ファストファッションとは?
ファストファッションは、最新のトレンドをすぐに取り入れ、安い価格で販売するブランドや業態のことである。素早く商品を入れ替え、生産ラインの効率性を高めることにより、消費者に短期間で新しいファッションを提供し続ける。価格が手ごろであるため、多くの人々が簡単に購入できるという点が魅力だ。消費者は気軽におしゃれを楽しみ、多様なスタイルに挑戦できる。
しかし、いくつかの問題点もある。まず、環境への負担が懸念されている。大量生産・大量消費のスタイルが、資源の無駄遣いやゴミ問題につながっているのだ。また、低価格で販売されるために、一部の工場では労働環境が悪化しているという指摘もある。労働者の賃金が低く、長時間労働を強いられるケースも報告されている。
多くの人にとって魅力がある一方で、持続可能性や社会的責任に関する問題も抱えている。消費者はこれらの点を考慮し、自分の購買行動を見直すことが求められるだろう。
対義語は「スローファッション」
ファストファッションの対義語として「スローファッション」という概念がある。スローファッションは、環境に優しく、長く愛用できる高品質な衣料品を提供することを目指している。
持続可能性や労働者の待遇改善を重視し、リサイクル素材やオーガニックコットンなどを使用することが特徴だ。また、丁寧な作りとデザインにこだわることで、消費者にも高い満足感を与える。
スローファッションは、消費者がファッションを通じて環境や社会に良い影響を与えるという選択をできるスタイルである。これからのファッションの在り方として、注目される存在であると言えるだろう。
ファストファッションの歴史

日本市場では、1990年代のバブル経済崩壊後、低価格で流行を押さえたファストファッションが台頭した。1990年代後半には「ZARA」や「Gap」が日本に進出し、「ユニクロ」もフリースで話題となった。2000年代後半には「GU」や「H&M」、「Forever 21」などが続々と上陸し、2009年には「ファストファッション」が流行語大賞に。最近では中国発の「Shein」が急成長し、2020年から2022年に米国でトップシェアを獲得している。
世界全体の市場も年々拡大し、2022年には約1,060億米ドルに達し、さらに2027年には約1,850億米ドルに達すると予測されている。現在では、ファストファッションは私たちの生活の一部となっているが、その持続可能性や社会的責任についての議論も欠かせないテーマとなっている。ファッション業界全体が新たな方向性を模索し始めているのだ。
国内アパレル市場の現状
国内市場では、販売される衣服の数が増える一方、各商品の価格が年々低下しているため、全体の市場規模は縮小している。

確かに、ファストファッションの普及により、大量に生産・消費される衣服が急増している。この結果、衣服の寿命が短くなり、捨てられる衣服の量が増えていることが問題視されているのだ。
環境省によれば、1人が年間に消費する衣服のうち18枚を購入し、15枚は手放し、35枚は着用されないとされている。この数字からも分かるように、手放す服より購入する服の方が多く、結果として一度も着用されずにクローゼットに眠る衣服が多く存在する現状が浮き彫りになっている。
このような背景から、国内アパレル市場では持続可能性への関心が高まり、企業や消費者の間で環境負荷を減らす取り組みが求められている。リサイクルやリユースの推進、素材の選定など、具体的なアクションが必要だ。
ファストファッションが与える環境への影響
ファストファッションが低価格で提供できる背後には、さまざまな問題点が潜んでいる。特に環境への影響は深刻だ。ここでは、環境面の問題について深掘りする。
大量の廃棄物
ファストファッションは大量に生産されるため、短期間で大量に捨てられる。現状、着られなくなった衣服のうち、ゴミに出される割合が最も高く、68%を占めている。そのうち、再活用されるのはわずか34%にとどまり、捨てられた衣服の大部分が埋め立て・焼却で処分される。

