
ごみ拾いが「奉仕」から「遊び」へと変貌し、新しいエンタメとして注目を集めている。スポーツやゲームの要素を取り入れることで、環境保全と社会貢献を同時に楽しめる取り組みが広がりつつある。今やごみ拾いはeスポーツへと発展し、世界各国で行われており、持続可能な社会づくりのためにもごみ拾いには大きな可能性が秘められている。
ごみ拾いと「遊び」の融合

かつて「ごみ拾い」といえば、地域の美化活動やボランティアとして行われる奉仕的な営みであった。地域の自治会や学校行事で行われることも多く、どちらかといえば「やらなければならないこと」と捉えられてきた側面が強い。
しかし近年、このごみ拾いに「遊び」や「ゲーム」の要素を掛け合わせ、新しいエンターテインメントとして昇華する動きが広がっている。人々はなぜ、ごみ拾いを「遊び」として捉え始めたのか。それは、従来のボランティア活動にゲーム性を取り入れることで、楽しみながら社会貢献できる点にある。
単なる労働的な行為ではなく、スコアを競う「競技」へと変わることで、誰もが積極的に関わりたくなる。こうした動きは、環境問題の解決に向けて個人が主体的に参加するきっかけを生み出すことにも繋がるのだ。
その代表例が「スポGOMI」と呼ばれる取り組みである。ごみ拾いを「遊び」として捉える新しい視点は、私たちの社会をどう変えていくのだろうか。
ごみ拾いスポーツ「スポGOMI」の誕生

日本で誕生したスポGOMIは、世界初のごみ拾いを競技化したスポーツだ。ルールは極めてシンプル。制限時間内にチームでエリアを回り、ごみを拾い集める。そして、ごみの種類ごとに設定された得点を合計し、スコアを競う仕組みである。
例えば、空き缶やペットボトルは一定の点数だが、不法投棄された粗大ごみは高得点になる。この得点システムにより、ごみ拾いがまるでスポーツのような駆け引きを伴う活動へと変貌する。実際の大会は熱気にあふれている。ユニフォームを揃えたチームが戦略や戦術を練り、制限時間と格闘しながらごみを拾い集める。
参加資格は、年齢や性別、障がいの有無に関係なく、誰でも予選に出場でき、各国の代表が出場するワールドカップも2025年10月に日本で開催を予定している。観客も声援を送り、まるでサッカーやバスケットボールの試合のような雰囲気が生まれるのだ。参加者の多くは「初めてごみ拾いが楽しいと感じた」と口を揃える。真剣さと遊び心が同居する空間は、ごみ拾いという日常的な行為に新たな価値を与えている。
eスポーツの融合でさらに手軽に

このごみ拾いスポーツは、近年「eスポーツ」との融合によりさらに進化を遂げている。仮想空間上でごみ拾いを行い、スコアを競うアプリやゲームが登場したのである。こうした仕組みによって、屋外に出られない人や遠隔地に住む人でも気軽に参加できるようになった。
eスポーツとしてのごみ拾いは、単なるゲームにとどまらない。チームワークや戦略性が問われる点で、従来の競技スポーツと同じ性質を持っている。また、メディアによる取り上げも増え、SNSを通じて「ごみ拾いが面白い」という認識が拡散されている。これにより、環境活動の裾野は大きく広がりつつある。
ごみ拾いスポーツが広がる背景

企業や自治体との連携
ごみ拾いスポーツが広がる背景には、企業や自治体の積極的な関与がある。多くの企業がCSR(企業の社会的責任)活動の一環としてスポGOMIを支援しており、大会のスポンサーや賞品提供を通じて参加者を後押ししている。企業にとっても、社会貢献活動をゲーム的な形で発信することは、イメージ向上やブランド価値の強化につながる。
学校や地域と連携
また、学校教育や地域イベントにも導入されている点も注目に値する。子どもたちにとって、従来の清掃活動は退屈に映ることが多かったが、スポGOMIの形式を取り入れることで「楽しみながら環境を学ぶ」機会が生まれる。チームで協力する体験は、環境意識だけでなく社会性の育成にも役立っている。
さらに、この流れはスポGOMIだけにとどまらない。GPSと連動し、楽しみながらごみ拾いできる取り組みとして、石川県では「石川県ごみ拾い・GPSアートコンテスト」が実施され、北海道では「ほっかいもっかい杯スポGOMI大会in札幌」が2025年9月に開催された。
このように、多様な形でのごみ拾いが進んでいる。これらの取り組みは、地域社会に根差しながら環境問題を解決するための新たな仕組みとなりつつある。
新しいエンタメがもたらす課題と未来の可能性

