特集
「移動」とは何か——AI時代に考える、移動の意義
2026.01.17 更新
観点
PERSPECTIVE
この特集が生まれた理由。
「移動」とは何か。
それは単なる移動手段や効率の問題ではなく、人間と社会、都市と身体の関係をかたちづくってきた、根源的な営みである。
AIやデジタル技術の発展により、私たちは必ずしも移動しなくても、働き、学び、人とつながれるようになった。
一方で、都市の構造や交通の設計、移動のしやすさ・しにくさは、今もなお人々の暮らしや選択肢に大きな影響を与えている。
どこまで行けるのか、どれだけ自由に動けるのか。そうした条件は、個人の努力だけでなく、社会の設計によって決められてきた。
本特集では、コンパクトシティや15分都市といった都市政策、
関係人口や人の流動性、不平等としてのモビリティといった社会的な視点に加え、旅が心に与える影響、遊牧民や先住民の移動観など、人文・哲学的な視点からも「移動」を捉え直す。
移動は、世界と出会う方法であり、人や場所との関係をつくり直す行為でもある。
同時に、どんな社会を目指しているのかを映し出す鏡でもある。
AI時代において、私たちは「どれだけ速く動けるか」ではなく、「誰もが無理なく動ける社会をどうつくるのか」を問われている。
この特集では、その問いを手がかりに、移動の意義をあらためて考えていく。

記事
ARTICLES
テーマで読み解く、社会の動き。

キーワード
コンパクトシティとは?国土交通省による政策や国内外の成功事例について解説
コンパクトシティとは、住居・医療・福祉・公共交通網・商業施設などの生活機能を中心部に集約した都市構造のことだ。生活エリアを徒歩や自転車、公共交通機関で移動できる範囲にまとめることで、居住地が郊外に分散するのを抑えることを目指したまちづくりである。

取り組み
車依存からの脱却を実証。アメリカの砂漠都市「カルデサック」が示す15分都市モデル
車社会の代表格であるアメリカの砂漠都市アリゾナ州に誕生した「カルデサック」は、アメリカ初の車禁止住宅街として15分都市を実現。徒歩圏内に生活施設を集約し、住民1000人で年間3000トンのCO2削減を見込む。地中海風の白い建物で暑さ対策も兼ねたこの先進モデルは、人口減少に悩む日本の都市計画にも新たな可能性を示している。

キーワード
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コラム
なぜ旅をすると心が軽くなるのか?GPS研究が明かす「移動の多様性」効果
未知の風景への憧れ、美味しい食事、日常からの逃避——旅をする動機はさまざまだが、帰路につく頃には、不思議と以前より少しだけ心が軽くなり、周囲の人に対して寛容になれている自分に気づいた経験はないだろうか。本記事では、脳科学や心理学の研究データをもとに、移動とウェルビーイングの意外な相関関係を紐解いていく。

国際動向
なぜ“移動しやすい街”は心地いいのか?関係性で考える都市モビリティ
私たちの生活に欠かせない「都市モビリティ」は、これまで速さや効率といった利便性を中心に語られてきた。しかし、途中の景色を楽しんだり、少し寄り道をしたりする「余白」によって、移動そのものに心地よさが生まれる場合もある。この記事では、移動を街との関係性や体験の質から捉え直し、なぜ「移動しやすい街」が心地いいのかを紐解く。

社会文化
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日常で道を歩くとき、あなたは何に意識を向けているだろうか。オーストラリアの先住民アボリジニにとって、歩くことは祖先や土地とつながる時間だ。歌を頼りに何千キロもの道を進む彼らの文化には、私たちが気づいていない豊かさがある。本記事では、ウォークアバウトというアボリジニの文化から、「歩く」行為の意味を読み解いていく。

社会文化
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現代社会は「定住」という生活様式を前提とし、所有することに豊かさや安定を求めてきた。しかし、広大な大地を移動し続ける遊牧民にとって、移動とは不安定への転落ではなく、自然との調和を保つための「能動的な選択」だ。遊牧民の歩みから、私たちが忘れつつある自然との距離感と、真の安定を築くためのヒントを探ってみたい。

コラム
動ける人と、動けない人。モビリティから考える不平等
朝の通勤、週末の外出や旅行。私たちは当たり前のように「動く」ことを選択している。しかし、その自由は万人に等しく開かれているわけではない。収入や身体状況、居住地によって生じる「移動格差」は、不便の差を超え、教育・労働・健康といった人生の質を左右する。本記事では、移動という視点から現代社会に潜む不平等の構造を問い直す。

コラム
人の流動性が都市を強くする。移動する人びとから考えるレジリエンス
人は定住するもの──その前提のもとで都市は設計されてきた。しかし近年、気候変動や災害、感染症などの危機が重なり、その前提は揺らいでいる。いま都市に求められるのは、守りきる強さではなく、壊れても続くしなやかさだ。制度の主語になりにくかった移動する人々に注目し、人の流動性から都市のレジリエンスを考える。

日本の動き
動きやすさを、都市がつくる。 富山市に見る「まちなかの移動」のデザイン
人口減少が進む地方都市では、労働力不足や公共サービスの維持が大きな課題となっている。そんな中、富山市は長年にわたり「移動しやすい街づくり」に取り組んできた。公共交通を都市の軸として再構築することで、市民の暮らしはどのように変化したのか。富山市の「まちなかの移動」のデザインを手がかりに、都市構造の変化を読み解いていく。
















