アロマンティックとは?
アロマンティックとは、他者に対し、恋愛感情をもたいない人を指す言葉だ。アロマンティックの人たちは、友情を感じたり、家族を愛したりなど、他者と深い感情のつながりを持つことはできる。しかし、他者に対してロマンチックな感情を抱いたり、求めたりすることはない。
アロマンティックとアセクシャルの違い
アロマンティックと類似の言葉にアセクシャルという言葉がある。この二つはしばしば混同されることがあるが、定義は明確に異なる。
アセクシャルとは、他者に対して“性的な惹かれ”を感じない人のことだ。アセクシャルの人は他人に対して性的な欲求を抱かない。(ちなみに、アセクシャルだからと言って性欲が全くないとは限らない。アセクシャルの人の中には、性欲はあるけれど、他人に対して性的な欲求は抱かない、という人もいる。)
一方、アロマンティックは、他者に対して“恋愛的な惹かれ”を感じない人を指す。アロマンティックの人は、他人に対して友情的な意味で惹かれることや、性的な意味で惹かれることはあっても、恋愛的には惹かれないのだ。
アセクシャルは“性的に惹かれ”ない人のことで、アロマンティックは“恋愛的に惹かれ”ない人のことだ。アロマンティックでありかつ、アセクシュアルの人は、性的にも恋愛的にも惹かれない。
アロマンティックによくある誤解や偏見

若者が恋愛しないようになってきた、と言われがちな昨今だが、いまだに恋愛至上主義(恋愛はみんながするもの、恋愛はした方がいい)的価値観が強い。それゆえ、アロマンティックの人々は誤解されがちだ。
1 孤独でかわいそう
ライス大学の哲学者エリザベス・ブレイクは、恋愛的な愛が不当に崇めたてられている現状を恋愛伴侶規範(アマトノーマティビティ)という言葉で言い表している。
恋愛伴侶規範とは、「恋愛を経て、パートナーを見つけることは、人として普通で、好ましいだけではなく、理想的で必要だ」という規範だ。固い友情を築いたり、複数人でルームシェアをして老後を支えたりするよりも、恋愛をしてただ一人の人と排他的な関係を築き、パートナーとなることこそ、理想的なのだと、この規範は伝える。
また、恋愛伴侶規範は規範であるがゆえに、あらゆる他の規範と同様に、その規範から逸れたものに罰を与える。未婚女性は哀れな存在、奇妙でモテない存在になり、独身男性は性的マイノリティとしてクローゼットにいるか、感情的に発育不全で大人になりきれていないかどちらかだと見做される。
また、独身で魅力的だと判断された場合は、遊び人、フラフラしている、無責任、という誹りを受けることになる。「Aさんってすごく綺麗だよね。独身なのが信じられない!」という称賛の言葉でさえ、恋愛伴侶規範から逸脱している人は何かが欠けている、という含みがある。
実際は、恋愛しない、恋愛的なパートナーがいないということは、孤独や孤立を意味しない。アロマンティックの人々は恋愛をしていなくても、深い友情関係を築いていたり、大切な家族がいることもある。アロマンティックの人が他者との感情的な繋がりをつくらないわけではない。しかし、ただ単に恋愛伴侶規範から逸脱しているがために、「孤独に違いない」「恋愛できないなんて、かわいそう」といった偏見を抱かれることが珍しくないのだ。
2 感情がなくて冷たい
アロマンティックの人々は「恋愛感情がないなんて冷たい人だ」と誤解されがちだが、恋愛的に他者に惹かれないだけで、何らかの感情が欠けているわけではない。
アロマンティックの人に対して「恋愛感情がないから冷たい人」と思ってしまうのは、恋愛を友情などよりも高い地位に置きがちだからだろう。友達以上恋人未満という言葉があるように、恋人は友達よりも上位の存在として位置付けられがちだ。「最大の感情である恋愛感情を持たないなんて」と考えてしまうのだ。
しかし、恋愛感情と友情、家族愛など、どの感情がより激しく、尊いものなのか、客観的に判断することは不可能だろう。それぞれの感情や愛情の示し方があるわけで、恋愛しないからといって、冷たい人というわけではない。
3 今はまだ運命の人に出会っていないだけ
アロマンティックは、他のセクシャル・マイノリティの人たちと同様、「一時的な状態」「いつか正常に治る」と思われがちだ。
学生時代、レズビアンやゲイだと自覚して周囲の大人に相談した場合、周囲の大人が「学生時代はよくあること。いつかは変わる」と思うことは珍しくない。「本当に好きな相手ができたら、変わるはず」だと思われて、性的指向を否定されることも多い。
同様に、アロマンティックの人々は、「恋愛しない」ことが一時的な状態だと見做されがちだ。「いつかピッタリくる人と出会ったら恋に落ちるはず」「まだ子どもだから恋愛がわからない」と未熟扱いされることも多いのだ。
4 性行為に興味ゼロ
アロマンティックは恋愛的に惹かれなくても、性的に惹かれることがある。つまり、恋愛感情がなくても、性的に魅力的だと思う人がいて、性行為をしたいと思うことがあるのだ。
それゆえ、アロマンティックであることが必ずしも性行為を避けることを意味するわけではない。もちろんアロマンティックの中には、性行為に興味がない人もいる。恋愛する人の中にも性行為に興味がある人とない人がいるのと同じことだ。
アロマンティックになる原因はある?
