コレクティブハウスとは?サステナブルな暮らしが解決する社会課題や国内外のコレクティブハウス事例をご紹介

コレクティブハウスとは

コレクティブハウスは、共同生活を営むための住居形態の一種である。個々がプライベートな空間を持ちつつ、キッチンやリビングルームなどの共有スペースを利用して、日々の生活を共にする。この住居形態は、単に空間を共有するだけでなく、価値観やライフスタイルを共有し、相互支援を行うコミュニティとして機能する。

コレクティブハウスでは、住人同士が協力して家事を分担したり、食事を共にしたりすることで、一人暮らしでは得られない交流や絆を深めることにつながる。また、経済的なメリットもあり、共有スペースの維持管理費用を分割して負担することで、個々の住居費を抑えることが可能である。

さらに、コレクティブハウスは、多様な背景を持つ人々が集まる場となるため、異なる文化や価値観に触れる機会が増え、相互理解や学びの場としても機能する。このように、コレクティブハウスは、単なる住居を超えた、豊かな人間関係を育む場所として注目されている。

シェアハウスとの違い

シェアハウスは、個人のプライベートな部屋と共有のリビングやキッチンを持ち、住人が自由に使える環境を提供する。住人は家賃を支払い、共有スペースの利用も比較的自由である。

一方で、コレクティブハウスは、共同で生活を営むことに重点を置く。住人たちは家事や管理を分担し、しばしば集会を開いて運営を決定する。この形態は、より強い絆と共同体意識を育むことを目的としている。

シェアハウスは個人主義的な生活を可能にし、コレクティブハウスは共同体としての生活を重視する点で異なる。どちらも、都市部での新しい住居選択肢として若者を中心に人気を集めている。

コーポラティブハウスとの違い

コレクティブハウスは、共有スペースを利用しながらも、個々のプライベートな空間を保持する住居形態である。住人たちは共同で家事を行い、コミュニティの一員として活動する。

一方、コーポラティブハウスは、住居そのものを住人が共同で所有し、運営にも参加する。これにより、住人は自分たちの住む環境を直接的にコントロールできる。

コレクティブハウスでは、住人間の協力と交流が重視されるが、コーポラティブハウスでは、経済的な自立と共同所有による安定性が強調される。コーポラティブハウスは、長期的な居住と地域社会への貢献を目指す人々に適していると言えるだろう。

注目される背景

コレクティブハウスが注目される背景

人とのつながりを重視するコレクティブハウスが注目される背景には、現代社会における対人関係の希薄化や、地球環境への配慮が影響している。また、さまざまな人と共に生活することで自分にはない価値観と出会えることに魅力を感じる人も多い。

コミュニティの重視

現代社会において、人々は孤独や孤立をますます深めている。コレクティブハウスは、この問題に対する有効な解決策として注目されている。

共有スペースを中心に、住民同士が日常的に交流することで、強固なコミュニティを築く。このような環境は、互いの支援や情報共有を促進し、孤独感を軽減する。また、多世代が共存することで、年齢を超えた絆が形成され、子育ての支援や高齢者の見守りなど、地域全体の助け合いにもつながる。

サステナブルな暮らし

コレクティブハウスは、サステナブルな暮らしを実現するための住居形態としても注目されている。多様な世代や背景を持つ人々が共同で生活することで、異なる価値観に触れ合う機会を提供する。

また、孤独感を軽減し、社会的なつながりを強化することで、誰もが支え合うコミュニティを実現しやすくなる。さらに、空き家問題の解決にも一役買っており、使われていない住空間を有効活用することで、地域社会の活性化にもつながる。

新しい価値観との出会い

コレクティブハウスは、新しい価値観との出会いを提供する場として注目されている。異なる背景を持つ人々が一つ屋根の下で生活することで、日々の交流の中で自然と多様な思考や文化に触れる機会が生まれる。

コレクティブハウスの環境下では、従来の家族構成や生活スタイルにとらわれない新たなライフスタイルを体験することを可能にする。個人の視野を広げるとともに、社会的な理解と寛容性を深める効果をもたらすだろう。

また、共同生活を通じて、協働や共感といったコミュニケーション能力も養われ、人々の間で新たな関係性が築かれる。コレクティブハウスは単なる住居を超えた価値を提供し、人々が集うコミュニティとしての役割を果たすのだ。

コレクティブハウスが解決する社会課題

コレクティブハウスが解決する社会課題

コレクティブハウスは、現代における社会問題を解決する可能性を秘めている。ここでは、5つの社会課題とコレクティブハウスの関連について深掘りする。

孤独感の軽減

コレクティブハウスでは、共有スペースや共同の活動を通じて、住人同士の交流が促される。このような環境は、日常的なコミュニケーションを生み出し、互いの支援や情報共有を可能にする。

