ESDとは?持続可能な世界をつくるための学びの内容や、国内外の取り組み事例を紹介

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ESDとは

ESDとは

ESDとは、Education for Sustainable Developmentの頭文字をとったもので、「持続可能な開発のための教育」と訳される。

現在、世界は環境問題や貧困、人権侵害、資源の枯渇、ジェンダー問題など様々な課題に直面している。ESDは、世界で発生している環境問題や人権問題を「学習や教育によって解決していく」という未来を見据えた長期的な取り組みのことである。

例えば、地球温暖化に対してどのような取り組みが必要か、文化や宗教が異なる人とどのように向き合っていけばいいのかなどは、知識がなければ問題に気づくことさえ難しい。また、これらの課題は決して対岸の火事ではなく、自身の問題として取り組んでいかなければいけない。

問題解決のためには、まず社会問題を知ることから始め、そしてグローバルな課題を理解し、さらに個人がどのように行動するべきかを学びながら考える必要がある。

ESDで目指すこと

ESDでは、持続可能な社会づくりを構成する「6つの視点」と、あらゆる環境・社会課題を解決するために必要な「7つの能力・態度」を習得することを目指す。

持続可能な社会づくりのための「6つの視点」

  • 多様性:自然・文化・社会・経済は多種多様な物事から成り立ち、多種多様な現象が起きている
  • 相互性:物事は互いに関わり合い作用している。その中で、物質やエネルギー、情報が移動・循環している
  • 有限性:資源は有限であり、世界は不可逆的に変化しているため、限られた恩恵を有効に使用することが大切
  • 公平性:地域や世代に関係なく人間は誰もが公平であり、権利や恩恵を平等に享受できる
  • 連携性:立場や意見が違えど、互いに調和を図りながら協力関係を構築する
  • 責任性:誰もが持続可能な社会に対する責任と義務を自覚し、自ら進んで行動することが必要

社会課題の解決につながる「7つの能力・態度」

  • 積極的な参加:自身の言動に責任を持ち、自らの役割で社会に貢献しようとする行動力
  • 批判的思考:公平な批判に基づき、物事の本質を見抜き判断する思考
  • 未来予測と計画:過去の課題から将来起こりうることを予測した行動
  • 多面的な思考:ヒト・モノ・コト・自然などの繋がりや関わりを総合的に捉える思考
  • コミュニケーション:自身の考えのみならず他人の考えを尊重し伝える能力
  • 他者と協力する力:相手の立場に立ち、異なる考え方でも共に歩もうとする姿勢
  • 繋がりを尊重する態度:他人と社会との関係性に関心を持ち尊重する態度

ESDの歴史

1987年に国際連合が「ブルントラント報告」を発表したことが、ESD発祥のきっかけとなる。

この報告書は、世界の環境問題や貧困問題を取り上げており、持続可能な開発の必要性について主張されている。内容には「生活の利便性を向上するために、限られた資源を使い果たしてはいけない」という記載がある。森林や水資源を守り、人間のみならず動物や植物を大切にすることが重要だと述べられた。

その後、1992年に「地球サミット」がブラジルのリオデジャネイロで開催された。ここでは各国の代表者が、環境問題の改善と持続可能社会づくりについて話し合った。この時、ESDの重要性が強調され「アジェンダ21」という国際的な行動計画が採択された。

さらに、2002年に南アフリカで再度開催されや世界サミットにて、日本が2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」と提案したことから、ESDが世界中で推進されるようになった。

ESDとSDGs

ESDと混合されがちなワードに、SDGsがある。SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連が定めた環境改善や人権保護などの課題をクリアするための具体的な目標のことである。

SDGsの目標達成するためにも、次世代の力は必要不可欠である。未来を担う子どもたちが自ら行動を起こすきっかけとなるべく、教育を通じて環境保護や人権問題などを学ばせることが重要視されている。

また、SDGsの目標の中に「4.質の高い教育をみんなに」という項目がある。これは、全ての人々が高等教育を受けるチャンスを平等に与えるという目標だ。この目標4が達成されれば、SDGsにある「1.貧困をなくす」「13.気候変動に具体的な対策を」など他の目標達成にも寄与するとされている。

つまり、ESDは教育を通じて持続可能な開発の理解を深めるための重要な手段であり、SDGs達成のための基盤とならなければいけない。

世界の取り組み事例

ESD 学校教育

ESDは、世界各国で様々な形で推進されている。具体的な事例について、以下で紹介する。

UNESCO

UNESCO(国際連合教育科学文化機関)は、「ESD for 2030」という計画を進めている。この計画には、5つの重要な行動が含まれている。

  1. 学校や政府がESDを大切にするようにすること
  2. 学校での授業や環境をより良くすること
  3. 先生たちがESDを教えられるようにするための支援をすること
  4. 若者が環境や社会の問題について活動できるようにすること
  5. 地域社会がこの活動に参加できるようにすること

