フードセキュリティとは 注目される理由や世界・日本の現状、取り組みを解説

フードセキュリティとは 注目される理由や世界・日本の現状、取り組みまで解説

フードセキュリティとは

フードセキュリティ(食料安全保障)とは、全ての人がいつでも安全で栄養価の高い食料を安定して手に入れられる状態を指す。FAO(国連食糧農業機関)によると、「すべての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活を送るために、必要とする食事や食の嗜好を満たす、十分で安全かつ栄養のある食料を、物理的、社会的、経済的に入手できる状況」と定義されている。

この概念が生まれたのは、1970年代のこと。世界の人口が増え、経済が発展したことで、食べ物の価格が上昇し、人々の食生活を脅かし始めたことが背景にある。

フードセキュリティは、生きるための最低限の食事を一時的に得られるだけでは達成されない。十分な量があるだけでなく、質の良い安全な食べ物を継続して確保できることが重要とされる。

なぜフードセキュリティが注目されているのか

フードセキュリティが注目されている理由はいくつかある。ここでは、大きく2つの理由についてみていこう。

気候変動

まず1つ目は、自然災害や異常気象などの気候変動が、食料確保に影響を与えている点が挙げられる。

現在、世界中で異常な暑さや干ばつ、洪水などが増えており、大災害の8割以上が気候に関係しているといわれている。特に、干ばつは農業や畜産業に深刻な被害をもたらす。

ただし、食料生産は気候変動の影響を受けやすい一方で、食料生産自体も気候変動の原因になっているといい、農業・林業・畜産業による温室効果ガスの排出は世界全体の排出量の23%を占める。

このように、気候変動による食料供給量の減少などが懸念されていることから、フードセキュリティへの注目が集まっている。

紛争の影響

世界で頻発する紛争も、フードセキュリティが注目される理由として挙げられる。

紛争地域に住む農家は、農地が危険で耕作できない、農地が破壊された、種や肥料が手に入らないなど、さまざまな問題に悩まされているという。また、紛争による失業や収入減少により、食料を購入できない人々や難民として日常生活を送れない人々も増加している。

紛争は、食料・資金・労働力など、経済活動に必要な要素の流れを妨げるうえ、物資不足や価格高騰を引き起こすため、フードセキュリティが達成されない原因になりうる。

フードセキュリティを確保する上で必要な4つの要素

フードセキュリティを保つには、4つの要素が必要となる。

1. 食料の供給力(Availability)

1つ目は、十分な食料を人々に供給できる状態を指す「食料の供給力」である。

人口増加が進む中、供給力がなければ食料不足や栄養失調につながってしまう。アフリカや南アジアでは主に穀物や根菜類に頼る状態が続いており、栄養の偏りの面から持続可能な供給力をつけていくことが求められている。

2. 食料へのアクセス(Access)

2つ目は、食料を実際に手に入れられる状態を指す「食料へのアクセス」である。

食料へのアクセスは、経済的・物理的アクセスの2種類がある。経済的アクセスは、所得・食品の価格などによって決まり、物理的アクセスは、交通インフラや市場の整備状況によって決まる。つまり、供給量が十分にあっても、貧困やインフラの未整備によって購入できない場合は、フードセキュリティが達成できないといえる。

開発途上国では、特に農村部や低所得層のアクセス改善が求められている。

3. 食料の利用(Utilization)

3つ目は、手に入れた食料を体内でうまく活用する状態を指す「食料の利用」である。

たとえば、十分な質や量の食料があっても、保管や調理の方法が正しくないために使えなくなったり、栄養価が失われたりするといった状況があると、食料の利用が確保されていないといえる。

4. 安定性(Stability)

4つ目は、食料をいつでも確実に入手できる状態を指す「安定性」である。

たとえば、今週はあるが来週はない、夏だけ入手できるが他の季節は入手できないといった状況では安定性があるとはいえない。つまり、1〜3つ目の要素が一時的なものではなく、持続的に確保されることが、フードセキュリティには不可欠になる。

