半農半xとは
半農半xとは、持続可能な小さな農ある暮らしをベースに、自分が好きなことや得意なこと(x)で世に貢献する生き方である。
半農半xの概念は幅広く自由であり、半農半xといっても1日の労働時間の半分を農業に充てる必要はない。また、xの仕事はフルタイムや業務委託など、雇用形態は決まっておらず、1つでも複数あってもよい。季節によって農業に従事する時期としない時期を決める場合もある。
また、育てる農作物も米・ホップ・野菜・果樹・ハーブ・卵など人によってさまざまである。自家消費や直販、お店での販売など家庭菜園レベルから専業農家まで規模も人によって異なる。xの職業も、神主・ラッパー・庭師・塾講師・カフェ経営者など、自由に決めて良いのだ。
兼業農家との違い
兼業農家と半農半xは、農業と仕事のバランスが異なる。兼業農家は、農業を主軸としつつ他の仕事も行う人を指す。
一方、半農半xは農業に従事している人がそのまま他の仕事にも従事している。たとえば飲食店で自分が育てたこだわりの作物を提供したり、本業をメインとしながら農業では自分が食べたい分だけを作ったり、農業そのものを収入の柱としない生き方が可能となる。
つまり、兼業農家の方が農業での収入をメインに考えており、半農半xは個人のライフスタイルを重視している。また、兼業農家の方が収入の安定を求める傾向がある。
半農半xのメリット

半農半xの生き方をすることで、さまざまなメリットが生まれる。
生活の質が上がる
まずは、生活の質を上げられる点だ。半農半xでは、お金を稼ぐためだけに生きるのではなく、自分の好きな仕事や趣味に十分な時間を割ける。すると、仕事に対するストレスが減り、ワークライフバランスを実現できるのだ。たとえば、朝の涼しい時間に農作業を行い、午後からは自分の好きな仕事に取り組むといった柔軟な時間の使い方ができるようになる。
また、自分の好きなことや得意分野を活かして社会の役に立つと、達成感や充実感が得られるため心の豊かさが広がっていく。さらに、農業を通して地域の人々との交流も増え、人間関係も豊かになっていくことで、全体的に生活の質を向上させられる。
生活コストの削減
生活コストを削減できるメリットもある。自分の食べるものを自分で作ると食費を大幅に減らせる。また、自然の恵みのある環境下では、薪ストーブの活用・雨水の利用・太陽光発電の導入等工夫次第で光熱費などの生活コストを抑えられる。
さらに、自然に寄り添った暮らしを続けていくと、物質的な豊かさよりも心の豊かさを大切にするようになり、お金への執着が自然と薄れていくともいわれている。お金への執着から解放されることで、人生の目的や価値観を見つめ直すきっかけとなるのも、半農半xならではの魅力の一つといえる。
地域への貢献
地域への貢献も半農半xの大きなメリットとして挙げられる。国内の多くの地方が高齢化や過疎化の問題に直面しており、地方創生が注目されている。そんな中、地方で半農半xを実践する若者が増えると、使われなくなった農地の活用や伝統文化の継承、地域コミュニティの活性化など、高齢者だけでは解決が難しかった地域課題の解決につながる。
また、生活費の高い都会の生活では子どもを持つ余裕がなかった夫婦が地方で半農半xの暮らしに変わると、子どもが欲しいと考えるようになるケースもある。このように、移住者や子供が増えることで地域が抱える問題が改善し、さらなる地域貢献へとつながるのだ。
半農半xのデメリット

