アンダークラスとは?低所得で暮らす人々の抱える問題や抜け出すための支援の在り方

アンダークラスとは

アンダークラス(Underclass)とは、不安定な雇用と低所得など経済的に苦しい状況に置かれた人々の階層を指す。

この概念は、1960年代のアメリカで生まれた。当時、アメリカの都市部で貧困層が増加し、その生活状況が深刻な社会問題として浮き彫りになったことがきっかけである。

アンダークラスという言葉は、英語圏においては少数民族の貧困層を示す差別的な表現として使用される場合もある。しかし、国際的には社会的・経済的地位がほかのすべての階級よりも低い階層であり、低賃金で不安定な仕事に従事する人々を指す概念となっている。また、収入や財産がなく生活水準が低いことから社会的排除や差別の対象となりやすい。

これまでの日本社会では、企業経営者層の「資本家階級」、管理職や専門職などの「新中間階級」、従業員の「労働者階級」、自営業者らの「旧中間階級」という4つの階層区分が存在していた。しかし近年、労働者階級の中から新たに「アンダークラス」が生まれ、階級構造に変化が起こっている。

アンダークラスにおける困難

アンダークラスの人々はどのような困難を抱えているのだろうか。ここでは、アンダークラスの人が抱える3つの困難を説明する。

不安定な雇用

アンダークラスの特徴の一つは、雇用の不安定さである。特に日本では、パートタイムやアルバイト、派遣社員などさまざまな形態の非正規雇用が存在する。

しかし、これらの非正規雇用は、労働環境が良くないことが多く、長期的な雇用保障がない。景気の変動や企業側の都合により、いつ解雇されてもおかしくない状況に常に置かれているのだ。

実際、多くの企業が人件費削減のために非正規雇用を活用しているため、非正規雇用者は常に収入がなくなるリスクと向き合いながら生活を送らなければならない。

低所得

また、所得が低いこともアンダークラスの特徴だ。日経ビジネスによると、アンダークラスの平均年収はわずか186万円であり、生活水準の低さが深刻な課題となっている。フルタイムで働いているにもかかわらず低所得に陥るワーキングプアの人も多く、職業による所得格差が顕著に表れている。また、男性の未婚率は66.4%に達しており、経済的に困難なことで家庭をつことも難しい状況となっている。

社会的孤立

アンダークラスになると、社会的孤立を感じやすくなる。結婚せずにお金の不安に常にさらされると、生活の質を低下させる原因となり、他者との交流を絶ってしまうこともある。

また、仕事や住まいが確保されている場合は、支援をうけることが難しいこともあるため、一人で抱え込んでしまい孤立に至るケースも考えられる。アンダークラスで孤立する人が増えると、社会の分断や格差の固定化にもつながりかねないと懸念されている。

日本のアンダークラスの現状

日本のアンダークラス人口は、2018年時点で929万人に達している。少子化により人口は減少しているにもかかわらず、2025年には1000万人を突破するといわれている。また、無職や失業者を加えると、実質的なアンダークラス人口は1200万人になる。

公益財団法人ニッポンドットコムによると、非正規労働者の総数は1992年の992万人から2017年には1739万人へと急増している。1992年時点では非正規労働者の6割をパート主婦が占めていたが、2002年以降はアンダークラス層が主流となった。現在では、全就業人口の14.4%、労働者階級の4分の1近くをアンダークラスが占めており、過去30年で大きな変化が起きていることになる。

特に、若者の貧困が深刻となっている。労働力調査(2020年)によると、15〜34歳の約2割がアンダークラスに該当し、非正規労働者が約512万人(20.4%)、失業者が約72万人(2.8%)、無職が約69万人(2.7%)となっている。また、アンダークラスの特徴の一つとして、独身者が多く子どもを持つ人が少ない点が挙げられる。今後若者たちが新たにアンダークラスへと流入すると、さらに婚姻率が下がる可能性があると懸念されているのだ。

経済的な面については、データによると平均年収は186万円、貧困率は38.7%と生活に困窮している人が多い。特に女性は約半数が貧困状態にある。アンダークラスの人々は働いていないわけではなく、週の平均労働時間は36.3時間、半数以上が週40時間以上働いているにもかかわらず、低所得から抜け出せなくなっている。

