アンコールキャリアとは?働くことと幸福度との関係、日本国内での政策や企業事例を紹介

アンコールキャリアとは?

アンコールキャリア(Encore career)とは、人生後半のキャリアを指す言葉。スポーツ選手の競技引退後などに使われる「セカンドキャリア」と同じ意味合いだが、アンコールキャリアは一般的に50代〜60代以降のシニア層が定年退職後にもう一度キャリアを築く際に使用される。

アンコール(Encore)とはフランス語で「ふたたび」や「もう一度」を意味する言葉で、終演後に観客の拍手に応じて再演することを指す。欧米では退職した後の生活を「アンコールライフ」と言い、それになぞらえて社会起業家のマーク・フリードマン氏が「Encore: Finding Work that Matters in the Second Half of Life(アンコール : 人生の後半で重要な仕事を見つける)」という著書において「アンコールキャリア」という言葉を使ったことで注目され始めた。

アンコールキャリアが注目されている背景

アンコールキャリアが注目されているのは、平均寿命が伸びたことで定年退職後も働きたい人が増えている一方、製造業などを中心に労働人口が不足していることが大きな理由だ。シニア層の就労意欲が増しているのに対して、企業が再雇用制度を設けるなどで人材不足の解消に向けた動きも活発化している。また、高齢者雇用を促進するための法整備も進んでいる。

アンコールキャリアは、業務内容の特性から社会福祉や教育などに関わる企業や非営利法人などでの採用も多いという特徴がある。また給与を得ることが目的ではなく、これまでの経験や経歴、特技を活かすことで社会に貢献することなどもアンコールキャリアに含まれる。

そのため、アンコールキャリアに関連する環境を整備することで、シニア層だけではなく社会全体のウェルビーイングが高まることにも期待が持てる。

働くことと幸福度の関係

労働と幸福度の関係にはいくつも研究があり、収入を得られる経済的ベネフィットなど労働が幸福度を向上させることは広く知られている。同様にリタイア後にアンコールキャリアを築くことも、ウェルビーイングにつながると考えられる。そこで6つの観点から、働くことと幸福度の関係について分析してみたい。

収入

シニア期には、健康や資金などの不安要素があるため〝長生きするリスク〟もある。しかしアンコールキャリアを築くことで経済的な不安が解消され、心身ともにプラスに作用することにが期待できる。

社会とのつながり

アンコールキャリアを築くことで、他者との関わりが増えるというメリットがある。シニア期には孤独感を感じるケースもあるが、人間関係が維持されたり、新しく築かれることで社会とのつながりが持てる。

社会貢献

自身が築いてきたキャリアを活かしつつ、それを役に立てられるアンコールキャリアを得られれば、知識や技術を継承することができる。また専門的な知識を活かして、社会貢献につなげることもできる。このように社会の役に立つことを実感することで、心の充実度も高められる。

新しい挑戦

これまでの生活に一区切りをつけて、新しい挑戦ができることもアンコールキャリアのメリットと言える。これまでやりたくてもできなかったことなどに挑戦することで、人生の満足度をさらに高めることができる。

時間

業務に携わる時間や業務そのものの量をコントロールできるのも、アンコールキャリアの一つのメリット。パートタイムやアルバイト、ギグワークなどで、自分の時間を確保しながら必要な収入を得ることができる。

生きがい

人生のほとんどを仕事に費やしてきた定年退職後のシニア層にとって、仕事から離れることで喪失感を抱くケースも多い。しかし、アンコールキャリアを築くことで新たなやりがいや生きがい、目標を見つけることができる。生活の満足感も高まり、生き生きと過ごすことができる。

アンコールキャリアに関連する国内政策

日本では、高齢者の活躍および活用を目指し、1971年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」を制定。アンコールキャリアへの注目度が高まる中、2021年4月1日からは「改正高年齢者雇用安定法」が施行されている。

改正の大きなポイントは70歳までの定年の引き上げで、以下が具体的な内容だ。

  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

2025年3月31日までは経過措置期間となっており、4月1日以降は希望する従業員全員への対応が必要となる。ただし、制度の導入に対する努力義務を推進するためのもので、義務付けしている訳ではない。

アンコールキャリアの雇用状況

日本におけるアンコールキャリアの雇用状況について、厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2024年12月20日発表)を用いて解説する。

