エシカル消費とは?注目される背景や企業の取り組み事例を解説

エシカル消費とは?

エシカル消費とは、人や社会、地域、環境に配慮した消費行動やライフスタイルのこと。

例えば、フェアトレード認証商品や売上の一部が何らかの寄付に充てられる商品、障がい者支援に貢献する商品を重点的に選択することは、生産者の生活の保護につながるなど、社会的な格差を縮小する一環となる。他にも、レジ袋を使わない、マイボトルを携帯するなどといった工夫を、日々の消費生活の中で行うことでCO2排出や海洋汚染をはじめとした環境問題の解消に寄与することもできる。このように個々が、持続可能な社会に向けての社会的責任を、消費生活を通じて果たすことを、エシカル消費という。

SDGsにおけるGoal12「持続可能な消費と生産パターンを確保する」に関連しているとして、国際的にも注目が高まっている。日本では、2015年5月からの2年間に渡り、消費者庁がエシカル消費に関する調査研究会を開催するなどして、その普及と啓発に努めてきた。

注目される背景

エシカル消費が注目される背景

近年エシカル消費が注目を浴びている背景としては、以下のような理由があげられる。

社会・環境問題への対策

地球温暖化や森林破壊、海洋汚染など様々な環境問題が浮き彫りになってきている中、これまでの大量生産・大量消費という消費スタイルを変容しようという動きが世界中で出てきている。また、児童労働や途上国の生産者への不十分な賃金の支払いなど、多くの社会問題も認識され始めており、世界的に持続可能な社会を構築する必要に迫られている。

CSR・CSVの実現

人々の環境などに対する意識が強まるにつれて、企業は利益を追求するだけでなく、事業が環境や社会に与える影響を考慮する必要がでてきている。そのため、エシカルな方法での材料調達やパッケージ素材の見直しなどが行われており、その結果、消費者が日常的にエシカルな商品やサービスを目にする機会が増加した。これは、エシカル消費への関心をより一層高めることにつながっている。

SDGsとの関連

2015年に国連で採択されたSDGsとも密接に関係している。Goal12「持続可能な消費と生産パターンを確保する」は、まさにエシカル消費のことであり、人や社会、環境に配慮した消費行動を推進するための目標だ。2023年5月に電通が発表した「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの認知率は91.6%であった。このように、SDGsへの認知が拡大しその考えが浸透していることも、エシカル消費への注目を高めている要因と考えられる。

企業の取り組み

企業の取り組み

エシカル消費という概念が広まりを見せる中で、企業も消費者を後押しするさまざまな動きを見せている。例えば、フェアトレードによって原材料を調達することは、生活者のエシカル消費を促進することにつながり、これにより、生産者の適切な労働環境を確保することや環境への悪影響を軽減することに貢献できる。また、売り上げの一部を寄付することも考えられる。商品やサービスの売り上げの一部を、地域の教育機関や福祉施設、環境保護団体などに寄付することで、日常の消費活動を通して社会貢献をする手助けとなる。

企業の取り組み事例

エシカル消費を推進する具体的な企業の取り組みとしては、以下のようなものがある。

スターバックス

大手コーヒーチェーンのスターバックスでは、1971年に1号店が開店した当時から、エシカルにコーヒーを調達することを大切にしてきた。生産者に対して適切な対価が支払われていることや、生物多様性に配慮してコーヒー栽培が行われていること、コーヒー生産に携わる人々の人権が保護されていることなどを約束する「C.A.F.E.プラクティス」という独自の認証プログラムを導入している。来店客だけでなく、生産者やそのコミュニティ、自然環境といった関係する全ての人や環境が幸せになるように取り組みを進めている。

モンベル

アウトドアブランドのモンベルでは、約20種類の寄付付きTシャツを販売している。売り上げの一部は、自然環境や野生生物の保護に関する活動、また子どもたちが自然の中で遊ぶことをサポートする団体などに寄付される。Tシャツのデザインは寄付先ごとに異なっており、例えば、寄付先が「認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン」のTシャツには、アジアゾウの絵がプリントされている。

IKEA

家具メーカーのIKEAでは、素材調達において環境配慮の意識を強くもっている。例えば、成長が早い植物である竹を積極的に使用したり、FSC認定された木材を調達することで、自然環境や生態系を守ることを目指している。また、再生可能プラスチックの使用を推進することで、CO2の排出量削減やリサイクル素材の受け皿としての役割を担うことにも繋がっている。

