
2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博。万博に関連する話題は新聞やテレビ、ネットニュースなどを連日賑わせており、多くの人の関心を集めていることは間違いない。一方で、「そもそも万博ってなに?」「どんなものがあるの?」と疑問を抱く人もいるのではないだろうか。
この記事では、万博の歴史を辿りながらその開催目的を知り、今回の大阪・関西万博の注目点や、これから先の万博に期待されることを探っていく。
万博って何?なぜ世界が注目するのか
そもそも万博とは「万国博覧会」の略で、「国際博覧会」ともいう。1928年に締結された国際博覧会条約(BIE条約)に基づいて開催される博覧会のことで、英語の“EXPO”(エキスポ)という言葉は、聞いたことがある人も多いだろう。
BIE条約では、博覧会を「公衆の教育を主目的とし、人類の進歩や将来の展望を示す催し」と定義している。複数国が参加するものが国際博覧会とされる(*1)。
そのほか、開催期間や会場の総面積、明確なテーマの設定などさまざまな条件が細かく定められており、各国の技術や英知を集結させた世界的な大イベントだ。地球規模のさまざまな課題に取り組むことが大きな目的であるほか、大規模なイベント開催によって国や開催地域の経済成長を促すという側面も持つ。
博覧会の歴史は古く、一説によると、古代エジプトやギリシャの国王即位の祝典行事で民衆に芸術品や衣類を披露していたこと、古代ローマで戦利品を披露していたことなどが博覧会の起源とされている。そして時代は近世に入り、1475年にフランスのルイ11世が開催した「フランス物産展」が近代博覧会の原型となったといわれる。
その後、1851年にロンドンのハイドパークで第1回が開催されたことをきっかけに、万国博覧会の歴史は幕を開けた。この万博には25か国が参加。日本は、第2回のパリ万博(1867年開催)で初めて出展している。
万博は、長らく自国の物産の展示や国力誇示などがメインテーマであったが、博覧会国際事務局(BIE)は1994年、社会に貢献するようなテーマをもった秩序ある博覧会の開催を必須条件として定め、現在のような形へと変化していった。
万博から生まれた身近な技術

万博の大きな目玉は、何といっても各国による新しい技術のお披露目である。過去の万博では、今や私たちの生活に欠かせないさまざまな技術、製品が誕生した。実は万博がルーツとなった、意外なものの一部を紹介しよう。
エレベーター(ニューヨーク万博、1853年)
アメリカで初めて行われたニューヨーク万博では、出品の多くは機械類だったという。その中でE. G. オーティスが出品した落下防止装置つきの蒸気エレベーターは、オーティス自身がエレベーターに乗り込んでロープを切断するという実演によって、エレベーターの安全性を示すこととなった。この発明は、その後の電力発展の中で応用され、1893年のシカゴ万博では電動エレベーターが登場した。
洗濯機(ロンドン万博、1862年)
ロンドンで2回目の開催となったこの万博では、イギリスのT・ブラッドフォード社が出品した木製の手動式洗濯機が目玉となった。現在でも人々の関心が生活家電に集まるように、やはり一般市民は暮らしを楽にしてくれる製品に興味を持ちやすい。洗濯から脱水まで一貫して機械で行える洗濯機の登場は、「日常が豊かになる未来」への期待を大きく膨らませるものだったのだろう。
電話(フィラデルフィア万博、1876年)
フィラデルフィア万博はアメリカ独立100周年を記念して開催され、タイプライターなどが登場。その中でも大きな注目を集めたのが電話だった。スコットランド生まれの科学者、発明家であるA.G.ベルは、音声学を研究する中で電話を発明した。その後、電話が日本に伝わったのは、万博開催の翌年1877年11月だといわれている。
ワイヤレステレフォン(大阪万博、1970年)
ニューヨーク万博でお披露目された電話は、その後も進化しながら発展を続ける。そして、およそ100年後の大阪万博では、ついにワイヤレス(電話線のない)電話が登場した。これが、現在の携帯電話(スマートフォン)のはしりとなったのである。どこにいても世界中の人と交流ができるようになった通信技術の発展は、私たちが技術の進歩を身近に感じられるものの代表格だ。つまり今日の便利な世の中は、万博から始まったのだと言えよう。
AED(愛知万博、2005年)
愛知万博では、これまで紹介したものとは性質が大きく変化し、ただ便利なものではなく「さまざまな課題を解決するもの」が求められた。そんな中で大きな話題を呼んだのが「AED」だ。AEDは、心臓のポンプの動きが停止し全身に血液が送れなくなった際、電気ショックを与えて正常なリズムを回復させるための装置である。愛知万博では、会場に100台強のAEDを設置し、医師・看護師・救命救急士が待機。実際に心肺停止状態から蘇生した患者が、迅速かつ適切な対応によって無事に社会復帰を遂げたことが注目され、一般社会でのAED普及のきっかけとなった。
大阪・関西万博の見どころ。「いのち輝く未来」を体感しよう
今回の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。目的としては、「SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献」および「日本のSociety5.0の実現」を掲げている。日本が国家戦略として掲げる「Society5.0」は、仮想空間と現実空間を融合させ、経済問題と社会問題の双方の解決に貢献する、新しい社会の形を作り出そうとするものだ。
開催年の2025年は、国連が掲げるSDGs達成の目標である2030年まで残り5年を切るという、まさに勝負の1年。この目標の達成においてSociety5.0が大きく寄与すると考え、最先端技術を発信することで各国との交流を活性化し、新たなイノベーションを創出することを目指している。
開催国パビリオンである日本館では、会場内で排出された生ごみを利用したバイオガス発電など、循環型社会に寄与する技術を披露する。大阪ヘルスケアパビリオンでは、最新のヘルスケア事情や都市生活の体験、iPS細胞など再生医療に関する発信を行う。さらに民間パビリオンでは、NTT(日本電信電話株式会社)、電気事業連合会などが、AIやVRを活用した社会の体験、電気エネルギーを利用したカーボンニュートラル社会の実現、そしてその後の社会を見据えた技術開発の展示を行う。
大阪で万博が開催されるのは2度目だが、1度目は「人類の進歩と調和」を掲げ、高度経済成長期の真っ只中で開催された。戦後の復興を見事に成し遂げた日本では、経済力を誇示するように消費文化がピークを迎え、産業が発展する一方で、さまざまな公害が問題となっていた時代だ。前回日本で開催された愛知万博は、環境問題が世間でも広がりつつあったことから「自然の叡智」を掲げており、「環境万博」という面を押し出していた。
日本での初開催から55年。現在の世界は「地球全体を守り、すべてのいのちを次世代へ繋いでいく」というのが主流だ。今回の大阪・関西万博では、過去の万博で見られていた「人類の進歩」と「自然の叡智」が掛け合わされ、近未来的な空間の中で、Society1.0(狩猟社会)から続く私たちのいのちを、未来へ繋いでいくための技術を実感できるだろう。
万博が描く明日の世界