出典:環境省
さらに、年間で捨てられる衣服の総量は約470,000トン。埋め立て地や焼却場は圧迫され、環境への大きな負担となっているのだ。
CO₂排出による大気汚染
ファストファッションは、その生産過程で大量のCO₂を排出する。1着の服を作るには、原材料の調達から店頭に並ぶまでに約25.5kgのCO₂を要する。これは、500mlのペットボトル約255本分に相当する。
大量生産により、このCO₂排出量が積み重なり、地球温暖化の要因の一つとなっている。ファストファッションの広がりが、環境へ深刻な影響を与えているのだ。
水資源の浪費
多量の水資源が浪費されることも問題だ。1着の服を作るためには約2,300ℓの水が使われるが、これはお風呂の水11杯分に相当する。綿などの天然繊維を栽培するには、大量の水を必要とすることに加えて、染色や洗浄の過程でも、さらに多くの水が使われる。これにより水資源が枯渇し、特に水資源が限られている地域では深刻な問題となっている。
また、使用された水には化学物質が含まれていることが多い。河川や地下水の汚染を引き起こし、生態系や人々の健康に悪影響を及ぼすことも懸念される。
化学物質による汚染
衣服をつくる過程では、大量の水と化学物質が使用される。環境省によると、世界の工業用水汚染の20%は繊維の染色と処理に起因しており、地下水や河川の水質を悪化させている。加えて、周辺地域の水資源の枯渇も懸念される。
また、化学繊維の製造には多くの化学薬品が使われ、それらが大気中に放出されることで大気汚染を引き起こす。製造過程での環境負荷に加え、衣服を洗濯する際にもマイクロファイバーやマイクロプラスチックが海洋に流出し、海洋汚染の問題も深刻だ。
特に、石油由来の合成繊維を材料とする製品の温室効果ガス排出量は年間で12億トンに達し、これは国際航空業界と海運業界の合計を上回る量である。このように、ファストファッションは水質と大気の両方に深刻な影響を与えている。
複雑な製造工程で環境負荷が見えにくい
衣服の製造は、各国で分業化されているため、全体的な環境負荷が見えにくい。原材料の調達から製品の最終加工に至るまで、多くの国や地域で工程が分散されており、それぞれの段階で異なる環境影響が生じる。
この複雑さにより、全体像を把握することが難しく、持続可能性への取り組みが遅れる要因となっている。例えば、衣服の製造におけるCO₂排出や水消費、化学物質の使用などの影響を正確に評価し、改善することが難しい。このため、透明性の確保と環境負荷の見える化が必要である。
ファストファッションにおける労働環境の問題
ファストファッション業界は、低価格で多様な商品を提供するために、労働コストの安い発展途上国に生産を依存している。その結果、労働者は低賃金で過酷な労働条件にさらされることが多い。労働時間の長さや劣悪な作業環境、労働者の安全が十分に確保されない状況は深刻な問題である。
例えば、バングラデシュやカンボジアでは、衣料品工場の労働者が過酷な労働環境で働いている実態が報告されている。労働者は最低賃金で働かされ、長時間の労働や強制残業を強いられることも少なくない。労働者の健康や生活が脅かされるだけでなく、労働力の安定供給にも悪影響を及ぼしている。
また、労働者の権利が十分に保護されていないため、労働組合の結成やストライキといった労働者の声が上がりにくい状況が続いている。このような背景から、労働環境の改善や適正な労働条件の確保が急務となっている。
アパレル業界の持続可能な発展のためには、環境への影響だけでなく、労働者の権利と福祉にも配慮した生産体制の確立が求められている。企業と消費者が協力し、労働環境の改善に向けた取り組みを進めることが重要である。
ラナ・プラザ崩落事故
ファストファッションの劣悪な労働環境は、時に悲劇的な結果をもたらす。2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で発生した「ラナ・プラザ崩落事故」は、その最たる例である。
ラナ・プラザは複数の縫製工場が入居する建物であり、以前から安全性に問題があると指摘されていた。しかし、経営者は労働者に作業を続けるよう命じ、その結果、建物が崩壊し、1,100人以上が死亡、2,500人以上が負傷した。
この事故は、アパレル業界の劣悪な労働環境と安全基準の欠如を浮き彫りにし、世界中に大きな衝撃を与えた。事故後、国際的な圧力により、バングラデシュ政府と各企業は労働環境の改善に向けた取り組みを強化することとなった。
ファッション業界に求められていること

アパレル業界は、大量生産と大量廃棄による環境問題に直面している。これに対処するために、ファストファッションからスローファッションへの転換が求められる。スローファッションは、高品質で長く使える製品を提供し、大量消費を抑えることで資源の浪費や廃棄物の削減を実現する。
さらに、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどの再生可能素材の使用は、水や石油の使用量を削減し、環境に優しい製品を生み出す。この他にも、生産工程で廃棄される繊維の削減、色落ちしにくい技術やほつれにくい縫製技術の開発が重要だ。
捨てられる服の量を減らし、服の寿命を延ばし、再利用を促進することで、消費者との信頼関係を築き、サステナブルな選択を促せる。企業は社会的責任を果たし、透明性を高めることで信頼を築き、持続可能なファッションの未来を創造することが求められている。こうした取り組みによって、環境と人々に優しいファッション業界が実現するのである。
私たち消費者には何ができるのか
私たち消費者にも、サステナブルファッションに貢献できる方法がある。まず、衣類の購入量を減らすことが大切だ。一人当たり年間で68着もの衣類を購入しているとされるが、これを半分に抑えるだけでも環境負荷は大きく減少する。
また、質の高いアイテムを長く愛用することで、環境への負荷を大きく減らすことが可能だ。オーガニックコットンやリサイクル素材を使用した製品など、価格だけでなく素材や背景に注目して、環境に配慮されているものを選ぶことが大切だ。
さらに、長く着れるよう、衣服の丁寧なお手入れも重要だ。タグを確認し、素材ごとのケア方法を守ることで、衣服の寿命を延ばせる。こうした日常の心がけが、サステナブルファッションへの第一歩となる。
まとめ
ファストファッション業界は、低価格でトレンドを次々展開する一方で、環境への負荷や劣悪な労働環境などの深刻な問題を抱えている。今後、業界全体が持続可能な方向へとシフトすることが求められている。企業は、再生可能素材の使用や生産工程の改善を進め、環境負荷を軽減する取り組みを強化することが重要だ。また、労働環境の改善も急務であり、適正な賃金の支払いと安全な作業環境の確保が必須である。
消費者もまた、サステナブルな選択を心がけ、持続可能なファッションの実現に向けた行動が求められる。ファストファッションの問題を認識し、消費者と企業が協力して持続可能な未来を築くことが不可欠だ。ファストファッションの問題に対する取り組みが進むことで、ファッション業界はより環境に優しく、社会的に公正なものとなるであろう。
参考記事
サステナブルファッション|環境省
2021年~2027年 ファストファッションの市場価値の推移予測(単位:10億米ドル)|Statista
関連記事
まだ表示できる投稿がありません。
新着記事









