サステナビリティ・リンク・ローンとは?注目される背景や仕組み、事例を紹介

サステナビリティ・リンク・ローンとは

サステナビリティ・リンク・ローンとは、企業のサステナブル事業を奨励するために金融機関が提供している金融商品のこと。ESG投資の拡大を背景に、日本を含む世界において普及が進んでいる。

英語ではSustainability Linked Loanと言い、略してSLLと表記されることもある。日本語では「持続可能性と連動したローン」という意味合いになる。

グリーンファイナンスにはサステナビリティ・リンク・ボンドといった商品もあるが、サステナビリティ・リンク・ローンの大きな特徴は、企業自身が設定した目標値をクリアすることによって融資条件のインセンティブを得られること。また金融機関と企業との個々の契約になるため、中小企業も利用しやすいといった利点がある。

サステナビリティ・リンク・ローンが注目される背景

サステナビリティ・リンク・ローンが注目される背景

サステナビリティ・リンク・ローンの注目度が高い背景として、3つのポイントについて解説する。

深刻化する気候変動問題

気候変動は気温上昇や海面水位の上昇などにより、生態系はもちろん経済や文化、インフラ、健康といった社会のさまざまな分野に影響を与えている。こうした世界的な背景の中、事業活動によって少なからずCO2を排出している企業にとっては、いかに気候変動問題の解決に寄与できるかも社会的な役割の一つとなっている。

また、サステナビリティ事業が強化されることによって、新たなものやサービスを生み出すビジネスチャンスが増え、市場規模が拡大するとも考えられている。

グリーンファイナンスの利用拡大

企業が気候変動対策を行うことに重要性を感じたとしても、膨大なコストがかかることで二の足を踏んでしまうこともある。そこで、注目度が高まっているのがグリーンファイナンスだ。

特に2015年のパリ協定以降は気候危機対策への投資を促す発言や言及が増えており、資金をどのように活用するかも重要視されている。気候変動対策に資金が流れることで、経済活動が活発になることへの期待もある。

中小企業でも使いやすい

グリーンファイナンスの中で特にサステナビリティ・リンク・ローンの注目度が高いのは、使い勝手がいいことだ。例えば、サステナビリティ・リンク・ボンドは投資家の出資によって成り立つため、国や大企業が債券を発行することが多い。また、特定のプロジェクトに融資対象が限定されるといった制限もある。

一方のサステナビリティ・リンク・ローンは、企業と金融機関との契約になるためこれまで対策が遅れていた中小企業でも活用しやすい。また、融資対象が特定のプロジェクトに限定されないのも特徴だ。

サステナビリティ・リンク・ローンの仕組み

サステナビリティ・リンク・ローンの仕組み

サステナビリティ・リンク・ローンの基本的な仕組みは、第三者である外部機関を介して、サステナブル事業を開始または拡大したい企業が、契約締結のもと金融機関から資金の融資を受ける。

この際、借り手側企業は、持続可能性の実現に向けた野心的な目標を金融機関に提示。この目標はサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT、複数の場合SPTs)と呼ばれ、主にCO2排出量の削減や再生品使用の比率向上などが項目となる。融資を受けた後は、このSPTに関するレポーティングを定期的に行い、外部機関の評価に連動して融資条件が見直されるという流れになる。

特徴の一つである融資条件との連動については、環境省が策定した「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」では複数のパターンを想定している。

例えば、ローン契約が1年で更新される場合、SPTをクリアした場合は金利を引き下げ、達成しない場合は金利を引き上げるといった方法だ。またローン契約が1年以上の場合は、SPTを達成した時点で金利を引き下げる、融資関連手数料を引き下げるといった方法を想定している。

サステナビリティ・リンク・ローンの普及状況

環境省「グリーンファイナンスポータル」のデータをもとに、サステナビリティ・リンク・ローンの世界と日本国内における普及状況について解説する。

世界での普及状況

以下のグラフは、Environmental Financeデータベースから2024年11月29日に取得したデータをもとに環境省が作成したもの。サステナビリティ・リンク・ローンの全世界における融資額と融資件数の推移を表している。

出典:サステナビリティ・リンク・ローン組成データ|環境省「グリーンファイナンスポータル」

Environmental Financeデータベースによると、2016年に初めてサステナビリティ・リンク・ローンの組成を確認。その後、融資件数と融資額ともに2018年から急激に普及が進んでいる。地域別に見ると、ヨーロッパが最も多く、次いで北アメリカ、アジア太平洋と続いている。

