子どもの権利条約とは
子どもの権利条約とは、18歳未満のすべての子どもの権利を守るために定められた条約で、1989年11月20日に開催された国連総会で採択された。正式には「児童の権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child)」と言う。
条約の中では、すべての子どもが毎日を幸せに暮らせることを目指して、子どもも大人と同様に一人の人間としてさまざまな権利を持つこと、成長の途中において必要な保護や配慮といった子どもならではの権利を合わせて持つことなどが定められている。
日本は1990年9月21日に109番目で署名し、1994年4月22日に158番目の批准国となって、1994年5月22日に効力が生じている。2024年は批准から30年という節目の年を迎えている。SDGsの目標およびターゲットの中でも、子どもの権利に関する内容に触れられるなど、子どもを一人の人間として尊重し、権利を守ることは世界共通の社会課題の一つとなっている。
子どもの権利条約ができた経緯
「人権」という考え方は18世紀に生まれたとされるが、国際社会において人権に価値があることを初めて認めたのは第二次世界大戦後の1948年のこと。国際連合において採択された「世界人権宣言」においてだ。
その後、社会的に弱い立場にある人たちの人権を守るために、さまざまな条約が採択されるようになる。1959年の「児童の権利に関する宣言」、1965年の「人種差別撤廃条約」、1979年の「女子差別撤廃条約」などがその代表だ。
子どもの権利条約は、子どもの人権を守るために1959年に採択された「児童の権利に関する宣言」をもとに枠組みが作られた。1989年には国連総会で採択され、翌年の1990年に発効している。
子どもの権利条約の批准国・地域は、2023年11月時点で196カ国(加入や承継の手続きをしている国・地域は含まない)となっている。これは国連加盟数よりも多く、世界で最も広く受け入れられている人権条約となっている。
子どもの権利条約の役割

子どもの権利条約に批准した国・地域は、条約で定められた権利を実現させるために自国内で関連の法律を作り、予算を確保して政策に取り組む必要がある。
また最初は2年以内、その後は5年ごとに、子どもの権利を守ることを目的に実施した取り組みについて「国連子どもの権利委員会」に報告しなければならない。「国連子どもの権利委員会」では、建設的なプロセスに向けて、報告書をもとに各国と対話を行いながら審査を実施。取り組みを評価した上で改善点を勧告する「Concluding Observations(総括所見)」という文書を提出する。「総括所見」を受け取った各国では、子どもの権利を守るために、取り組み策を改善したり、強化することになる。
すべて子どもの権利条約によるものとは言えないが、1990年時点では出生1,000人あたり93人の5歳未満児が命を落としていたが、2022年時点では37人にまで減少したとユニセフが報告している。各国で子どもの権利を守るための取り組みが始まり、児童労働や人身売買、性的搾取といった社会的課題の解決が進んだ契機となったことは間違いない。
子どもの権利条約で守られる子どもの権利
子どもの権利条約は全54条あるが、そのうち国連が一般原則として定めている「差別されない権利(第2条)」「子どもの最善の利益(第3条)」「生きる権利と成長する権利(第6条)」「自由に意見をいう権利(第12条)」の4つは「4つの原則」と言われる。そのほか代表的な権利についても紹介する。
「4つの原則」
国連は一般原則として「4つの原則」を定めている。
「差別されない権利(第2条)」
人種や皮膚の色、宗教、性、財産、障がい、社会的身分などに関わらず、差別されないことを保障する権利のこと。
「子どもの最善の利益(第3条)」
子どもが関わるすべての活動において、子どもの最善が第一に考えられる権利。どのような状況下でも、利益を最優先してもらう権利を子どもは有している。
「生きる権利と成長する権利(第6条)」
生きること、さらには成長する権利も子どもは持っている。ただし、ただ生かされるのではなく、戦争や暴力、貧困、差別などから守られ、健やかに発達する権利を指している。
「自由に意見をいう権利(第12条)」
権利の主体となって自由に意見が言える権利のこと。意見表面権や意向尊重権とも言われ、意見を正当に尊重してもらう権利も含まれている。
その他の代表的な権利
子どもの権利条約では、具体的に子どもの何を守ってくれるのか、それぞれの条文を見ていきたい。
「親と引き離されない権利(第9条)」
子どもは発育にとって欠かせない親と引き離されない権利を持っている。ただし虐待などの事例では、子どもにとって親と離した方がいいケースもある。
「適切な情報の入手(第17条)」
自分の成長に役立つ情報を手に入れる権利のこと。国は子どもの成長にとって役に立つ情報を提供する一方、良くない情報から子どもを守ることも求められている。
「あらゆる暴力からの保護(第19条)」
子どもが暴力を受けたり、不当な扱いを受けない権利。そのためには、国が適切に子どもを守り、保護することが求められている。
「家庭を奪われた子どもの保護(第20条)」
家庭を奪われた子どもは、代わりの保護者や家庭を用意するなど国から適切に保護される権利を持っているということ。家庭にいることは良くないと判断され、家庭にいられない子どもも同様に保護の対象となる。
なお、子どもの権利条約全54条のうち、子どもに関する条約は第1条から第42条まで。第43条から第54条は国や国際機関などに対する約束となっている。
