クルエルティフリーとは?「動物実験禁止」を当たり前の世界に

クルエルティフリーとは

クルエルティフリーは、「cruelty(残虐性)がfree(ない)」という意味の言葉で、サプライチェーンのすべての段階で動物実験を行わないことを掲げた運動、またはビジネスポリシーのことを指す。

世の中の多くの商品が、様々な動物の犠牲の上に流通していることを意識している人は、決して多くないだろう。化粧品、薬、洗剤など口に入るものや皮膚につけるものは、人体への安全性や有効性などを確認しなければならず、そのためにラットやモルモット、ウサギをはじめとした動物実験が行われている。動物実験は虐待といえるほど残酷性のあるもので、実験によって命を落としてしまうことも少なくない。

こうした状況を受け、動物たちの権利を解放しようとする動きがクルエルティフリーである。現在では、その商品がクルエルティフリーであることを表す認証制度もあり、欧米を中心に広がっている。

クルエルティフリーとヴィーガンの関連

動物愛護に関する考え方やライフスタイルといえば、ヴィーガンの方がよく知られているかもしれない。双方の関連性としては、クルエルティフリーはヴィーガンに含まれているといえる。

そもそもヴィーガンとは、肉や魚をはじめ卵、蜂蜜などあらゆる動物性由来の食材を避ける「完全菜食主義者」のことを意味する。また、素材や成分においても動物由来のものは使用しないという、多岐にわたる徹底したスタイルが特徴的だ。

つまり、クルエルティフリーが必ずしもヴィーガンに当てはまるわけではないのである。

クルエルティフリーが注目される背景

クルエルティフリーが注目される背景

クルエルティフリーが生まれたのは、世の中に動物実験の残酷さが知られはじめた1980年代のことだ。長時間にわたって皮膚に紫外線を当てられたり、眼球に化学物質を投与される上、仮に命を落としてしまった場合にも、ケアさえされることはなく破棄処分されるという、動物実験の信じがたい実態が明らかになってきたのである。

このような実験がいかに非人道的な行為であるかが訴えられはじめ、徐々に欧米の人々の間で動物実験への反対運動が行われるようになる。その後、この運動は消費者間のみならず、議会へ陳情されたことで国をも動かしていくことになった。

そして1991年に、アメリカとカナダでは動物愛護団体が立ち上げたクルエルティフリー認証プログラムがはじまる。また、2013年にはEU圏域で化粧品開発における動物実験が全面的に禁止されるようになった。早くから動物実験を禁止していたイギリスは、2020年のEU脱退後も動物実験禁止を継続している。

現在一般的に使われている化粧品や医薬品の成分は、そのほとんどが人体に悪影響がないことがすでに確認されている。このことから、昨今では動物実験の必要性について疑問視する人が増えており、クルエルティフリーについて注目が集まっているのである。

クルエルティフリーに関する各国の動き

近年、人々のサステナビリティ意識は向上しており、その一つとして「動物たちの権利」への関心も高まっている。そんな中、クルエルティフリーに関して各国はどのような動きを見せているのだろうか。

日本

日本の動物実験実施数は世界2位であり、動物実験を規制する法律や制度もないことから、クルエルティフリーへの取り組みは世界の中でもかなり遅れているといえる。一般消費者の間でも「クルエルティフリー」という言葉はあまり知られていないのが現状だ。

ただし企業単位でみると、クルエルティフリーに向けた取り組みは年々増加している。また、NPO法人日本ヴィーガン承認協会ではクルエルティフリー認証制度をスタートさせており、①動物実験を行っていないこと(動物実験を行っている業者に委託もしていないこと) ②動物実験を行った成分および動物由来の成分を使用していないことを基準に、認定を行っている。

国際的な傾向はクルエルティフリーに向かっており、動物実験を行った化粧品の輸入を禁止している国も増えている。そのため、今後は日本でも国としての取り組みが求められるようになるだろう。

