マクロビオティックとは?
マクロビオティックは、単なる食事法にとどまらず、自然と調和した健康な生き方を目指す哲学だ。自然と調和するためには、玄米や豆類、野菜を中心に自然の食材をバランスよく取り入れた食生活が大切だ。これにより、体と心の健康を同時に手に入れられる。マクロビオティックは、古くから伝わる知恵であり、宗教的な色合いは薄い。
マクロビオティックとビーガン、ベジタリアンとの違い
マクロビオティックは、ヴィーガンやベジタリアンと混同されることもあるが、それぞれに以下のような特徴がある。
【ヴィーガン】
動物性食品を一切口にせず、完全菜食主義の人を指す。肉や魚以外にも、乳製品やハチミツ、卵といった動物由来のものも口にしない。また、食事だけに留まらず革製品や毛皮といった衣類などのアイテムも避ける傾向にある。
【ベジタリアン】
肉を食べずに穀物や豆類、野菜・果物、ナッツ、代替肉などの植物性食品を摂る人を指す。魚や乳製品、卵は人によって食べる場合もある。
【マクロビオティック】
ヴィーガンやベジタリアンと同様に動物性食品を控えるが、すべての動物性食品を禁止しているわけではない。少量の魚や乳製品を食べるケースもある。
マクロビオティックは少量の魚や乳製品を食べる点が、ヴィーガンとの違いである。また、ヴィーガンやベジタリアンと大きく異なる点として「陰陽調和」の考え方を重視することが挙げられる。陰陽調和とは、すべてのものに陰と陽があるという東洋の思想に基づき、食事バランスを整える考え方だ。陰陽調和については、後ほど詳しく解説する。
マクロビオティックの起源と歴史
マクロビオティックは、日本の思想家・桜沢如一(さくらざわゆきかず)が20世紀初頭に提唱した食事法だ。 日本の伝統的な食文化を基に、玄米菜食を中心とすることを重視した食事法である。
この思想は、戦後、桜沢によってアメリカに紹介され、健康志向の人々の間で大きな注目を集めた。特に、1960年代から1970年代にかけて、ヒッピーカルチャーや自然食ブームの中で広く普及した。
その後、2000年代以降は、海外セレブが実践する健康法として再び脚光を浴び、日本にも逆輸入される形で再注目される。マクロビオティックは、単なる食事法を超えて、一つのライフスタイルとして世界中で実践されるようになった。
マクロビオティックの5大原則

ここではマクロビオティックの要となる5大原則について解説する。
身土不二
「身土不二」とは、仏教用語に由来し「からだ」と「土地」は切り離せないという意味だ。地産地消の考え方とも近く、地元産の旬の食材を食べることで、体と自然のバランスを保とうとする考え方である。
一物全体
「一物全体」とは食材を丸ごと食べるという意味を持つ。米は玄米、野菜はできるだけ皮ごと、魚は頭から尾まで丸ごと調理し、口にすることを基本とする。皮や芯といった捨ててしまう部分にも栄養が豊富に含まれているため、無駄なく食材を食すことを大切にしている。
陰陽調和
「陰陽調和」とは、すべてのものに陰と陽があるという東洋の思想に基づき、食事のバランスを整える考え方だ。
陰性の食材(冷やす作用のある食材)と陽性の食材(温める作用のある食材)をバランスよく組み合わせることで、体の調子を整える。
また、食材だけでなく、調理法にも陰陽があると考える。陰陽は、火を使う時間の長さや圧力の有無、油や水の使用量、調理器具の素材によっても変わる。それらのバランスを取り、健康に過ごすことを目指している。
穀物菜食
玄米や全粒粉などの穀物を主食とし、野菜をたっぷり摂る。穀物には生命エネルギーが豊富に含まれており、体を丈夫にする働きがある。
正しい食べ方
ゆっくりとよく噛んで食べる、感謝の気持ちを持って食事をするなど、食べ方にも気を配る。玄米など精製していない食べ物は消化に負担がかかりやすいため、よく噛んで食べ物の消化吸収を助け、食べすぎを防ぐ効果もある。健康な人で30~50回、体調の悪い人や病気の人は100~150回噛むことを推奨している。