日本の現状

子どもの権利条約への批准後、日本では、子どもの権利の考え方を取り入れる自治体が増えていった。代表的なのは、神奈川県川崎市の「子どもの権利に関する条例」(2000年12月制定)、東京都目黒区の「子ども条例」(2005年11月制定)、愛知県名古屋市の「なごや子ども条例」(2008年3月制定)などだ。
子どもの権利が法律に明文化されたのは2016年に改正された「児童福祉法」が最初とされる。児童が有する教育を受ける権利、健やかな成長や自立が保障されるなどの権利が明確にされている。
また、子どもの権利条約に批准した後、日本政府は国連子どもの権利委員会に5回の報告を行っている。その際の国連からの総括所見では、以下の6つの課題について言及されている。
- 差別の禁止
- 子どもの意見の尊重
- 体罰
- 家庭環境を奪われた子ども
- リプロダクティブヘルスおよび精神保健
- 少年司法
引用:国際連合 CRC/C/JPN/CO/4-5 (日本の第4回・第5回政府報告に関する総括所見)
具体的な内容として、「差別の禁止」に関しては包括的な反差別法が存在しないことなど、「体罰」に関しては学校において効果的に体罰禁止が実施されていないことなどが指摘されている。なお、「差別の禁止」などは第1回目の報告から指摘されていることで、改善が進んでいないこともわかる。
日本政府の取り組み
2016年に「児童福祉法」が改正された後、日本政府は法律の整備を行い、2022年6月に「こども基本法」が成立、2023年4月に施行された。
「こども基本法」では、子どもの権利条約の精神に則り、すべての子どもが将来にわたって幸せな生活ができることを目指すために、子どもに関する政策を総合的に推進することとなっている。そのために次の6つの基本理念を掲げている。
- すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。
- すべてのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。
- 年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会のさまざまな活動に参加できたりすること。
- すべてのこどもは年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され、こどもの今とこれからにとって最もよいことが優先して考えられること。
- 子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。
- 家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること
引用:こども家庭庁「こども基本法」
また、2023年12月には「こども基本法」に基づき、子ども政策を推進するために「こども大綱」が閣議決定されている。「こども大綱」では「こどもまんなか社会」を目指して、子どもに関するさまざまな施策を推進するとしている。
NPOなどの取り組み
子どもの権利に関する考え方を浸透させるために、NPOなどが主導して行っている活動もある。代表的なのが「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」だ。子どもにとって最善の利益が確保される社会の構築のために、ネットワークの構築や政策提言、啓発などの活動を行っている。
また認定NPO法人「3Keys」では、生まれや育った環境が子どもの権利侵害につながらないことを目指して活動している。具体的な活動内容は、子どもが利用できるセーフティーネットづくりやコンテンツづくり。また「白書 日本の子どもたちの今」で、貧困やいじめ・不登校、虐待など、子どもたちがどのような状況に置かれているのかを発信している。
子どもの権利を守るために私たちができること
子どもの権利を守るには、まず子どもも一人の人間として価値があり、権利を持っていることを知るほかにならない。そして、権利侵害はいつでも、どこでも起こりうるものと認識することが重要だ。
大人と子どもには力の差はもちろん、経験や知識などあらゆる部分で圧倒的な差がある。大人がその差を使えば、子どもを抑え込むことは簡単だろう。しかし、その差を使って子どもを守ることもできる。つまり力をどのように使うのか、大人は問われているのだ。具体的な行動としては、「子どもの権利」を守るための取り組みをしている団体への寄付などがある。国内外で子どもの権利保護に関する活動をする団体はいくつもあるので、気になる方はぜひ検索してほしい。
まとめ
1994年に「子どもの権利条約」に批准したことで、各自治体で子どもに関する条約が制定されたほか、「児童福祉法」が改正、さらに「こども基本法」が制定されるなど、この30年間で日本でも法整備が進んでいる。
子どもの権利が適切に守られ、子どもらしく健やかに成長できることは、豊かな社会をつくるためになくてはならない。そのためにまずは子どもにも権利があること、尊重される存在であることをしっかり認識したい。そして、子どもの権利を尊重するために、子どもの声に耳を傾け、必要な時に手を差し伸べることができる社会を構築することが大切だ。
【参考記事】
UNISEF|保健
子どもの権利条約等を制定する自治体一覧
児童の権利委員会|国際連合
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