「道の駅」は地方創生の呼び水となるか?“休憩所”から”地域の核”への進化

単なる休憩施設として始まった道の駅だが、今では地域の魅力を発信し、人を呼び込む「目的地」へと進化を遂げた。最初の道の駅が生まれて30年がたち、約1,200駅まで拡大した道の駅は、地方の課題解決の切り札として期待を集めている。本記事では、道の駅の強みや成功事例を通してどのように地方創生に繋がっているのかを探っていく。

進化しつづける道の駅の姿 

トイレ休憩のために立ち寄っていた道の駅が、今ではわざわざ行きたい目的地になっている。1993年に道路利用者の休憩と地域との交流を目的に誕生した道の駅は、休憩機能・情報発信機能・地域連携機能の3つの機能を持つ施設である。103駅からはじまった道の駅は、2025年6月時点で1,230駅まで拡大し、存在感を増し続けている(*1)。

道の駅は、3つのステージにわたって変化している。第1ステージ(1993年〜)では「通過する道路利用者のサービス提供の場」として機能し、トイレ休憩で立ち寄る程度の存在だった。それが第2ステージ(2013年〜)になると「道の駅自体が目的地」へと変わった。そして現在の第3ステージ(2020年〜)では、「地方創生・観光を加速する拠点」として位置づけられ、単なる通過点からわざわざ行きたくなる場所へと大きく変化している。

過疎化や高齢化などの問題に直面する地方にとって、道の駅は地域資源を活かして人を呼び込む貴重な場所となっている。道の駅は、地方創生にどのような新たな可能性をもたらしているのだろうか。


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道の駅が持つ強み。なぜ“地域の核”になりうるのか 

日本の地方は少子高齢化と過疎化により、これまでにない危機に直面している。そんな中で道の駅は、道路を利用する人の休憩所としての役割はもちろん、今では地域政策を実現するツール、災害時の防災施設としても活用されている。

道の駅の基本コンセプトは、休憩機能・情報発信機能・地域連携機能の3つだが、実際にはさらに広い役割を担っている。道の駅が持つ強みを詳しくみていこう。

地域の活性化につながる

道の駅の最大の強みは、「そこでしか手に入らない価値」を提供できる点である。コンビニやインターネットで気軽に多くの商品が手に入る現代だからこそ、道の駅の現地でしか体験できない“何か”の価値が上がっているのだ。

たとえば、地元で採れた野菜や伝統的な手法で作られた加工品は、その土地ならではの魅力を形作るものとなる。生産過程を知ることで安心感を覚えたり、見たことのない商品との出会いにより特別感を味わえたりする。

また、道の駅によっては地元の食材を使った料理教室の開催や収穫体験の提供などを通して、買い物だけでなく「体験」も楽しめる場所としてアプローチしている。道の駅は地域の魅力を詰め込み、その魅力を外部に発信する場所として機能しているのである。

防災拠点として機能する

災害大国である日本において、道の駅は重要な防災施設としての役割も担っている。東日本大震災の際には、多くの道の駅が自衛隊の活動拠点や避難場所として使用され、食料やトイレの提供はもちろん、周辺道路の被災状況を発信する場所としても機能した。

防災施設の例として挙げられるのは、宮城県気仙沼市の道の駅「大谷海岸」である。大谷海岸は、施設自体が津波で多大な被害を受けながらも、直売所を仮店舗として再び立ち上げ、被災者を支える商店としての役割を担った。

今後も地震、噴火、豪雨など自然災害の発生が予想される中、道の駅の防災拠点としての機能はさらに重要視されると考えられる。普段は観光や交流の拠点として機能し、災害時は地域の回復力を高めるという二面性が道の駅の強みである。


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訪問者を魅了する道の駅の成功事例 

全国には1,200を超える道の駅が存在するが、その中でも特に注目を集める事例を3つ紹介する。

道の駅 川場田園プラザ(群馬県川場村)

群馬県川場村の「川場田園プラザ」は、「農業プラス観光」という組み合わせで成功を収めている道の駅である。川場田園プラザは、旅行情報誌『じゃらん』による「全国道の駅グランプリ2025」と「もう一度利用したい道の駅ランキング2025」にて両方とも第1位という快挙を成し遂げた大人気のスポットだ。

川場田園プラザの成功の秘訣は、一日中遊べるレジャー施設のような場所を実現させた点である。川場田園プラザでは農産物の販売だけでなく、果物狩りや陶芸体験、乳製品の製造見学など、訪れた人が参加できる体験プログラムを豊富に用意している。

また、商品を単に販売するのではなく、その背景にある農業や文化をストーリーとして伝える仕組みを作った点も成功要因の一つだ。施設には観光協会スタッフが常駐し、宿泊や体験施設など地域全体の観光案内を行うことで、道の駅が地域の玄関口として機能している。

これらの戦略により、道の駅というよりも地域を代表するテーマパークのような存在になり、訪れる人のリピート率は7割を超えている(*3)。

道の駅 保田小学校(千葉県鋸南町)

千葉県鋸南町の「保田小学校」は、廃校を丸ごと道の駅にして地域活性化を図った珍しいタイプの道の駅である。126年の歴史を持ち2014年に閉校した旧保田小学校を、翌年に宿泊施設・食事処・温泉などを備えた複合施設として生まれ変わらせたのだ。