アロマンティックは性自認や性的指向同様、選べるものではない。
恋愛で辛い目にあったからアロマンティックになった、ということではない。恋愛でトラウマがあり、それ以降恋愛をしなくなった、という人は、“恋愛的な惹かれ”をする人であるから、アロマンティックには分類されないのだ。
アロマンティックは、その人の性質のいち側面であり、「なぜ恋愛的に惹かれないのか」という問いは、異性愛者に「なぜ異性に惹かれるのか? 原因があるのでは? トラウマがあるんじゃ?」と問うことと同様に、ナンセンスな質問だと言えるだろう。
アロマンティックの人がパートナーを見つけるには

アロマンティックの人の中には、人生のパートナーを見つける際に、友情などをベースに関係を築く人もいる。ここでは、アロマンティックの人が人間関係を築く際のポイントを解説していく。
1 恋愛的感情はない、と伝える
自分がアロマンティックであることを理解している場合は、パートナー候補に自分は恋愛的感情がなく、求めてもいないということを伝える必要があるだろう。
例えば、NHKドラマ『恋せぬふたり』では、アロマンティック・アセクシュアルを自認するふたりが、自らの恋愛的、性的指向をオープンにした上で、パートナーになる様が描かれている。親密な関係を築く際には、自分と相手が何を求めており、何を求めていないのか、を伝えておくことが大切だ。
2 コミュニティで交流する
アロマンティックの人々にとって、自分と同じような感覚を持つコミュニティとつながることは、大きな支えとなる。
SNSやオンラインのコミュニティを通して、同じアイデンティティを持つ仲間と出会えれば、パートナーとなる人が見つかる場合もある。近年は、アロマンティック・アセクシュアルの人を対象にしたマッチングアプリなども登場している。今後、アロマンティックの人たちがつながる媒体はさらに増えていくだろう。
3 友情を大切にする
アロマンティックの人のパートナーは、アロマンティックの人に限らない。恋愛感情を抱く人と人生のパートナーとなり家庭を築く場合もある。友情を大切にする中で、恋愛感情抜きに、人生のパートナーになりたいと思える相手と巡り会える可能性は大いにある。
さいごに。全人類が恋愛に興味があるわけではない
アロマンティックは、恋愛的惹かれをしない人々を指す。
恋愛がいまだに中心的な役割を果たす現代社会において、アロマンティックの人々は誤解や偏見に直面することが多々ある。
しかし、アロマンティックであることは、恋愛をしないことを意味しているのであって、人生に何かが欠けているとか、孤独だとか、未熟だということではない。
アロマンティックの人に「恋愛をしないなんて人生損をしている!」と言葉をかけることは、野球に興味がない人に「野球に興味がないなんて、人生損をしている!」という言葉をかけるようなものだ。棒でボールを打つことになぜあれだけ熱狂できるのかわからない人もいるように、興味がない人にとっては心底興味がなく興味を持ちたいと思わない物は多い。恋愛も、そのひとつなのだ。
参考書籍
「ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと」アンジェラ・チェン著 羽生有希訳(左右社)
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