ボディシェイミングとは?自分の身体が恥ずかしいと思わせられることの問題点や対策を解説

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ボディシェイミングとは?自分の身体が恥ずかしいと思わせられることの問題点や対策を解説

ボディシェイミングとは?

ボディシェイミングとは、「身体」を表すBody(ボディ)と「恥ずかしい気持ちにさせる」「批判する」を意味するShaming(シェイミング)を掛け合わせた造語で、欧米を中心に使われ始めた言葉だ。つまり、体型や体重、その人の身体、時には顔について、他人がネガティブに評する行為を指す。

ボディシェイミングの例

例えば、以下のような発言がボディシェイミングに該当する。

「太ったんじゃない? 痩せた方がいいよ」
「なんか劣化したね」
「身長がもう少し高ければカッコいいのに、惜しい」
「顔が大きくてバランスがおかしい」

ボディシェイミングという言葉が発祥した当初は、過度な「痩せ信仰」(痩せていることが正義であり美しいのだ、というイデオロギー)が問題視されていた。ボディシェイミング=ファットシェイミング(太っていることを恥いらせるような言動)であり、ボディシェイミングとは体重が標準以上の人への侮蔑の言葉、という意味合いが強かった時代も長かった。しかし現在、ボディシェイミングという言葉は、より広範囲で使われている。

例えば、「痩せすぎて気持ち悪い」と言った発言も、現在はボディシェイミングの一種だとされている。

発言者が悪意なく、褒めているつもりで無意識にボディシェイミングに加担してしまっている事例もある。

例えば、「ガリガリで羨ましい」などの言葉がボディシェイミングに相当する可能性もある。「ガリガリで羨ましい」と言った言葉は、「痩せ信仰」が一般化した現代社会において、「褒め言葉」だと考える人は多いだろう。しかし言われた方は、もしかしたら太れない体質で痩せすぎの体型を気にしている可能性もある。または、拒食症で体型を気にしているあまり、痩せてしまった場合もあるだろう。その場合、「ガリガリで羨ましい」という言葉は、「やっぱり痩せていなければならないのだ」という呪縛になり、拒食症を加速させることにも繋がりかねない。

SNSがボディシェイミングを加速させる

近年、ルッキズムという言葉が広く世間に知られている。ルッキズムとは、外見に基づく差別のことだ。望ましい外見と望ましくない外見をわけ、後者を差別することがルッキズムとなる。

ボディシェイミングは、ルッキズム(外見に基づく差別)の一種だ。

ルッキズムという言葉が広まるにつれ、「ルッキズムに加担してはならない」という風潮も同時に盛り上がっている。ルッキズムを行わないためには、第一に、「他人の外見に言及することをやめる」必要がある。

しかし、現代ではSNSの利用が一般的になり、簡単に画像を加工して「理想的なスタイル」を作り上げたり、他人の外見を評価したりすることができるようになったため、「他人の外見へのジャッジ」を簡単に行ってしまいやすい環境が整っていることもまた事実だ。

SNSやメディアで作り上げられた、加工により肌にムラ一つないモデルの写真や、インフルエンサーの現実離れしたスタイルを日常的に見続けることで、自分の身体や他人の身体に対してネガティブな気持ちになる人も少なくない。

身近な友達には言えない「劣化した」「太った。痩せた方がいい」といったボディシェイミングも、SNS上の芸能人に対しては行ってしまう、という人もいる。SNSやネットの利用は、匿名で行えるという心理的安全性があるゆえに、現実社会ではタブーとされているボディシェイミングに対するハードルを下げてしまうようだ。

ボディシェイミングの問題点

ボディシェイミングの問題点

ボディシェイミングにはさまざまな問題がある。

1 拒食症など健康被害を招く

体型を非難されたことが引き金となり、若い時に拒食症などの摂食障害を発症してしまう人もいる。摂食障害は若い女性によく見られる病気だが、一度発症すると、大人になってからも付き合っていかなければならないケースが珍しくない。体重の増減が激しく、健康的に活動できなくなることに加えて、食べ吐きを繰り返すことで歯が溶けて無くなったり、大量の食材を購入する必要があり経済的に苦しくなったりすることもある。また、最悪の場合、死につながることもある。

2 精神的な病になる

いうまでもなく、ボディシェイミングは、言われた側の自己肯定感を大いに下げる。自分の外見に自信がなくなり、醜形恐怖になってしまう可能性もあるのだ。また、うつ病などに罹患するケースもある。精神的な病によって人前に出ることが怖くなり、引きこもりになってしまう可能性もあるだろう。

3 コンプレックスビジネスの餌食になる

ボディシェイミングによって自分の身体は恥ずかしいもの、努力して変える必要があるものだと考えるようになった人は、コンプレックスビジネスにお金を注ぎ込む可能性がある。例えば、ダイエット食品や法外に高いジム、する必要のない脂肪吸引や整形などに走ることになるかもしれない。自身のコンプレックスを刺激されることで、美容整形業界やダイエット関連業界などに、必要以上にお金を使ってしまい、気がついたら貯金がなくなっていた、というケースも考えられるのだ。問題なのは、お金を注ぎ込めば注ぎ込むほど、のめり込んでしまう人が少なくないということだろう。

ボディシェイミングをなくすためには?