世界のフードセキュリティの現状・課題

世界では、飢餓問題がフードセキュリティを妨げる課題となっている。

栄養不足に悩む世界人口は、数十年にわたり減少していたが、2014年以降再び増加し、2023年時点では約7億1,300万人~7億5,700万人(人口の8.9~9.4%)と推定されている 。特に、アフリカでは人口の約20.4%が栄養不足に陥っている。

また、食料を得られるか分からないという状況を経験した人は、世界人口の約28.9%にも上る。さらに、食料は得られても栄養のある健康的な食事ができていない状況にある人は約35.4%もいる。これは、栄養バランスのとれた食事には、単にカロリーを満たす食事の5倍もの費用がかかるともいわれていることが原因と考えられるから。

SDGsの目標では、2030年までに飢餓をゼロにすることを目指しているが、むしろ逆の状態になっているのが現状である。

日本のフードセキュリティの現状・課題

日本では、低い食料自給率と輸入時の購買力低下が課題となっている。

食料自給率については、1965年〜1998年頃にかけて低下し、その後はカロリーベースで40%程度を維持している。農林水産省は2030年度までに食料自給率を45%まで高めることを目標としているが、難しい状況となっている。

また、海外からの輸入も困難な状況になっている。たとえば、2022年に開始したロシアのウクライナ侵攻により、小麦の輸出大国であった両国からの輸入が制限され、世界で小麦の輸入競争が起こっている。しかし、円安などの影響により、輸入における日本の「購買力」が弱まっており、輸入競争で不利な立場になっている。

フードセキュリティ確保のための政府の取り組み

日本政府は、フードセキュリティを強化させるための取り組みを行っている。ここでは、フードセキュリティの4つの要素のうち、2つの要素に関連する取り組みを紹介する。

地域との連携・配送の効率化【食料へのアクセス】

まず、食料へのアクセスを確保するために、地域の関係者と協力してさまざまな取り組みを進めている。たとえば、孤独や孤立状態にある人々へは、フードバンクやこども食堂への支援を通じて、食料支援を行う。また、政府の備蓄米や災害用備蓄食品の無償提供も行い、食品ロスの削減と食料支援の両立を図っている。

さらに、買い物が困難な状況のため食料にアクセスできない人に向けては、移動販売車やドローン、自動配送ロボットなど新技術を活用した配送の効率化を進めている。

このように、さまざまな消費者の状況に応じながら、誰もが必要な食料を入手できる環境整備を目指しているという。

食料安全保障アドバイザリーボードの設置【安定性】

専門家の意見を取り入れながらフードセキュリティの施策を考える「食料安全保障アドバイザリーボード」を設置している。コロナ禍では、食料供給全体に大きな問題は発生しなかったものの一部の食品で需要に対応できず、品薄になるといった事態が発生した。

そのため、今後フードセキュリティをしっかり確保することを目標に、供給に関する課題や緊急事態への対応方針などについて会合を開き、議論を重ねている。

まとめ:フードセキュリティの今後

国連によると、世界人口は2022年の約80億人から、2050年には97億人に増加すると予測されている。増加する人口を養うためにも、フードセキュリティの確保を急ぐ必要がある。

日本においても、食料の価格上昇により、以前より気軽に購入しにくくなったと感じることも多いだろう。新型コロナや紛争など、世界情勢はいつどうなるか分からない。食料の多くを海外に依存する日本にとっては、不測の事態により輸入がストップする可能性も考えなければならない。

フードセキュリティは途上国だけの課題ではなく、世界全体の問題として捉える必要がある。すべての国が協力し、持続可能な食料確保をするための対策の検討が急がれるだろう。

参考文献
Food Security|FAO
Measuring different dimensions of food security|FAO
FAOのフードセキュリティ概念における「状態規範」の変遷|福山市立大学
世界の食料安全保障と日本への課題|一般社団法人Jミルク
食料安全保障対策の強化について|農林水産省
我が国の食料安全保障をめぐる情勢|農林水産省
食料安全保障とは|農林水産省
Keynote 1 SDGsと農業農村開発~持続可能な食料システムを目指して|一般社団法人Jミルク
世界の食料事情 : 飢餓のない世界を創る|国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド 

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