ローカリゼーションとは
ローカリゼーションとは、地域の中で小さく経済を回していこうとする概念である。自分の住んでいる地域の人々との繋がりを再認識し、今ある資源を活用しながら、地域の人々が協力して自立していこうとする動きと捉えることができる。
ローカリゼーションは元々IT用語で、自分の商品やサービスを特定の地域に合わせて適応させていくことを意味する言葉だ。この考え方が、地域での活動と結びつき、地域活性における概念として使用されるようになった。また、後述するグローバリゼーションへのアンチテーゼとして生まれたものでもある。
地域でマーケットを開いて生産者と消費者の距離を縮めたり、地域の資源を見直すことでビジネスや取り組みを評価し、地域全体で自立していくことを目指している。
グローバリゼーションと対極の概念
ローカリゼーションは、現代のグローバリゼーションと対極にある考え方だ。グローバリゼーションとは、経済や政治、文化が国境を超えて広まっていくことであり、ヒト・モノ・カネが世界中で行き来する社会のことを指している。ITが発展している今では、情報も絶えず世界中を横断している。
グローバリゼーションの最大のメリットは、大企業によって安価で安定した商品やサービスを受けられるようになり、生活水準が向上したことにある。しかし、昨今はグローバリゼーションに起因する課題が顕在化し、中には大きな社会問題となっているものもある。
ローカリゼーションが注目される理由

ローカリゼーションの考え方は、2011年に公開された映画『幸せの経済学』で広まったとされている。この映画はドキュメンタリーであり、監督のヘレナ・ノーバーグ=ホッジ自身がナビゲーターを努めたものだ。言語学者でもあったヘレナは、この映画を通して「ローカリゼーションにこそ人々の幸せが詰まっている」と主張している。
グローバル化が進んだ現代社会において各市場は世界規模まで拡大し、成長を続けている。一昔前では考えられないほどのスピードで世界が繋がっていき、物質的にはとても豊かになっている。それにもかかわらず、幸福感を感じている人が一体どれほどいるだろうか。
大企業や国に資源を奪われ、昔から町に存在していた小さな会社や商店は軒並み倒産、閉店が相次いでいるという地域も多い。このようなフランチャイズチェーンが地方都市に進出することで、どこも大差のない、似たような街並みになってしまったと感じる人も少なくないのではないだろうか。
接客業でも効率化や合理化を重視し、無人レジやタッチパネル注文などが急速に増加しており、社会における人との繋がりの希薄化に拍車をかけている。
そんな中、改めて人と人、人と自然の繋がりを取り戻し、人間生活の原点に帰ろうとするローカリゼーションが注目されているのだ。
ローカリゼーションで得られるメリット
ローカリゼーションが実現すると、過疎化の止まらない地域の経済的な自立に繋がっていく。大手のスーパーなどは利益が出なければ撤退するが、地場産業の会社や個人商店などがあれば、自分たち自身で経済を回していくことができる。
また、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、私たちの価値観において大きな転換期であった。これまで当たり前のように構築されていた社会のシステムはすべてストップし、経済にも大きな打撃を与えたことは記憶に新しい。
再びこのような事態に陥った場合、ローカリゼーションが進んでいる地域では、その地域内で小さく経済を回し続けることもでき、生活や経済が止まることはない。また、日ごろから地域の人々の繋がりが強ければ、困難にぶつかった際、お互いに協力しあうことが可能になる。
ただし、これは決して新しい概念ではなく、少し前の日本でも当たり前に行われていたことだ。子どもたちを住人みんなで見守ったり、「隣人に醤油を借りる」といった行動が見られていたのも、地域コミュニティが強固であった証だろう。
便利な生活の代償として人々が孤独を感じたり社会的に孤立するになった一方、ローカリゼーションを通して、人と繋がることの喜びや幸せを再び感じられるようになることが期待できる。
ローカリゼーションの重要なポイント

