LOHAS(ロハス)とは?持続可能なライフスタイルの実践

LOHASとは

LOHASとは、「Lifestyles of Health and Sustainability」の頭文字をとった略語で、直訳すると「健康的で持続可能な生活様式」という意味だ。つまり地球環境に配慮し持続可能な社会を目指しながら、自分の心身の健康にも関心を向けた生活スタイルのことである。

LOHASという概念が登場したのは、1990年代後半のアメリカ。元々はマーケティングにおける専門用語として誕生した。1980年代から社会学者ポール・レイ氏と心理学者シェリー・アンダーソンが15年にわたって行った一般消費者に関する調査によると、LOHAS的な価値観を持つ人々が全米の全人口のうち約26%(約5,000万人)存在することが判明。その後発表された『LOHAS Journal』という雑誌によって、LOHASという概念が世間に知られるようになる。

日本では、2004年ごろからメディアで取り上げられたことをきっかけに、新しいライフスタイルとして人々の間に浸透していった。

エコとの違い

LOHASとエコは、双方とも環境に配慮するという面で共通する概念である。

しかしエコは、元の言葉が「ecology」であるように、生態系や地球環境を守ることが目的である一方、LOHASは自分自身の心身の健康も尊重する考え方だ。つまり、あくまで消費者としての自分の心地よさやメリットを尊重している。

エコを目指す生活はストイックになりがちだが、そうではなく快適で自分らしい暮らしを実現しつつ環境にも配慮することが、LOHASという生活スタイルなのである。

SDGsとの違い

前述のように、LOHASは消費者のカテゴリーに関するマーケティング用語であり、そのような人々の生活様式を指す言葉である。

対してSDGsは、国際社会全体で2030年までに達成すべき目標を指す。2015年に国連サミットで採択されたSDGsは、さまざまな環境問題や社会問題などを解決するため、全世界が一丸となって目指す17の目標と169のターゲットで構成されており、誰一人取り残さない社会を目指している。

注目される背景

現代は、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会である。商品が増えることで人々の消費活動も活発になり、経済が潤ったり人々の生活が豊かになっていく一方、地球の自然環境や動植物の生態系などに甚大な被害を与えている。その状況にいち早く関心を寄せ、情報発信を行ってきた人々、それがLOHAS的価値観を持った人々である。この層は年々増加傾向にあり、多くの一般消費者も環境問題に意識を向ける風潮になりつつある。

また近年、自然災害の頻発や感染症の流行、労働環境の改革など社会が大きく変化していることで、人々は「より自分らしい豊かな生活を送りたい」と自分の生活の在り方を見直す潮流にある。

このことから、LOHASは「地球にも自分にも優しい」という考え方である点で注目されている。

アメリカにおけるLOHAS

LOHASの市場

前述のように、アメリカではLOHASという言葉はマーケティング用語として使用されているため、一般消費者の間での認知度は低い。

しかしその市場規模や人口は年々拡大しており、NMI(Natural Marketing Institute)によるとLOHAS層は2006年時点で全米人口の23%、同年の市場規模は約27兆円とされていたが、その後2019年には人口のほぼ3分の1まで増加。最近のレポートによると、2021年にはグリーン・マーケット(環境に配慮した商品やサービス)を愛用する人が全米人口の78%にものぼっている。

また、株式会社バルダーダッシュが運営するリサーチサービスWonderによると、2022年時点でのLOHAS向け市場規模は最大約4,725億1,000万ドルに達すると推定されている。

LOHAS市場の5分野

LOHAS市場におけるカテゴリーは以下の5つに分けられており、アメリカではそれに沿ったマーケット展開が行われている。また、何から取り組めばいいか分からない人も、このカテゴリーに則ればLOHASな生活を送ることができる。

①持続可能な経済

一つ目は、地球環境に配慮し、持続可能な社会をつくるための経済活動の仕組みである。消費者としては、エネルギーや技術、サービス、製品などを購入する際、環境への不可が少ない物を選ぶことが持続可能な経済に繋がる。具体的には再生可能エネルギー、エコ建築素材・技術、フェアトレード、SRI(社会的責任投資)、省エネ製品などがこれに当たる。

