6次産業とは?5つの事例をもとに基礎知識を解説

6次産業とは 

6次産業とは、生産・加工・流通・販売という過程を一貫しておこない、商品の付加価値向上をねらう取り組みのこと。

産業は従来、以下の3つに分類されており、これらの数字を掛け合わせると「6」になることから、新たな産業形態として6次産業と呼ばれている。

  • 1次産業(生産)
  • 2次産業(加工)
  • 3次産業(販売)

6次産業化を進めているのは、主に農林水産業に関わる人々だ。今までは、1次産業の「生産」の過程にのみ集中しており、農作物の栽培や動物の飼育までに留まっていた。6次産業化に取り組むようになってからは、業者たちはみずから生産物の商品化や直売所での販売までおこなうようになった。

これにより、流通や販売の過程で別の業者に資金を払う必要がなくなり、さらに担う業務が増えることで雇用も生み出す。6次産業は、1次産業が中心だった地方を中心に、経済や雇用を盛り上げる策として注目されているのだ。

6次産業の5つの事例

6次産業の5つの事例

一概に6次産業といっても、その形態はさまざまだ。ここでは代表的な事例を5つ紹介する。

1. 農家レストランの運営

一つ目は、農家で採れた野菜などを、そのまま調理して提供するレストランだ。客は地域で採れた新鮮な野菜を味わえるため、料理の味だけではなく、季節感や土地柄を楽しめる。

普段外食するとき、客はレストランの味に注目するが、仕入れ先はあまり目を向けない。一方で農業レストランのように、その土地の食材を活かすことを目的にしており、地域の特産品の味や調理法を知ってもらう機会をつくれる。

さらに、環境に優しいというメリットがある。その土地で採れた野菜を使うため、都心のスーパーや飲食店への出荷に比べると、移動距離が短くなる。そのため、配送にかかるコストや温室効果ガスの排出量が抑えられるのだ。

具体的な例として、滋賀県高島市の「sato kitchen」がある。有機野菜を育てる夫婦みずからが飲食店を経営することで、本当の野菜のおいしさを伝えているという。農業とレストラン経営を一貫して行うことで、「おいしい」という顧客の反応を直接目にすることができるのも魅力のひとつだ。

2. 直売所の食材販売

地元で採れた食材や、加工品をその場で販売する取り組みも6次産業のひとつ。従来のようにスーパーで仕入れる場合は、どうしても安い農作物が売れる傾向にある。まだ名の知れていない特産品や値のつくブランド物は、消費者に選ばれにくい。

しかし直売所は、観光客やドライブ中の人々にとっても立ち寄りやすい場所だ。そのため、おみやげとして地元の特産品などを広めるきっかけにもなる。

農家レストランと同様、生産地の近くで販売されるため、配送コストや環境負荷が軽減される。さらに、販売員等はスキルや専門的な知識が不要なため、年齢や経験を問わず、幅広い雇用の機会を生むメリットがある。

直営所経営で成功しているのが、山梨県甲州市の「農業生産法人 株式会社四季菜」だ。経営をはじめた2009年の売上高は6200万円で前年の約2倍。8人だった雇用者は3年で22人に増えた。

3. ECサイトでの販売

食材や加工品を自社のインターネットサイトで販売する方法もある。他社のインターネットサイトで販売する場合は手数料の支払いが必要だったが、自社運営の場合はコスト削減につながる点が強みだ。

また、売上や顧客動向のデータを自ら得やすいのも、ECサイト運営の強みだ。現地を訪れた客がリピーターとなり、ECサイトで同じ商品を購入することもある。

和歌山県有田市の「株式会社早和果樹園」は、ECサイトで2020年に売上を1.4倍伸ばすことに成功した。成功要因は、オンラインで販売管理をすることで数値分析を行い、強みや改善点を整理できたことだ。

4. オリジナル商品の開発

生産品を、みずから商品化し、実店舗やインターネット上で販売できるようにする取り組みもある。ブランド品などは品質をアピールした商品を開発し、生産品の魅力を世間に伝えられる。