ローカリゼーションを進めるうえでの大切なポイントは、地域内でモノやお金をうまく循環することだ。例えば、度々話題にあがる「地産地消」や「地方創生」は、ローカリゼーションの一部として活発に議論され、取り組んでいる地域も多い。特に、その地域特有の文化や伝統は年々消失していく傾向にあり、それらをどう受け継いでいくかを考える必要がある。
またローカリゼーションを実現するために、住民の協力はもちろん不可欠だ。地域の底力を上げるには地域全体で取り組まなければならないため、良い人間関係を保つことが肝要である。普段から地域の雰囲気を良好にし、自分たちの地域を誇れるようなまちづくりも重要なポイントとなる。
ローカリゼーションを行うリーダーは「この地域の人々が幸せに暮らすには」「よりよい社会にするには」「壊れた自然を再起させるには」といった、広い視点を持つことが求められる。
ローカリゼーションの事例
ローカリゼーションの取り組みは、実際にどんなものが行われているのだろうか。日本と海外の事例をみていこう。
日本
北海道余市町
余市町にあるNPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトでは、エコビレッジをつくるための技術や、エコビレッジに関する考え方を広める取り組みを行っている。
「持続可能な暮らしと社会」の実現に向けて生活を少しずつ移行できるよう、概念の共有や座学に加え、実際に農業などが現場で体験できる場が設けられている。さらに、お金や経済、コミュニティづくりなど、エコビレッジに関わるさまざまな学びを提供している。
■公式サイト:北海道エコビレッジ推進プロジェクトについて|北海道エコビレッジ推進プロジェクトWEBサイト
富山県富山市
NPO法人山田の案山子は、富山市中心部から約20km離れた山村部で「ふれあい青空市 やまだの案山子」という直営所を運営している。地域で栽培した野菜や加工品を販売し、生産者に販売状況を共有することで、生産意欲の向上に繋げているという。
この法人は、地域住民の所得向上や交流を目的として設立されており、郷土料理をつくる料理教室や、季節ごとに感謝祭を開催し、消費者との交流を図っている。
■公式サイト:農産物直売所の取組|地産地消の取組事例(令和3年3月)|農林水産省|
島根県雲南市
人口の減少が進む雲南市では、地域産業の振興および雇用創出として、株式会社吉田ふるさと村を設立している。
昭和60年に住民有志によって設立された会社で、地元の農産物の加工品の開発・販売をはじめ、観光振興、水道整備やバス運行などのインフラ事業などを展開しているという。現在従業員は82名にのぼり、多くの雇用創出に貢献。これらの事業は、行政や商工会、住民と連携を図りながら運営を行っている。
■公式サイト:コミュニティビジネスで過疎化のまちを再生に導く(株)吉田ふるさと村|内閣府地方創生推進事務局
海外
ポートランド(アメリカ)
都市と自然が融合する美しい街、オレゴン州ポートランド。ここは、「地産地消の発祥の地」ともいえる都市だ。
特にクラフトビール製造が盛んで、ポートランドには多数のブルワリーが存在している。ビアパブが併設された醸造所も多く、消費者は地元で作られた個性豊かなビールを、その場で楽しむことができるという。
ハイルブロン(ドイツ)
ハイルブロンは元々、農産物の生産が集中していた都市だ。しかし今では産業集積都市となり、大手メーカーが研究所を設立している。そして、そこから地元であるハイルブロン内で独立する起業家が増えているのだ。
ハイルブロンの課題は、優秀な人材を輩出できる大学がないことだった。そこで地元企業が大学を設立したり、地域ぐるみで積極的に人材を育成できる環境を整えたという。
オーロヴィル(インド)
オーロヴィルは、インド南部のポンディチェリー近郊にある世界最大のエコビレッジだ。1968年にフランス人のミラ・アルファッサによって設立され、ジェンダー、人種、国籍、宗教観などに関わらず、世界中から様々な人が集まっているコミュニティである。オフグリッドの実践やパーマカルチャーの概念を取り入れるなど、エコロジカルな生活が営まれている場所だ。
UNESCOやインド政府からも理想都市として支援を受けており、農業やエネルギー問題だけでなく、世界平和や自然との共存を実現する生き方を模索し、実験するための場所であると考えられている。
ローカリゼーションの注意点

日本ではまだまだローカリゼーションに対する制度が整っているとは言えず、初期投資にかかる費用が膨大になる可能性が問題点としてあげられる。さらに取り組みが長期にわたる場合、費用だけでなく地域住民のモチベーションを保つことが難しくなるため、リーダーシップが取れる人を立てるなどの対策が必要だ。
また、実際に地域の中だけで経済を循環させるには、資源や商品、サービスが足りない場合もある。安価なものが安定的かつ気軽に手に入るようになった今、不便さにストレスを感じたり、高い価格設定に不満に思ったりすることも考えられるだろう。
まとめ
大都市への人口流出による過疎化は日本のみならず、世界中で深刻な問題とされている。また、先進国をはじめとした高齢化が進んだ社会では、後継者不足に苦しむ場面も多くみられる。これらの問題に対する取り組みとして注目されるローカリゼーション。地域で経済を回し、自立を目指すというその概念は、いま若い世代を中心に広く普及しつつある。
ハイセンスで洗練された都会の雰囲気は、確かに魅力的で憧れの的だ。しかし、自分の生まれ育った町や先祖を大切にし、地域特有のよさを再発見することで、この土地に生まれたことを誇らしく思うことができるかもしれない。
地元を知り、地元の人と繋がり、地元を愛することは、きっと新たな幸せの価値観を与えてくれるだろう。
参考サイト
ローカリゼーションで幸せになれる?映画『幸せの経済学』に学ぶローカリゼーション・ムーブメント | greenz.jp グリーンズ
トランジション・タウンの概要 | Transition Japan
吉田ふるさと村
オレゴン州ポートランドにおける持続可能な消費文化|間々田孝夫 、野尻洋平、寺島拓幸|応用社会学研究 2017 No 59 23|立教大学
農業都市から産業集積都市へ 転換を可能にした「民間の力」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
Our Aims •|Auroville International
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