半農半xには様々なメリットがある一方で、デメリットも存在する。
地元農家に受け入れてもらえない可能性がある
まず、地元農家から受け入れてもらえない可能性がある。別の仕事(x)をしている場合、片手間で農業をしていると見られがちなため、専業農家に比べると受け入れてもらうのが難しくなるケースがある。
農業は周囲の協力なしでは成り立たないため、地域コミュニティで信頼を得ることが重要だ。そのため、半農半xを行う場合には積極的に農家同士の交流会や地域のイベントに参加するなど、敬意を払いながら学ぶ姿勢を見せることが地元の農家に認めてもらう一歩につながる。
どちらも中途半端になる可能性がある
農業もXも中途半端になるリスクもある。農業は土作りから収穫までのすべての作業に手間と時間がかかる。特に初めての農業で慣れていない場合は、他の仕事に時間を割くのが難しくなり、生活全体のバランスが崩れることがある。
半農半xを始める際は、まずはどちらか一方の仕事に専念し、生活基盤をしっかり整えてからもう片方を取り入れるほうが両立しやすくなる。
初期投資が負担になる
半農半xを始める際には初期投資は避けられない。農業をするには設備や道具が必要となり、たとえば、小型トラクターや軽トラックを購入するだけで200〜300万円がかかることもある。
一方で、Xの仕事も農業ほど大きな額にはならないものの、設備投資といったコストがかかる場合が多い。両方を同時に始める場合、初期投資が高く、収益の安定には時間がかかることを念頭に置いておく必要がある。事前に自己資金を用意したうえで、計画を立てていくのが大切だ。
半農半xを推進する自治体の取り組み

半農半xを積極的に推進している地方自治体もある。
島根県
島根県では、全国に先駆けて2010年から半農半xを推進している。島根県は豊かな自然が魅力的な土地であり、キャベツやトマト、アスパラガスといったさまざまな野菜の生産に適している。しかし、生産年齢人口(15〜64歳)は1985年をピークに減少し、県のデータによると2021年の島根県の人口は66万人と、1992年の77万人から10万人も減少している。人口減少や高齢化が深刻化していることから、農業に従事する人も減少している。
そこで、島根県では県外からUIターンしようとする人、住民票を移動して1年以内の人などの中から半農半xを取り組む人向けに以下のような支援制度を設けている。
- UIターンしまね産業体験事業(島根にお試しで移住し、適応性や地域の状況を確認する)
- 就農前研修経費助成事業(就農前の研修に必要な経費などを援助し、県が認める研修機関または市町村が認めた受け入れ農家にて研修を受ける)
- 定住定着助成事業(農業を始めて1年目に必要な経費などを援助する)
- 半農半x開始支援(農業を行うのに必要な施設や機械整備の一部経費を援助する)
支援制度の存在もあり、島根県では2010年〜2022年までに92名の半農半x実践者が認定され、2022年時点で76名が定住している。
徳島県・鳴門市
徳島県鳴門市では、農業の繁忙期の人手不足や新たな担い手の確保といった問題が浮き彫りになっている。そこで、近年注目度が高まっている地方移住に焦点をあて、半農半xを新たなコンセプトに移住交流を促進している。
鳴門市では、地方に関心のある人を全国から募集し、農業のアルバイトとシェアハウスでの生活を組み合わせた「半農半xシェアハウス事業」を行っている。一日の半分は地元の農家とともに作業をし、残り半分は参加者同士がシェアハウスで交流をはかる。
半農半xシェアハウス事業は、移住交流の促進や農業の繁忙期における人手不足の解消を目的としている。また、参加者には約2週間の半農半xライフを通して、地方で暮らす良さや自分の将来について考えてもらうきっかけを提供している。
参加者からは「住み心地が良く住んでみたいと思った」「農業を活かした創業を考えたい」という声が寄せられており、農業と移住促進を組み合わせたプロモーションの成功例となっている。
まとめ
半農半xは、農業をしながら残りの時間を自分のやりたいことや得意な仕事に費やす生き方である。実践する人は自分の好きな仕事をしながら農業ができるため、心の余裕を持ちながら働きがいを感じられる。農業もxの仕事も事業規模が決められているわけではないため、自由に事業を営めるのが魅力となるだろう。
また、農業の担い手が少なく人を求めている地方にとっては、半農半xに携わる人が増えると経済成長につながるのだ。半農半xは、地方移住が注目される今の社会でさらに広まっていくだろう。
参考文献
あいちdeニューノーマルの選択肢、半農半Xな暮らしガイド |愛知県
かがわの中山間地域で – 半農半Xの暮らし|香川県
半農半Xはなぜ失敗する? 経験者が語る失敗事例とそこから得た教訓とは|マイナビ農業
ご縁の国しまねの半農半Xのすすめ |島根県
島根県の人口動態|島根県
半農半X |鳴門市移住サイト
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