンクのリーダー、宗教指導者、労働組合組織のリーダーなども参加する。2024年1月のダボス会議には、120の国と地域から合わせて2,800人超が集まった。
なお、世界経済フォーラムの会員は世界各国の一流企業1000社で構成されている。地域における最有力企業などの「メンバー」、課題解決に強い関心を持つ世界的な企業などの「パートナー」に分かれている。
ダボス会議が注目される理由
ダボス会議では、地球規模の懸念事項について、どのような話し合いが持たれるのか、どのような方向性が示されるのか、大きな注目を集める。
世界には気候変動や経済格差、人種問題といった不確実性が高く先行きが見通せないリスクが数多く存在する。それらについて、ビジネスリーダーや世界の首脳陣、各分野のリーダーがそれぞれの視点から議論する。
これまでに50回以上開催されたダボス会議は、その度に世界に大きな影響を与えており、このことはさらに年々注目度を高めるゆえんにもなっている。
ダボス会議が世界に与えた影響

これまで行われたダボス会議が世界に与えた影響について、年代別に分けて紹介する。
1970〜1980年代
- 1971年
世界経済フォーラムの前身となる「ヨーロッパ経営フォーラム」が第1回目の年次総会(ダボス会議)を開催。ヨーロッパ各国のビジネスリーダー、欧州委員会委員、アメリカの大学の学者など、31カ国から450人が参加した。現在、ダボス会議は1月に行われるが、第1回年次総会は2月に行われた。 - 1973年
ステークホルダー資本主義に基づき、倫理綱領を起草。ステークホルダー資本主義を提唱する「ダボス・マニフェスト」が公表された。また、イタリアの実業家が白書「成長の限界」について講演し、経済成長の持続可能性に疑問を投げかけたことで大きな話題となった。 - 1979年
中国における経済改革に深い関心を寄せていたシュワブ教授が、中国の代表団を初めて招待した。 - 1987年
会員が世界規模に広がったことを受け、「ヨーロッパ経済フォーラム」から「世界経済フォーラム」に名称を変更した。 - 1988年
戦争寸前まで緊張状態が高まっていたギリシャとトルコ首相の個別会談を実施。対立関係は解消され、戦争は回避された。
1990〜2000年代
- 1990年
1989年10月にベルリンの壁が崩壊。1990年10月に東西ドイツが統一されることを背景に、「新しいヨーロッパ」と名付けたセッションを開催した。東西ヨーロッパの要人が初めて一堂に会したことで、東西ドイツ統一後の混乱は最小限にとどめられたとされる。 - 1992年
南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ氏が初参加。国有化政策からの転換を表明したことによって、南アフリカ共和国の民主化が大きく動き出した。 - 1998年
主要テーマは「世界的な金融システムの改革」。日本でも2つの銀行が国有化されるなど、世界各国で金融不況に見舞われたことが背景にある。全世界的な金融システムの必要性から、先進国と開発途上国の20カ国で構成される組織の設立が提案され、その後「G20」が設立された。 - 2000年
在職中のアメリカ大統領が初めて参加。「ワクチンと予防接種のためのグローバル同盟(GAVIアライアンス)」が創設された。 - 2005年
画期的な研究とされる「女性の参画:グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)の測定」をスタート。翌年、世界男女格差について初めて取り上げ、「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート(世界男女格差報告書)」を発表した。
2010年代以降
- 2012年
世界の重鎮が集まるダボス会議に、20代の新進リーダーである「グローバル・シェイパーズ」が初めて参加。世代間でのコミュニケーションが図られたほか、若者の関心事に対応することの重要性も確認した。 - 2016年
デジタル化を、人類の転換期と位置付けたシュワブ教授は「第四次産業革命」と表現。ダボス会議でも、メインテーマを「第4次産業革命の理解(Mastering the Fourth Industrial Revolution)」とした。その後、「第四次産業革命センターネットワーク」を創設。ネットワークは全世界100以上の政府と企業に拡大している。 - 2018年
7人の共同議長の全員に女性が就任した。また、テリーザ・メイ首相(イギリス)、エマニュエル・マクロン大統領(フランス)、アンゲラ・メルケル連邦首相(ドイツ)、ドナルド・トランプ大統領(アメリカ合衆国)、ナレンドラ・モディ首相(インド)などの国家元首が揃ったことでも注目された。 - 2019年
