アンダードッグ効果とは?弱い立場を応援したくなる心理や問題点をご紹介

アンダードッグ効果とは

アンダードッグ効果とは、一般的には不利な立場にいる者が応援されたり、支持されたりする現象を指す。もともと犬の闘技場で負けそうな犬を指す言葉として使われていた「アンダードッグ(underdog)」という英語に由来する。現代では、スポーツや選挙などの競争において、不利な立場にある個人やチームを意味するようになった。

アンダードッグ効果は、人々が弱者を応援したいという心理に基づいている。この効果は、特にマーケティングや政治の分野で活用されることが多い。企業は、自社の商品やサービスが市場での劣勢にあると訴えることで、顧客の共感や支持を引き出す戦略をとることがある。ただし、企業側が意図せずアンダードッグ効果が働くケースもある。

一方、政治の分野では、候補者が「アンダードッグ」として自らを位置付けることで、有権者の共感や投票行動を促すことがある。単なる同情や応援の気持ちだけでなく、「自分たちも同じように困難を乗り越えられる」という希望や勇気を与える要素も含まれている。これにより、支持者たちは一体感を感じ、より積極的に応援する動機となるのだ。

また、アンダードッグ効果は認知バイアスの一種でもある。認知バイアスとは、人間の思考や判断が偏りやすい性質のことだ。人々が弱者を応援したくなる心理は、必ずしも合理的な判断に基づくものではないが、このバイアスは多くの場面で見られる現象である。

バンドワゴン効果との違い

アンダードッグ効果とバンドワゴン効果は、どちらも人々の行動や判断に影響を与える心理現象だが、両者は真逆の意味を持つ。バンドワゴン効果は、多数派の意見や行動に同調する傾向を指す。つまり、多くの人が支持しているものを自分も支持することで、安心感や一体感を得る心理が働く。例えば、人気のある商品や流行に流されて購買を決める場合がこれに該当する。

反対にアンダードッグ効果は、不利な立場にある者や弱者に対して共感や支持を示す傾向を示す。バンドワゴン効果が多数派に同調する心理であるのに対し、アンダードッグ効果は弱者への共感から生まれる心理であり、全く逆の方向性を持つことが特徴だ。

相反する2つの心理は誰しも持ち合わせるものだが、自己の判断を歪めらる可能性もある。自己の意思決定のバイアスを意識し、より客観的な判断を下す助けとなる。

アナウンスメント効果との違い

アナウンスメント効果とは、報道や世論調査がその後の行動に与える影響のことである。具体的には、選挙で特定の候補者が有利と報じられた場合に、その情報が有権者の行動に影響を与えることがある。例えば、有利な候補者がさらに票を集める現象は「バンドワゴン効果」で、劣勢の候補者が同情や危機感を生んで票を集める現象は「アンダードッグ効果」だ。

アンダードッグ効果もバンドワゴン効果も、報道や情報がもたらす影響を受ける一種のアナウンスメント効果と言える。どちらの効果も、情報が人々の心理にどのように影響を与えるかを理解するために重要であり、マーケティングや政治戦略においても注意が必要だ。

アンダードッグ効果の具体例

アンダードッグ効果の具体例

アンダードッグ効果は、気付かぬうちに誰もが体験している現象であると言える。代表的な例を以下に挙げてみよう。

スポーツ

アンダードッグ効果は、スポーツの世界で特に顕著だ。弱いチームが強豪チームと対戦する際、ついつい弱いチームを応援してしまう人も多いのではないだろうか。特に接戦になればなるほど、観客の応援は熱を帯びる。また、大柄な選手と小柄な選手が戦う試合でも、小柄な選手を応援したくなる心理がはたらく。これもアンダードッグ効果の一例である。

例えば、2018年の夏の甲子園では、練習環境に恵まれず、主力選手も少ない金足農業高校が準決勝に進出し、優勝常連校の大阪桐蔭高校と対決した。この対決では、圧倒的に不利な状況にある金足農業高校に対し、多くの観客が応援を送った。このように、スポーツにおいてアンダードッグ効果は身近なものであり、人々の応援心理に大きな影響を与える現象である。

選挙

アンダードッグ効果は、選挙においてもよく見られる。例えば、2010年の日本の選挙では、当時の民主党を評価する有権者が、選挙予測で不利と報道された候補者に投票するというアンダードッグ効果が生じた。また、アメリカ大統領選挙の予備選挙では、候補者が自らを劣勢の立場に位置付けることで、有権者の同情や支持を集める戦略が見られる。

2016年の大統領選挙では、ドナルド・トランプが自らを公職に就いたことのない人物としてアンダードッグと語り、支持を集めた。さらに、2019年の香港区議会議員選挙では、デモ活動が失敗したことで民主化を求める側に対する同情が広まり、投票率が大幅に上昇した。このように、アンダードッグ効果は選挙においても有権者の行動に大きな影響を与える現象である。

マーケティング

アンダードッグ効果はマーケティングでも広く活用される。例えば、レンタカー業界2番手のエイビスが「2位だから、もっと頑張ります」と広告を打ち出し、翌年から利益を増加させた事例がある。自社を「挑戦者」として位置付けることで、消費者の共感と支持を集めたのだ。

また、商品の過剰入荷を理由に値下げを実施すると、その不利な状況に対する同情から購買意欲が高まる。この効果がはたらくと、顧客は時に必要性やコストパフォーマンスを超えて購入することがある。実際、発注ミスをSNSで呼びかけた店舗がすべて完売した事例も多い。このように、アンダードッグ効果によって、消費者の購買意欲が刺激されることがあるのだ。