UNESCOは、これら行動を通じてESDの推進をサポートしている。

オーストラリア「Lentil as Anything(LaA)」

オーストラリアのメルボンという街に、LaA(Lentil as Anything)という非営利団体のレストランがある。ここでは、メニューに値段がなく、テーブルに寄付箱が置いてある。食事代として、好きな金額を寄付することができるという仕組みだ。経済的余裕がない人がいれば、ボランティアとして働ける。このレストランの経営目的は、貧困の解消と食品ロスをなくすこと。金銭のやり取りがなくても食事ができることや、そして食べ物の大切さを学べる場所であり、地域内でESDを実践している場ともいえる。

フィンランド

”世界一の教育国”であるフィンランドの教育は、ESDの考え方とも重なる部分が多い。多様性を尊重しており、子どもの性格に合わせた学習を推奨している。ジェンダー問題に対しても意識が高く、性別や知能の差に関係なく、生徒は自分のペースで自由に学べる環境がある。一人ひとりのペースで、環境保護や社会の公平さについて理解を深めることができるのだ。

日本におけるESD

日本では、2003年にESD-Jを発足して、ESDの推進に力を入れている。ESD-Jでは、政府や自治体、企業や教育機関と連携し、持続可能な社会づくりの教育のみならず、社会改革として新しい価値を生み出せる人材の育成などを含むESDプロジェクトを進めている。

日本が提唱するESD-Jは、地球上で起きている課題解決のためには、意識改革のみならず、社会を根本から変え新しい価値を創造することが重要だとしている。

ユネスコスクール

ESDの実践拠点としてユネスコスクールという国際ネットワークがある。ユネスコは、フランスのパリにある国際連合教育科学文化機関のことで、世界の教育や文化の発展を目的とした国際的な機関である。

ユネスコが認定する国際的な学校ネットワークであるユネスコスクールは、小中高合わせて世界180国に11,000以上あり、日本国内では、文部科学省の認可も取得しており世界最多の1,120もの加盟校がある。

ユネスコスクールには「人権」「民主主義の促進」「異文化理解」「教育環境の整備」という4つの理念がある。

主な活動内容は、国内外の生徒・教職員同士が交流し、互いの情報や体験を共有し合うことを目的としている。また、異なる文化や習慣に対する理解や敬意を学ぶことも、ユネスコスクールの活動内容のひとつとなっている。

国連大学

国内にある国際機関のひとつに国連大学がある。国連大学では、ESDの地域教育拠点としてRCE(Regional Centres of Expertise on ESD)というネットワークを提供している。教育推進という点では、ユネスコと同じだが活動内容と理念は異なる。

ユネスコはグローバルな視点でESDに取り組んでいるが、RCEは地域拠点として存在している。また大学院レベルの高い教育を提供するために、地域の研究者や科学者、事業者や自治体など、様々な専門家が教育に参加している。北海道大学や東京大学、宮城教育大学や立教大学などもネットワークのメンバーとして加盟して、さまざまな知見や意見を交換している。

家庭でできるESD

ESD 親子でエコバッグ

ESDは、国や教育機関が積極的に推進しているが、一般家庭でもできる取り組みもある。

例えば、エコバッグの使用。レジ袋の使用を控えれば、原料である原油の削減になる。リサイクル活動を家庭で実践すれば、自然保護活動の意識を高めることができる。

また、台風や豪雨、地震などの災害に備えて、事前に非常用電源や簡易トイレなどの防災グッズを用意することで、日常生活の中で防災への意識を身につけることができる。

このように、日常生活で環境や社会に目を向けることで、家庭でのESDの一環となる。

まとめ

世界が便利になっていく一方で、地球規模の環境問題や、貧困や格差などあらゆる社会問題が浮き彫りになってきている。そして、日々流れ込んでくる情報の中から、私たちはそれらの問題についての認識を多かれ少なかれしているはずだ。

ただ、問題を知ったところで、「課題解決のために行動しよう」と思う人は限られているだろうし、「解決するために何をすればいいかわからない」という人も多いのではないだろうか。

ESDは多くの「傍観者」に、具体的な手立てを提供してくれる。そして、主体性をもち「当事者」としてアクションを起こす必要性とヒントも与えてくれるはずだ。

参考記事
持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)|文部科学省
角屋重樹「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究[最終報告書]」
国連大学におけるESDの取り組み|国連大学

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