下記のグラフは、各企業の2024年6月1日時点における定年制の状況について表している。

出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告

調査対象となった従業員21人以上の企業237,052社のうち、高齢化雇用確保措置を実施しているのは236,920社(99.9%)。そのうち定年制を廃止しているのは9,247社(3.9%)で、60歳を定年とする企業は152,776社(64.4%、前年比−2.0)となっている。また65歳定年は59,693社(25.2%、前年比+1.7)、70歳以上定年は5,690社(2.4%、前年比+0.1)だ。

一方、70歳以上まで働ける制度を設けている企業は75,643社(31.9%)で、前年よりも2.2ポイント増加しており、アンコールキャリアを築きやすい就労環境が増えていることがわかる。具体的な施策としては、業務委託契約などを締結する「継続雇用制度の導入」が最も多く25.6%を占めている。

出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告

アンコールキャリアを築くためのポイント

シニア期のライフプランは、定年退職後の人生設計をミドル期に思い描くことからスタートする。人生をより豊かに過ごすためにも、自分らしいアンコールキャリアを築いていきたいもの。そこでアンコールキャリアを築くためのポイントを紹介する。

これまでのキャリアを継続させる

シニア層にとって大きな資産は、これまで築いてきたキャリアの中で積み上げてきた知識とスキルだ。これらを活用することがアンコールキャリアを築くのに最善と考えられる。職場に再雇用制度や継続雇用制度があれば、それを活用することで業務に対する不安を抱くことなく、アンコールキャリアを始めることができる。

年齢と職歴を強みにする

アンコールキャリアで重視したいのは、自身の何が武器になるかという点だ。実務経験や職歴を重ねていることは、アンコールキャリアを築くために大きな武器になる。ただし、知識やスキルを学び直したり、強みを強化するためにスクールに通ったり、新しいチャレンジをするのも一つの手と考えられる。

ネットワークを活用する

同僚や仕事上で知り合った人などとのネットワークも、アンコールキャリアを築くために大切なポイントとなる。自身の持つ知識やスキルが何かに活かせないか聞いてみるといった方法も考えられる。アンコールキャリアの開始を見越して、定年退職する前に人脈作りをしておくことも検討したい。

起業する

前職でのキャリアを活かして起業するのも、アンコールキャリアにはよくある事例だ。退職金などで資金的に余裕がある場合は積極的に仕事を取りに行かなくてもいいケースが多く、やりたい仕事を自分のペースでできる。

アンコールキャリア関連の制度を導入した企業の事例

アンコールキャリア関連制度を導入した企業の事例

アンコールキャリアに関連する就労環境を整備している企業について、代表的な取り組みを紹介する。

ダイキン工業

「人を基軸におく経営」を基盤としたダイバーシティ・マネジメントを経営の柱の一つとするダイキン工業では、2021年4月1日から再雇用制度を拡充。希望者は70歳まで働き続けることができる。

成果に応じて賞与を配分できるよう、4段階の評価体系を構築しているのも特徴で、ベテラン層のさらなる活躍を推進している。

オムロン

オムロングループでは、60歳で定年退職を迎えた従業員を再雇用する「定年退職者再雇用制度」を導入。65歳までの就労機会を提供するもので、2020年度からは一人ひとりの役割や成果に応じた評価も行っている。

また50歳および55歳を迎える社員に対して、定年後を含めたキャリアのために「セカンドキャリア研修」を実施しているのも特徴だ。

三菱UFJ信託銀行

三菱UFJ信託銀行では、60歳の定年後に再雇用したパートナー嘱託に対して、2023年4月から「シニアジョブコース」を設置。職務に対する貢献度が高い人に対しては高い処遇を設定している。

またシニア向けキャリア研修やマネジメント研修を実施しており、シニア層が活躍できる職場づくりを目指している。

まとめ

アンコールキャリアとは、平均寿命が伸びていることや、労働人口の減少などによって注目されるようになっている。労働者側にとっては収入が得られるほか、社会とのつながりを保つことができる、社会貢献ができるなどウェルビーイングにつながるメリットもある。

法整備も進んでおり、2025年4月からは希望すれば実質的に70歳まで雇用が維持されるようになる。これまでよりも長い期間で人生設計を考える必要があるため、今後のライフプランを改めて見直してみるのもいいだろう。

参考記事
高齢者の活躍に取り組む企業の事例集の展開|厚生労働省
高年齢者雇用状況等報告|厚生労働省
高年齢者の雇用|厚生労働省

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