グリーンベルトとは?目的や課題、国内外の事例をご紹介

グリーンベルトとは

グリーンベルトとは、都市部やその周辺に設けられる「緑地帯」のことである。主に都市の拡大を制限し、自然環境を保護する目的で設置される。都市計画の一環として採用されることが多く、土地利用のバランスを保ち、都市と自然の間の緩衝地帯として機能する。

グリーンベルトの設置は、都市の無秩序な拡大を防ぐ効果がある。住宅や商業施設の建設を制限し、都市のスプロール現象を防止するのだ。また、緑地の存在によって、都市内の気温を調整し、ヒートアイランド現象を緩和する効果も期待できる。さらに、住民にとっては、自然に触れる場としての役割も果たし、リフレッシュやレクリエーションの場として利用されることも多い。

グリーンベルトの設置は、都市と自然環境の共存を目指す取り組みの一つだ。自然環境の保護だけでなく、住民の生活の質向上にもつながる。そのため、都市計画においては、グリーンベルトの存在が欠かせない要素となっている。例えば、イギリスやドイツなどの国々では、長年にわたってグリーンベルト政策が実施されており、成功例として知られている。日本においても、グリーンベルトを活用した持続可能な都市づくりが推進されている。

ビオトープとの違い

グリーンベルトと似た概念に「ビオトープ」がある。どちらも自然環境を保護し、都市と自然の調和を図るための取り組みだが、その役割と目的には違いがある。

ビオトープは多様な生物が共存できる生息空間として設計される。自然環境を模したもので、湿地・池・森林などさまざまなタイプがある。また、ビオトープは都市部にも設置されることがあり、グリーンベルトは都市の周辺に設置されることが多い。

グリーンベルトの主な目的は、都市の無秩序な広がりを防ぎ、自然環境を保護することだ。これに対して、ビオトープは生物多様性の維持や生態系の保全を目指している。生物が自然のままに生息できる環境を整えることで、多様な生物種が共存できるようにするのだ。

グリーンベルトの歴史

グリーンベルトとは

グリーンベルトの歴史は古く、1924年にアムステルダムで開催された「国際都市計画会議」で提唱されたことに端を発する。1930年代から1940年代にかけて、ロンドンの都市開発計画に組み込まれ、過度な人口集中や住環境の悪化を防ぐため、幅約10キロメートルのグリーンベルトでロンドン周辺を囲む計画が立てられた。この取り組みは、地方都市の人口流出と産業衰退を食い止めるためにも重要であった。

グリーンベルトはその後、気候変動や野生生物保護の観点からも注目を集め、世界各国の都市開発計画に影響を与えている。特にヨーロッパでは、都市の無秩序な拡大を防ぐために早くから導入されてきた。

日本においても、1939年に策定された「東京緑地計画」で、グリーンベルトの概念が取り入れられた。この計画では、現在の23区に相当する「東京市」の外周に環状緑地帯を設置することが提案された。しかし、戦後の経済状況や政策変更により、計画の大部分は実現しなかった。それでも、山手地域に残る大公園や緑道公園はこの計画の遺産である。

その後、昭和32年に首都圏整備法が制定され、首都圏の外周にグリーンベルトを設定する制度が導入されたが、反対意見もあり、昭和40年の法改正で近郊整備地域として広域を指定する方式に変更された。今日では、首都圏近郊緑地保全法に基づき、17区域が保全されている。

グリーンベルトの主な目的

グリーンベルトの主な目的

グリーンベルトには大きく分けて3つの目的がある。それぞれの目的について、以下で詳しく見ていく。

都市計画

都市計画を目的としたグリーンベルトは、都市の無秩序な拡大を防ぎ、計画的な開発を促進するために、都市の周囲に緑地帯が設けられる。住宅地や商業地域の境界を明確にする役割を果たし、都市のスプロール現象を抑制する。また、都市の中心部から郊外へとつながる交通の流れを調整し、混雑を緩和する効果もある。

また、都市内の土地を最適に利用するための手段としても有効だ。緑地帯が設けられることで、都市の景観が美しくなり、住民の生活がより快適になる。また、都市部における公園や緑地としても活用され、住民が自然の中でリラックスしたり、さまざまなアクティビティを楽しむ場としても役立っている。

環境保全

グリーンベルトは、樹木や草木を帯状に植えることで土砂の流出を防ぎ、海や河川の汚染を防止する役割を果たす。特に沖縄県では、サンゴ礁の保全を目的として、畑の周りに植物を植えてグリーンベルトを作り、赤土の流出を抑制している。このような取り組みは、沿岸の生態系を守り、海洋資源の保全にもつながっている。

さらに、グリーンベルトを設けることで持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献できる。SDGsは貧困や環境問題などの解決を目指す国際目標で、グリーンベルトは以下の目標に関連している。

