インフォデミックとは?情報リテラシーを高めるためにできることについて考える

インフォデミックとは?

インフォデミックとは、情報(インフォメーション)と流行病(エピデミック)を組み合わせた言葉であり、不正確な情報と誤った情報が迅速に広まる現象を指す。大量かつ急速に広がる情報の波によって、人々が信頼できる情報源を見つけることが難しくなることで発生する。この用語は2003年のSARS流行の際に世界保健機関(WHO)によって初めて使われた。その後、特にインターネットの普及とソーシャルメディアの台頭によって、この現象の影響力は急速に拡大している。

インフォデミックの影響

インフォデミックの影響

近年、ネットの活用が一般化し、誰もが情報を発信できるようになった。これまでマスメディアでは報じられなかったことも、ネットを通じて広まることも増えており、情報の民主化が起きているとも言える。しかし、情報発信が簡単になったがゆえに、間違った情報を信じ込んで拡散してしまうのも簡単になり、社会的混乱を招きやすくなっているのもまた事実だ。

たとえば、COVID-19のパンデミック中には、ワクチンに関する誤解、陰謀論、治療法に関する虚偽情報が広がり、多くの人々が必要な医療措置を受けるのをためらう原因となった。医療関係の偽情報が拡散は、人命に関わることであり、規制すべきだが、現状偽情報の拡散を防止する術はない。

さらに、インフォデミックは健康や安全だけでなく、経済や政治にも重大な影響を及ぼす。選挙や政策決定の過程で誤情報が広がると、有権者の意思決定が歪められる可能性がある。例えば、政治家が汚職やパワハラなどを告発された際、「実はその告発の裏にはXXという事実があり、その事実をカモフラージュするために告発は捏造されたのだ」という情報が広まった場合、有権者はどちらの情報を信じればいいかわからなくなるだろう。真偽不明の情報を信じた有権者によって、汚職やパワハラを告発した人の声がかき消されてしまう場合もある。インフォデミックは、真実から目を逸らさせ、人々を疑心暗鬼にさせるきっかけにもなる。

また、自然災害やテロ事件の際には、虚偽の警報や混乱を引き起こす情報が拡散され、対応が遅れる原因になることもあるのだ。

インフォデミックの具体例

次に、インフォデミックの具体例について確認していこう。

1 . COVID-19関連の誤情報。医療アクセスを妨げられる

コロナ禍には、さまざまな誤情報が拡散された。特に、ウイルスの出所や、ワクチンの安全性や治療法に関する根拠のない噂が広がったため、一部の人が必要な医療を受ける弊害となった。

2. 陰謀論の拡散。ピザ・ゲート事件

政治的意図や経済的利益のために、意図的に陰謀論が広められ、社会的な分断を加速させたり、暴力を促したりするケースもある。有名なのは、2016年のアメリカ大統領選挙中に広まった陰謀論だろう。その陰謀論では、民主党のヒラリー・クリントンが人身売買や児童性的虐待に関与しているとし、対する共和党のドナルド・トランプは、人身売買と戦う正義として位置付けられた。この陰謀論を信じたある男性は、人身売買の拠点となっているという触れ込みのピザ屋にライフルを持って踏み込み、発砲した。幸い怪我人は出なかったが、本事件は、陰謀論の恐ろしさを象徴する事件として知られ、ピザ・ゲート事件と呼ばれている。

3. 「朝鮮人が井戸に毒」人種差別の加速

関東大震災が起きた頃、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」と言うデマが広がり、朝鮮人虐殺という悲劇に繋がった。誤った情報が、苛烈な人種差別を引き起こしたのだ。災害時や戦時中など、社会が混乱している最中には、人々が誤情報を信じやすくなる傾向にある。

4. 有名アーティスト不倫デマ事件

暴露系インフルエンサーが「有名アーティストが不倫をし、事務所が10億払って揉み消した」というスキャンダルを拡散し、一夜にして日本中に広まった、という事件もあった。この事件は、当該アーティストがデマであることを即日自らの口で語ったことにより、騒動は鎮火した。この不倫やもみ消しという情報には、何の証拠もなかったが、「有名な暴露系インフルエンサーが拡散していたから」という理由で一定の信頼性が担保されてしまい、誤情報を信じた人の中には、何もしていない有名アーティストを悪様に罵る人もいた。この事件は、「インフルエンサーが言っていることだから」という理由で、証拠のない情報を信じ、拡散する人の多さを証明した事件となった。

インフォデミックの対策

インフォデミックの対策

次に、間違った情報を信じたり拡散したりしないために、できることを確認していこう。

1. ファクトチェックなどプラットフォーム側で規制を強化する

一つの方法として、プラットフォーム側がファクトチェックをする仕組みを設けるなどして、間違った情報拡散を阻止する、という方法がある。

例えば、Xでは「コミュニティーノート」という機能を設けている。コミュニティーノートは明らかに間違っているポストや誤解を招く表現をしているポストに対し、ユーザーが注意書きを追記できる機能だ。例えば、「◯◯人が増えたことで、治安が悪化している」というポストに対し「◯◯人は20年前から当該地域に住んでいるのであり、増加はしていない。また、◯◯人の犯罪率は◯パーセントであり、日本人平均よりはるかに低い。よって◯◯人と治安の悪化には統計的な関連性が確認されていない」など、追記することができるのだ。こうすることで、誤情報によって差別や分断を生むことを防ぐことができる。これは、ユーザー同士が評価し合ってファクトチェックをしているようなものだ。こうすることでより正確な情報を入手することができる。もちろん、ユーザーのコミュニティーノートも間違っている可能性もあり、完璧ではない。しかし過激なポストに対し、別の人が注釈をつけることで、インフォデミックを防げる可能性は格段に上がるだろう。

2. AIで誤情報を特定する

プラットフォーム側でAIを活用し、誤情報を特定する仕組みを作ることも大切だろう。AIは完璧ではないが、人が手動で誤情報を特定するのは無理があるため、テクノロジーに頼るべきところは頼る必要があるだろう。

3. 情報取捨選択のリテラシーを高める

インフォデミックを防ぐためには、ネットリテラシーを向上させるための教育の役割が非常に大切だ。

「SNSで拡散されていたから」や「偉い人が言っていたから」と言って、正しい情報だと信じてしまうのは非常に危険だ。例えば、有名な発信者が政治に関する誤った情報を拡散し、それを鵜呑みにして有権者が選挙行動を変えることもある。

こういったことを防ぐためにも、個々人がソーシャルメディアやニュースサイトで目にする情報を疑い、信頼性を確認するための具体的な方法を学ぶ必要がある。

具体的には、過去のインフォデミックの事例を教材として採用し、なぜそんなことが起きてしまったのか、原因究明をする授業をするのもいいだろう。情報の発信元、信頼性、意図を分析するスキルを育成する必要もある。また、情報を拡散する時に気を付けることも学ぶべきだろう。受け取る情報の真偽を疑い、批判的な目で見て取捨選択できるスキルが養われれば、インフォデミックに巻き込まれる確率も下がるはずだ。

誤情報を発信・拡散しないためには

人はショッキングな情報に接した時、情報のソースを確認せず、すぐに「いいね」を推したり、拡散したりしてしまいがちだ。しかし、その情報が誤っていた場合、社会的な分断を強めたり、人命に関わったりする可能性もある。

誤情報を発信したり、拡散したりしないために、受け取った情報を鵜呑みにせず、批判的な目で見て取捨選択することが大切だろう。

参考記事
WHOとユニセフ : インフォデミック ・ マニュアルを発表|日本WHO協会

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