ゼブラ企業とは?注目されている背景やサステナビリティとの関連、ゼブラ企業の例をご紹介

ゼブラ企業とは

ゼブラ企業は、利益追求のみに焦点を当てるのではなく、社会的責任と持続可能性を重視する新しいモデルを構築する企業のことである。この概念は、2017年にアメリカの4人の女性起業家(マラ・ゼペダ、ジェニファー・ブランデル、アストリッド・ショルツ、アニヤ・ウィリアムズ)によって提唱された。彼女たちは、「Zebras Unite」を組織しゼブラ企業の増加を呼びかけると同時に、企業が社会的な課題に取り組み、利益と社会貢献を両立させることを目指している。

日本でゼブラ企業の概念を広めたのは、株式会社ZEBRAS AND COMPANYの代表である田淵良敬氏である。彼は、企業がステークホルダー全体に真摯に向き合い、長い時間軸での成長を目指すべきだと提唱している。ゼブラ企業は、急速な成長や市場の独占を目指すユニコーン企業とは異なり、持続可能な成長を目指す点で特徴づけられる。

日本では、社会貢献を重視する企業文化が根付いており、ゼブラ企業が育ちやすい環境があるという。これは、日本の企業が長期的な視点で社会との共生を重視し、地域社会や環境問題への積極的な取り組みを行っていることに起因する。

ゼブラ企業は、社会との共存を重視し、社会的な課題に対する解決策を提供することで、持続可能なビジネスモデルを構築している。これは、単に利益を追求するだけではなく、社会全体の利益にも貢献することを意味している。近年、日本を含む世界中でこのような企業が注目され、支持を集めているのである。

なぜ「ゼブラ」なのか

「ゼブラ企業」という名称は、シマウマの黒と白のストライプが共存する姿からインスピレーションを得ている。

ストライプは「ビジネスにおける利益」と「社会的責任」のバランスを象徴している。つまり、ゼブラ企業は経済的な成功を追求しつつ、社会的な課題に対しても積極的に取り組むことを意味している。このように、相反する要素の調和を図りながら、持続可能な事業活動を行う企業の姿勢を表しているのである。

ローカルゼブラ企業とは

ローカルゼブラ企業は、地域の社会課題をビジネスのチャンスに変え、地域経済の新しい担い手として活動する企業である。これらの企業は、地域の課題を深く理解し、それを解決するためのビジネスモデルを構築する。地域内の他の企業や組織と協業しながら、新たな価値を創造し、革新的な技術やサービスを活用して、社会的なインパクトを生み出すことを目指す。

一般的なゼブラ企業は、社会課題解決と経済成長の両立を目指すが、ローカルゼブラ企業は特に地域課題に焦点を当て、地域社会との密接な連携を特徴とする。

ゼブラ企業とユニコーン企業

ゼブラ企業とユニコーン企業

ゼブラ企業は、ユニコーン企業のアンチテーゼとして誕生したとされている。ユニコーン企業は、評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業であり、設立から10年以内に急成長を遂げることが特徴である。技術革新や市場の独占を通じて高い利益を追求する企業であり、「Uber」や「Airbnb」などが代表例である。

一方で、ゼブラ企業は、利益の追求だけでなく社会的貢献や持続可能性を重視する。社会的な課題解決に貢献しながら、経済的な成功も目指す。そして、シマウマの群れのように共存と協力を大切にし、ステークホルダー全体の利益を考慮したビジネスモデルを採用する。そのため、ユニコーン企業が市場を独占することを目指すのに対し、ゼブラ企業は市場内での共存を目指すという点で大きく異なる。

ゼブラ企業の登場は、社会的意義と経済的利益のバランスを重視する現代のビジネス環境において、新たな企業のあり方を示している。持続可能な成長を目指し、社会との調和を図ることで、長期的なビジネスの成功を追求するゼブラ企業の考え方は、今後さらに重要性を増していくと考えられる。このように、ゼブラ企業はユニコーン企業とは異なる価値観を持ち、新しい時代のビジネスモデルとして注目されているのである。