企業がエシカル消費を推進するメリット

企業がエシカル消費を推進することは、企業側にも多くの利点がある。

一つは、企業のイメージアップにつながり、企業としての価値が向上することだ。近年は、Z世代を中心に、環境や人権への配慮を強く意識した消費行動が増えてきている。そのため、消費者はエシカルな商品やサービスに対してよい印象を抱きやすく、その企業に対してのイメージも向上すると考えられる。また、ESG投資が広がりを見せているように、投資家は、環境や社会に対して与える影響を考慮して投資先を選定するようになってきているため、それらへの配慮を施すことで投資家からの支持も得やすい。

もう一つは、新たなビジネスチャンスになり得ることだ。上述のように、消費者や投資家の間で、企業に対してこれまでとは異なる価値基準が出てきている。このような新たなニーズを満たすような商品やサービスを開発することは、企業にとっては新たなビジネスの機会になるだろう。

わたしたちができること

エシカル消費

多くの企業がエシカルな商品などを展開することで、私たち消費者が「エシカル」を選択できる機会がこれまでよりも増加している。そのような状況の中、私たちはどのようなことができるだろうか。

目印となる認証マーク

エシカル消費を実践するにあたって、エシカルな商品を見分けることは難しい場合もあるかもしれない。そのような時に、目印となる認証マークとして以下のようなものがある。

有機JASマーク

有機JASマークは、農薬や化学肥料などを使わずに生産された農産物や畜産物につけることができる。これらの商品は、一般的には「オーガニック」と呼ばれているものである。有機JASマークがついている商品を購入することで、生物多様性や健全な生態系の維持に貢献できる。

FSC®認証

参照:FSC

FSC認証は、適切に管理された森林から生産された木材や、コピー用紙やティッシュペーパーなどの紙製品につけることができる。このマークがついた製品を選択することで、持続可能な森林や森林の生物多様性、労働者の権利の保護につながる。

RSPO認証

参照:RSPO

RSPO認証マークは、持続可能な方法で生産されたパーム油を示すものだ。つまり、環境負担を最小限に抑え、生物多様性や森林の保護に配慮した方法で調達したパーム油に対する認証である。RSPO認証の基準を満たすパーム油によって製造された洗剤やインスタント麺、スナック菓子などの商品につけることができる。

MSC「海のエコラベル」

参照:MSC

海のエコラベルは、海の資源や環境に配慮し、持続可能な漁業によって獲られた天然の水産物につけることができるマークである。この認証により、過剰な漁獲をなくし、海の生態系の多様性を維持することを目指している。

レインフォレスト・アライアンス認証

レインフォレスト・アライアンス認証は、持続可能な農業によって生産された商品につけることができるマークである。森林保全、生物多様性の確保、生産者への適正な支払いや人権の保護など、持続可能な方法で運営している農場に与えられる認証で、代表的な品目としては、コーヒーや紅茶、バナナなどがある。

国際フェアトレード認証

国際フェアトレード認証は、児童労働の禁止、適正な価格での取り引き、森林破壊や危険な農薬の使用の禁止など、国際フェアトレード基準を満たした製品につけることができる。つまり、このマークがついている製品を買うことは、生産者や地球環境に配慮したエシカルな買い物につながるということだ。

エシカル消費の具体例

上記のような各種認証マークがついている商品を購入することは、エシカル消費のひとつであるが、他にも、以下のような方法でエシカル消費を実践することができる。

地産地消

地元で生産されたものを地元で消費する地産地消も、エシカル消費のひとつである。地産地消によって、地域経済の活性化に貢献するだけでなく、運送時に排出される温室効果ガスの削減にもつながる。

使い捨てプラスチック製品をもらわない

コンビニやスーパーで買い物をする際に、レジ袋やカトラリーなどを受け取らないことも環境配慮へのアクションである。海洋汚染や大気汚染など、多くの問題を引き起こしているプラスチックごみ問題に対して、消費者が手軽にできる行動のひとつだ。

再生可能エネルギーを利用する

太陽光パネルの設置や太陽光発電事業者から電力を購入するなどの手段を通じて、再生可能エネルギーを利用することも考えられる。これにより、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの削減に貢献することができる。

他にも、被災地で作られたものを購入することで被災地を応援したり、賞味期限が近い食品を購入することで食品ロスの削減につながるなど、さまざまなアプローチでエシカル消費を推進することができる。

今後の展望

環境問題やあらゆる社会問題が表出してきている中、エシカル消費への関心は年々高まっている。だが、実際にどのような行動を取るべきか、何がエシカルな商品なのか、迷うこともあるかもしれない。エシカル消費を更に推進するためには、企業側はエシカル消費を促すような施策を行い、消費者は、本当にエシカルなものを見極めるリテラシーを高める必要がありそうだ。事業者と消費者がポジティブにフィードバックし合うことで、エシカルな消費行動がスタンダードとなる未来がやってくるかもしれない。

参考記事

消費者庁

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k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定概念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。