マイクロファイナンスとは?貧困の脱却と経済的自立を目指す支援の形

マイクロファイナンスとは 

マイクロファイナンスとは、貧困層や低所得者層に対して行われる小口金融のことである。低金利・無担保で少額の融資をすることで人々が起業や就労により貧困状態から脱却し、自立するのを支援する。

小口金融自体は高利貸し、質屋といった形態で昔から存在している。しかし、一般的な小口金融は利用できない貧困層や低所得者層が多いため、マイクロファイナンスはこれまでの小口金融を利用できない貧困層を支援するために仕組みを作り、融資をしている。

マイクロファイナンスが必要とされる理由

マイクロファイナンスは、貧困層が貧困から脱するための手段として期待されている。発展途上国の貧困層は、収入が不安定な仕事や農業、零細自営業に従事している場合が多い。働いてはいるものの、資産が少ないことで災害や経済変動、家族の病気など急な事態に影響でされて収入減少または失業し貧困に陥るリスクがある。

しかし、運転資金やサポートがあれば事業を続けられる可能性も高い。そのため有事の際にいつでも借り入れができ小口の出し入れが可能な貯蓄をつくる支援を行い、貧困からの脱却を目指しているのだ。

マイクロファイナンスを世界に広めたグラミン銀行

マイクロファイナンスを世界に広めたグラミン銀行

マイクロファイナンスは、バングラデシュの大学教授であったムハマド・ユヌス氏が、1976年に貧困層をグループ化して融資を行ったプロジェクトがはじまりだと言われている。生活に困窮する女性たちに向けて低金利・無担保で少額融資をした結果、貧困層の削減につながったのだ。1983年にはマイクロファイナンス事業を展開する「グラミン銀行」として独立した。全ての始まりとなったムハマド・ユヌス氏はこの貢献により2006 年にノーベル平和賞を受賞している。

現在グラミン銀行は、バングラデシュ内の94%の村で、約4,500万人以上にサービスを提供している。近年では働く大人のみにとどまらず家族に向けた奨学金プログラムや物乞いを脱却するためのプログラムなど、より幅広い世帯に向けたサービスを展開している。

また、グラミン銀行の仕組みは世界60か国以上で貧困緩和の成功モデルとして活用されている。

マイクロファイナンスの仕組み

ここでは、グラミン銀行が貧困層に融資しつつも、どのように銀行として機能し貧困削減に取り組んでいるのかを説明する。グラミン銀行はおもに3つの仕組みづくりをしている。

スタッフが顧客の元へ出向く

1つ目は、銀行のスタッフが直接村を訪れて顧客対応をすることだ。週に一度村人が集まり、そこにスタッフが訪れて手続きをしている。銀行側にとっては、一度で多くの顧客対応ができ、融資を受ける側にとってはわざわざ銀行に出向く必要がないため、両者にとってWIN-WINとなっている。

借り手同士のグループを作る

グラミン銀行では、融資を受ける人同士で5人1組のグループが作られる。そしてそれぞれが返済する中、グループメンバーの誰かが返済できない場合は、他のメンバーが代わりに返済する。融資では元本と利益が返済されることで銀行の利益が生まれるため、予定通りの返済は銀行として機能するうえで不可欠なのだ。

グループ化という仕組みを作ることで、メンバー同士で返済のためにサポートし合うため返済率が高まると期待されている。実際、グラミン銀行の返済率は98%を超えているのだ。また、銀行側は各メンバーの返済管理に労力がかかるため、メンバー同士で管理できると負担が減るというメリットもある。

貧困脱却するための意識を高める

グラミン銀行では、借り入れをした後に生活が崩れ返済が困難にならないよう、意識を高める活動を行っている。週一度のミーティングでは、「16の誓い」と呼ばれる、16つの宣言を暗唱している。誓いの中には家族計画や教育、助け合いといった言葉が含まれており、生活の質を高めるための意識づけを定期的に行っている。これにより、貧困を脱却するという強い意志を持たせ、生活向上に向けて行動を促している。

マイクロファイナンスによるSDGsへの貢献

マイクロファイナンスによるSDGsへの貢献

ここでは、マイクロファイナンスがSDGsにどう貢献するかを説明する。

目標1.貧困をなくそう

マイクロファイナンスはそもそも貧困削減を目的に始まったものであり、目標1「貧困をなくそう」に大きく貢献する。マイクロファイナンスは1997年から2005年にかけて世界で拡大し、顧客は1350 万人から1億1300万人以上に急増加した。国連は2005年を「マイクロファイナンスの国際年」として宣言し、2006年にはユヌス教授がノーベル平和賞を受賞するなど、貧困削減に対する有効な方策として注目を集めた。

