京都祇園祭と大阪天神祭から学ぶ、祭りの熱気とごみゼロの両立

たくさんの人で賑わう、華やかな祭り。だが同時に、大量のごみが発生し、道端に散乱することも問題となっている。この光景を見て複雑な気持ちになった人も多いのではないだろうか。この状況を打開しようと、京都祇園祭と大阪天神祭では、“ごみゼロ”への挑戦がおこなわれている。本記事では、2つの祭りにおける取り組みを紹介し、持続可能な祭りの未来像を探る。

祭りの賑わいと環境問題の葛藤

環境省はイベント開催における環境配慮を重要視しており、「ゼロエミッション」「カーボンニュートラル」を目指す運営を求めている。具体的な取り組みとして、来場者へのごみの分別協力の呼びかけ、繰り返し使える容器の活用などが提示されている。この取り組みは、大量消費型の屋外イベントほど効果が見込めるだろう。大勢の人が集まる祭りは、その好例だ。

地域ごとに開催される祭りは大きなイベントであり、たくさんの人々で賑わう。一方で、来場者数の多い祭りでは、屋台やコンビニエンスストアで購入された飲食物のごみが大量に出てしまう。そして残念なことに、ごみが道端やベンチなどに放置されるケースも後を絶たない。

これらのごみ問題にどう立ち向かえばいいのか。この問いに対する回答として、今回は京都祇園祭と大阪天神祭における取り組み「ごみゼロ大作戦」を紹介する。いずれも洗って再利用できる「リユース食器」と特設のごみ捨て場「エコステーション」を用いて、環境負荷の軽減に努めているのが特徴だ。


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京都祇園祭の挑戦:美意識とごみ削減の融合

東京の神田祭、大阪の天神祭とならび、「日本三大祭り」のひとつに数えられている京都の祇園祭。1000年以上の歴史をもち、7月1日から31日まで、1カ月にわたって多彩な祭事が行われる八坂神社の祭礼だ。特に17日と24日の山鉾巡行、そしてそれぞれの宵山(よいやま:3日前・前々日・前日の総称で前夜祭のようなもの)には大勢の人々が訪れる。しかし、来場者数に比例するかのように、夜店や屋台などで販売される飲食物の容器包装が大量に発生していた。

この状況を打開すべく2014年、「祇園祭ごみゼロ大作戦」が実施された。そこでおこなわれたのは、約21万食分の使い捨て食器をリユース食器へ切り替えること。これは日本初にして世界初の試みだった。また、当日は約2,000人のボランティアとともにエコステーションの設置、ごみの分別回収などをおこない、燃やすごみを約60トンから約34トンまで減らすことに成功した。以降、祇園祭ごみゼロ大作戦は継続して実施されており、2024年にはごみの量を約28トンにまで減少させている。

後述する大阪天神祭と比較すると、祇園祭におけるごみゼロ大作戦の新たな特徴が見えてくる。注目したいのは運営体制だ。天神祭のごみゼロ大作戦は実行委員会方式がとられているのに対して、祇園祭では法人格を持つ組織が活動を統括している。具体的には、「一般社団法人 祇園祭ごみゼロ大作戦」が主催し、京都市は「特別協力」として支える体制なのだ。専任の法人組織があるのは、活動の継続・拡大を見据えた取り組みの一環と考えられる。

祇園祭ごみゼロ大作戦にたずさわる人々は、ごみゼロを「宵山のあたらしいお作法」と位置づけている。これは、茶屋や高級料亭が並び、雅な雰囲気と格式の高さを有する祇園ならではの特徴ではないだろうか。一連の取り組みは、伝統的な美意識と現代的な環境配慮がうまく嚙み合うことで機能しているようだ。


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大阪天神祭の挑戦:市民参加型のエコモデル

東京の神田祭、京都祇園祭とならび、「日本三大祭り」のひとつに数えられている大阪の天神祭。6月下旬から7月25日の約1カ月間にわたり、さまざまな行事がおこなわれる、大阪天満宮の祭礼である。 なかでも来場者数が多くなるのは、7月24日の宵宮(よいみや:前夜祭)と、25日の本宮(ほんみや:祭りの中心・本番的な位置づけ)だ。それぞれの来場者数は、宵宮で約21万2,000人、本宮では約110万9,000人にものぼる。

天神祭では、把握できるだけでも2日間で約60トンものごみが発生していた。中には、使い終わった割り箸やパックなどが道端に散乱しているケースもあったという。もともと大阪には、資源循環に取り組む市民団体やNPOがすでに存在し、それぞれが美化活動に励んでいた。しかし、個別の活動には限界があるのも否めない状態だった。そんななか、京都の祇園祭ごみゼロ大作戦のことを知り、大阪の天神祭でも導入できるかもしれない、という思いが生まれる。その後、市民団体・NPOに大阪市や事業者が合流する形で、「天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会」が発足した。