規格外となりスーパー等で販売できない生産品や、一般の消費者が調理方法に悩む食材を活用した商品も発売されている。さらに作物を加工することで出荷シーズン以外も収入を得ることができ、食品ロスの減少や安定的な売上獲得にもつながっている。

愛知県豊田市の「株式会社山恵」はシカやイノシシなどの肉を加工し販売している。これらの動物はジビエ肉として好まれる一方で害獣としても見なされてきた。今まで捕獲後に処分されていた肉を山の恵みとしていただき、有効的に活用している。

5. 体験教室の実施

具体的には、収穫体験、料理教室、お菓子づくりなどの開催が挙げられる。老若男女問わず、幅広い人に楽しんでもらえるため、より多くの消費者に生産品に触れる機会を提供できる。

販売や実食だけではなく、実際に収穫や調理の過程を経験することにより、子どもらの食育体験にもつながる。また消費者に体験の機会を提供することで、自治体誘致や深い生産品の魅力発信に繋げられるのは、6次産業ならではの利点だ。

徳島県吉野川市のシイタケ農家は農家レストラン「きのこの里」を運営しながら、こんにゃく作りや藍染めなどの地元の特産品・伝統を活かした体験型イベントを提供。取り組みを通じて都市部に住む人々との交流が活性化し、そこから移住してくる人もいるという。

6次産業のメリットとは

1次産業の6次産業化が進む背景には、主に3つのメリットがある。

  1. 生産品販売にかかるコストの軽減
  2. 雇用の創出
  3. 所得の向上

6次産業では、加工や販売など、今までほかの業者に依頼していた作業をみずから担うことになる。そのため、契約先の業者にかかっていたコストを支払う必要がなくなり、生産販売にかかるコストが減るのだ。

さらに、加工や販売をみずからおこなうとなると、自社で労働者を集めることになる。安定した経営をおこなうため、自営業やパートタイムの雇用創出に加え、正社員の雇用が必要だ。

加工や販売にかかっていたコストが、生産者の手元に残るようになる。さらに地元で働く人々は安定した職に就き、一定の給与が保障されるようになるだろう。結果として、関わる人々の所得が向上するという循環が起こりやすい。

6次産業の課題

6次産業には利点が多いが、一方で持続的な経営やマーケティング戦略が、壁となる。

特に、次の3点でつまずく生産者は多い。

  1. 収益化
  2. 他社との差別化
  3. 十分な人材の確保

6次産業に足を踏み入れる際、レストランや直売所であれば土地代、ECサイトであればウェブサイトの立ち上げなど、初期費用がかかってしまう。販路を拡大した先で、経営が安定して収益が発生するまで時間がかかるのだ。そのため、加工や販売に取り組む際には、収益化までのスケジュールや資金の確保について計画しておく必要がある。

また、消費者に利用・購入してもらうためには、「この商品だから買いたい」と思ってもらわなければいけない。他社との差別化がマーケティングには必須であり、この手順を飛ばすと、他の商品に埋もれてしまう。

さらに生産業が活発な地域は、人口が少ない傾向にある。働きたい・働きつづけたいと思ってもらうためのきっかけづくりはもちろん、最初はマンパワーがかからない小さな事業からはじめることも大切だ。

まとめ 

6次産業化は、持続的に経営できるように準備をしておかなければ、頓挫し損失が発生する可能性も避けられない。

一方で、生産地や産業にかかわる人々の経済を安定させる魅力的な取り組みでもある。消費者にとっても、今までとは違う商品に出会えるのは嬉しく、さらに環境面の負荷が少ないというメリットもある。

地方での産業が衰退する傾向にあるなか、生産品の販路を広げ、多くの人に魅力を届けるきっかけになることを期待する。

参考記事
6次産業化の取組事例集|農林水産省
sato kitchen
ブランド店 農業生産法人 株式会社四季菜(山梨県甲州市)農林水産省
6次産業化 取組・商品事例集(東海農政局分抜粋)|東海農政局

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