「修理可能指数」の表示を義務化するフランス。 家電製品の長寿化を促し、電子ゴミ問題への対策を講じる

深刻化する電子ゴミ問題

現代の私たちの生活はあらゆる電化製品に囲まれています。スイッチ一つでご飯が炊けたり、家にいない間に掃除をしてくれたり、忙しい日々の生活を送る上でなくてはならない存在でもあるのではないでしょうか。

しかし、電化製品の便利さの裏で電子ゴミによる深刻な問題も浮き彫りになっています。「National E-waste Monitors」によると、世界の電子ゴミの発生量は2019年5360万トンで過去最多を記録。また、2030年までに7400万トンに達する見込みということです。このような大量の電子ゴミは、有毒ガスによる大気汚染や健康被害、また児童労働問題など様々な問題を引き起こしています。

深刻化する電子ゴミ問題―この問題を解決するための一つの方法として「修理」があります。故障した製品を修理することで、機器の寿命が伸び電子廃棄物の削減につながります。

しかしながら、これまではスペアパーツがない、接着固定されていて中を開けることが出来ない、また修理するよりも新しい製品を買うほうが安いなどの理由が電化製品の修理を困難にしていました。その結果、冷蔵庫やテレビなどの家電製品の多くは廃棄されてしまっていたのです。

その一方で、ユーロバロメーターの調査によると、77%のヨーロッパ市民が製品を買い替えるよりも修理をしたいと回答し、また調査対象者の79%が電子機器の修理や部品の入れ替えをしやすくするよう法律で定めるべきだと答えました。

そのような消費者からの要望がある中で、欧州委員会は2020年11月、ヨーロッパ市民に「修理する権利」を与えました。この権利には、製品保証の延長、交換部品の保証、修理やメンテナンス情報への容易なアクセスなどの内容が盛り込まれています。

「修理のしやすさ」を見える化するフランス

image via AFB

欧州委員会が「修理する権利」を認めたことを受けて、フランスでは、2021年1月から洗濯機、電動芝刈機、テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンに「修理可能指数(Indice de réparabilité)」を表示することを義務化しています。2022年11月には、対象に上部開閉式の洗濯機、食器洗い機、高圧洗浄機、掃除機が新たに追加されました。

2020年2月施行の循環経済法に盛り込まれる形で導入されている同指数。それぞれの製品は、⑴説明書の入手可能な期間と質 ⑵分解の容易さ ⑶スペアパーツの入手のしやすさ ⑷製品価格に対するスペアパーツの価格 ⑸製品ごとの基準、この5つの基準をもとに、修理のしやすさを評価されます。例えば、⑵分解の容易さの基準から、接着固定されたパーツはネジ止め固定されたものよりも評価が低くなります。

5つの基準をもとに、製品をどれほど安く簡単に修理できるかを0から10までの数値で表示し、10に近づくほど修理がしやすい製品という意味になっています。同ルールの導入後、フランスではすべての対象商品のパッケージやラベルに、数値のロゴを表示することが義務化されました。ロゴは、数値とともにレンチのアイコンが描かれており、数値によって色分けされています。

このように、フランスは「修理可能指数」の導入によって、家電製品や電子機器の長寿化を促し、サーキュラーエコノミーを推進しています。2024年のはじめには、「修理可能指数」を補完するものとして「耐久性指数」を表示することも義務化する予定です。

こうしたフランスのルールに対応するために、グローバル企業は修理に適した製品設計に移行していく必要があります。MicrosoftやAppleなど世界的に展開する企業が、修理が容易な製品づくりのノウハウを構築していくことで、他の国にも「修理」が波及するかもしれません。

今後、他国への広がりや他の電化製品へのルール拡張によって、あらゆる電化製品の修理が容易になることを期待したいです。

【参考記事】
Parliament wants to grant EU consumers a “right to repair”

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k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定概念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。