注目される背景

ゼブラ企業が注目される背景には、さまざまな要因がある。

まず、ユニコーン企業に対する反省が挙げられる。ユニコーン企業は急速な成長を遂げるが、その過程で社会的責任や持続可能性が犠牲になることがしばしばある。このため、利益だけでなく社会的価値も重視するゼブラ企業への関心が高まっている。

また、価値観の多様化により、多くの人々が単なる経済的成功以上のものを求めるようになったことも大きな要因だ。SDGsへの関心の高まりや取り組みも、ゼブラ企業の支持を後押しし、環境保護や社会的平等などの目標に貢献することで、持続可能な未来への道を切り開いている。

さらに、投資家の中には長期的な視点で安定したリターンを求める者もおり、ゼブラ企業はその期待に応えるポテンシャルを持っている。一般消費者も、製品やサービスの背後にある倫理的な価値を重視するエシカル消費を好む傾向が強まっており、ゼブラ企業からの購入を選択することが増えている。

特にZ世代などの若い世代は、社会的な意義を持つ企業に対して特に強い関心を示しており、彼らの支持がゼブラ企業の成長を促進している。これらの要因が相まって、ゼブラ企業は現代のビジネス環境において重要な役割を果たしているのである。

ゼブラ企業とサステナビリティ

サステナビリティ時代が生み出すゼブラ企業は、急成長や短期的なハイリターンを求めるユニコーン企業とは異なり、ミッションを実現するために他企業とも協調し、持続的成長を目指す。

ゼブラ企業は、サステナブル・ブランディングにおいても成功の兆しを見せている。サステナブル・ブランディングとは、「事業活動と社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す」戦略メソッドである。事業に社会課題解決を融合し、自社の強みや持ち味を生かした資源を投入し、戦略的に取り組むことが、サステナブル・ブランディングの核心である。このアプローチにより、企業は社会の要請や期待を先取りし、新しい価値創出や市場開拓に結びつけ、イノベーションを促進し、企業競争力につなげていく。

ゼブラ企業は、サステナビリティ重視の時代において、その「自社らしさ」を活かしながら、社会的な課題に取り組むことで差別化を図り、ブランド価値を高めている。サステナブル・ブランディングの成功は、時代と適合し、時代と調和し、時代を味方につけたブランディングであり、ゼブラ企業の存在感をさらに強化する。

ゼブラ企業の特徴

ゼブラ企業の特徴

ゼブラ企業には、いくつかの特徴がある。ここでは、以下の5つの特徴について深掘りし、ゼブラ企業の概念に迫る。

社会性と経済性の両立

ゼブラ企業は、社会性と経済性の両立を目指し、利益追求だけでなく、社会的課題の解決にも取り組む。しかし、これらは一般的な企業において、相反することも多い。

ゼブラ企業では、持続可能な社会を構築するために、環境保全・社会的平等・教育の向上など、さまざまな分野で積極的な役割を果たしている。経済的な成功を目指しつつも、社会全体の利益に貢献することで、新しいビジネスの価値を創造しているのが、ゼブラ企業の大きな特徴である。

相利共生の精神

相利共生の精神も、ゼブラ企業の特徴の一つだ。これは、個々の能力を持ち寄り、コミュニティを大切にしながら活動することで、異なる企業や組織が補完し合い、共に成長することを指す。

ゼブラ企業は、単独での利益追求ではなく、ステークホルダー全体の利益拡大を図りながら、社会全体に良い影響を与えることを目指しているのだ。

多様な価値の結集

ゼブラ企業は、経済的利益の追求に加えて、社会的貢献や持続可能性といった価値を同時に重視する姿勢を示す。利益だけでなく、時間、創造性、コミュニティといった多様な資源を活用し、社会課題に対する解決策を模索するのだ。これにより、単一の価値観にとらわれることなく、幅広いステークホルダーとの協力を通じて、持続可能な成長を目指している。このことは、社会に良い影響を与えると同時に、企業の競争力を高めることにもつながる。