成功事例が増える一方で、この新しいエンタメが抱える課題も見過ごせない。以下に、課題と思われる一例やその解決策を紹介する。
持続性の確保
単発のイベントとしては盛り上がるものの、継続的に参加者を集めるためには常に新しい工夫が求められる。ルールが単調であれば飽きられてしまうため、地域性を活かした多様なゲームルールの開発、地域社会との連携強化、AR・VRなど先端技術の積極的な活用が不可欠である。
例えば、Play-to-Earn(ゲームをプレイし、報酬として暗号資産やNFTを獲得できる仕組み)の発想を応用した「Play to Clean」モデルがある。これは、ごみ拾いをすればするほどゲーム内でキャラクターやアイテムを強化できる仕組みだ。また、ごみ拾いの実績を記録し、参加者への「環境トークン」の配布なども行われている。トークン(デジタル資産)は地域の商店やサービスと交換可能にすることで、循環型の動機付けになる。
収益モデルの確立
スポンサー頼みの活動では限界があるため、参加費やグッズ販売、デジタルゲームの課金要素など、安定的な運営を可能にする仕組みが必要だ。解決策として、ごみ拾いや環境改善活動を「環境価値」として可視化し、ブロックチェーン上でカーボンクレジット的に取引できる仕組みを整えることが挙げられる。企業がCSRやSDGs活動の一環として購入すれば、収益にもつながるだろう。
例えば、NPO法人クリーンオーシャンアンサンブルは、海洋ごみ回収をもとにしたNFT(非代替性トークン)クレジットの発行を行っている。本プロジェクトは、海洋ごみ回収活動をNFTクレジットというデジタル証明書の形で発信・収益化することで、従来は奉仕的な取り組みに頼りがちだった清掃活動に、新たな資金源を創出する。企業はこのNFTクレジットを購入することで、自社のESG・CSRの一環として海洋環境保全に貢献することが可能となる。
最新テクノロジー「ブロックチェーン」の活用
最先端テクノロジーであるブロックチェーンは環境問題へのアプローチや地域創生の取り組みなどにも活用され始めている。上記の課題についても、ブロックチェーンをアプリやシステムに導入することで、課題解決につながるといえるだろう。
ブロックチェーン導入は、それらの最新技術に強みを持っている企業と連携し、アプリやシステムを構築することが可能だ。
ごみ拾いから始まる「社会貢献」のカタチ

ごみ拾いeスポーツは、単なる環境美化活動にとどまらない。それは、人々の意識を変え、社会貢献をより身近で楽しいものへと変える力を持っている。参加者は「社会のためにやらされている」感覚から解放され、「仲間と競い合いながら自ら進んで参加する」姿勢へと変わる。
この新しいエンタメは、私たちの社会課題を解決するだけでなく、誰もが楽しみながら「より良い社会をつくる一員」となれる未来を拓く可能性を秘めている。遊びと社会貢献の境界を越えた先にあるのは、「楽しいから続けられる」「続けるから社会が変わる」という好循環である。
ごみ拾いという身近な行為から始まる新しい社会貢献の形は、今後さらに広がりを見せるであろう。
Edited by s.akiyoshi
参考サイト
スポ GOMI ワールドカップ 2025|日本財団 スポGOMI連盟
ほっかいもっかい杯|スポGOMI(スポゴミ)
石川県ごみ拾い・GPSアートコンテスト|石川県生活環境部環境政策課
NPO法人クリーンオーシャンアンサンブル、Carbontribe Labs OÜと連携し、海洋ごみ回収由来のNFTクレジット発行を開始しました | NPO法人Clean Ocean Ensembleのプレスリリース
eスポGOMI |Life Reversal Gaming.
eスポGOMI | Circular Yokohama
ごみ拾いはスポーツだ!スポ GOMI大会|環境省


























佑 立花
2018年よりWEBライターとして活動。地方創生やサステナビリティ、ウェルビーイング、ブロックチェーンなど幅広い分野に関心を持ち、暮らしに根ざした視点で執筆。現在は農家の夫と生まれたばかりの子どもと共に古民家で暮らし、子育てと仕事を両立しながら、持続可能な未来につながる情報発信を行っている。
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