
モノカルチャー経済とは
モノカルチャー経済とは、mono(単一の)とculture(作物)を合わせた言葉で、単一の作物だけを栽培することで収益を得る経済を意味する。日本では「単一栽培」または「単一耕作」とも呼ばれる。
モノカルチャー経済は、発展途上国で多く見られる仕組みで、国の産業や輸出が特定の一次産品に依存することから偏った形の経済と評される。一次産品は自然界の影響を受けやすく、その年の豊凶によって価格変動が起こるため、収益が安定しにくいなど、大きな問題が指摘されているのだ。
多くの途上国が属する熱帯、亜熱帯地域では「プランテーション」という単一栽培の大規模農園が広く開発されており、これがモノカルチャー経済の構造を作り出している。
モノカルチャー経済の歴史
モノカルチャー経済が生まれたのは、16世紀とされる。この頃、ヨーロッパ諸国は航海技術の発展により、次々に世界へ進出していた。いわゆる「大航海時代」である。
特にスペインとポルトガルが覇権を争っており、ラテンアメリカ諸国を次々と植民地化していた。そして1530年代、ポルトガルの植民地であったブラジルでプランテーションが開発され、サトウキビの単一栽培が始まった。これらのサトウキビは、砂糖に加工してヨーロッパで流通し、莫大な富を築くようになる。
その後、ヨーロッパ各国によるアジア・アフリカの植民地支配が広がる中、各地でコーヒー豆、カカオ、お茶などのプランテーションが建設され、黒人が奴隷として扱われるようになった。
これらの生産は、支配国側の需要を満たすために行われており、現地の経済は決して豊かにならなかった。さらに、産業革命によって支配国側は工業化していく中、本国では作れないものを栽培させられていたため、植民地の工業化は大幅に遅れていた。
このことから、第二次世界大戦後に各国で植民地が次々と独立していくものの、現在でも多くの途上国でモノカルチャー経済を脱却できない状況にあるのだ。
モノカルチャー経済の主要な品目

モノカルチャー経済の中心になっているのは、以下のような商品作物である。これらは需要があるため換金性が高く、現地農家の大きな収入源となっている。
- コーヒー
- 綿花
- カカオ
- 紅茶
- サトウキビ
- トウモロコシ
- 小麦
- バナナ
- パーム油(アブラヤシ)
- 天然ゴム
また、モノカルチャー経済は農産物だけではなく、特定の天然資源に依存している場合もある。例えば、アフリカの国々では原油や天然ガスのほか、金や銅、ダイヤモンドなどの鉱物資源によるモノカルチャー経済構造が出来上がっている。
モノカルチャー経済が問題視される理由
モノカルチャーは途上国の経済を支えるものである一方、デメリットの方が多いのが現状だ。どのような要因が問題となっているのだろうか。
価格変動が生活に直結する
プランテーションで作られる作物は、先述の通り天候の影響を受けやすく、価格が変動しやすい。特にチョコレートやコーヒーなどの嗜好品は、ほとんどが先進国で消費されているため、それらの国の景気によって上下するという特徴もある。
それに加えて、生産しているのは自分たちが普段の生活で食べられるような作物ではないため、「収入がなくとも、とりあえず食べるものはある」という状況にもならない。この自給率の低さも問題であり、価格が安定しないことが、そのまま農家の生活に直結するのだ。
環境に悪影響を及ぼす
特定の作物を栽培すると常に同じ資源を消費することになり、水が枯渇するなどの問題が起きる。また、パーム油の原料であるアブラヤシを生産する東南アジアでは、プランテーション開発のため大規模の熱帯雨林が伐採されたり、野焼きが行われたりしている。
これにより生物多様性の損失や生態系の破壊、森林破壊、煙害など自然環境に悪影響を及ぼしているのだ。
各地域の伝統を壊す
モノカルチャー経済は、それまで行われてきた各地の伝統的な農業や文化、在来品種を壊していることが指摘されている。
また、農地の開発によって先住民たちが住む場所を追われ、トラブルとなっている例もある。古来森で暮らしてきた民族たちの伝統的な知恵も失われてしまうのだ。
なぜモノカルチャー経済を脱却できないのか