気候変動による環境リスクやCO2排出量削減の取り組みなどをメインテーマに開催。2050年ネットゼロエミッションの取り組みが課題に盛り込まれた。スウェーデンの女子高校生で、環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリ氏が演説したことでも話題になった。 - 2020年
第50回となった年次総会では「ステークホルダー資本主義」に再び焦点。パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)を促進する政府と国際機関への支援を最優先課題とした。シュワブ教授は「私たちの取り組みは不十分」と述べ、「ダボス・マニュアル」を改訂し「ダボス・マニュアル2020」を発表した。 - 2021年
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、オンライン形式で開催。さまざまな課題を解決するためにはこれまでの当たり前から脱却する必要があるとして、「グレート・リセット」をメインテーマとした。
2024年ダボス会議の内容
2024年のダボス会議は、1月15~19日に「信頼の再構築(Rebuilding Trust)」をメインテーマとして開催した。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃などを背景に、世界中の人々や企業は終わりの見えない争いが連続して起こる現実に直面しているとした。
こうした中で、未来に向かうには社会や国家間において信頼を回復することが不可欠とし、そのためには対話のプラットフォームや強固なパートナーシップ、柔軟な政策枠組みなどが効果的としている。
また、200以上のプログラムは以下の4つの最優先課題で議論された。
- 分断された世界における安全保障と協力の実現
- 新しい時代の成長と仕事の創出
- 経済と社会をけん引するAI
- 気候、自然、エネルギーに関する長期戦略
日本からは、新藤義孝経済再生担当大臣(当時)、河野太郎デジタル大臣(当時)、新浪剛史サントリーホールディングス社長、橋本剛商船三井社長、吉田憲一郎ソニーグループ会長、元JAXA宇宙飛行士の野口聡一氏などが参加した。
2025年ダボス会議のアジェンダ
2025年のダボス会議は、2025年1月20日〜25日に開催される予定。具体的な内容はまだ発表前だが、ホームページには「地政学的なショックへの対応、生活水準の向上を目指した成長の促進、そして公平で包括的なエネルギー転換の推進が含まれる」としている。
正式には、11月に行われる「グローバル・アジェンダ・カウンシル(GAC)」でテーマが決まると見られる。
また、非営利団体クライメート・ベースキャンプが新しいキャンペーンおよびマニフェストとして発表した「Performing Hope in the Face of the Climate & Nature Crisis(気候変動と自然の危機に立ち向かう希望のパフォーマンス)」についても大きく取り上げている。ダボス会議参加者に、希望を具体的な行動に移す責任を思い出させるとしている。
まとめ
世界各国のビジネスリーダーや政界のトップ、学者などが一堂に会し、地球規模の課題について話し合う世界経済フォーラムの年次総会・ダボス会議。テーマには、気候変動による環境リスクや持続可能な開発目標、緊張感を高めている地域紛争、性による格差など、世界が直面する課題を数多く取り上げている。
ダボス会議での議論や発信が世界の方向性に大きな影響を与えることも多く、今後の動向を占う上でも重要な会合とされる。2025年は1月20日〜25日に開催される予定。発信される情報に注目したい。
参考記事
世界経済フォーラム年次総会2024|世界経済フォーラム
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)|外務省
ダボス会議|みずほリサーチ
ダボス会議15日から 世界の政財界のリーダーら2800人余参加へ|NHK
2024年ダボス会議で語られた「仕事の未来(Future of Work)」のための3つの重要ポイント|THE ADECCO GROUP
ダボス会議とは? 2024年のテーマや内容、SDGsとの関連を解説|ELEMINIST
ダボス会議とは・意味|IDEAS FOR GOOD
世界経済フォーラム第54回年次総会(ダボス会議2024)【開催報告】|ESD活動支援センター
ダボス会議にようこそ 第1回 日本人の知らない「ザ・国際会議」の正体|KODANSHA
ダボス会議|みんなのマネ活
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