こうして2017年、宵宮と本宮の2日間にわたるごみゼロ大作戦を実施。のべ835人のボランティアとともに、飲食出店者へのリユース食器の貸し出し、大阪天満宮に近い南天満公園にエコステーションを14カ所設置、それに加えてごみの清掃をおこなった。最終的に、エコステーションで1,532kgのごみを回収し、うち824kgの資源化に成功した。なお、2024年には桜ノ宮公園まで活動エリアを拡大。ボランティアの人数は1,418人に増え、資源化できた回収ごみの量も1,276kgにまで増加した。

祇園祭の活動を主催しているのは専任の一般社団法人であるのに対して、天神祭における主催は「実行委員会」である。資源循環に取り組む複数の市民団体が連携し、草の根レベルでの協働を基盤とした運営体制を構築している点が、祇園祭の組織主導型とは異なる特徴と言える。


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大規模祭りから始まる“ごみゼロ祭り”の可能性

京都祇園祭と大阪天神祭の事例から、ごみ削減の成功要因が見えてくる。

  • 繰り返し使える容器と分別回収を前提とすること
  • エコステーションとボランティアの力を掛け合わせ、来場者の行動変容を促すこと
  • 資源循環を見据えたオペレーションで、衛生・安全・在庫循環の確実性を担保すること

上記の仕組みを導入することで、祭りのごみ問題を解決する糸口になるだろう。これは祭りのある地域の行政、事業者、そして地域住民にとっての希望と言えそうだ。

とはいえ、成功モデルをそのまま模倣するのではなく、地域ごとに活動内容をカスタマイズする必要はあるだろう。例えば、千葉県茂原市で開催された「茂原七夕まつり」では、高校生が中心となって「ゴミ減プロジェクト」を実施している。28個の分別ゴミ箱を制作・設置したり、ごみの分別・回収をおこなう洗浄エコステーションの運営に取り組んだ。この事例は、若年層に参加してもらいたい地域にとって参考になるのではないだろうか。また別の例として、兵庫県西宮市の「にしのみや市民祭り」では、従来設置されていた26カ所のごみ箱を撤去。かわりに2カ所のエコステーションを設置し、そこへごみを集約させた。これは限られたリソースで環境配慮を最大化させたい地域にとっては、良き手本になる事例だ。

このように、地域の特性にマッチした活動が、“ごみゼロ祭り”を実現させるポイントとなる。


旅人4-1

仕組み化と市民参加で、ごみのない祭りを

京都祇園祭と大阪天神祭の事例は、賑わいと環境配慮の両立が可能であることを私たちに示してくれた。このことは、全国の行政、事業者、そして地域住民にとって大きな希望の光と言えるだろう。ごみを「減らす・分ける・返す」という行動が来場者の間で自然に起きれば、賑わいはそのままに環境負荷を軽くできる。さらに、散乱するごみを見て複雑な気持ちになる機会も減らせる。ひいては、伝統文化の継承にもつながってゆくだろう。

祭りの現場で適切な指針を定め、それにそった運営、地域性に合う協働体制、そして来場者の積極的な参加。これらを重ねていけば、ごみのない祭りは特別な風景ではなく、当たり前の風景になってゆくはずだ。

Edited by s.akiyoshi

参考サイト

イベントにおける環境配慮ガイドライン | 環境省
祇園祭ごみゼロ大作戦について | 一般社団法人 祇園祭ごみゼロ大作戦
ご協賛・ご寄付のお願い | 一般社団法人 祇園祭ごみゼロ大作戦
「祇園祭ごみゼロ大作戦2025」ボランティアスタッフの募集 | 京都市
【祇園祭】宵山「ごみゼロ」をPR 地下鉄京都駅の広場でイベント | 産経ニュース
こごみ日和 76 | 京都市ごみ減量推進会議 普及啓発実行委員会
天神祭ごみゼロ大作戦2017実施報告書 | 天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会
天神祭ごみゼロ大作戦2024実施報告書 | 天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会
天神祭ごみゼロ大作戦の取り組み | 廃棄物資源循環学会
茂原七夕まつりゴミ減プロジェクト 完遂 / 〜茂原高校生からの成果報告と提案 | 房総サーキュラーエコノミー推進協議会
令和5年「にしのみや市民祭り」でエコステーションを設置 | 西宮市

About the Writer
早瀬川シュウ

早瀬川 シュウ

フリーライターとして活動中。「日々の生活に『喜び』を」がモットー。特に、「快適さ」や「居心地のよさ」へのこだわりが強い。子どもの頃から海や森林公園を訪れていることもあって、自然環境や景観への興味関心も持っている。せせらぎの音や木漏れ日、お茶をじっくり味わう時間を好んでいる。
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