また、共同生活は、一人ひとりが集団の一部であるという所属意識を強め、孤独感を感じる機会を減らすことにつながる。多様な年齢層や職業、文化背景を持つ人々との交流は、新たな刺激となり、孤独感を忘れさせ、豊かな人間関係を築く手助けとなるだろう。

高齢化社会への対応

コレクティブハウスは、高齢化社会への対応策として重要な役割を果たす。高齢者が孤立せず、活動的な生活を送るための支援体制を提供するのだ。

共有スペースでの交流は、高齢者にとって日々のコミュニケーションの場を作り、若年層との相互作用を促進する。世代間の理解が深まり、高齢者が社会から切り離されることなく、精神的な充実感につながるだろう。

また、住人同士が助け合うことで、日常生活の小さな困難を共に乗り越え、安心して暮らせる環境が整う。コレクティブハウスは高齢者が社会参加を続け、自立した生活を送るための支えとなり、高齢化社会の課題解決につながる。

子育て支援

コレクティブハウスは、子育て支援の面でも大きな利点を持つ。共同生活の中で、子どもたちはさまざまな年代の住人と触れ合い、社会性や協調性を自然に学ぶ機会を得る。

また、親は他の住人と育児の負担を分かち合うこともでき、子育てのストレスを軽減するとともに、仕事と家庭の両立を支える助けとなる。コレクティブハウスは、子育てが社会全体で支えられる体制を実現し、子どもたちが健全に育つための地域コミュニティとしての役割を果たすのだ。

多様な価値観の共有

コレクティブハウスは、異なる文化や生活様式を持つ人々が一緒に暮らすことで、互いの価値観を理解し、尊重する機会を提供する。住人たちは日常生活の中で、さまざまなバックグラウンドを持つ他者との対話を通じ、自己の視野を広げられる。

また、共同でのイベントやプロジェクトに参加することで、協力し合う精神が育まれ、コミュニティ全体の結束力が強まる。このように、コレクティブハウスは、個々の多様性を認め合い、共に成長する環境を創出することで、社会的な連帯感を深める場となっている。

空き家問題の解決

コレクティブハウスは、空き家の数を減らすことにも貢献し得る。日本では、高齢化や人口減少により空き家が増加しており、社会的な課題となっている。

コレクティブハウスは、これらの空き家を活用し、共同生活の場を提供することで、空き家の有効活用を促す。さらに、住宅の再生により地域経済にも貢献し、地域コミュニティの活性化にもつながる。

コレクティブハウスの課題

さまざまな社会問題を解決し得るコレクティブハウスには、いくつかの課題もある。ここでは、コレクティブハウスにおける4つの課題と、その対策について言及する。

助け合いのバランス

共同生活の理想は、住人全員が互いに支援し合うことだが、実際には一部の住人に過度な負担がかかることや、逆に依存する住人が出ることがある。これを防ぐためには、適切なルールの設定と、オープンなコミュニケーションが不可欠である。

例えば、家事や管理の責任を公平に分担するルールや、定期的なミーティングを設けて住人同士の意見交換を行うことが挙げられる。このような取り組みにより、住人一人ひとりの負担を軽減し、健全なコミュニティを維持することが可能である。

価値観の違い

異なる世代や文化的背景を持つ住人が一緒に暮らすことは、豊かな経験を提供する一方で、生活習慣や考え方の違いから意見の衝突が生じる可能性がある。住人間の衝突を避け、調和のとれた共生を実現するためには、互いの価値観を尊重し、思いやりを心がけることが重要である。

また、定期的なミーティングでの意見交換や共同でのルール作りが、住人間の理解を深め、共感を育むための有効な手段となる。コレクティブハウスは、多様性を受け入れることの大切さを教えてくれる場であり、価値観の違いを乗り越えることが、共同生活の豊かさを高めることにつながる。

物件数の不足

日本においてコレクティブハウスはまだ新しい住居形態であり、その多くは首都圏に集中している状況だ。地方では、このような共同住宅を見つけるのが難しく、利用したいと考えても選択肢が限られている。

この問題を解決するためには、コレクティブハウスのコンセプトの普及と理解を深めることが必要だ。地方自治体や不動産業者との協力を通じ、物件数を増やす取り組みが求められる。また、既存の空き家を活用したコレクティブハウスへの転換も、物件数を増やす一つの方法である。

入居者の入れ替わり

共同生活の中で、価値観の違いや人間関係のトラブルが原因で、住民同士の相性が悪化し、結果として入居者が頻繁に入れ替わることがある。このような状況は、コミュニティの安定性を損ない、残された住民にとっても不安やストレスの原因となる。

そのため、住民同士が互いに理解し合い、支え合う文化を育むことが、入居者の安定とコミュニティの持続性を保つために必要である。入居者の入れ替わりは、コレクティブハウスが直面する課題であり、これを管理することが共生の質を高めるために重要である。