次に、ボディシェイミングをなくすためにできることや、これまで行われてきた運動を確認していこう。

「ファットプライド」からのルッキズム批判

1970年代には、ファットシェイミング(ボディシェイミングの中でも、太っていることを恥いらせるような言動)に対抗する「ファットアクセプタンス運動」が台頭した。

ファットアクセプタンス運動とは、体重はジェンダー、人種、エスニシティ、社会経済、性的指向と言ったコンテクストの中で吟味されるべきであり、「痩せていなければならない」というのは誤りである、と示すアクティビズムのことだ。この運動の中では、「ファットプライド」という言葉も使われ、太っていることは恥ではなく、誇りである、という概念が用いられた。

「ルッキズム」という言葉が最初に使用されたのは1978年のことだが、この言葉も、ファットアクセプタンス運動を行った人たちが生み出したものだと『ワシントンポスト』は報じている。

ファットアクセプタンス運動やルッキズムという言葉が主張するのは、「外見に基づく差別は、今や個人の主観的な主張にとどまらず、人種や性別、文化に関わる差別であり、社会構造全体の問題である」という点だ。

「ルッキズムは良くないから、個々人が気をつけましょうね」と、ルッキズムやファットシェイミングを「個人の問題」だけに矮小化することは、構造上の問題を放置することにつながる、と認識することは大切だろう。

ボディポジティブからボディニュートラルへ

ボディシェイミングに対抗する概念の一つにボディポジティブがある。

ボディポジティブとは、どんな体系であっても肯定的に捉え、ありのままの自分を受け入れよう、と促す概念だ。ボディポジティブはボディシェイミングやルッキズムのアンチテーゼとして、欧米を中心に広まり、それに伴って広告に起用されるモデルの体型や人種にもバリエーションが増えるようになった。プラスサイズモデルの起用や、白人だけに偏らないモデルの起用によって、美のバリエーションが以前より増えたのは事実だろう。

ただし、多様なモデルが起用されるなどの形のボディポジティブ運動は、「肯定するべきオプションが増えただけにすぎず、ルッキズムの構造自体は変わらない」「なぜこうもルッキズムに立ち向かう時、新しい美への自己変革を求められなければならないのか」と批判されることも多い。

「ありのままのあなたは美しい」という言説に対し、「美しくある必要なんてないわ!」と反発を抱く人もいる。実際、ルッキズムの問題点の一つは、「関係ないはずの場面で、美しさという基準をもとにジャッジされること」であり、ボディポジティブではこの問題は解決しない。

そこで現れた概念が、ボディニュートラルだ。ボディニュートラルとは、「自分の身体を愛したり、美しいとジャッジしたりする必要はない」という考え方だ。無理にポジティブに捉えようとするのではなく、時には自分の体を嫌ったりすることもあっていい、という緩やかなコンセプトは、「美しくあれ」「自分を愛せ」というプレッシャーに疲れた人にフィットするものだろう。

他人のルックスに言及するのはNGという常識を広める

ルッキズムやボディシェイミングは個人の主観の問題であると同時に、社会問題だ。いくら個人が自己肯定感を上げたとしても、社会が変わらなければルッキズムやボディシェイミングは無くならない。

ボディシェイミングをなくしていくためには、社会全体で「他人の外見に言及するのはNG」というコンセンサスを築きあげる必要があるだろう。

2017年、国際的な会議に出席した稲田朋美(当時防衛大臣)が、出席者の容姿に言及し、以下のような発言を行った。「見たら分かように、(私たち女性3人には)共通点がある。同じ性別、同じ世代で、全員がグッドルッキング」。日本社会では、場を和ませるための冗談として通用するかもしれないこの言葉は、海外のジャーナリストから「女性差別的」だと批判された。仕事の場で女性の容姿に言及することはよく見られるが、それは、その女性をその道のプロではなく、容姿を品評してもいい女性という記号に貶めるものであり、女性軽視とも言えるものだ。

国際的には、仕事の場で褒める文脈であっても容姿に言及することは差別だと見做される。ルッキズムやボディシェイミングを発生させないためには、ルックスを売りにする商売をしているのでない限り、「褒める文脈であっても言及するのはNG」と認識しておくべきだろう。

どうしても外見を褒めたいのなら、その人のセンス(ファッションやヘアスタイルなど)を褒めればいいのだ。

さいごに。ボディシェイミングは無意識に行いがち。だからこそ

ボディシェイミングは、他人に与えるダメージが非常に大きい言動であり、最悪、死に追いやる原因になる場合もある。

しかし、ボディシェイミングを行っている主体は、無意識にその言動をしている場合が多く、「褒めているつもり」というケースも珍しくない。「差別は大抵、悪意のない人がする」ものだ。

ボディシェイミングを行わない、許さない社会を作っていくためには、「プラスの意味合いであっても、すぐに変えられない外見について言及するのはNG」という常識を社会全体に広めていく必要があるだろう。

参考書籍
『現代思想 特集ルッキズムを考える』(青土社)

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