日本における普及状況

サステナビリティ・リンク・ローンの組成が日本国内で初めて確認されたのは、2019年のことだ。2024年11月29日時点での累計は、融資件数が1,270、融資額が2,445億円となっている。

出典:サステナビリティ・リンク・ローン組成データ|環境省「グリーンファイナンスポータル」

融資件数・融資額ともに大きく伸長したのが2021年のことで、前年に比べて融資件数が約6倍、融資額は約5倍となった。この要因として、2020年に環境省が「リーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020年版」を策定したことで、存在が広く知られるようになったことが考えられる。

サステナビリティ・リンク・ローンを活用するメリット

サステナビリティ・リンク・ローンを活用する際は、借り手側と貸し手側の両方にメリットがある。それぞれについて解説する。

借り手側のメリット

借り手側企業のメリットとしてまず考えられるのは、サステナビリティ経営を高度化できることだ。SPTを設定することで、持続可能性の高い事業に向けた戦略やマネジメント、ガバナンス体制の構築などをより推進させることができる。

加えて、サステナビリティ・リンク・ローンは、SPTを達成することでインセンティブを得られる契約になっているため、目標のクリアを目指して積極的に取り組むことにも期待できるのだ。

ほかには、サステナビリティ事業を推進することによって持続可能性の高さを内外にアピールでき、企業ブランディングの強化にもつなげられる。情報開示などで経営の透明性が確保されることで、金融機関との関係強化ができるのも大きなメリットとなる。

貸し手側のメリット

一方、貸し手側である金融機関のメリットは、安定的な利息収入が得られることだ。持続可能性の高い企業を支援する姿勢がアピールでき、イメージアップにもつながる。

また、取引先企業が、サステナビリティ事業を強化するきっかけにもなり、企業価値の向上を後押しすることもできる。それに伴い、借り手側企業との関係性の強化にもつながる。さらには、サステナビリティ事業を強化したい企業との間で、新しい取引が開始される可能性もある。

サステナビリティ・リンク・ローンの課題

サステナビリティ・リンク・ローンには、メリットだけではなく、デメリットや課題もある。例えば、企業側の負担増だ。利用企業は、定期的な情報提供が求められており、その準備のために時間と労力、費用を費やすことになる。サステナビリティ・リンク・ローンは中小企業の利用も多いが、企業規模によっては対応できないケースがあるのも課題だ。

また、借り手側企業が得られるインセンティブの内容は、個々のケースによって異なる。そのため、SPT達成に対する労力に見合っていないと感じる可能性もある。

さらにサステナビリティ・リンク・ローンが活用できるかどうかは金融機関が判断するため、SPTの妥当性や有効性などの判断基準にバラツキがあるのも課題の一つと言える。

サステナビリティ・リンク・ローンの事例

この項目では、サステナビリティ・リンク・ローンを活用している国内企業の事例について紹介する。

東急不動産

東急不動産では、2024年8月28日にみずほ銀行をアレンジャーとしたシンジケーション方式(国内金融機関11社)で、サステナビリティ・リンク・ローンによる契約を締結している。重要評価指標およびSPTには、2022年3月に掲げた「環境ビジョン2030」におけるCO2排出量削減目標を設定している。

熊谷組

熊谷組では、2024年10月31日に「サステナビリティ・リンク・ローンフレームワーク」を策定し、北陸銀行との間でSLL型契約を締結した。SPTsとして、Scope1+Scope2の排出量削減率とScope3の排出量削減率に関して1年ごとに目標値を設定しており、最終年度である2029年度の目標は、それぞれ42.0%、25.0%の削減を目指している。

雪国まいたけ

雪国まいたけでは、2024年3月29日に第四北越銀行とSDGsリンク・ローンを締結している。2030年度までに温室効果ガス排出原単位(生産量ベース)を、2020年度比約35%削減することをSPTとした。なおSPTの評価は、第三者機関である第四北越リサーチ&コンサルティングが担当している。

まとめ

日本におけるサステナビリティ・リンク・ローンは、累計融資件数が1,270件、融資額が2,445億円と、拡大の一途を辿っている。

サステナビリティ・リンク・ローンの活用がさらに拡大することによって、中小企業を含めた企業による気候変動対策がさらに進むと予想される。また、ビジネスチャンスが新たに創出されることにより、経済が活性化されることにも期待が寄せられている。

参考記事
サステナビリティ・リンク・ローン概要|環境省「グリーンファイナンスポータル」

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