エンターテイメント

アンダードッグ効果の影響は、エンターテイメントの世界でも見られる。例えば、アイドルグループの中でも、何をやっても上手くいかないキャラがファンに愛されることがある。売れているアイドルよりも、なかなか売れず泥臭く頑張る姿に共感し、応援したくなる心理が働くからだ。

また、クラウドファンディングやSNSでのシェアなどでも、アンダードッグ効果により大きな反響が得られることが多い。動画配信者が友達が少ないことをアピールしたり、コンプレックスをさらけ出したりするようなコンテンツが反響を呼ぶことも多い。アンダードッグ効果は、視聴者やファンの心を掴むのである。

弱い立場を応援したくなる心理

弱い立場を応援したくなる心理

アンダードッグ効果のように、弱い者や劣勢の立場にある者を応援したくなるのは、以下のような心理が働くからだと考えられている。

相手への同情や共感

弱い立場を応援したくなる心理には、相手への同情や共感が大きな役割を果たしている。共感とは、他者の感情や考えに寄り添うことであり、相手の状況を理解し、その感情を分かち合う力である。

同情は相手の困難を理解し、心から「大変だな」と感じることだが、共感はその先に進み、具体的な行動を引き起こす。同情から共感へと進むことで、人は「何か手伝えることはないか」と考えるようになり、行動に移す。

このような行動は、アンダードッグ効果を生み出し、弱者を支援する力となる。共感力は、相手からの感謝や周囲の人々への影響を通じて、さらに広がりを見せる。このように、同情や共感は、弱い立場の人々を応援する心理のベースとなっている。

弱いものを守りたくなる本能

人間は社会的な生き物であり、集団を維持するために他者の困難に対して「守らなければならない」と感じる力を持っている。特に赤ちゃんや高齢者を見ると、自然と「助けてあげたい」と感じることが多い。

この本能は、ダーウィンの進化論にも関連しており、同情する感情が集団を強くする要素となる。アンダードッグ効果では、この本能が働き、困難な状況にある者を応援し、支援したくなる心理が発揮されるのだ。人々は、弱者を助けることで自分自身の社会的価値や存在意義を確認し、社会全体の結束を強めるのである。

感動を期待する

不利な状況に立ち向かい、全力で頑張る姿は人々に強い感動を与える。例えば、大逆転やドラマチックな展開が予想されると、人々はそのドラマに引き込まれ、応援したくなる気持ちが高まる。

また、実際に手を差し伸べて状況が好転すると、「自分たちが救った」「自分の関わりで状況が改善された」という達成感が生まれ、それがさらなる感動を呼ぶ。こうした感動を期待する心理が、弱い立場の者を応援する動機となり、アンダードッグ効果を引き起こすのだ。

アンダードッグ効果は日本人によく見られる?

日本ではアンダードッグ効果が特に顕著であると言われる。それは、日本文化に根付いた「判官びいき」にも表れており、劣勢な立場にある人々への同情や共感が高まりやすいのだ。

「判官」とは九郎判官のことを指すが、これは源義経のことだ。義経は、兄の頼朝との確執や武蔵坊弁慶との絆、静御前との恋愛話など、数々の逸話で多くの日本人に共感されてきた。しかしその一方で、義経の異母兄である源範頼は、迫害や苦難を受けたにもかかわらず、同様の同情や支持を受けることはなかった。

このエピソードのように、日本人はアンダードッグ効果の影響を受けやすいが、その対象を選別する傾向があると考えられている。

アンダードッグ効果の問題点

アンダードッグ効果にはいくつかの問題点が存在する。まず、感情に基づいた判断が合理的な決定を妨げることがある。人々は弱者への同情や共感から支持を送るが、その選択が最善とは限らない。

また、アンダードッグ効果を過度に利用するようなケースでは、実際には劣勢でない者が意図的に自らを弱者として演じる場合がある。これにより、真の弱者が支援を受けられなくなるリスクがある。

さらに、アンダードッグ効果は一時的な感情に依存するため、持続的な支持や援助が難しいことも懸念される。人々の関心が移り変わる中で、短期間での支援に終わりがちであり、長期的な解決にはつながりにくい。

アンダードッグ効果は、マーケティングや政治、恋愛などさまざまなシーンで利用されることがあるが、その際には慎重さが求められる。感情と合理性のバランスを保つことが重要であり、判断を歪められないようバイアスの存在を理解することが大切だ。

まとめ

アンダードッグ効果とは、不利な立場にある者を応援したくなる心理現象である。この記事では、アンダードッグ効果の具体例やその背後にある心理、さらにその問題点について解説した。しかし、感情に基づき、判断が歪められる可能性も否めない。

アンダードッグ効果は、共感や同調など私たちの本能に基づいた認知バイアスである。完全に制御するのは不可能に近いが、自身の思考が無自覚のうちに操られないようにしたい者である。重要な決断を下す際には、客観的な立場に立ってひと呼吸おいてみることも必要だろう。

参考記事
平泉の歴史|平泉の文化遺産
アイドルに対するファンの心理的所有感とその影響について|日本マーケティング学会
選挙予測報道は選挙結果に影響するのか? ── 国立情報学研究所准教授・小林哲郎
野球も選挙も短期決戦は怖い 「バンドワゴン効果」と「アンダードッグ効果」、どう働くか|産経ニュース

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