マクロビオティックの具体的な実践
ここでは、マクロビオティックの食事作りを始めるための具体的なステップを紹介する。マクロビオティックでは、厳密に食べてはいけない食材はない。すべての食材が「陰」と「陽」の性質を持っていると考え、そのバランスを保つことを大切にしているからだ。ただし、より健康的な体を目指すために、精製された食品や添加物が多い食品、過度に冷えた食品は控えることが推奨されている。
積極的に取り入れたい食材としては、以下のものが挙げられる。
●穀物:玄米や全粒粉、大麦といった穀類。食物繊維が豊富で、エネルギー源となる。●豆類:大豆、レンズ豆、ひよこ豆といった豆類。良質なタンパク質源であり、ミネラルも豊富。
●野菜:旬の野菜をできるだけ多く摂る。特に、緑黄色野菜は、ビタミンやミネラルが豊富。
●海藻: わかめや昆布、ひじきといった海藻類。ミネラルが豊富。
●果物: 旬の果物を適量摂る。ただし、糖質が高いものもあるため、食べ過ぎには注意が必要。
マクロビオティックレシピ
マクロビオティックのレシピは、みそ汁や炒め物などシンプルな素材と調理法のものが多い。基本は、穀物、豆類、野菜を組み合わせて調理する。
玄米ご飯:玄米を炊く際に、海藻や豆を一緒に炊き込むことで、栄養バランスがよくなる。
みそ汁:出汁は昆布や鰹節を使用し、味噌は麦みそがおすすめされている。具材は季節の野菜をたっぷり使う。
煮物:根菜をじっくり煮込むことで甘みが引き出され、体も温まる。
炒め物:ごま油を使って野菜を炒めると、風味が増す。
レシピを選ぶ際のポイントは、下記の通りだ。
陰陽バランス: 食材の陰陽のバランスを考え、組み合わせる。
五味: 甘味、酸味、塩味、辛味、苦味の五味をバランスよく取り入れる。
五色: 赤、黄、緑、白、黒の五色を意識して、彩り豊かな食事にする。
また、マクロビオティックの食事法では、たんぱく質やビタミンB12といった栄養素が不足しがちだ。そのため、大豆食品を意識して取り入れる、週に数回程度魚介類をメニューに加えることで栄養バランスが整う。
マクロビオティック食材の購入方法
マクロビオティック食材は、スーパーマーケットや自然食品店で購入できる。購入する際のポイントは、以下の3つだ。
①できるだけ地元産の食材を選ぶ
②農薬や化学肥料を使用していない有機栽培の食材を選ぶ
③旬の食材を選ぶ
これらを意識することで、栄養価が高く、安心して食べられる食材が手に入る。
マクロビオティックの期待される効果やメリット

本章では、マクロビオティックの実践で得られる健康効果や美容効果、環境への貢献といったさまざまなメリットについて解説する。
ダイエット効果がある
マクロビオティックは、玄米や豆類など、低カロリーで栄養価の高い食材を多く摂るため、自然とカロリーが抑えられ、ダイエット効果が期待できる。また、食物繊維が豊富で満腹感が得られやすく、食べ過ぎを防ぐ。
腸内環境の改善効果がある
マクロビオティックでは、発酵食品や食物繊維が豊富な食材を多く摂る。これらの食材は、腸内環境を整え、善玉菌を増やす働きがある。腸内環境が改善されると、免疫力の向上や便秘解消、肌の調子を整える効果も期待できる。
生活習慣病の改善効果が期待できる
マクロビオティックの食事法では、以下のように糖尿病や高血圧といった生活習慣病の改善効果が期待できる。
糖尿病・高血圧の予防
マクロビオティックでは、玄米や全粒粉といったGI値(血糖値の上昇速度を示す指標)が低い食品や食物繊維の豊富な食品を多く摂る。それにより、糖の吸収を穏やかにし、血糖値の上昇を抑え、血圧の安定につながる。
また、海藻や野菜といったカリウムが豊富な食品を多く摂ることから、体内の余分なナトリウムが排出され、血圧を下げる作用があるといわれている。
動脈硬化の予防