アンダークラスを取り巻く問題

アンダークラスを取り巻く問題

近年、日本でも急増しているアンダークラス層。彼らを取り巻く問題を見ていく。

世代を超えて格差が固定化しやすい

アンダークラスを取り巻く問題の一つが、世代を超えて格差が固定化されていく点である。

親の経済格差により子どもに十分な教育機会を与えられず、結果的に子ども世代の格差へとつながってしまう。裕福な家庭の子どもは質の高い教育を受け、安定した職を得る一方で、貧困家庭の子どもは教育機会を得られずに貧困から抜け出せないループに陥ってしまうのだ。

特に高等教育機関への進学には、家庭の経済状況が大きく影響する。親がアンダークラスの子どもは、能力があっても大学進学を諦めざるを得ないケースが少なくない。経済的な理由により、教育を受ければ花開いたはずの才能が埋もれてしまう可能性もあるのだ。

世代を超えた格差の固定化は、個人の人生の可能性を制限するだけでなく、社会全体の損失にもつながるといわれている。

社会保障から漏れてしまう

アンダークラスは社会保障に守られないという問題も抱えている。

これまでの日本の社会保障制度は、安定した雇用と家族の存在を前提に決められていた。しかし、1990年代のバブル崩壊で非正規雇用が増えたことをきっかけに、保障を受けることができない人が増えているのだ。

非正規雇用者は社会保険の加入要件を満たせないことが多く、持病を抱えた場合や、家族の介護が必要になった場合、社会保障に守られず生活が破綻するリスクがある。

また、社会保障を受けられない状態が続けば、高齢者となった時に生活保護受給者になる可能性が大いにある。アンダークラスの社会保障の問題は、個人の生活の質を低下させるだけでなく、国の将来的な財政にも影響する。

自己責任論に苦しめられる

アンダークラスの人々を苦しめる要因として、貧困をその人の努力不足が原因だとする「自己責任論」も挙げられる。

特に、経済的に恵まれた経営者層や高収入の人がこの考え方をする傾向にある。また、努力不足ではないにもかかわらず、アンダークラスの人々自身がこの考え方を聞いて、「仕方ない」と考えるケースも少なくない。「自分には能力がない」「努力が足りない」と自己否定してしまうことで、生活を改善させる意欲がなくなってしまうのだ。

自己責任論は、貧困の固定化を加速させる要因といわれている。認識のずれにより、階層同士の分断がさらに深まり、格差の解消も難しくなっている。

アンダークラスを抜け出すために必要な支援とは

アンダークラスを抜け出すために必要な支援とは

貧困や格差は固定化されやすい傾向にあるため、親の貧困を引き継いでしまったり、一度レールからはずれると簡単には回復できないのが現状だ、ここでは、貧困状態から抜け出すために求められる支援について紹介する。

賃金の上昇

1つ目は、賃金水準を上昇させることだ。欧州では雇用形態による賃金格差を法律で禁止している国も存在する一方で、日本の最低賃金は時給1,055円(2024年10月時点)と、先進国の中でも低水準となっている。

有効な支援策として、最低賃金の引き上げが求められる。最低賃金を1500円程度まで引き上げることで、非正規雇用でも安定した生活ができるようになる。共働き世帯であれば、子育てする経済的な余裕をもつことができる。

賃金水準の向上や、正規雇用と非正規雇用の同一賃金を徹底することで、社会における格差の是正にもつながる。

若者への生活保障

2つ目は、若者に対する生活保障を充実させることである。

経済が数十年にわたり低迷している中に新型コロナによるパンデミックが発生したことで生活が困窮し、結婚や住宅の購入など思い通りの人生設計ができない若者が多く存在する。

そのため、いま包括的な若者支援制度が求められるのだ。たとえば、質の高い教育機会の保障、職業訓練や安定した雇用機会の提供、そして家族形成を支援する仕組みなどが例として挙げられる。特に、アンダークラスの格差の固定化を防止するため、経済的な理由で教育機会を失うことのないよう、給付型奨学金の拡充などが大切となる。

また、単なる経済的支援にとどまらず、社会参加の機会も保障し、ひとり一人の若者が安心して将来を描ける社会の実現が求められるだろう。

まとめ

アンダークラスは、不安定な雇用と低所得など経済的に苦しい状況に置かれた人々の階層を指す。日本では、絶対的貧困ではなく相対的貧困状態になっている人が多いなど、見た目では分からないが苦しんでいる隠れ貧困が多く存在する。

アンダークラスの人々は、この階層から抜け出したい意欲はあっても社会構造的に抜け出せない状態にあることも多く、負のループに陥ってしまう。そのため、アンダークラスの人が抱える問題を社会全体で把握し、包括的な支援につなげることが最優先で求められているのではないだろうか。

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