  • 目標11「住み続けられるまちづくり」:都市のヒートアイランド現象を緩和し、洪水や土砂災害のリスクを軽減する効果がある
  • 目標13「気候変動に具体的な対策」:緑地化を推進することで二酸化炭素の吸収量を増やし、気候変動対策に貢献する
  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」:森林の環境保全や土壌の流出を予防し、生物多様性の保全に役立つ

災害対策

グリーンベルトは、災害対策の目的でも利用され、土砂災害や火災から地域を守る役割がある。例えば、斜面に設けられる樹林は土砂の崩壊を防ぎ、土砂災害から地域を保護する。また、農地の周囲に緑地帯を設けることで、土壌の流出を抑え、下流の水質を保全する効果も期待できる。

さらに、都市部においては、グリーンベルトが延焼防止帯として機能する。例えば、函館市では1934年の大火災後に全長7キロメートルのグリーンベルトが設置され、火災時の延焼を防ぐ役割を果たした。また、地震や津波などの災害時には、避難場所や避難経路としても利用され、防災目的で重要な役割を担っている。

グリーンベルト導入にあたっての課題

グリーンベルト導入にあたっての課題

都市の無秩序な拡大を防ぎ、環境を保全する役割をもつグリーンベルトだが、その導入にあたっては以下のような課題も存在する。

開発できる土地が限られるため地価が高騰する

グリーンベルトの課題の一つは、開発できる土地が限られることである。グリーンベルトが設けられると、大都市周辺の開発可能な土地が不足し、住宅不足が生じる。その結果、土地や住宅価格が高騰し、一般市民が手の届かない価格帯となることがある。

例えば、ロンドンでは厳しいグリーンベルト政策の影響で住宅供給が不足し、住宅費が高騰している。このため、持ち家を持つことが難しく、フラット(マンション)さえも高価で手に入らない状況となった。

さらに、グリーンベルト内での開発が原則として認められていないため、新築住宅の建設が難しくなっている。しかし、徐々に住宅の新築が許可されるケースも増えており、緑地帯の保全が難しいことが伺える。

住民の理解を得なければいけない

グリーンベルトは特定の土地に限定して開発規制を行うため、自治体や住民の協力が不可欠だ。理解を得るには、補償制度も検討しなければならない。例えば、土地利用の制約により発生する経済的影響を考慮した補償策が必要である。また、地域住民への説明会や意見交換を通じて、理解を深めてもらうことも重要だ。

住民の理解と協力を得るためには、グリーンベルトの意義や効果を丁寧に説明し、共感を得ることが大切だ。環境保全や都市の無秩序な拡大を防ぐための取り組みとして、住民にとってもメリットがあるが、開発に規制がかかることによるデメリットも考慮しなければならない。

計画的な開発が不可欠

グリーンベルトを設けるためには、都市開発計画を推進するための政治的リーダーシップが必要となる。例えば、東京のグリーンベルト構想は、昭和14年に策定された「東京緑地計画」に基づいて大々的に整備が開始され、都市の過大膨張抑制を目的としていた。しかし、戦後の経済状況や政策変更により、計画の大部分は実現しなかった。

その後、昭和32年に「首都圏整備法」として、既成市街地のスプロール化の抑制を図るために制度が設けられた。計画的な都市開発を進めるためには、適切な法制度の整備と強力なリーダーシップが欠かせない。

海外におけるグリーンベルトの事例

グリーンベルトは長い歴史を持ち、さまざまな国や地域で設けられてきた。以下がその一例である。

ドイツ「グリーンベルト保護プロジェクト」

ドイツにおけるグリーンベルトの事例として挙げられるのが、ザクセン=アンハルト州で実施されている「グリーンベルト保護プロジェクト」である。かつてドイツを東西に隔てていた国境沿い約1,400キロメートルにわたる地域を対象としており、自然保護団体「BUND」が2012年から進めている。

この地域はかつて「死のベルト」と呼ばれており、有刺鉄線や地雷が張り巡らされていた場所であった。現在では多様な生物の生息地となっており、ドイツ最大のビオトープネットワークとして1200種以上の絶滅危惧種が生息している。

例えば、減少していたマミジロノビタキの生息数が増加するなど、保護活動の成果が見られる。ドイツ全土の景観を網羅し、自然保護と農業の協働の良い事例として注目されている。

イギリス「大ロンドン計画」

イギリスでは、1930年代にロンドン郡議会で「大ロンドン計画」が提案され、1938年に「ロンドングリーンベルト法」が制定された。目的は、都市の無秩序な拡張(アーバンスプロール)を防ぎ、都市と自然の調和を図ることである。ロンドン周辺に10キロメートル幅のグリーンベルトが設けられ、都市の過密やスラム化を抑制する効果が期待された。

ロンドンのグリーンベルトは1955年以降さらに広がり、現在ではロンドンの大きさの約3倍に相当する516,000ヘクタールに及ぶ。この取り組みは、ロンドンだけでなくマンチェスターやバーミンガムなどの都市でも導入され、イギリス全土で広く支持されている。イギリスのグリーンベルトは、都市計画の手法として成功し、持続可能な都市づくりにつながったと評価されている。