オリーブオイルやナッツなど、不飽和脂肪酸が豊富な食品を多く摂ることで、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがある。これにより、動脈硬化を予防する効果が期待できる。
ストレス軽減など心の健康効果が期待できる
マクロビオティックは、体だけでなく心の健康も目指す食事法だ。近年、腸内細菌は脳の発達や行動に影響を与え、神経伝達物質の合成にも関与していることが、動物実験やヒトの研究から示唆されている。マクロビオティックの食事法で腸内環境が整うことにより、心の健康効果も期待できる。
環境にやさしい食生活を実現できる
マクロビオティックは、単なる食事法にとどまらず、環境にも配慮した食生活を提唱している。環境にやさしいとされる理由には、以下の4つが挙げられる。
地産地消の推進
地元の食材を消費することで、輸送に伴うエネルギー消費を減らし、食料自給率の向上に貢献する。
有機農業の支援
有機栽培農産物の消費により、化学肥料や農薬使用量を減らし、土壌や水質の汚染を防ぐ。
食料の無駄削減
玄米食や野菜の皮ごと調理は、食品ロスの削減につながり、食料生産に必要な資源の無駄遣いを防ぐ。
畜産による環境負荷の低減
動物性食品の摂取を控えることで、家畜の飼育にともなう水資源の消費やメタンガスの排出を減らし、地球温暖化防止に貢献する。
マクロビオティックを始める際の注意点
メリットの多いマクロビオティックの食事法だが、いくつか注意点もある。しっかりと確認した上で、自分に合った取り入れ方をしよう。
栄養バランス
マクロビオティックはバランスの取れた食事法だが、栄養不足に注意が必要だ。特に、ビタミンB12や鉄分は、動物性食品に多く含まれるため、肉や魚の摂取を控えるマクロビオティックでは不足しがちだ。週に数回、魚介類を使用したメニューを取り入れることで、栄養不足を防ぎやすくなる。
医師への相談
持病のある方や妊娠中、授乳中の方は、必ず医師に相談してから始めよう。持病がある場合、マクロビオティックの食事制限が既存の疾患や服用中の薬に影響を与える可能性があるためだ。また、妊娠中の場合は特定の栄養素が不足し、母体や子供に悪影響を及ぼす恐れがある。
無理のない範囲で
いきなりすべての食事を置き換えるのではなく、少しずつ取り入れよう。急激な食生活の変化は、消化不良や体調不良を招く場合がある。無理のない範囲から始めることで、消化器官が新しい食生活に慣れるための時間を与え、体への負担を最小限に抑えられる。
専門家のサポート
自己流ではなく、専門家のサポートを受けることが望ましい。マクロビオティックの料理教室に通ったり、専門家からアドバイスを受けたりすることで、正しい知識の習得を習得でき、より安全かつスムーズに実践できる。
まとめ
マクロビオティックは、単なる食事法にとどまらず、自然と調和した健康で持続可能な生き方を追求する哲学だ。玄米や豆類を中心に、旬の野菜や海藻といった自然の恵みを最大限に活かした食事により、心身の健康を促進し、同時に地球環境の保全にも貢献できる。
マクロビオティックに興味を持った方は、肉を食べる回数を減らしたり、白米を玄米に置き換えたりと、自身のライフスタイルに合わせてできることから始めてみてはいかがだろうか。
参考記事
マクロビオティックについて|名古屋文理短期大学紀要 第26号 (2001)近藤みゆき
代替的な食の文化の現代的展開 ーマクロビオティックを中心にー|『宗教研究』88巻別冊(2015年)黒田純一郎
市販料理本に掲載されているマクロビオティック食のビタミンB12 |高知女子大学紀要 生活科学部編 西岡道子,彼末富貴,宮本恵美,渡辺文雄
第10回講演会【講演】脳卒中予防と食生活:食から見直そう|中央労災病院
近代日本における食養論の展開|京都産業大学 学術リポジトリ
関連記事
新着記事















