化石賞とは?日本が受賞した理由や気候変動対策について解説

化石賞とは?

「化石賞」とは、気候変動対策を後退させるような消極的な姿勢や発言で、足を引っ張った国に与えられる不名誉な賞のこと。気候変動に取り組む130か国・1800超の会員組織を抱える世界最大の環境NGOネットワーク「CAN(Climate Action Network)インターナショナル」が、毎年行われるCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の期間中に調査・選定して授与している。

COPはConference of the Partiesの頭文字をとったもので、国連気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)の最高意思決定機関のこと。毎年1回、京都議定書やパリ協定などで合意した事項の実施状況の確認や、新たな目標の設定などを議論している。

なお「化石賞」には、「本日の化石賞(Fossil of the Day Award)」と、「年間化石賞(Fossil of the Year Award)」の2つがある。一般的に「化石賞」と言う場合は、「本日の化石賞」を指すことが多い。

「本日の化石賞」と「年間化石賞」

「本日の化石賞」はCOP開催期間中、毎日1〜3位までを発表。夕方に授賞式を開催し、受賞した国から参加しているNGOメンバーにトロフィーを手渡すパフォーマンスが行われる。日本は毎年のように「本日の化石賞」に選出される常連国だ。COP開催期間中に複数回あるいは1日に複数回選出されたケースもある。

1日に複数回「化石賞」に選出されたケースとしては、2011年にカナダ、2019年にアメリカが1位、2位、3位を独占したこともある。また、2009年にアメリカが3日連続で1位に輝いたり、2021年にオーストラリアが期間中に5回受賞した例もある。この際、CANはオーストラリアのことを「巨大化石」と称した。

一方、「年間化石賞」は、気候変動対策に対して1年間で最も後ろ向きな政策を打ち出した国、気候変動対策に前向きな姿勢で取り組まなかった国などが選ばれる。また、2000年にオランダ・ハーグで開催されたCOP6では、「今世紀の化石賞(Fossil of the century)」としてアメリカを選出した。開催初日に、アメリカのブッシュ大統領(当時)が京都議定書不支持を表明したことが理由だ。

化石賞のはじまり

化石賞のはじまり

化石賞が初めて発表されたのは、1999年にドイツのボンで開催されたCOP5でのこと。ドイツのNGOフォーラムが主導して実施し、日本も初めて選出された。以来、恒例のイベントとなっている。

「化石」というネーミングは、地球環境破壊につながる化石燃料を指していると同時に、太古時代の化石のような古い考え方という意味も含んでいる。現代に残る「化石」のようだという批判的の意味合いから、受賞した国にとっては不名誉な賞となる。

選出対象は主に会議に参加している国の政府だが、石油産業関連企業が選ばれた例もある。またCOP以外の国際会議で、化石賞を発表したこともある。

日本が「化石賞」を受賞した理由

日本は毎年のように「本日の化石賞」を受賞しているが、直近5回のCOPにおいて受賞した理由を解説する。

COP25(2019年)

COP25は、海洋資源を活用した温暖化対策を主なテーマとするため「ブルーCOP」と名付けられ、2019年12月2日から15日までスペインの首都マドリードで開催された。主に温室効果ガスの排出量削減目標の引き上げなどが議論された。

12月3日、日本はオーストラリア、ブラジルとともに「化石賞」1位を受賞した。石炭火力発電の段階的廃止などを勧告した「国連環境計画(UNEP)」の報告書を受けた際の、梶山弘志経済産業大臣(当時)のコメントが理由だ。

メディアの質問に対して、梶山大臣は「化石燃料発電所は選択肢として残しておきたい」と発言。これに対してCANは、「国際社会とパリ協定を無視し、地球を破壊して人々を危険にさらす」と指摘した。

COP26(2021年)

COP26は、2021年10月31日から11月13日にかけて、イギリスのスコットランドに位置するグラスゴーで開催された。パリ協定の目標年度である2030年までの10年間を「決定的な10年間」とし、その最初のCOPとして注目された。

日本は、11月2日に「化石賞」の第2位に選出された。その理由は、岸田文雄首相(当時)の発言だ。COP26の優先目標が石炭火力発電の段階的廃止となっていたにもかかわらず、アジアで再生可能エネルギーを推進するためには化石燃料発電所が必要だとして、「日本は化石燃料発電所を推進している」と語ったからだ。

また日本は、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素を燃料として使用する「ゼロエミッション火力発電」の実現により、「世界の気温上昇を1.5℃未満に抑える目標を達成できる」とした。これに対してCANは、「その可能性はほとんどない」と断じた。

COP27(2022年)

COP27は、2022年11月6日から18日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された。「実施のCOP」として、気候変動対策の〝実施〟に焦点があてられた会議となった。

日本は初日の11月6日に、COP27最初の「化石賞」に選出された。特にCANが重要視したのが、「1.5℃目標」を達成するには化石燃料への投資をやめる必要があるという国際的認識があるにもかかわらず、石油、ガス、石炭プロジェクトに対する世界最大の公的資金提供国となっていることだ。2019年から2021年まで、日本は平均して年間106億ドルを拠出している。

加えて、「ゼロエミッション火力発電」により石炭火力発電を続けるという「化石燃料プロジェクトに公的資金を投入している」こと、「そうした地球を破壊するプロジェクトを他国にも輸出しようとしている」と指摘した。

COP28(2023年)

COP28は、2023年11月30日から12月13日かけて、アラブ首長国連邦(UAE)の首都ドバイで開催された。日本は期間中に「本日の化石賞」を2回受賞している。