世界のコレクティブハウス事例

海外のコレクティブハウス

コレクティブハウスは、発祥の地とされる北欧を中心に、世界中で広がりを見せている。ここでは、スウェーデン・デンマーク・ドイツにおけるコレクティブハウスの事例を紹介する。

スウェーデン「フェルドクネッペン」

スウェーデンのストックフォルムに位置する「フェルドクネッペン」は、1993年に建築されたシニア型コレクティブハウスである。入居可能な年齢は40歳以上と設定されているが、居住者の子どもや孫が訪れることで、世代間交流の場ともなっている。

食事の共同化や共有スペースの利用など、経済的負担と家事労働の軽減が図られ、DIYスペースやサウナスペースなど、北欧ならではの設備が充実しているのも特徴だ。個々の居住者が持つ知識や技能を共有することで、個人の経済的負担を減らしながら、豊かな社会的接点を持つ。

フェルドクネッペンは、コレクティブハウスの先進的な事例として、高齢者が自立して共生する住まいのモデルを提供している。

デンマークのシニア向けコレクティブハウス

デンマークでは、シニア向けコレクティブハウスが高齢者の社会的孤立を防ぎ、豊かなコミュニティ生活を支援するための住居形態として注目されている。これらのハウスは、プライベートな生活空間と共有スペースを組み合わせることで、住民同士の交流を奨励し、共同で生活の一部を営む。

例えば、オダー市にあるシニア向けコレクティブハウスでは、住民が自分の庭を持ち、庭の世話を通じて他の住民との会話や交流が生まれるような工夫がされている。このような環境は、高齢者にとって心身のリラックスにもつながり、孤独感の解消や交流を楽しむことが可能となる。

ドイツ「多世代の家」

ドイツの「多世代の家」は、地域コミュニティの活性化と社会的課題への対応を目的とした国策プログラムである。2006年から始まったこのプログラムは、子供から高齢者までが利用できる交流型施設として、相互に助け合いながら生活することを目的としている。

例えば、ベルリンの「シュレツキ通り44番」では、100年以上前のアパートを改築し、多世代の住人が助け合いながら生活しており、月1回の定期ミーティングや日常の交流がコミュニティを形成している。ドイツの「多世代の家」は、少子高齢化という人口学的な要請の中で考案された新しい生活モデルであり、地域の多世代間の交流を促すことで、社会的な連帯感を深める場となっている。

日本のコレクティブハウス事例

地方ではまだまだその数が少ないものの、国内においてもコレクティブハウスの事例はいくつか存在する。ここでは、代表的な3つの事例について紹介する。

東京都荒川区「かんかん森」

東京都荒川区にある「かんかん森」は、多世代が共生するコレクティブハウスである。このハウスは、個々のプライベート空間と共有スペースを組み合わせ、住民が日常的に交流する設計となっている。

子どもから高齢者までが支え合い、学び合うコミュニティを形成し、地域の活性化にも貢献している。また、持続可能な生活を目指し、エコロジー活動にも力を入れ、新しい都市型生活のモデルを提案している。

東京都多摩市「コレクティブハウス聖蹟」

子どもから高齢者までが集うイベントやワークショップが定期的に開催され、地域交流の場としても機能している。持続可能な生活を実践するためのエコ活動にも積極的で、新しい形の地域コミュニティのあり方を示している。

京都府京都市「ハイツ白鷺」

出典:株式会社八清

京都市下京区に位置する「ハイツ白鷺」は、コレクティブハウスとしての新しい働き方と暮らし方を提案する物件である。地下鉄五条駅から徒歩約3分のアクセスの良さに加え、共有スペースには北欧の図書館をイメージしたデザインが施されており、リモートワークに適した環境が整っている。

個別の居住空間とは別に、共有のキッチンやコワーキングスペースを備え、住みながら働くライフスタイルを実現できる。

まとめ

コレクティブハウスは、持続可能な暮らしを実現するための有効な手段であり、今後もその重要性は増すと考えられる。子育て世代や高齢化社会への対応、多様な価値観の共有、空き家問題への対策といった、あらゆる社会課題の解決に貢献している。

国内外の事例からも窺えるように、多様な形態のコレクティブハウスが生まれ、それぞれの地域に根ざした運営が行われている。

今後より多くの地域で普及し、多様な世代や背景を持つ人々の受け入れ、そしてテクノロジーを活用した運営の効率化が進むことが予想される。コレクティブハウスは、人々が交流するための新たな接点と方法を提案し、新たな社会的価値を創造することにつながるだろう。

【参考記事】
特定非営利活動法人コレクティブハウジング社
一般社団法人協同総合研究所一般社団法人 協同総合研究所
ドイツ「多世代の家」の取組|内閣府

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