海外

先述のように、特にヨーロッパでは早い段階からクルエルティフリーに関して国を挙げて取り組まれていた。その動きはさらに広がりをみせており、ブラジルやイスラエル、インド、韓国、台湾をはじめ、世界45ヵ国で化粧品製造における動物実験が一部もしくは全面的に法的禁止されている。その中には、動物実験が行われた製品の輸入、販売を禁止している国も多く、クルエルティフリーは世界的な動向といえるだろう。

またアメリカでは、カリフォルニア州、ネバダ州、イリノイ州を皮切りに、州法によって動物実験を禁止する州が年々増加している。

例えば、世界的にメジャーなクルエルティフリー認証制度であるリーピング・バニーは、アメリカとカナダの8つの動物愛護団体「CCIC」によって立ち上げられたものだ。最も厳しい基準が設けられていることから信頼性が高い認証マークとして、クルエルティフリーに関心が高い消費者の指標となっている。

クルエルティフリーに関する企業の取り組み

先述のとおり、日本ではクルエルティフリーに関する法整備は行われていないものの、動物実験に関する指針を策定している企業もある。ここでは、クルエルティフリーへの取り組みを行っている企業について見ていこう。

資生堂

大手化粧品メーカーの資生堂は、2013年に動物実験を完全廃止し、独自の厳格な基準を設けることで、動物を用いずに安全性を保証する体系へ移行している。

それだけでなく、資生堂独自または共同開発によって生まれた代替法を公定化するための活動も積極的に行っている。それによって、社会全体がクルエルティフリーに移行するよう働きかけており、経験とデータを蓄積してきた老舗メーカーならではの取り組みを続けている。

ヤクルト

飲料を中心に食品、医薬品、化粧品事業を展開する株式会社ヤクルトでは、「人も地球も健康に」というコーポレートスローガンのとおり、動物福祉の観点から化粧品および食品分野での動物実験を全廃している。

研究開発においては、動物の生命の尊重を重視し、倫理的かつ必要最小限の実験動物数で行うことや、苦痛の軽減に努めるなど、適正な対応と教育、管理を行っている。

クルエルティフリーのために私たちができること

クルエルティフリーのために私たちができること

すべての動物の生命を尊重することは同じ地球に生きるものとして当然のことであり、昨今ではアニマルウェルフェアやアニマルライツなど、動物の権利を守るための考えや運動が盛んになっている。

クルエルティフリーを当たり前の世界にするためには、実験動物たちの存在を改めて認識することがとても重要である。人間が健康に、美しくなるために数多くの動物たちが犠牲になってきたことを忘れてはならない。その上で、出来る限りクルエルティフリーの商品を選ぶことができれば、なおよいだろう。

日本では手にできる商品はまだ少ないものの、企業の取り組みを調べたり、啓蒙活動を行っている団体を支援することは、私たちにも可能だ。国を動かし、社会全体にクルエルティフリーを広げていくためには、一人ひとりの意識の向上が何よりも大切になるのである。

まとめ

人々のサステナビリティ意識が高まる中、人間の在り方や環境問題と同じく動物虐待も社会問題となり、ペットの販売禁止や家畜動物の福祉を保証するなど、動物が一生を豊かに暮らすための取り組みが急速に拡大しているのだ。

その対象は愛玩動物や家畜動物から始まり、野生動物まで広がっている。その中でも実験動物を対象として、残酷な動物実験から動物たちを解放しようとする運動やビジネスポリシーであるクルエルティフリー。日本では取り組み事例も少なく、消費者間でもあまり知られていない言葉だが、実は世界ではすでに45ヵ国でクルエルティフリーに関する法整備や法改正が行われているのだ。

サステナビリティを実現するためには、今とは異なる視点を持つ必要がある。動物たちの権利について考えることは、私たちの消費活動を見直すきっかけとなるだろう。

参考サイト
日本ヴィーガン協会クルエルティフリー認証 開始のお知らせ|NPO法人 ヴィーガン認証協会
化粧品の動物実験を禁止している国の一覧│PEACE
About Leaping Bunny | Leaping Bunny
動物を用いない安全性保証に対する取り組み | 安全性技術向上への取り組み | 安全性の保証 | イノベーション | 資生堂 企業情報
ヤクルト中央研究所のCSR活動|ヤクルト中央研究所

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