1回目の「化石賞」は12月3日に、岸田文雄首相(当時)が「石炭火力発電所の新規建設を終了していく」という方針を表明したことが対象となった。新規の建設はしないとしながらも、既存施設の廃止には言及しなかった上、アンモニアを燃料に混ぜる技術などにコメント。CANはこれに対して、うわべだけの環境対策という意味で「グリーンウォッシュ戦術」と断じた。

2回目の「化石賞」はその2日後の12月5日。1回目と同様に、石炭火力発電所の現状が選出の理由となった。日本には170基以上の石炭火力発電所があり、段階的廃止に関するロードマップを示していないことなどが指摘された。

COP29(2024年)

COP29は、2024年11月11日から11月22日の日程で、アゼルバイジャン(旧ソビエト)の首都バクーで開催された。日本が「本日の化石賞」に選出されたのは11月15日のことだ。G7(主要7カ国)の一員として、アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、イタリアとともに受賞した。

COP29は「ファイナンス(資金)COP」と呼ばれ、最大の論点は2025年以降の「新しい気候資金の目標(NCQG:New Collective Quantified Goal on Climate Finance)」の設定だ。その交渉を主導すべきG7諸国が、後ろ向きな姿勢だったことが「本日の化石賞」に選出された理由だ。

「新しい気候資金の目標(NCQG)」とは、先進国が途上国に行う支援のことだ。2009年に開催されたCOP15において、先進国は年間1,000億ドルの資金を途上国に供与および投資するという約束をした。その後、2015年のパリ協定では、年間1,000億ドルとする2025年以降の資金目標額を、2024年までに設定するとしていた。

なお、途上国に対する支援の資金目標額は、期間を11月24日まで延長し、2035年までに少なくとも年間3000億ドルを支援することで合意した。

「本日の宝石賞」を受賞したことも

CANは「化石賞」だけではなく、気候変動対策を前進させた国や、問題解決に向けてリーダーシップを取った国などに対して「本日の宝石賞(Ray of the Day)」も授与している。「化石賞」の常連国である日本だが、2014年にペルーのリマで開催されたCOP20では「宝石賞」を受賞した。

前日の会議で、各国政府が提出する国別目標案の事前会議に、締約国だけではなくNGOを含むオブザーバーの参加を日本が提案した。これが評価され、2014年12月11日にCANから「宝石賞」が贈られた。

ただし、途上国の温暖化対策を支援するGCF(緑の気候基金)の理事会を、インターネットで中継する案に日本が反対。そのため、条件付きでの「宝石賞」受賞となり、「あと一歩で宝石賞」として授与された。

なおCOP20では、12月2日と「宝石賞」を受賞する前日の12月10日の2回「本日の化石賞」を受賞している。

COP29における日本の気候変動対策

COP29における日本の気候変動対策

2024年11月に行われたCOP29では、「新しい気候資金の目標(NCQG)」の策定が大きなテーマとなったほか、NDC(各国が決定する貢献)の引き上げなどが議論された。

また、参加国や国際機関によるパビリオンが設けられ、日本も「ジャパンパビリオン」を設置。再エネや省エネ、適応、炭素利用、資源循環、生物多様性の保全といった日本の持つ幅広い技術や取り組みを紹介・発信する展示とセミナーを実施した。

参加した企業は、現地で11社・団体、オンラインで39社/・団体で、「エネルギー」「炭素利用」「循環経済」「適応」の4つのカテゴリーに分かれて技術を紹介した。

代表的な技術の例は以下の通りだ。

  • 三菱重工業株式会社:グリーントランスフォーメーションに貢献する脱炭素技術
  • 日東電工株式会社:製造業で利用する貫流ボイラーからのCO2分離回収・変換・利用技術の実践
  • AGC株式会社:太陽光パネルを含むガラスリサイクルと循環経済への取組
  • カナデビア株式会社:革新的な廃棄物処理システムで実現する循環経済とGHG排出ネット・ゼロ
  • 株式会社アークエッジ・スペース:衛星を活用した自然環境改変やリスクの検出・分析可能な地理空間情報プラットフォーム
  • 株式会社日立製作所:不確実な気候変動に適応するリアルタイム洪水シミュレーターとデータセンター分散制御

なおCOP30は、世界最大の熱帯雨林アマゾンを有するブラジル北部のベレンで開かれる予定だ。

まとめ

日本は資源小国で、化石燃料による火力発電が全体の70%を占めている。再生可能エネルギーへの移行が進みにくい状況にあり、その点で後ろ向きに評価されることが多い。そのため「化石賞」の常連国として知られ、2024年も再び受賞した。

その一方、国内では脱炭素に向けた技術開発に積極的に取り組んでいる企業も多い。また、「化石賞」を積極的に報道しているのは日本だけという指摘もある。しかし、結果として気候変動問題への貢献度は低いと国際社会から見られており、政府の方針などから「化石賞」を受賞する理由に納得できるものもある。

日本でも、平均気温の上昇以外にゲリラ豪雨や爆弾低気圧、線状降水帯の発生など、異常な気候変動を日々の暮らしの中で感じることも多くなった。そうした中、私たちも生活において気候変動問題に貢献できることがあれば積極的に行う必要がある。それがこうした国際的な不名誉な立場から脱却することにもつながる。

参考記事
Climate Action Network Japan (CAN-Japan)
ソリューションを世界の隅々へ|JAPAN PAVILIO
G7の一員として、日本が化石賞を受賞しました|WWFジャパン

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