保田小学校が道の駅として成功した要因の一つは、SNS発信である。保田小学校では黒板や学習机などが当時のまま残されており、教室に泊まるという非日常的な体験ができる点などをYouTubeやFacebookの投稿を通して打ち出した。その結果、懐かしい学校生活をもう一度体験できると口コミが広がっていき、周辺地域から人が集まるようになったのだ。

また、廃校活用と再生可能エネルギー、循環型デザインを組み合わせたSDGs的な取り組みとしても注目され、公共施設再生のお手本としても全国から視察が絶えない。限られた予算で活性化を目指す地方自治体にとって、既存資源を有効活用するという点で注目を浴びている成功事例だといえる。

道の駅 遠野 風の丘(岩手県遠野市)

岩手県遠野市の「道の駅 遠野 風の丘」は、防災拠点として役割を果たした成功例である。遠野 風の丘は、民話の里として有名な遠野の玄関口に位置し、六角牛山を望む景観と遠野ならではの味覚体験を楽しめる。

遠野 風の丘は、観光拠点としての機能と防災拠点としての機能を両立させているのが特徴だ。東日本大震災では、復旧や救援に向かう自衛隊や消防隊、ボランティアを支援する場となり、海産物を販売する店舗を作り被災地の復興を支援した。この功績が認められ、2015年には東北初の「全国モデル道の駅」に、2021年には岩手県内初の「防災道の駅」に選ばれた。

一方、防災拠点としての役割だけでなく、普段は沿岸地域の観光情報の発信を継続している。観光の拠点としても地域の財政に貢献している点が成功要因といえるだろう。遠野 風の丘は、地域のライフラインとしての地位を確立しており、災害リスクが高い日本において、防災機能を持つ道の駅運営のモデルとして重要視されている。


地域通貨

道の駅運営における課題と展望

道の駅の成功事例がある一方で、実は多くの道の駅が深刻な悩みを抱えている。

まず直面するのが収益性の問題だ。全国的に有名な人気施設がある一方で、売上では運営費用をまかなえず、自治体の補助金頼みになっている施設も少なくない。道の駅を建てれば客は来ると見通したものの、継続的な集客ができておらず、持続可能な運営方法の構築が急がれる。

また、道の駅自体は繁盛していても、訪れた人が周辺の観光地まで足を延ばさず、地域全体への経済効果は生まれていないケースもある。道の駅に来た人を地域全体に案内する機能が十分に働いていないため、道の駅に出店する事業者や農家だけが利益を得て、地域の他の事業者は恩恵が受けられていないのだ。

こうした道の駅の課題を乗り越えるには、独自性の確立が不可欠だといえる。道の駅の存在が一般的に知られる現在では、安さを求める層と付加価値があれば高くても購入する層に二極化している。道の駅は後者をターゲットに「ここだけの空間」で「ここだけの体験」を提供する必要があるだろう。今後は道の駅単独で考えるのではなく、官民連携による地域全体を巻き込んだ戦略が求められる。


日本の未来を明るくする地方創生

まとめ

道の駅は30年にわたって、単なる休憩所から地域の資源を活かして人を呼び込む目的地へと進化してきた。成功している道の駅に共通するのは、その地域ならではの魅力を新たな視点から捉え直し、独自の価値を生み出していることである。

もちろん収益性や地域連携といった課題は存在している。しかし、住民・事業者・行政が一体となって課題に向き合うこと自体が持続可能な道の駅を作り出す上では重要なのだ。地元の資源の力で地域を活性化させる道の駅の取り組みは、過疎化や少子高齢化が進む地方の未来において大切な一歩となるだろう。

Edited by s.akiyoshi

注解・参考サイト

注解
(*1)「道の駅」の第63 回登録について<br>~全国で1,230 駅に~| 国土交通省
(*2)『じゃらん』全国道の駅グランプリ2025発表!1位は群馬県「道の駅 川場田園プラザ」が獲得 |じゃらんニュース
(*3)道路が有する新たな価値の創造 ~「道の駅」による拠点の形成~|国土交通省

参考サイト
道の駅とは|国土交通省道路局
「道の駅」の多様な機能展開について|一般財団法人国土技術研究センター
「道の駅」の役割と魅力、そして世界ブランドへの展望 | 日本政府広報室
「道の駅」施策の検討状況|国土交通省
全国モデル「道の駅」【6箇所】|国土交通省道路局
「道の駅」に求める姿や課題|一般財団法人 道路新産業開発機構
道の駅とは? | INSIGHT

About the Writer
中村衣里_中村エレナ

エリ

大学時代は英米学科に在籍し、アメリカに留学後は都市開発と貧困の関連性について研究。現在はフリーライターとして、旅行・留学・英語・SDGsを中心に執筆している。社会の中にある偏見や分断をなくし、誰もが公平に生きられる世界の実現を目指し、文章を通じて変化や行動のきっかけを届けることに取り組んでいる。関心のあるテーマは、多様性・貧困・ジェンダー・メンタルヘルス・心理学など。趣味は旅行、noteを書くこと、映画を観ること。この人が書いた記事の一覧

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