韓国「グリーンベルト解除」

グリーンベルトとして活用される土地は、時代のニーズに応える形で用途を変えることもある。韓国では、1971年に朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の指示のもと、ソウル周辺にグリーンベルトが設けられていた。しかし、近年では住宅供給の増加を目的として一部解除が進められている。

2024年にはソウルの瑞草(ソチョ)区や京畿(キョンギ)道の一部地域でグリーンベルトが解除され、新たな宅地として指定された。このような動きは、都市化の進展や住宅需要の高まりに対応するためであるが、一方で自然環境の保護とバランスを取る課題も存在する。

グリーンベルトの解除は、環境保護と都市開発の両立を図るために慎重な計画が求められる。政府は未来世代の住宅問題解決を目指し、合理的な価格で住宅供給を進める方針を示しているが、市民団体からは自然生態系の損失への懸念も寄せられている。

国内におけるグリーンベルトの事例

日本国内においても、都市計画や災害対策を目的としたグリーンベルトが導入されている。以下では、代表的な3つの事例を紹介する。

東京「東京緑地計画」

「東京緑地計画」とは、1939年に策定された都市計画で、東京中心部(現在の23区)の過大な成長を抑制することを目的としていた。欧米の地方計画や緑地計画の影響を受け、広範囲の緑地帯を設置してかつての東京市を囲む構想が含まれていた。しかし、戦後の農地改革により緑地の規模は縮小された。

その後、1956年に「首都圏整備法」が制定され、東京駅から約100km圏を対象にしたグリーンベルト計画が立案されたが、住民の反対もあり実現には至らなかった。それでも、砧公園・小金井公園・舎人公園・水元公園など、現在でも東京に残る大公園や緑地は東京緑地計画の名残である。この計画は都市の無秩序な拡大を防ぐための重要な試みであったが、完全な実現には至らなかった。

兵庫県「六甲山系グリーンベルト整備事業」

六甲山系グリーンベルト整備事業は、1995年に発生した阪神淡路大震災を契機に開始された。地震により六甲山系で山腹崩壊が発生し、その後の雨によってさらに崩壊箇所が増加したことから、国土交通省と兵庫県が主体となって実施された。

事業の目的は、六甲山系の南山麓をグリーンベルトとして保全・育成することである。山腹における工事や緑地の整備、地域住民の参画による森づくりが進められている。

この整備事業では、地域住民や子どもたちが自然と触れ合いながら学ぶ場も提供されている。また、防災機能の強化にも貢献しており、土砂災害や洪水のリスクを軽減する効果もある。

全国「都市山麓グリーンベルト整備事業」

都市山麓グリーンベルト整備事業は、市街地に隣接する山麓斜面に樹林帯を設けることで、土砂災害の予防と都市環境の向上を図る取り組みである。山麓斜面の崩壊を防ぎ、緑豊かな都市環境を整備することを目的としている。砂防堰堤などの工事とは異なり、樹林・緑地の保全を通じて、土砂災害による被害を軽減し、周辺の乱開発を防ぐ効果がある。

この事業は、全国の市街地周辺で実施されており、無秩序な市街地の拡大を防止するとともに、都市周辺に緑のビオトープ空間を創出する役割も果たしている。また、砂防樹林帯の整備や公園事業を通じて、安全で潤いのある環境づくりを進めている。

まとめ

グリーンベルトは都市の無秩序な拡大を防ぎ、自然環境を保護する取り組みである。これまで国内外でさまざまな地域で実施され、その効果は多岐にわたる。しかし、グリーンベルトの導入や維持には、土地の高騰や住民の理解、計画的な開発など多くの課題が伴う。

持続可能な都市づくりを実現するためには、環境保全と都市開発のバランスを考慮しつつ、地域社会と連携した取り組みが重要だ。技術革新や新しい都市計画の手法を取り入れ、未来世代に対しても持続可能な都市を残すための工夫が必要である。

グリーンベルトは私たちの暮らしと密接に関わっており、生活環境を守る上でもその役割は大きい。かつてグリーンベルトだった地域が宅地として利用されるようになった例もあるが、緑地を地球の資本と捉え、緑を大切にする意識も忘れたくないものである。

参考記事
グリーンベルト構想の歴史|国土交通省
沖縄県の農地における赤土等流出防止対策について|独立行政法人農畜産業振興機構
ドイツ、農業との協働を通じてグリーンベルトの保護に取り組むBUNDの活動を評価|国立環境研究所
イギリスのグリーン・ベルト Green Beltは都市計画の手法|Global Research
日本が羨む韓国のグリーンベルト【萬物相】|朝鮮日報
グリーンベルト構想|東京都都市整備局
六甲山系グリーンベルト整備事業|国土交通省近畿地方整備局六甲砂防事務所

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