これほどたくさんの問題を抱えていながら、モノカルチャー経済に頼らざるを得ない理由として、貧困問題が大きく関わっている。
植民地時代の影響を受け、発展途上国では未だに前近代的な生活を強いられている国が多い。そうした国は経済状況が安定しないため、国民も貧困に陥りやすく、子どもに十分な教育を受けさせられない家庭も多数存在する。子どもを育てる大人たちも、幼いころから働かされるため学校へ通えず、教育の重要性を理解しないまま育ってしまうのである。技術面でも、特定の作物を生産する方法しか知らないという人がほとんどだ。
国全体が貧しければ学校教育を行うこと自体が困難になり、新しい産業やビジネスモデルを生み出そうにも、知識を持った人材を育成することができなくなる。
さらに、モノカルチャー経済での食物自給率の低さも問題だ。農園では自分たちの食料を栽培することができないため、日々食べていくだけで精一杯になってしまう。このような状況では、資金を教育に充てたり新しい産業に投資する余裕は生まれない。
つまり、他の仕事に就けるような技術もなく、教育も受けられない。少しでも収入を得るためには、結局今まで通りの単一栽培を行うしか方法がない。しかしそれでは、新たな経済の発展は見込めなくなる、という悪循環に陥っているのだ。
モノカルチャー経済のメリット
モノカルチャー経済の構造は大きな問題を抱えているが、一方でメリットも存在する。途上国では、このメリットによって少なからず収益を得ることができるのだ。
生産効率が高い
モノカルチャー経済では、同じ作物だけを育てるので生育や収穫の時期にバラつきがなく、肥料も同じもので済む。また、開発や研究にかかるコストも抑えられる。さらに、生産される作物は、そもそもその地域の環境に適した品種であるため、非常に効率良く安価で大量生産できる点は大きなメリットである。
専門知識を得られる
特定の作物に対する深い知識が得られることも、モノカルチャー経済のメリットだろう。品種改良や栽培、加工に関わる技術を取得することで、より良い質の作物を提供することができる。それによって高い評価を得られ、高値で取引してもらうことも可能になるのだ。
高い収益を見込める
穀物など生活に必要な作物は一定の供給量が求められるため、安定した収入を得ることができる。また、嗜好品は景気に左右されるので売れなくなる可能性もある一方、需要が高まったタイミングで、莫大な利益を得られる可能性もある。
モノカルチャー経済の問題解決に向けて

モノカルチャー経済から脱却し、途上国が経済的に自立するためには、どんな取り組みを行えばいいのだろうか。
一番効果的な解決策は、産業を多様化させることだ。特定の作物の生産や資源に頼るのではなく、複数の農産物を栽培したり新しい産業を創出することで、リスクを分散させることができる。特に天候に左右されない生産品であれば、不作による収入減の不安もなくなるだろう。
なお、このように産業を創出して多様化するためには、知識を有する人材を育成することが不可欠だ。教育やスキル獲得の機会を与えることで、他の仕事に就くこともできるようになる。教育への投資は、長期的な視点で考えると経済安定に繋がっていくのである。
ただし、これらの解決策には莫大な費用がかかるため、途上国だけで行うことは困難である。そのため、取引先である先進国の協力が必要だ。例えば、先進国が培った技術を提供したり、フェアトレードによって適正な価格で購入することが挙げられる。特にフェアトレードは国や大企業だけではなく、私たち消費者にも日常的に行える支援だ。
まとめ
特定の作物に依存するモノカルチャー経済。先進国を対象とした嗜好品の栽培が多いため、大きな利益をもたらす可能性があるものの、不作などにより経済的に不安定な状況を作りやすいという特徴が問題視されている。
産地の多くはかつて植民地化されていた場所であり、第二次世界大戦後に次々と独立したものの、その経済状態は向上せず、貧困問題を抱えている。
世界を公平公正なものにしていくためには、こうした途上国の問題を一つひとつ解消していかなければならない。平和で誰もが暮らしやすい未来をつくるために、個人にもできることがないか、改めて考えてみてはいかがだろうか。
Edited by k.fukuda
参考サイト
環境用語集:「モノカルチャー」|EICネット
1 経済のグローバル化と地域経済|環境省
モノカルチャー経済脱却と経済統合を目指す!アフリカ域内貿易の活性化への取り組み | アフリカビジネス
第2回 なぜフェアトレードなのか|渡辺龍也|国民生活センター
南アフリカには豊富な資源があるのに どうして貧困が続いているの?~アフリカ州~ | NHK for School
モノカルチャーのリスク|小宮山涼一|東京大学






















秋吉 紗花
大学では日本文学を専攻し、常々「人が善く生きるとは何か」について考えている。哲学、歴史を学ぶことが好き。食べることも大好きで、一次産業や食品ロス問題にも関心を持つ。さまざまな事例から、現代を生きるヒントを見出せるような記事を執筆していきたい。( この人が書いた記事の一覧 )