ゼブラ企業は、事業を通じて経済価値創出と同時に社会課題を解決する、新しいタイプの企業ムーブメントといえる。

長期的な視点

ゼブラ企業は、短期的な利益の追求よりも、持続可能な成長と社会的責任といった長期的な視点を重視する。株主のみならず、消費者、サプライチェーン、地域社会など、幅広いステークホルダーとの協調を図りながら、事業成長を目指す。

また社会課題解決においても、一時的な解決策ではなく、長期にわたる影響を考慮した取り組みを行う。短期間での企業価値の向上を目指すユニコーン企業とは異なり、経済性と社会性を両立し、集団として共存し、長期的視点で持続的な繁栄を重視することを目指すのがゼブラ企業の特徴である。

社会的課題への挑戦

ゼブラ企業は、社会的課題の解決にも積極的に取り組む。例えば、環境保護、教育の改善、健康格差の解消など、さまざまな分野で社会的価値を生み出すことを目指している。

これらの課題に対して革新的なアプローチを取り入れ、持続可能な解決策を提供することで、社会にポジティブな影響を与えると同時に、企業としての成長と成功を実現しているのだ。社会的課題への挑戦を通じて、経済的利益と社会的貢献の両立を図ることで、新しいビジネスの価値を創造しているのである。

ゼブラ企業の例

以下に紹介するのは、ゼブラ企業の理念を具現化している企業の事例である。これらの企業は、それぞれ独自の方法で社会性と経済性を融合させ、新しい価値を創出している。

ボーダレス・ジャパン

株式会社ボーダレス・ジャパンは、社会の課題をビジネスの力で解決するソーシャルビジネスを展開している企業である。貧困や教育、環境問題など、さまざまな社会的課題に対して、持続可能なビジネスモデルを通じて解決策を提供し、社会に希望をもたらすことを目指している。

具体的には、再生可能エネルギーやフェアトレード、多文化共生など、多岐にわたる分野で事業を展開し、社会的インパクトを重視した活動を行っている。

公式サイト:https://www.borderless-japan.com

マザーハウス

マザーハウスは、途上国の素材と職人の技術を活かした製品を通じて、社会的価値を創造するブランドである。バングラデシュやネパールなどで採れる質の高い素材を使用し、現地の文化や生活様式に合わせた生産方式を取り入れている。

途上国から世界に通用するブランドをつくることを理念に掲げ、倫理的なビジネスモデルを追求している。商品の品質だけでなく、その背景にあるストーリーにも重きを置いており、途上国の可能性を世界に示すことに貢献している。

公式サイト:https://www.motherhouse.co.jp

Peerby(ピアビー)

Peerbyはオランダ発のスタートアップで、ご近所同士で日用品を貸し借りできるシェアリングプラットフォームを運営している。このプラットフォームは、所有から共有へという新しい消費の形を提案し、物の過剰生産と廃棄を減らすことで環境に配慮したサステナブルな社会を目指している。

Peerbyは、ユニコーン企業を目指す試みから転換し、コミュニティモデルへと舵を切り、地域社会の結束を強化しながら経済的な成功も追求している。

公式サイト:https://www.peerby.com/en-nl

まとめ

ゼブラ企業は、社会的課題の解決と経済的利益の両立を目指す新しいビジネスモデルとして注目されている。これらの企業は、サステナビリティやSDGsへの取り組みを事業に取り込むことで、社会にポジティブな影響を与えることを重視している。

今後、ゼブラ企業は持続可能な社会の構築に向けて、ますます重要な役割を担うと考えられる。経済成長のみならず、環境保護や社会的平等といった価値を追求することで、より豊かな社会の実現に貢献するだろう。

昨今の潮流を踏まえると、ゼブラ企業が示す価値観はますます多くの人々を魅了し、新たなビジネスの潮流を生み出すきっかけになるだろう。企業の社会的責任が強調される中、ゼブラ企業の理念は、今後のビジネス界においてさらに重要性を増していくと予測される。投資家や消費者、そして次世代の起業家たちに新しい指針を提供し、持続可能な未来への道を切り開くことを期待したい。

【参考記事】
株式会社ゼブラ アンド カンパニー
第17回 サステナビリティ時代が生み出す「ゼブラ企業」|サステナブル・ブランド

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