過去の万博では、人の生活が便利になるものを発表し、その後の発展へのきっかけとなる製品が多数生まれてきた。これまでは各国が国力をアピールする一面が大きかった万博だが、BIEの決議によって、今では地球規模の課題解決をテーマとして掲げることが必須条件だ。世界的なパンデミックを経て、社会構造が大きく変化し、まさに時代の過渡期とされる現代。これからの未来のために、今後の万博にはどんなことが期待されるだろうか。
現代における技術の進歩は、時折ネガティブなものとして話題になることがある。しかし、新たな技術によってこれまで人間の力では限界があったことに取り組んだり、役立ったりすることもまた事実だ。たとえば、後継者不足にあえぐ第一次産業にデジタル技術や機械を導入することで、農業や漁業に挑戦する若者が増えることが期待されている。また、がん検診の受診率の低さは検診時の苦痛が要因とも考えられ、「痛くない、苦しまない検診」を実現するための技術も研究が進んでいる。
これからの技術は、ただ便利なもの、ただ自然に配慮されたものだけではなく、人、動物、植物という地球に生きるすべての生物が適正に暮らせる環境を作るものでなければならないだろう。各国がそうした研究、開発を行い、その結果を集結させ一般市民に広く示していく、そこからまた新たな発見に出会う、という繰り返しを経て、次世代へ繋げるイノベーションを創出する。これからの万博に求められるのは、このように明るい未来へ期待が持てる場として発展していくことだと考えられる。
Edited by s.akiyoshi
注解・参考サイト
注解
(*1)国際博覧会(万博)「国際博覧会条約」抜粋|外務省
参考サイト
EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
万国博覧会とは?|外務省
開催目的 | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
大阪万博でデビューした物|教えて!かんでん|関西電力
1853年ニューヨーク万博 | 第1部 1900年までに開催された博覧会 | 博覧会―近代技術の展示場|国立国会図書館
AED普及20年 万博契機に「市民の救命」|中日新聞Web
万博とは 開幕でおさらい Q&Aで詳しく解説 歴史や過去展示物も紹介 エレベーターや電話も万博で有名に | NHK | 大阪・関西万博


















秋吉 紗花
大学では日本文学を専攻し、常々「人が善く生きるとは何か」について考えている。哲学、歴史を学ぶことが好き。食べることも大好きで、一次産業や食品ロス問題にも関心を持つ。さまざまな事例から、現代を生きるヒントを見出せるような記事を執筆していきたい。( この人が書いた記事の一覧 )