マイクロファイナンスでは、仕事に対する融資がほとんどを占めているが、最近では貯蓄、保険サービスや教育プログラムなど幅広く展開しているケースもある。そのおかげで借り手は自ら資産形成やリスク管理なども実施でき、貧困層から脱出できているのだ。

目標5.ジェンダー平等を実現しよう

マイクロファイナンスは、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」にも貢献する。
発展途上国の多くの村では、男性が働いて家族を支え、女性は家事や子育てに専念するという風潮が存在していた。そこで、グラミン銀行が女性に融資を提供することで、彼女たちは野菜の栽培や小さな店の経営といった仕事を始めるようになった。女性は収入を得ることで家族内での地位が向上し、経済的自立が可能となったのだ。また、経済的自立により地域コミュニティへの参加や政治活動にも参加できるようになった。マイクロファイナンスは女性に対する固定概念を打ち消し、ジェンダー平等に向けた革命のような存在になっている。

マイクロファイナンスが抱える課題

貧困削減や女性の自立など社会的貢献度の高いマイクロファイナンスだが、複数の課題にも直面している。

最貧困層には届かない

まずは、最貧困層にはサービスが届きにくいことだ。マイクロファイナンスはすでに何らかの形で働いている人に向けた支援がベースである。最貧困層の場合、そもそも働くことができていなかったり字が読めなかったりする状況にあるため、融資を受けても返済が難しい。さらに、最貧困層はコミュニティとのつながりがなく遠隔地に住んでいることで、金融サービスへのアクセスが物理的に困難な場合もある。最貧困層は本来最も支援を必要とする層であるにもかかわらず、マイクロファイナンスの恩恵を受け取れていないのだ。

返済頻度が高すぎる

マイクロファイナンスの返済制度では毎週の分割返済を義務付けているが、返信頻度の高さが議論を呼んでいる。貧困者層の多くが生業とする農業では、毎週の定期的な所得源が存在せず、収穫期にまとめて収益を回収する仕組みとなっている。つまり、所得水準は季節によって変わるため、返済スケジュールの期末には全額返済が可能だとしても、毎週の返済は不可能となる場合があるのだ。借り手が毎週返済できる貯蓄を持っていない場合、返済可能かどうかを十分に審査できないことにより、生涯所得の範囲内で返済可能でも借り入れできない状態になる可能性がある。

日本のマイクロファイナンス企業

ここでは、日本でマイクロファイナンスを提供している企業を紹介する。

グラミン日本

グラミン日本は、マイクロファイナンスを世界に広めたグラミン銀行の日本版とされている。日本では国民の6人に1人が水準と比べると貧困状態にある相対的貧困が深刻な問題となっている。

グラミン日本では、グラミン銀行の考え方に基づいてシングルマザーや介護離職した女性、若者などを中心に支援を行っている。マイクロファイナンスを提供し、さまざまな企業や団体と連携しながら就労および新たな事業機会を共創することで、借り手の一歩を踏み出すチャンスを提供している。

五常・アンド・カンパニー

五常・アンド・カンパニーは、アジアやアフリカの12の途上国で展開するグループ会社を通じ、マイクロファイナンスを提供する会社である。2022年3月時点では、村で農業に携わる女性をはじめとした約120万人に融資している。

五常・アンド・カンパニーでは、借り手やその家族の家計の向上と、自分たちの未来を自分たちで決められる世界の実現を目指し、低価格で良質なサービスを世界に広めている。

マイクロファイナンスの展望

マイクロファイナンスの展望

マイクロファイナンスは、グラミン銀行を筆頭に各地での成功例が増加していることで、世界中の貧困地域に広がっている。マイクロファイナンス市場は、2019年には1343.5億ドルになり、2027年に3438.4億ドルを超えると推測されている。2020年から2027年にかけて12.6%の年平均成長率と急激な成長が見込まれているのだ。世界の途上国ではコロナの流行で経済が悪化したものの、復興の兆しが見られる地域も多いため、今後さらに成長していくことが見込まれる。

まとめ

マイクロファイナンスは貧困層の経済的自立を支援する金融システムとして、世界中の多くの人に貢献している。金銭的なサポートだけでなく、借り手同士のサポートや意識改革など貧困から脱却した後の生活も念頭に置いて支援している点もポイントである。

市場として大きく成長しているマイクロファイナンスは、今後もさまざまな要因により貧困に苦しむ人々の助け舟となると予想される。また、最貧困層への支援方法の検討やデジタル技術の活用などを進めることで、より多くの人々の生活向上に貢献できるようになるだろう。

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