②健康的なライフスタイル

二つ目は、日々の生活の中で健康を意識した行動をとることである。例えば、食生活においてはマクロビオティックを取り入れたり、無農薬のオーガニック食品を食べること。また、衣料や石鹸などは天然素材で作られたものを選ぶ、家庭菜園を行う、サプリメントを摂取することも、健康的なライフスタイルに繋がる。

③代替医療

三つ目は、免疫力を上げ、病気になりにくい身体づくりを行うことである。LOHASでは薬に頼らないことを推奨しており、代替医療としては鍼灸、漢方などの東洋医学や予防治療、補完医学のほか、自然治療という本来身体が持つ自然治癒力を生かした治療などがある。またアロマテラピーやハーブティーを取り入れることも該当する。

④自己開発

四つ目は、いつも心身が安定した最高の状態で過ごすために勉強したり、トレーニングを行ったりして自分自身に投資することである。例えば禅、瞑想、セミナーの受講などは自己開発においてイメージしやすいだろう。他にもヨガやダイエットフィットネス、アート鑑賞、寺院や教会でリフレッシュすることなどがある。

⑤環境に配慮したライフスタイル

五つ目は、環境に配慮された商品やサービスなどを意識的に選ぶ生活スタイルである。

日々の暮らしの中では、食品や衣料品は有機農法で作られたものを選ぶ、環境負荷の少ない電化製品を使用したりすることが取り入れやすいだろう。また、大きな買い物では太陽光発電など環境配慮型のエコ住宅やハイブリッドカーを購入することが該当する。

日本におけるLOHAS

日本は、国際社会の中で環境問題への関心が特に低い国と言われているが、LOHASという言葉自体はアメリカとは異なり、一般消費者の間で広く認知されている。

そのきっかけは2004年ごろから、多くのメディアで取り上げられ始めたことだ。それまでエコのイメージといえば厳しく倹約的なもの、熱心な環境活動など、日本の一般消費者にとって決して身近なものではなかった。しかしLOHASは環境に配慮しながら、自身の快適な暮らしも追求するという点で人々の間に浸透しやすくなり、新しい価値観としてLOHAS的な生活を取り入れる人が一気に増えたのである。そのため、アメリカではマーケティング用語であるのに対し、日本ではライフスタイルそのものを指す言葉として使用されている。

LOHASの普及によって、一般消費者の中でも環境問題や社会問題を意識する人が増加する一方、一部の専門家の間では「LOHASをブームや流行として捉えている人々もおり、死語になりつつある」という懸念も広がっている。

LOHASをテーマにしたイベント

出典:ロハスフェスタ

LOHASという言葉が広く認知されていることもあり、日本ではLOHAS関連のイベントが全国で行われている。特に有名なものが以下のイベントだ。

ロハスフェスタ

「みんなの小さなエコを大きなコエに」というテーマのもと、大阪・広島・淡路島・東京・福岡で開催されている。「⾝体や⼼に優しいことは地球にも優しいこと」という想いから始まっており、出展者・来場者ともに年々規模が拡大している大型イベント。

ハンドメイド雑貨を中心に、アンティーク家具や体に優しい食品が販売され、イベントを楽しみながら環境問題についてもしっかり考えることができる。

ロハスパーク

遠くから家族連れが集まるような、おしゃれでかわいいエコというコンセプトで、ロハスパークという名前の通り公園で行われるのが特徴。主に兵庫と大阪で開催されているが、徳島、岡山、福井など開催場所が徐々に拡大している人気のマーケットイベントだ。こちらも同様にハンドメイド作品やアンティーク家具、健康的な食材を使ったフード&スイーツなどのお店が出店している。

まとめ

LOHASという概念は、地球にも自分にも優しい生活を送ることで環境問題の対策と経済活動の両立を可能にするため、多くの人が手軽に取り入れることができるものだ。

しかし、LOHASには明確な定義が存在しないため、健康や環境に関するものであれば何でもLOHASとして扱う製品やサービスがあるのも現状である。また、環境問題や社会問題は人類が未来永劫取り組むべき問題であり、懸念されたようにLOHASを一時のブームで終わらせてはいけない。企業の発信に一貫性や透明性があるか、製品にどのような背景があるかを見極めることも、賢明な消費行動を取るためには重要である。

【参考記事
ニュースのことばLOHAS
新しい価値観ロハスで持続可能な社会を!
LOHASってなに?|NPOローハスクラブ
Development of LOHAS in Japan|JFS
LOHAS Market Research|Wonder

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